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二人の間にある距離
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車をこの前の場所に駐車して財布と携帯と車のキーを持って外に出ると。
瑞紀がこちらまでちょうど歩いて来た所だった。
今日は髪を二つに結んでいる瑞紀に対して
「教室まで、案内しなよ。」
瑞紀は少し唇を尖らせながら、
「…こっちです。」
瑞紀に続いて歩いていると。
「この後会社にまた戻られるんですか?」
隣にいる瑞紀を見下ろしながら。
「当たり前。暇じゃないんだよ。」
「…そうですよね。すいません。」
…
なんか、謝られると、俺が悪いみたいじゃないか。
そう思いながら。
「…ここです。」
瑞紀が立ち止まった正面にある教室を勢い良く開けた。
カラリ
静かにドアを開けて。
中に一歩入って、礼をして担任らしき人物が座っていた椅子から立ち上がる音を聞きながら。
「いつもお世話になってます。」
決まり切った社交辞令と、無理やり貼り付けた笑顔。
『お座り下さい』
普通はそう言う返事があるはずなのに。
その教師は中々返事をしなくて。
少しイライラしながら、その教師の顔を改めて確認しようと顔を上げると。
「…悠河君?」
目の前にいた女教師が驚いたようにそう言う。
…なんだこの女。
もちろん、俺には覚えがない。
思わず眉を寄せると。
その女は俺の考えてる事に気づいたようで、少し笑いながら。
「そうだよね、悠河君が覚えてるわけないよね、私の事なんて。」
…否定出来ない。
現に覚えてないわけだし。
そう思いながら黙っていると。
「…私、高校二年生の時に悠河君と同じクラスだったんだよ。悠河君、目立ってたからよく覚えてる。」
…俺は覚えてない。
うるさい、さっさと本題にはいれ。
そう言おうとすると、俺の立っている直ぐ横に寄り添う様に瑞紀が立って。
そんな瑞紀を見下ろす。
何でそんな近づいて来た。
近すぎ。
離れろ。
そう思ったけど、女教師の手前言う事が出来ずにただ見下ろすしか出来ない。
でも。
お前は好い加減黙れ。
「…私、広瀬「うるさいな。」
俺がそう言うと。
目の前の広瀬だかなんだか知らないけど、その女が目を見開く。
その様子を黙って見ながら。
「あのさ、こっちも暇じゃないんだよ。仕事に戻らなきゃいけないからさっさとしてくれる。君が同級生だかなんだか知らないけど、俺は覚えてない。今日は瑞紀の保護者会に来たんだから、君も仕事まっとうしなよ。」
俺がそう言うと。
広瀬とかいう女は、口をつぐんで。
それから、自分の直ぐ横にあった椅子を右手で示しながら小さな声で
「…今日はわざわざありがとうございます。こちらにお座り下さい。」
俺は無言でその椅子に腰掛けた。
教師は俺に数枚のプリントを目の前にある机の上において見せながら、
「ご覧の通り、瑞紀ちゃんの成績は素晴らしいです。学年でもトップですし、このまま行くと志望校として書かれてる国公立大学にも余裕で受かります。むしろ、少しランクを上げる位の方が「そういうのは本人に任せてますから。」
早くしろ。
早く会社に行きたい。
ただでさえお前の無駄な話のせいで余計な時間をロスしてる。
すると、教師は気を取り直した様に、
「…では、生活面ですが、友達も多く異性からの人気も高いので「いらない、そんなの。瑞紀が何か問題起こしてないなら、もう帰りたいんだけど。」
俺がそう言うと目の前の教師は、仕方ない、という風にため息をついて。
「…では、お帰りいただいて結構です。」
その言葉を聞くと同時に椅子から立ち上がってドアの方へ歩き出す。
後から、瑞紀もそれについてきて。
教室から出ようとドアを開けて一歩踏み出したその時。
「…っ悠河君!」
後ろから呼ばれて。
仕方なく、立ち止まると。
「あの、余計なお世話かもしれないけど…瑞紀の事、お願いね。」
「…」
は。
俺が眉を寄せると。
「知ってると思うけど、瑞紀は「先生!」
…
思わず、俺の隣に居た瑞紀を見る。
何で、急にそんな大きな声。
俺の視線に気づいてるのか居ないのか、瑞紀は少し声を小さくして。
「…大丈夫ですから。さよなら。」
そう言って。
“出ましょう”
そんな風に俺のスーツの裾を引っ張った。
瑞紀がこちらまでちょうど歩いて来た所だった。
今日は髪を二つに結んでいる瑞紀に対して
「教室まで、案内しなよ。」
瑞紀は少し唇を尖らせながら、
「…こっちです。」
瑞紀に続いて歩いていると。
「この後会社にまた戻られるんですか?」
隣にいる瑞紀を見下ろしながら。
「当たり前。暇じゃないんだよ。」
「…そうですよね。すいません。」
…
なんか、謝られると、俺が悪いみたいじゃないか。
そう思いながら。
「…ここです。」
瑞紀が立ち止まった正面にある教室を勢い良く開けた。
カラリ
静かにドアを開けて。
中に一歩入って、礼をして担任らしき人物が座っていた椅子から立ち上がる音を聞きながら。
「いつもお世話になってます。」
決まり切った社交辞令と、無理やり貼り付けた笑顔。
『お座り下さい』
普通はそう言う返事があるはずなのに。
その教師は中々返事をしなくて。
少しイライラしながら、その教師の顔を改めて確認しようと顔を上げると。
「…悠河君?」
目の前にいた女教師が驚いたようにそう言う。
…なんだこの女。
もちろん、俺には覚えがない。
思わず眉を寄せると。
その女は俺の考えてる事に気づいたようで、少し笑いながら。
「そうだよね、悠河君が覚えてるわけないよね、私の事なんて。」
…否定出来ない。
現に覚えてないわけだし。
そう思いながら黙っていると。
「…私、高校二年生の時に悠河君と同じクラスだったんだよ。悠河君、目立ってたからよく覚えてる。」
…俺は覚えてない。
うるさい、さっさと本題にはいれ。
そう言おうとすると、俺の立っている直ぐ横に寄り添う様に瑞紀が立って。
そんな瑞紀を見下ろす。
何でそんな近づいて来た。
近すぎ。
離れろ。
そう思ったけど、女教師の手前言う事が出来ずにただ見下ろすしか出来ない。
でも。
お前は好い加減黙れ。
「…私、広瀬「うるさいな。」
俺がそう言うと。
目の前の広瀬だかなんだか知らないけど、その女が目を見開く。
その様子を黙って見ながら。
「あのさ、こっちも暇じゃないんだよ。仕事に戻らなきゃいけないからさっさとしてくれる。君が同級生だかなんだか知らないけど、俺は覚えてない。今日は瑞紀の保護者会に来たんだから、君も仕事まっとうしなよ。」
俺がそう言うと。
広瀬とかいう女は、口をつぐんで。
それから、自分の直ぐ横にあった椅子を右手で示しながら小さな声で
「…今日はわざわざありがとうございます。こちらにお座り下さい。」
俺は無言でその椅子に腰掛けた。
教師は俺に数枚のプリントを目の前にある机の上において見せながら、
「ご覧の通り、瑞紀ちゃんの成績は素晴らしいです。学年でもトップですし、このまま行くと志望校として書かれてる国公立大学にも余裕で受かります。むしろ、少しランクを上げる位の方が「そういうのは本人に任せてますから。」
早くしろ。
早く会社に行きたい。
ただでさえお前の無駄な話のせいで余計な時間をロスしてる。
すると、教師は気を取り直した様に、
「…では、生活面ですが、友達も多く異性からの人気も高いので「いらない、そんなの。瑞紀が何か問題起こしてないなら、もう帰りたいんだけど。」
俺がそう言うと目の前の教師は、仕方ない、という風にため息をついて。
「…では、お帰りいただいて結構です。」
その言葉を聞くと同時に椅子から立ち上がってドアの方へ歩き出す。
後から、瑞紀もそれについてきて。
教室から出ようとドアを開けて一歩踏み出したその時。
「…っ悠河君!」
後ろから呼ばれて。
仕方なく、立ち止まると。
「あの、余計なお世話かもしれないけど…瑞紀の事、お願いね。」
「…」
は。
俺が眉を寄せると。
「知ってると思うけど、瑞紀は「先生!」
…
思わず、俺の隣に居た瑞紀を見る。
何で、急にそんな大きな声。
俺の視線に気づいてるのか居ないのか、瑞紀は少し声を小さくして。
「…大丈夫ですから。さよなら。」
そう言って。
“出ましょう”
そんな風に俺のスーツの裾を引っ張った。
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