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第3章謎の少女とダンジョン革命
105・冥府
しおりを挟む「じゃあ、とりあえずアンタ達を冥府に送り届けるよ」
アルシノエがそう言った時だった。
「「「うわぁぁー!!」」」
「「「きゃああああー!!」」」
何百、何千という、とてつもない大絶叫が聞こえてきた。
「おや、もう休憩時間は終わりかい。地獄が始まるよ」
そうアルシノエに言われ、悲鳴が聞こえてきた場所を見て、
見たことを激しく後悔した。
何百、何千という多くの人が炎に焼かれていた。
人々は炎から逃げようとするが、結局逃げられず、炎に焼かれる。
私とトッドは呆然とその光景を見た。
「おえぇぇ」
トッドが地面に吐くが無理もない。
こんな光景、出来れば私も見たくなかった。
「地獄って本当にあるんですね…」
「あるさ、無かったら地上は悪人ばかりになってしまうからね。
自分がまいた種は自分が刈り取らなくちゃいけないのさ」
私の言葉にアルシノエはそう答える。
「さぁこんなとこに突っ立ってないで、
さっさと行くよ」
そう言うとアルシノエは私とトッドに触れ、
気がつけば周囲の景色が変わっていた。
空の色はどんよりとした曇り空で、
大きな神殿風の建物が建っていた。
行ったことはないが、ギリシャのパルテノン神殿に似てる。
神殿には半分透けた人達が列をなしていた。
「ここは?」
「ここは冥府、地獄の上層にある死者が集まる場所さ。
目の前にある建物は七王が死者を裁く建物だよ」
「あの半透明な人達は誰ですか?」
「あれは死者だよ。七王の裁きを受けるために集まっているんだ。」
そうアルシノエは説明してくれた。
しかしここが冥府か。こういう状況だというのに私はわくわくしていた。
だって死なないと行けない場所に来てるんだよ。
わくわくするよ。それに地上には送ってくれるといった。
ならば毒を食らわば皿まで、観光してみようじゃないか。
「死者を裁くところを見てもいいですか?」
「いいよ。じゃあ行こう」
そうしてアルシノエを後をついていき、建物の中に入る。
中はかなり広かった。
建物の奥に王座が置かれ、そこに一人の女が座っていた。
年は20代ぐらいだろうか、肩まで伸ばされた紫色の髪に紫の瞳。
頭には天使の輪のような輪っかがあるが色は黒い
背中にはまるで堕天使のような黒い翼があった。
容姿はもう道行く人が絶対振り返りそうな美人だ。
かなりスタイルが良く、胸はかなりでかい。
服は扇状的とも言える露出の高い服を着ていた。
男なら目のやり場に困ってしまうほどだろう。
「あれが堕天神カミラ。七王の一人だよ」
そう言うとアルシノエが説明してくれた。
七王というのは日本でいう閻魔大王のような存在らしい。
死者の生前の行いによって地獄行きか再転生か決めるらしい。
「あら、あなた、かなりの悪行を積んできたわね」
そうカミラが死者の前で言った。
その死者はでっぷりと太っていた。
着ている服の豪華さから多分貴族だろう。
「権力を笠に着て、多くの人を苦しめたわね。
多くの若い娘に手を出して、飽きるとその娘を殺した。
被害者のご家族は、あなたが貴族だから、
泣き寝入りするしかなかったみたいだけど、ここでは違う。
他の七王の裁きを受けるまでもない。
あなたは地獄行きよ。連れていきなさい」
「は、離せ、わしは貴族だぞ!!」
控えていた鎧を着た男達が太った男をどこかに連れていく。
カミラは冷たい目でそれを見ていた。
「七王は人の頭の中が覗けるからね。
どんな弁解も通用しないのさ」
そうアルシノエが言った。
「じゃあ、次は…あら、あなたはセツナちゃんじゃないの」
その時、私に気がついたのか、カミラがこちらを見る。
「どうして地上に居るあなたがここに居るわけ?」
「あの『ゲート』に落ちてしまって…」
「あら、そう、でも運が良かったわね。
普通なら死んでいるところよ」
確かにアルシノエの体の上に落ちて運が良かったかもしれない。
普通なら魔物が多く居るから、死んでいたところだろう。
「ところでどうして私のことを知っているんですか?」
「あなたは冥府では有名人よ」
そう言うとカミラは何もない所から新聞を取り出す。
新聞の見出しにはセツナ新聞と書かれている。
何か悪い予感がして新聞を開くと、そこにはこう書かれていた。
【セツナ新聞】
今日のセツナはレストランで朝食を食べました。
その後仲間と一緒に魔物退治をしました。
新聞には事細かく私がその日何をしたのか書かれていた。
うぉい! 何してくれてんだあの神様!!
これを作ったのは絶対に地獄神に違いない。
地獄神は私のことを監視してるから、
その片手間でこれを作ったに違いない。
「おい、何が書かれてあるんだ?」
「うおらぁ!!」
トッドがそう聞いてきたが、私は新聞をビリビリに破く。
「ちょっとまだ読んでないのに…!」
そうカミラが残念そうに言ったが、知ったことか。
こんな物は無いほうがいい。
「はぁはぁ、地獄神め、後で覚えていろよ」
地獄神と聞いてトッドが驚いた顔をする。
絶対に今度会う時に問い詰めてやる。
そう私は心に決めたのだった。
「まぁそんなことより、セツナ達を地上に送り届けて欲しいんだ」
そんなことよりじゃねぇよ。
アルシノエの言葉にそう言いたくなったが我慢した。
「あら、それなら地上に送り届けるわ。
早速ベアトリクスちゃんに聞いてみるわ」
「あのさ、ちょっといいか?」
その時トッドが言った。
「俺、地獄に落ちないよな?」
「うーん、見たところ、地獄に落ちる程ではないけど、
かなりカルマが溜まっているのは確かね。
でも今から本気で善行を積めば何とかなると思うわ」
「そうか…」
「まぁ私が言うのもなんだけど、
悪いことをすれば、必ず自分に跳ね返ってくるものよ。
だから悪いことはするものじゃないわ」
カミラの言葉にトッドは苦虫を噛み潰した顔をした。
思い当たるフシはあるらしい。
「ああ、ここに居たのですか、セツナ様」
その時、ベアトリクスさんが唐突に現れた。
「あ、母さん」
アルシノエの言葉に私もトッドも仰天する。
どう見てもベアトリクスさんは、
こんな大きな子供が居るようには見えないからだ。
「ああ、神は不老不死だから、見かけで判断するのは良くないよ。
母さんはもう一万年以上は生きてるババアだから」
「誰がババアですか」
アルシノエの頭をベアトリクスさんがはたく。
「まぁそんなことより、せっかく来たんだから、
セツナ達を地上に返してくれよ」
「分かりました。では二人共そこに立ってください」
そう言われ、二人で指定された場所に立つと、黒い光が体を包み、
気がつくと元居た場所に戻ってきていた。
「ここは…?」
「どうやら帰ってきたみたいですね」
「セツナ、大丈夫だったか!?」
ガイが血相変えてそう言った。
「あ、大丈夫です」
「心配したんだぞ。無事でよかった」
ずいぶんと心配をかけてしまったようだ。
反省しないとな。
「帰ってこれた…」
そう言うとトッドは地面に座り込んだ。
「もう帰ってこれないのかと思った…」
トッドの顔には疲労がにじみ出ていた。
まぁ無理もない。地獄と冥府を数時間のうちに見たんだから。
私はトッドが呆然と座り込んでいる間に開いている『ゲート』を閉じる。
「それより七王に名前を知られているなんてお前何者なんだよ?」
「え?」
「地獄に来たのにあんまり驚いてなかったじゃないかよ」
いや驚いてはいたよ。ただ色々あって慣れっこになっているだけだ。
「それに地獄神に力を与えられたって言ってたけど」
あー、これ、どうごまかそう。
こんなことならあの時、
知らないふりをしておいたら良かったかもしれないが、
あの時はそうするって思いつかなかったからな。
「うーん、誰にも言わないならいいですよ」
「分かった。誰にも言わない」
私はトッドにヒョウム国で皇帝にカルマ押しつけられ、
それでカルマを消すために生き返ったことを簡単に説明した。
「つまりそれで地獄神に力を与えられて聖眼持ちになったと」
「そうです」
「おみそれしました!!」
そう言うとトッドは私に向かって土下座する。
この国では頭を下げるのは重いことだ。
ましてや土下座するなんてこと普通はしない。
あるとしたらよほどの過失がある場合だ。
「そんな事情があるとは知りませんでした!
俺のことぶん殴っていいです!!」
「いや殴るとカルマが…」
「俺、地獄を見て思ったッス。
もう絶対に悪いことはしないって、
そしてアネゴ、あんたみたいな人についていくって!
俺を弟子にしてください!!」
「は、はぁ?」
何この変わりよう。さっきまでの生意気さはどこに言ったの?
あまりの展開に私は呆然と立ち尽くす。
「雑用でも何でもやります!
俺のことを弟子にしてください!!」
「あの、ですね。そんなこといきなり言われても困りますよ。
それに私は弟子なんて取れる器じゃありません」
「なら舎弟にしてください。
俺は『金色の黎明』の傘下に入ります!」
えっと、1つのチームに複数のチームが傘下に入ることはよくあることだ。
そうすれば傘下のチームの1割のお金が上のチームに入るので、
自分は働かずに稼いでいる冒険者も居るぐらいだ。
私のチームの傘下にトッドが加われば儲かることは確かだが、
…いきなりそんなことを言われても困る。
「困りますよ。そんなこと言われても」
「お願いッス。一生のお願いッス!!
俺を『金色の黎明』の傘下に入れてくださいッス!!」
トッドは額をこすらんばかりに土下座し、
私は途方に暮れるしかなかったのだった。
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