政略結婚が恋愛結婚に変わる時。

美桜羅

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二人の間にある距離

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教室から出て。

黙って二人で廊下を歩いていると。

それまで話さなかった瑞紀が、
「…あの。」

俺は、黙って歩き続ける。

「私、歩いて帰ります。」

瑞紀は自分の持っていたカバンの持ち手をきゅっと握りながら。

「…あ、そ。」

いや、別に送ってくなんて言ってないし。

そう思いながら。

「今日、来てくださってありがとうございました。…本当に、嬉しかったです。」

瑞紀は、貼り付けた笑顔で。
 
笑う。

「…今日は、何時に帰って来ますか?」

「…は。」

「待ってます、知哉さんが帰って来るの。」

「何で。遅くなるし別に「待ってます!」

瑞紀の強い口調に思わず、黙る。

「…どんなに、遅くても待ってますから…」

眉を寄せながら、俯く瑞紀を見る。

「…だから、帰って来て下さいね。」

そういう瑞紀に対して。

何も言わず、そのまま無言で。

瑞紀の前から立ち去った。

カチャリ

いつもと同じ時間に帰宅して、玄関で靴を脱ぎながら。

静まり返った廊下を見て。

…待ってるんじゃなかったのか。

いや、別にそれを望んでいたというわけではなく。

ただ単に言葉だけで行動しない事が気に食わないだけ。

『待ってます!』

静かに自室のドアを開いて、机の上に鞄をおいて、壁にコートを掛けて。

ワイシャツにスーツのズボンだけになった状態で袖のボタンを外しながらお風呂に向かおうとした所で。

ふと、リビングの奥の明かりが点いてるのに気づく。

…玄関からは遠いから、見えなかったのか。

そんな事を思いながら。



電気を、消さなければ。

そっとリビングのドアを開けて中に入って、手前にある電気を点けて歩き出す。

…自分の家の電気を消すだけなのに、何で悪い事してるみたいな気になるんだ。

そんな事を考えて。

角を曲がると。

「…」

思わず、足が止まる。

目の前には、ソファにコテンという感じでもたれかかって眠っている瑞紀がいて。

…何だこの状況は。

何でこんな所で寝てる。

しかも、ブレザーは脱いでるけど制服のままで。

スカートのひだがくちゃくちゃになるのに。

あらかた、帰って来て俺を待ってる間に疲れて寝たんだろうけど。

っていうか、そんなに眠かったなら先に寝てれば良い。

こんな所で寝られたら迷惑だ。

でも、こんな所で放置して風邪を引かれたりして俺が会社に行けなくなったら。



いや、別に俺が看病しなきゃならない義務は無いわけだし。

ほかっとけば良いのか。

そう思い直して、点いていた電気を消し、お風呂に入ろうとドアに向かって歩いていると。

「…は。」

ダイニングテーブルの上には、ラップに包まれたバランスの良さそうなご飯。

今日の朝、俺が座った場所に丁寧に置かれてる。

…何だこれ。

そのご飯に近づいて行って。

上から覗き込みながら。

これは誰のご飯だ?

俺か?

でも頼んでないし。

瑞紀のか…

再び行こうと体の向きを変えた所で。

…いや、待てよ。

ご飯がよそってある茶碗を見ると、それは確かに俺のもので。

瑞紀がいつも使ってるはずの、自分の家から持って来た茶碗より少し大きいサイズの茶碗。

…じゃ、これは。

そこまで考えて、ふと眉を寄せる。

別に、頼んでない。

第一、夕飯はいつから用意されるようになったんだ?

俺はいつも休みだったり、朝用事が無い限りリビングには入らない。

自室と洗面所の往復しかしない。

だから、このご飯に気づいたのは今日が初めてなわけで。

もしかして、瑞紀が来てからずっと用意されてたわけじゃないだろうな。

…もしそうだったとして、あいつは朝、そのご飯をどうしてたんだ?

瑞紀が眠ってるはずの奥の部屋を睨む。

まさか、捨てたんじゃないだろうな。

…そんな事、瑞紀はしないか。

朝、食べて行ってたんだろう。

ダイニングテーブルにゆっくりと体重をかける様に両手をおいて。

さて。

どうしようか。

このご飯を、どうするか。

じっと目の前にあるご飯を眺めながら。



そこではぁ、とため息をついて。

お風呂にはいるために、ドアを開いた。


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