政略結婚が恋愛結婚に変わる時。

美桜羅

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出会い

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続いてその隣にある部屋のドアを、こん、と一回ノックして。

「ここは、俺の部屋だから。」

その言葉に瑞紀がこくん、と頷く。

「必要な時は呼びなさい。」

「ありがとうございます。」

「で、この隣が君の部屋ね。」

瑞紀に目線を向けながら。

「はい。」

「…カーテン、最初からつけてあるやつだから嫌だったら変えなよ。」

これで説明は終わった。

面倒くさかった。

だから他人と同じ家に住むのなんか嫌なんだ。

そう思いながらリビングに戻ろうとすると。

瑞紀が、
「私の部屋の向かいにある部屋は、何なんですか…?」
と聞いて来た。

あぁ。

その言葉に、ゆっくりと体の向きを180度変える。

その部屋に向かって歩きながら。

「ここが、一番はリビングだけど、このマンションの中で二番目に広い部屋。その次が君の部屋、その次が俺の部屋で、一番狭いのが寝室ね。」

その言葉に瑞紀は慌てた様に
「私の部屋、知哉さんの部屋より大きいんですか…っ?!」

『知哉さん』

その言葉に少し眉を寄せる。

何で、この女に俺の名前を。

でも、さっき俺がそう呼べと言ったんだった。

しまった。

そう思いつつ。

「…うん。」

「そんな、良いです!気を使って「使ってないよ。」

食い気味にそう言って。

何が嬉しくてこの女に。

「たまたま余ってたのがその部屋だっただけだよ。俺がその部屋がよかったら君がくる前にとっくにそうしてる。」

俺がそう言うと。

瑞紀は眉を下げて、
「…そうですか。」
と言った。

「…この部屋は、書斎。」

俺がゆっくりとそう言うと。

「書斎?」

「ジャンルは関係なく本を読むのが好きなんだよ。本を買いすぎて置き場が無いからここにしまうようになって、何時の間にか書斎みたいになったからそう呼んでるだけだけどね。」

それから、ゆっくりとドアノブに手をかけてドアを開く。

開いたと同時に広がる、独特の本の匂い。

この匂いも、結構好きで。

リビングのドアの前で突っ立っている瑞紀を見て。

「…こっち。」

部屋の中に入りながら手招きすると、瑞紀は遠慮がちに俺がドアを開けた部屋の中に入ってきて。

それから。

「凄い、量ですね…」

壁一面に置いてある本。

医学系から、小説まで。

「ここにある本、数えて見た事無いけどね。ジャンルも分けてある。」

チラリと瑞紀を見てから。

さらに奥に進んで行く。

俺の後ろに瑞紀も付いてきて。

「どこまで行っても本だらけ…」

感嘆したような瑞紀の言葉に呆れる。

この女、バカなのか。

だから、書斎なんだけど。

そう思ったとほぼ同時に、角を曲がると目の前に一面の窓と広いデスクと二個の椅子とソファが見えて。

窓には、都会の世話しない街並みがはるか下の方に写っている。

椅子を引いて、そこに腰掛けながら窓を見て。

「ここで、よく仕事してる。」

「…家に帰ってからも、ですか?」

「仕事が好きだからね。」

「…」

「ここで、本を読むのも好きだけど。」

「…このマンション、絶対高いですよね。」

突然の言葉に少し疑問を感じながらも。

ほおずえをつきながら答える。

「…別に。俺の収入を考えたら普通じゃないの。」

うるさい。

余計な事を話すな。

勘ぐるな。

それだけでイライラする。

瑞紀を見ると瑞紀は、下を向きながら。

「…本の量とか、このマンションとか、住んでる階が上から二階目って事とか…最初から思ってましたけど、知哉さんって何されてるんですか?」

そんな事も知らないのか。

その声は、どこか不安気で。

っていうか、その事を知って何になる?

何で教えなきゃならない?

でも、夫婦なのに旦那の仕事を知らないのも。

「…証券会社。」

「え…」

「証券会社に勤めてて、毎日株を動かしてるんだよ。」

そう言うと瑞紀は、決心したかのように息を呑んでから、俺を見て口を開く。

「…私達、夫婦なのに知らない事多過ぎじゃありませんか?」

急に、何を言い出すんだ。

だったらなんだ。

何も困る事なんて無いだろう。

「一週間前に会ったから当たり前だし、君と俺は政略結婚なんだからそれが普通でしょ。」

「っだったら、教えてく「その必要は無いよ。」

俺はゆっくりと椅子から立ち上がる。

「俺は君に関心も興味も無いし、そういう物をもつ予定も無い。」

「…」

「君に俺の事を知って欲しいと思わないし、知らす必要性も感じない。」

「…っでも、そんなんじゃ、仲の良い夫婦のふりなんて「さっき会社の事を教えたのは、必要性があると感じたから。これからも、必要があると思った事は教える。でもそれ以外は知らせたくないし、教えたくない。」

ゆっくりと

「…あの「それに、そんな事を言ったら君に聞きたい事だってある。例えば、君の両親の事、とかね。」

立ち尽くす瑞紀に

「…っ」

近づきながら。

「ねぇ、君、大事な事忘れてない?」

瑞紀の正面に立って、見下ろす。

「俺は、君に愛情を注ぐ気など無いって言ったはずだけど。」

その言葉だけを残して

俺は

瑞紀が立ち尽くす書斎を後にした。
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