星と花

佐々森りろ

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第十ニ章 絆

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  千冬との夏休みも、今日で最後になる。
 昨日の曇り空からの延長で、朝からどんよりと今にも雨が落ちて来そうな厚い雲で空は覆われていた。しかし、千冬は相変わらず元気だ。

「あーぁ、最後に雨かぁ。けどまぁ、ゆっくり出来るからいっかぁ」

 両手を高くあげて千冬は伸びると、昨日から片時も手放さないでいるオルゴールを聴いていた。

「いい音だよな」

 音につられて、俺は千冬に向かい合うように座った。
 扇風機の風が行ったり来たりして、湿度のある空気は汗が滲む肌に心地いい。

「春一くんが恋する女の子ってさ、小説に出てくるような人なの?」

 目線はオルゴールを見つめたまま千冬が聞くから、「そうかも」と頷いた。
 オルゴールの音色がゆっくりになっていくのとは反対に、廊下を走る忙しない足音が聞こえてきた。徐々に近づいてきて、なずながリビングに入ってきた。

「見て見て見て~!!」

 ジャーンっと効果音でも出そうな勢いで、一枚の写真を見せてくる。
 それがなんなのかはすぐに察しがついた。

「おっ! もう出来たの?」
「そーなのっ。光夜くんてば仕事早いでしょっ!」

 まるで自分の手柄のように、昨日光夜が撮っていた写真を広げて得意げに言うなずなに、千冬と一緒に笑ってしまう。

「なずなちゃん、あたしにも見せて」

 数枚の写真をテーブルに並べているから、皆でテーブルを囲うようにして見た。

「あ、何だよこれっ。俺砂まみれじゃん!」
「あ……あたしもだ……」
「光夜くんカメラ置きに行くって言っといて、密かにあたし達の写真を撮ってたみたい」
「まじぃ? 光夜やらしぃなぁ」
「悪かったな」

 いないと思っていたからつい言ってしまったけど、戻って来ていた光夜にすかさず突っ込まれるから、思い切り聞かれていたことに苦笑いをする。かと言って、本気で怒るような奴じゃないのは知っているから、安心する。

「でも、ほんと楽しそうだよね」
「うん、いい写真」

 しばらく見入っていると、光夜がなずなの隣に座って一枚の写真を手渡した。

「これ、かなりいい出来だよ」
「……え?」

 写真を受け取ったなずなの反応が気になって、そっと手元の写真を覗き見る。夕焼けの坂道でスキップするなずなの姿が写し出されていて、全体の構図の美しさに瞬時に心を奪われた。

「……綺麗……」
「だろう?」
「えー、何何っ?」

 千冬が乗り出して写真を見ようとするから、なずなは千冬に写真を差し出した。さっきよりも近くではっきりと写真の中に映るなずなの姿が俺にも見えた。後ろ姿なのに、弾むように楽しそうな感じが伝わってくる。

「わぁ。ほんとだ! なずなちゃん綺麗!」
「えっ? あたし!? 違うよ、背景でしょう」
「さすが光夜だなっ。こんなんでもまともに写せるなんて」

 狼狽えているなずなが嬉しそうに照れているから、つい口をついて出てしまう。

「なによぉ、こんなんでもって」

 ふくれて怒るなずながいつも通りで嬉しくなる。なずなの扱いは俺が一番よく知っているって言っても、過言じゃないと思っていたんだけど。ここへきてから、ますますそれが俺の癒しになってくれているのは確かだ。

「嬉しいなー! あたし、光夜くんの写真好き。なんか心が癒されると言うか、和むと言うか」
「そう言ってもらえると嬉しいな。ありがとう」

 写真に見とれてなずなが光夜のことを褒めるから、光夜は照れている。なんだか、二人の距離が近づいているように感じて、少し嫉妬とは違うんだけど、そんな気持ちに似た感情がチラついた。
 それからすぐに、光夜は午後から仕事が入っているようで、名残惜しそうにしながらも、小雨の降る中を帰って行った。
 リビングに戻って座り、落ち着こうとした俺の目に、無造作にマットレスの上に置かれた光夜のスマホが目に入った。

 「あいつ。なんでスマホを忘れていくんだよ」

 すぐに立ち上がってスマホを手に取ると、玄関を目指す。

「光夜スマホ忘れていったから俺届けてくるわ。走ればまだ間に合うだろ?」

 スニーカーに足を滑らせ素早く履くと、まだ光夜を見送っていた千冬となずなに声をかけて傘を持ち、外に走り出す。
 すぐに坂の途中で光夜の後ろ姿を見つけて、呼び止めた。

「光夜――!!」

 紺色の傘が動きを止めて、光夜は振り向いた。
 雨は小雨から本降りに変わっていた。バシャバシャとスニーカーが水溜まりに浸水してしまうのも気にせず走る。なんでこんなに必死なんだろうって、一瞬冷静になってみると、傘を差してきたはずなのに俺はずぶ濡れだった。

「どーした? かなり濡れてるぞ? 春一」
「どーした? じゃねーっての! スマホっ。忘れてんぞ」

 あっけに取られている表情の光夜に、スマホを差し出す。傘と傘の間を通った腕に雨粒が落ちて跳ねた。

「あ……わりぃ」
「ったく」
「ありがとな、わざわざ。雨も酷いな、これ今日一日中かな?」

 スマホを受け取り、傘を少しだけ傾けて空を見上げた光夜はポツリと言った。

「風邪引くなよ、春一」

 クスクスと笑いながらも優しい光夜の一言。そして、どうしても光夜には言っておきたいことがあった。

「なぁ、光夜」
「ん?」
「お前、千冬の側離れんなよ?」

 光夜は一瞬驚いた表情をして、すぐにいつもの優しい顔に戻る。

「側にはいるよ。俺はいたいから。けど……」

 言いかけて、光夜は罰が悪そうに、わざと苦笑いをして黙ってしまう。

「っなんだよ、そこで止めんなよ」

 きっと、千冬は俺たちが思っている以上に頑張っている。
 不安だったり、恐怖だったり、焦りだったり。落ち着いて見えてはいるけれど、ふとした瞬間に自分に言い聞かせるように拳を握りしめたり、わざと明るく声を上げてみたり。
 そうやって気持ちをコントロールしているんじゃないかと、見ていて思ったんだ。
 俺やなずなと再会したことは、本当に喜んでくれているはずだけど、きっと、この先の不安も同時に感じているのかもしれない。ずっと千冬のそばで見守っていた光夜なら、きっとそんな千冬の不安にはとっくに気がついているはずだ。

「……千冬が側にいてほしいって思ってるのは、俺じゃない」
「え……?」
「頼むよ、春一。たまに千冬の見舞いに来てくれないか?」

 思っていた言葉とは違ったものが光夜の口から発せられるから、意味が分からない。

「……なんで、俺?」
「少しの間、あいつが元気なうちだけでも、春一が側にいれば、きっと喜ぶと思うんだよ」
「……いや……だから、なんで、俺?」

 千冬がそばにいて欲しいと思っているのは、光夜だろ?
 戸惑う俺を気にせず、光夜は腕時計で時間を確認すると、「じゃあ、またな」と言って背を向けた。

 “春一が側にいれば、きっと喜ぶと思うんだよ”

「……どーいう意味だよ」

 小さくなっていく光夜の後ろ姿に呟く。ゆっくり来た道を引き返しながら、跳ね返ってくる雨水に膝まで濡れようとも、気にならないくらいに考え込んでいた。

 千冬が言っていた。
 花火を買いにいく道中で、初めてしっかり千冬と話せた気がした。

『大丈夫か? 歩くの早くない?』

 千冬の病状ははっきり言ってよく分からない。だけど、どうしたって光夜から聞いた言葉が頭の中に残っているから、気を遣いながら歩くペースを考える。

『だーいじょーぶ! 春一くん優しいね。やっぱり思った通りの人だ』
『え?』

 元気をアピールするように笑う千冬の言葉に不思議に思う。
 なずなとはしょっちゅう兄弟みたいにして遊んでいたけど、基本人見知りでノートと鉛筆が友達だった俺には、千冬は元気いっぱいな女の子で近寄りがたかった。誰にでも容易く声をかけるし、明るい。あの頃の俺とは正反対だった。今でこそ少し大人になって、社交性というものを身に付けたから、ある程度の人見知りも引っ込み思案も解消されたけれど。

『あたしね、なずなちゃんに会いたかったのはもちろんなんだけど、実はハルイチに会えるのも、楽しみだったんだ!』

 キラキラと瞳を輝かせて、千冬は俺を見つめてくる。「俺」を、と言うよりは、俺を通して俺の中にある「ハルイチ」を見ている。

『あたし、ハルイチの恋愛の世界観が大好き。こんな恋愛してみたいなって、ずっと思ってた。小説を読む度、何度も……』

 少し諦めかけているように感じた千冬の横顔に、俺は空を見上げた。沈みかけの夕陽が眩しくて、眉を潜めた。ハルイチの世界観は、誰にだって作り出せる。俺がすごいわけじゃない。きっと、ハルイチの小説を読んで、共感したり、千冬みたいに憧れてくれたり、一人一人が感じた感想で、物語は完成している。もちろん千冬の人生だって、もうすでに一つの物語なんだ。だから──

『……出来るよ』
『……え?』

 そんな悲しい様な、辛い様な顔をしないでほしい。
 諦めたりしないで欲しい。千冬は、あの頃から何も変わらない。素直で笑顔の似合う女の子だ。無理に笑うことだってあるだろう。悲しくても泣き顔なんて見せたりしたくないんだろう。千冬が素直になれる場所は、きっと気がついていないだけで、すぐ近くにあるんだよ。もしかしたら、気がついているのに、我慢しているのかもしれない。

『出来るよ。ハルイチの描くような恋愛。千冬にも、出来るよ』

 一瞬、俺の方が泣きそうになった。
 今、目の前の千冬は残り少ない命を、生きている。

 そんな千冬に、こんな曖昧な事を言ってしまっていいのか、正直戸惑った。
 もしかしたら、「そんなのできるわけない」って、泣かれたかもしれない。呆れられて終わりだったかもしれない。
 だけど、次の瞬間。千冬は本当に強いんだなって感じて、やっぱり、俺は泣きそうになった。

『やった! 嬉しいっ! あたしの目標なのっ。ハルイチみたいな恋愛。頑張るねっ!』

 何の迷いも、戸惑いも見せずにはしゃぐ千冬が、すげぇって思った。
 だから、俺は千冬を応援する。未来がどうとか、関係ない。
 だって、千冬は今、ここにいるんだから。


✳︎
 「ただいま」と言って戻ってきた俺は、気がつけば上から下までずぶ濡れだった。傘さしてたよな? と、記憶もなんだか曖昧だ。

「えー! なんでそんなに濡れてるの!? 早く着替えて!」

 俺の姿を見るなり、なずなが慌て出す。部屋から持って来てくれたのは、なずなのバスタオル。すっかりこの柔軟剤の匂いに俺も慣れてしまっていた。安心して一旦玄関の段差に座り込んで頭を拭いた。

「シャワー浴びてあったまっておいでよ」
「うん、ありが……っくしょん!!」

 ブルっと体が震えて、何度もくしゃみを連発する俺を見て、なずなが「千冬! あたしの部屋に避難してて! 風邪なんて引いたら大変だから!」と、騒ぎ出した。最もだと、俺も立ち上がってもう一度豪快にくしゃみをしてから急いそとバスルームへと向かった。

「見て見てー! 千冬、虹!」
「わぁ!!」

 シャワーを終えて廊下に出ると、なずなと千冬の声がベランダから聞こえてきた。タオルでまだ湿っている髪を拭きながら俺も外に出てみた。目の前の空が明るくなっていて、青と灰の混じる空には端から端までくっきりと色鮮やかな虹が架かっている。
 見惚れる二人の姿にホッとする。十年も会えなかったとは思えないくらいに近い距離は、なずなが千冬のことをずっと思っていたからだろうと思うと、一途ななずなには驚かされる。人との関係も、物も、なずなは大切にする子だったのを、改めて感じている。
両親のことも、円満だとはいえ、きっと離婚した本人たちよりも別れという現実に傷ついたのかもしれない。
 あげはさんは簡単に言うけど、俺がそのことを慰めてやれるかは、また別の話だ。きっと、なずなは俺に慰めてほしいなんて、思っていないと思う。

 すっかり晴れた道を、青さんの車に乗り込み千冬を駅まで送る。千冬の両親が迎えにきてくれていて、千冬も両親も安心したように帰って行った。

 千冬との、長いようで短い夏が終わった。
 東京の病院にもお見舞いに行く約束をした。千冬も体調がいいと思った時はまたここに会いに来たいと言っていた。
 出来ることなら、もう一度。
 きっとみんなが思った。

 なんだか静かになってしまったリビング。窓の外に朱色を見つけて、ベランダに出てみると、なずなも並んで柵に寄りかかった。

「なずな、千冬の好きな人知ってる?」
「えっ?」

 俺の突然の発言に驚きつつも、なずなは視線を夕陽に戻して頷く。

「知ってる……」
「俺さ、嘘はつきたくないんだ。だけど、千冬を励ましたい。もし、俺が役にたつのなら」
「春一……?」
「今月末、東京に帰るんだ。新しい小説を出さなきゃいけなくて。けど、今のままじゃ全然ダメ。書けそうにない」

  もう、もしかしたら一生書けなくなってしまうのかもしれない。
 そう思うと辛くて苦しい。俺が書けなくなっても、千冬は俺の新作を待ってくれている。そして……ハルイチのような世界観の恋愛がしたいって言ってくれている。
 泣きそうに湧き上がってくる涙を飲み込んで笑顔に変える。

「だから、東京帰ったら、千冬を元気にする」

 小さい頃からそうやって、泣くのを我慢することなんて平気だった。後で隠れてこっそり泣けばいい。そう思っていたのに、気がつけばなずながいつもそばにいてくれて、泣く暇なんてなくなった。俺はあの頃を楽しく過ごせたし、今だってここに居れることが嬉しいんだ。なずながそうして俺の居場所を作ってくれたように、俺も千冬の居場所を教えてあげたい。

「千冬が言ってたんだ。ハルイチの小説みたいな恋愛がしたいって」
「え?」
「千冬の恋の相手にはなれないけど、俺は側に居ることは出来るから。光夜と一緒に、千冬を支えてやりたい」

 一瞬、なずなが不満そうな表情をするから、きっと俺が千冬の気持ちに気がついていることはわかってくれたと思う。

「まぁ、そーゆうことだから、あと二週間ほど、宜しくな」

 ポンっと、なずなのふわふわの髪を弾むように撫でる。
 なずなに触れて俺が安心をもらっている。なずなの存在自体が、俺にはずっと必要だったのかもしれない。また会えてよかった。本当に。

「なずな、俺とお前は最高の友達だよなっ」
「えっ? ……そりゃそうでしょ! 春一は男友達ナンバーワン!」

 人差し指をピンッと立てて言うなずなの笑顔は世界一心強いし、可愛いと思う。これ以上感情が溢れてしまわないように、部屋に戻った。

 千冬が帰っていったあの日、なずなとの絆がより深まった様な気がした。

 あと二週間。期限なんて本当は何もないんだ。だけど、自分に何か縛りをつけなければ、この家も人も、本当に居心地がいいから、ずっと、永遠にここにいたくなってしまうから、だから、二週間。
 そうしたらまた、現実に向き合うために帰ろうと、決めた。

                    

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