女王陛下と護衛兵たちの日々〜ワガママ女王陛下の騎士たちは王国の独立を夢見る

アンジェロ岩井

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第三部 トゥー・ワールド・ウォーズ

新たなる帝国宰相

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ギシュタルリア帝国の宰相の座をめぐる選挙戦のための最終演説会は、ヴィトとカヴァリエーレ・ファミリーが三龍会と激突するほんの三日前に行われた。
「帝国の臣民の皆さま !我々世界審判教こそが、皆さまを救える真の宗教のです !ロペスの奴に騙されてはいけません !皆さまの生活を助けられるのは、我々世界審判教だけなのです !」
「騙されてはいけません !コイツこそが、皆さんを騙している詐欺師なのです !」
ライター・ヘンプとロベス・アントワネットの二人が、激しい口論を繰り返す。
「我々の五つの改革を実現するのは、私の当選しかあり得ません !ロベスではダメです !皆さまを救えるのは、彼らから言い渡されたのは、私の当選です !彼らは言いました。『ヘンプよ、お前がエドワード陛下を支え、ギシュタルリア帝国を助けよ』と言いました !彼らが言うことに間違いはありません !臣民の皆さま……どうか、我々を信じてください !」
「皆さま !コイツヘンプは今、我々から信仰を取り上げ、自分に従う兵士に変えようとしているのです !世界審判教はインチキ宗教です !どうか、皆さまコイツの言うことに耳を傾けることなく、今までの神様を信じましょう !」
その瞬間に演説を聞いていた大衆の中から、信者の人間がロベスに罵声を浴びせる。
「黙れッ!ゴッドーゴールを侮辱するな !無能宰相めッ!お前は引っ込めッ!」
信者の男性の声に同調するかのように何人かの信者がロベスへの罵声を浴びせる。
「ロベス辞めろッ!ロベス辞めろッ!ロベスは帝国宰相を辞めろッ!」
ロベスは信者の気迫に押されたが、数少ないロベス派の人間もこれに対抗し、ヘンプへの罵声を浴びせる。
「うるさい !お前らこそ黙れッ!今までの神を放棄し、何が五つの改革だッ!ヘンプは詐欺師だッ!帝国正教会を信じろッ!ロベス宰相閣下を信じるんだッ!」
彼はヘンプに対抗するかのように帝国正教会の信者の象徴である真ん中に大きなガーネットの入ったネックレスを見せる。
「これが、我々の信仰の象徴だッ!あんな奴のために信仰を捨てる事はないんだッ!ロベス宰相閣下万歳ッ!」
その瞬間に男の頰に鉄拳が飛ぶ。
「黙れッ!お前、ゴッドーゴールを侮辱するのかッ!お前にゴッドーゴールの偉大さが分かるものかッ!それに帝国正教会が色々と捕縛するから、何の改革もできなかったんだッ!ゴッドーゴールはそれを正そうとしているだけなんだッ!」
男は演説をするかのように両手の手首を曲げ、宙に上げる。
「そいつの言う通りだッ!ゴッドーゴールに間違いはないんだ !間違っているのは帝国正教会とお前らだッ!」
ヘンプの信者の一人が、ヘンプを罵声した男を指差す。
「みんな聞いてくれ、コイツこそが、今までの帝国の政治を乱したロベスを支持してきたバカどもだッ!こんな奴は鉄拳で制裁しちまえ !」
そう叫ぶと同時に他の信者が、男に飛びかかる。
顔も見るも無残なものになり、信仰の象徴であったネックレスはヘンプの信者たちにより、粉々に破壊されてしまう。
「ひっ……」
ロベスは目の前の惨劇の恐ろしさに思わず腰を落としてしまう。
「皆さん !この男をご覧ください !」
ヘンプの言葉に大衆の視線が一斉にヘンプの向かい側で演説を行っていたロベスを見つめた。
「この男は、自分の支持者がこんな目にあったに目も合わせようともしません !勿論、彼はやり過ぎましたが、彼は同時に証明してくれたのです !帝国正教会とロベス派の人間は自分たちの仲間が悲惨な目にあっても見て見ぬ振りをする冷血な奴らだと !」
ヘンプは腰を抜かしていたロベスを指差す。その瞬間から一気に大衆のロベスを見る目が憎悪の目へと変わる。
「ロベスは冷たい奴だ !ロベスは帝国宰相に必要ながないッ!」
先ほどロベス派の人間を殴った信者の男が、全員に向かって演説する。
「そうだッ!そうだッ!オレたちはヘンプに投票するぞ !あんな仲間さえも救わない冷たい奴に政治を任せられるものかッ!」
その日の演説はヘンプの圧勝に終わった。
ヘンプは自分を支持する大衆たちに拍手を送った。

その翌日に行われた選挙では、ライター・ヘンプの名前が埋め尽くされた。
「ライター・ヘンプ帝国宰相万歳 !ゴッドーゴールの就任万歳 !」
ヘンプが選挙会場の建物から出てくるやいなや、大衆の歓声にヘンプは迎えられた。
「ありがとうございます。信徒の皆さま……とうとう、我々の手で正当なる政治を掴みとりました !これからは世界審判教こそが、皆さま方の生活のそして、精神の支えとなります。どうか、これからも応援よろしくお願いします !」
ヘンプが右手を上空に上げると、大衆はヘンプが何も言わずとも、ヘンプのように右手を上空に上げた。
「お疲れ様だな、ヘンプゴッドーゴールいや、ヘンプ帝国宰相よ」
と、ヘンプの前に現れたのはギシュタルリア帝国の現皇帝であるエドワード・デューダレアであった。
「ありがとうございます。エドワード陛下 !これからは私が陛下を支えさせていただきます」
「ふむ、頼むぞ」
エドワードは自分の右手をヘンプに差し出す。
「おお、陛下とゴッドーゴールが手を組んだぞ !これでもう何も恐れる事はないんだ !帝国万歳 !エドワード陛下万歳 !ゴッドーゴール万歳 !世界審判教万歳 !」
大衆たちの歓喜の声が上がる中、エドワードが懐から一つの腕時計を取り出す。
「陛下……それは?」
ヘンプは首を傾げるばかりだった。この世界には腕時計を作れる技術はない。だから、彼の懐から腕時計が出る事もない筈だった。
「ふふふ、驚いておろうな、これは以前お主の世界に行った時にそこの部下から貰ったものさ、長らく余の宝物であったが、ヘンプ……貴様にプレゼントしよう」
「そんな貴重なものを……陛下ありがとうございます !」
ヘンプは涙を浮かべながら、スイス製の腕時計を身につける。
「これからも余のために力を尽せよ、帝国宰相……」
エドワードはヘンプの肩に手を置く。
「勿論です !陛下 !あなた様のご期待に添えさせてもらいます !」
ヘンプは丁寧に頭を下げた。再び大衆の間に歓喜が巻き起こる。
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