政略結婚が恋愛結婚に変わる時。

美桜羅

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二人の間にある距離

3

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「んー」

目の前の、部長、と書かれた椅子に上品に座り口の前で手を組んでいる上司は、俺の今月のノルマが表示されたパソコンの画面をしばらく見て。

「今月も頑張ったね。お疲れ様。」

そう言って笑った。

「…ありがとうございます。」

そう言いながら頭を丁寧に下げる。

「悠河君、今月もこれでまた記録更新だね。」

優しく、俺に笑いかけてきて。

「部長や周りの同僚のおかげです。」

俺は入社当初から毎月の成績を上げ続けている。

「このままじゃ、君を上司として扱う日も遠くないねぇ。」

そう言いながら俺のパソコンを渡してくる。

そのパソコンを受け取りながら。

「いえ、そんな。」

そう言いながら礼をして自分の机に戻ろうとすると。

「そう言えば、悠河君。」

そう呼び止められて振り返る。

「…はい。」

「瀬川君から聞いたんだけど、
結婚したんだって?」

余計な事を。

苦々しく思いながらも。

「…はい。」

俺がそう答えると。

「扶養家族の書類もあるから、そういうのは言ってね。」

「…すみません。」

頭を下げると。

部長は笑いながら。

「それに祝い事なんだから、もうちょっと浮かれても良いんだよ。私も祝いたい。結婚式はいつの予定なの?」

祝い事?

浮かれる?

結婚式?

何で。

したくもない結婚させられて。

しかも顔も何も知らなかった女と。

最悪だ。

こんなもの、最悪以外の何者でもない。

「浮かれる事でも無いので浮かれていないだけです。祝っていただくほどの事でもありません。ただしょうがなく籍を入れて一緒に暮らしてるだけです。」

俺が素早くそう言うと。

部長は面食らったように目を見開いて。

「…悠「結婚式も挙げません。挙げる必要が無いので。無駄な支出としか思えません。」

俺がそう言うと。

「それで、奥さんは納得してるのかい?」

奥さん、ね。

俺にはそんなのいない。

厄介な子供の同居人が出来ただけ。

「さぁ。聞いた事もありませんし、聞こうとも思いませんから。」

部長は眉を下げながら。

「悠河君、それじゃあんまりにも可哀想だよ。女性に取ったら結婚式は、一世一代の重要なイベントだよ。」

「結婚式にそこまで思い入れがあるのなら、俺と結婚してないはずですから。」

俺の言葉に訝しそうな顔をした部長に向かって。

「恋愛結婚じゃありませんので。政略結婚です。お互いの間に愛情なんて無いし、湧いてもこない限り、そんなものありません。」

俺はそれだけ言って、まだ何かを言ってきそうな部長に一礼して自分の机に戻った。

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