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第七章 千冬
千冬
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あれから、光夜くんは次の仕事があるからとお互いに連絡先を交換して別れた。そして、姉のカバンに入っていたのと同じペールイエローの星が描かれたメモ帳に千冬の病院と部屋番号も記して渡してくれた。このメモ帳は千冬がくれたと、少し恥ずかしそうに教えてくれた。
「……なずな。大丈夫か?」
ロビーで座り込んだまま、あたしは身動きできずにただ手元のメモに目を落としていた。何も考えられずにいると、春一の声でようやく周りの環境音が耳に入り込んできた。
それでもまだ、この戸惑いをどうすれば良いのか分からずに、ただただ、湧き上がってくる感情の波が溢れ出してしまいそうな衝動にかられた。
「……驚いたよな。まさかこんな話しになるなんて……」
ロビーの高さのあるガラス窓からは、眩しい太陽の光が差し込んでいて、けれど、キンキンに冷えた室内にはその熱や暑さは伝わってこない。
まるで、あたしの思いが千冬へ伝わらないのと同じような気がする。
「なずなは、どうしたい? 病院に行くなら、俺もついて行くし」
もしかしたら、千冬に会えるかもしれないと楽しみにしてここへ来た。千冬へと繋がる手がかりを手に入れて、嬉しかったから。泣けてくるほどに、嬉しかったから……
それなのに……
千冬が、あと一年、生きられるか分からない……?
あたしは、どうしたらいいの? 千冬に、会いに行っても、いいの?
ロビーのソファーで、しばらく何を見るわけでもなく、窓の外の人並みを虚に眺めていた。春一はあたしが落ち着くまで心配そうに見守っていてくれた。
『千冬、新堂さんに会いたかったって言ってたよ』
さっき言われた光夜くんの言葉が頭の中に響いてきて、あたしは両手に力を入れて握りしめ、ソファーから立ち上がった。
「……なずな?」
春一もすぐに立ち上がって、あたしのそばに来てくれる。
やっぱり、ここまで来た以上千冬には会っておきたい。このまま帰るなんて考えられなかった。
「……春一、付き合ってもらっても……いい?」
一人で来ていたら、もしかしたらこのまま帰る選択肢を選んでいたかもしれない。本当はすごく不安だ。どうしたらいいのか迷っている。
戸惑いが、湧き上がってきて目から言葉の代わりに溢れ出す。ぽたりと一粒の涙がこぼれ落ちてしまうと、春一はためらいながらもあたしの頭をポンポンと撫でてくれた。
「よしっ、じゃあ行くか」
あたしを元気付けようと、春一は気合いを入れるように出口付近を指差しながら笑った。そうだよ、千冬に会うことは悲しいことじゃない。辛いことでもない。だから、悩むことなんてない。あたしが、千冬に会いたいんだから。
だから、笑顔でいなくちゃ。
春一に微笑んで、あたしは頷いた。
ここから見上げる空は、あまりに狭くて、近いようで遠くて、いつも見ている広い広い吸い込まれそうな青じゃなくて。けれど、千冬は今、この空を見ている。
あたしは今、千冬に一番近い場所にいる。なんだかそう思うと、嬉しかったから。
あたし、千冬に会いに行くよ。
「……なずな。大丈夫か?」
ロビーで座り込んだまま、あたしは身動きできずにただ手元のメモに目を落としていた。何も考えられずにいると、春一の声でようやく周りの環境音が耳に入り込んできた。
それでもまだ、この戸惑いをどうすれば良いのか分からずに、ただただ、湧き上がってくる感情の波が溢れ出してしまいそうな衝動にかられた。
「……驚いたよな。まさかこんな話しになるなんて……」
ロビーの高さのあるガラス窓からは、眩しい太陽の光が差し込んでいて、けれど、キンキンに冷えた室内にはその熱や暑さは伝わってこない。
まるで、あたしの思いが千冬へ伝わらないのと同じような気がする。
「なずなは、どうしたい? 病院に行くなら、俺もついて行くし」
もしかしたら、千冬に会えるかもしれないと楽しみにしてここへ来た。千冬へと繋がる手がかりを手に入れて、嬉しかったから。泣けてくるほどに、嬉しかったから……
それなのに……
千冬が、あと一年、生きられるか分からない……?
あたしは、どうしたらいいの? 千冬に、会いに行っても、いいの?
ロビーのソファーで、しばらく何を見るわけでもなく、窓の外の人並みを虚に眺めていた。春一はあたしが落ち着くまで心配そうに見守っていてくれた。
『千冬、新堂さんに会いたかったって言ってたよ』
さっき言われた光夜くんの言葉が頭の中に響いてきて、あたしは両手に力を入れて握りしめ、ソファーから立ち上がった。
「……なずな?」
春一もすぐに立ち上がって、あたしのそばに来てくれる。
やっぱり、ここまで来た以上千冬には会っておきたい。このまま帰るなんて考えられなかった。
「……春一、付き合ってもらっても……いい?」
一人で来ていたら、もしかしたらこのまま帰る選択肢を選んでいたかもしれない。本当はすごく不安だ。どうしたらいいのか迷っている。
戸惑いが、湧き上がってきて目から言葉の代わりに溢れ出す。ぽたりと一粒の涙がこぼれ落ちてしまうと、春一はためらいながらもあたしの頭をポンポンと撫でてくれた。
「よしっ、じゃあ行くか」
あたしを元気付けようと、春一は気合いを入れるように出口付近を指差しながら笑った。そうだよ、千冬に会うことは悲しいことじゃない。辛いことでもない。だから、悩むことなんてない。あたしが、千冬に会いたいんだから。
だから、笑顔でいなくちゃ。
春一に微笑んで、あたしは頷いた。
ここから見上げる空は、あまりに狭くて、近いようで遠くて、いつも見ている広い広い吸い込まれそうな青じゃなくて。けれど、千冬は今、この空を見ている。
あたしは今、千冬に一番近い場所にいる。なんだかそう思うと、嬉しかったから。
あたし、千冬に会いに行くよ。
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