女王陛下と護衛兵たちの日々〜ワガママ女王陛下の騎士たちは王国の独立を夢見る

アンジェロ岩井

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第二十二話 ゴールデンストリートウォーズーその⑥

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カヴァリエーレの若き女性ボス。"カリーナ"・ルーシー・カヴァリエーレは何が起こったのか瞬時には理解できなかった。
確か自分はヴィトの応援に向かい、増援を引き連れ、ホテルへと向かった筈だ。それなのに何故自分は空中に連れ去られているのだろう。ルーシーは自分を誘拐している吸血鬼に顔を見てようやく自分に何が起こったのかを理解した。
「分かった……応援に向かって、それで……変な怪物に襲われて」
その言葉を怪物が途中で遮った。
「そうだよ、あんたはもうオレのもんさ、ヴィトの小僧を殺すためのな」
その声でルーシーは誰が自分を誘拐したのかを理解した。
「フランクか?」
ルーシーは慌てる事なく問う。動じないルーシーを面白く感じたのか、怪物は歓喜の表情を浮かべながら言う。
「ご明察の通りさ !以前カルロの叔父貴がヴィトと戦った時に人質を取ったと聞いてな、オレはそれに倣ったわけさ」
ルーシーは空中で運ばれている状態の中でこの状況を乗り切る最善の方法を思案した。
(やはり、ゴールデンストリートと呼ばれるわけはある……今この男と飛んでいるビル街も大企業の商社が殆どを占めている……それに庭付きの家も多々見える……本当にお金持ちの区域エリアなのね)
らルーシーはそんな中ある物に目を止めた。
(工事中のビルだわ、しかも外からは見えないけれど、窓の部分が空いているわ)
ルーシーはそのビルを見て思った。
(そうだわ、今こいつから離れれば、あのビルの隙間に飛び込めるんじゃあないかしら)
ルーシーはそう考えた瞬間に怪物の顎を思いっきり殴った。怪物はよろめき、ルーシーを下に落とす。
(やったわ、あとはビルの隙間に……」
ルーシーは落ちている間に必死に体を動かして、ビルの隙間に体を入れるようにしたが、あと一歩のところで届かずに最終的に手だけがかかっている状態となった。
「危なかったわ、さあビルに登りましょう」
ルーシーは必死によじ登ろうとしたが、次の瞬間に強風が吹き、ルーシーは手を滑らせ、下に落ちていく。
(もうダメだわ……あたしこれで終わりね)
ルーシーは目を瞑ったが、いつまでも地面に体を叩きつけられることはなく、代わりにある人の腕に抱かれていた。
「大丈夫か、お姫様」
その声にルーシーは思わず彼のモーニングコートの正面をギュッと掴む。
「大丈夫よ……あなたこそ大丈夫?」
「オレは平気さ、それより無茶はすんなよ、あんたの命にはカヴァリエーレ・ファミリー全員の命がかかってんだからな」
ヴィトはたしなめるように言った。
「そうね」
「そうさ、それよりあの吸血鬼フランクはオレに任せろ、あんたはホテルにいるファミリーの若い衆を安心させてやってくれ」
そう言うとヴィトは一度地面に降り、ルーシーを下ろした。
「任せてよ、それにわたしが生き延びた方がいい理由はもう一つあるわよ」
「それは何だい?」
ヴィトがいたずらっぽい笑みを浮かべながら尋ねる。
「それはね……」
その瞬間にフランクがルーシーとヴィトの間に割って入る。
「待てよッ!お前を逃すわけねぇだろ?カヴァリエーレ・ファミリーはこの建設現場で首領ドン相談役コンシリエーレを失い、壊滅するんだからな」
「いいや、それはないな、お前はここでオレに殺されるんだから」
ヴィトの言葉にフランクはピクピクと青筋を立てていた。
「やってみなッ!」
フランクは挑発に乗り、ヴィトに噛み付いてくる。ヴィトはすぐさま拳銃を取り出し、フランクに発砲する。弾はフランクの急所に直撃することはなかった。だが、確実にヴィトの弾はフランクの右肩を貫く。
フランクは痛みのあまりにうめき声を上げる。
「これでも、お前は『カヴァリエーレ・ファミリーは壊滅する』なんて言えるのか?」
ヴィトの問いにフランクは歯をギリギリと鳴らす。
「なら、小娘の方をッ!」
フランクが背後を振り向くと、そこにはもうルーシー・カヴァリエーレの姿は見えなかった。
「にっ、逃げたのか……」
「違うね、アイツルーシーは部下を安心させに行ったんだ。指導者として当然のことだろ?」
ヴィトのその言葉にフランクはフラフラとよろめく。もうルーシーを始末するチャンスは消えたということだから。
「察したらしいな、お前がまたアソコに近付けば、今度は一斉射撃で殺されてしまう事を……」
ヴィトはここで拳銃を放り投げる。
「テメェ……どういうつもりだ?」
「簡単な話さ、決闘だよ、あんたのナイフとオレの剣どっちが早いか勝負って事だよ」
フランクはそれを了承し、ヴィトにナイフを向け構える。ヴィトもフランクに剣の矛先を向ける。
しばらく二人は睨み合っていたが、フランクは辛抱し切れずに勢いよく突っ込む。
ヴィトは剣を斜めに構え、ナイフを滑らせ、それからフランクの体を剣で切った。
「ばっ、バカな……」
「オレの方が早かったらしいな」
ヴィトはニヤリと笑う。ここでフランクの体は白い閃光に包まれ消えた。
「やったぜ……だが、今日は色々あり過ぎて疲れたよ……しばらくここで眠りたい気分だな」
ヴィトは剣を鞘にしまい、ヨロヨロと千鳥足でルーシーの元へと向かった。

ルーシーの屋敷につくなり、ヴィトはマリアの質問責めにあった。
「ちょっと、ルーシーと何処に行ってたのよ !!」
「ただのパーティさ……それ以上でも以下でもないよ」
ヴィトはタジタジと両手の手のひらをマリアに見せている。
「じゃあ、パーティで何食べたのよ !」
「色々だよ」
「色々って何よッ!」
それを見たルーシーはクスリと笑う。
「ヴィトも大変そうね、あんなワガママお姫様に惚れられて……」
ルーシーはそう呟くと、ドレスを脱ぐために自分の部屋へと戻る。
「ともかく、今後二度と二人っきりの外出は許しませんッ!!」
「へっ、陛下ァ~それは無茶ってもんですぜ」
「うるさいッ!ルーシーと黙ってパーティに行った罰よッ!」
ヴィトは今度はこの子のために個人的に庭でバーベキューパーティを開こうかと考えた。
そうでもしなければ、ヴィトのワガママお姫様の気が落ち着かないだろうと考えたからだ。

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