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第3章謎の少女とダンジョン革命
140・また変なものを拾ってしまった
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「助かりませんでしたね……」
私は布を被せられ動かなくなった死体を見てそう言った。
警察署で怪我をした人をフォルトゥーナと治療したが、
助からなかった人もいた。
死んだ人は全部で5人。
警察署の関係者が3人、伯爵夫人達の護衛の兵士が2人だった。
「もっと早くに私が気が付いていたら…」
「いや、それは私のセリフだ」
伯爵夫人が疲れきった顔でそう言った。
「私はてっきり奴らの狙いはお前らだと思っていた。
そのために怪しい場所が無いか徹底的に町中を調べたのに…。
まさか旦那様を狙うとは…完全に読みが外れた」
「私もです」
「もしかしたら領主邸の警備が厳しいから、
別のターゲットを狙った方がいいと思ったのかもしれんな。
獣人達もお前らの警備に振り分けていたから居なかったし、
まさに絶好のチャンスだったわけだ。
おかげでこのザマだ。自分が嫌になる…」
「そんな…落ち込まないでください。
もっと私が早く気づいていればこんなことは無かったのに」
「2人ともお前らは神じゃないんだぞ。
仕方の無いことだったんだよ」
ガイが励ますようにそう言った。
それはそうだが、もっと何か出来なかっただろうか。
「とりあえず被害者の遺族には事情を説明して、
きちんと謝りたいと思う…」
「そんな伯爵夫人のせいじゃ…」
多分私がどれだけ言葉を尽くしても、
伯爵夫人の後悔は残り続けるだろうことが予想出来た。
自分に厳しい人だからきっとそうなるだろう。
「セツナ…捕まえたあの男達だけど、牢屋に入れておいたわよ」
「エドナ、ご苦労。
後でそいつらを拷問するからあまり痛めつけるなよ」
やっぱりあの狂信者の男は悲惨な目に遭うのか。
正直自業自得だと思うので同情は出来ない。
「少年の方はどうなるんですか?」
「まぁ操られていたとはいえ、人を殺したことは事実だ。
死刑は免れんだろうな」
「あのー会いに行ってもいいですか」
「別にいいが、何をする気だ?」
「彼がかけられた魔法、私ならきっと解除出来るからです」
「え?」
伯爵夫人がぽかんとした顔で私を見た。
◆
私は警察署の地下牢に来ていた。
そこにあの少年は居た。生気のない目で天井を見ていた。
「これからあなたにかかった魔法を解きます。
《解除》」
魔法を唱えると少年の目に生気が戻った。
呆然としたように少年は自分の両手を見る。
「良かった。戻せて」
「何で解除した!?」
少年がそう怒鳴った。
「俺は生きていちゃいけない人間だ!!
人を山のように殺した!!
そんな俺が今更自由になったって意味が無い!!
俺は死なないとダメなんだ!!」
血を吐くような言葉だった。
そうだ。彼は家族を殺され、
そしてずっと操られて人を殺してきたのだ。
今更自由になったところで、その事実が消えるわけじゃない。
「死んでも地獄に行くだけですよ」
「それも当然の報いだ!!
俺は、俺は死んで償わないと…」
「バカなこと言わないでください!!
私はあなたに生きていて欲しいから、
助けたんですよ!!
関わったからにはあなたには死なないで欲しいです。
死にたいなんて言わないでください!」
「お前に何が分かるんだよ!!
俺は、俺は…うわぁぁあああー!!」
少年は大粒の涙を流し、
気が付いたら私は彼を抱きしめて一緒に泣いていた。
胸の中にヒョウム国のことが思い出される。
私はきっと彼と同じだ。
皇帝の操り人形だった。
そして多くの人を不幸にしてきた。
でもむごいことに私は生きなければならない。
生きてカルマを消さないと地獄に落ちる。
だから死ぬことが出来ない…。
ヒョウム国のことを思うだけで、
苦しくて仕方が無いのに。
◆
「で、どうするつもりだ?」
ようく私達が落ち着くと伯爵夫人がそう言った。
「その少年は死刑だ。これは変わらない」
「……」
伯爵夫人の言葉に少年は無言だった。
「何とかならないんですか?」
「ダメだ。操られていた点は同情できるがな」
「そうだ。彼を解放すれば、
咎の輪廻教の情報を知っているだけ教えるというのはどうですか?」
「情報提供することを条件に釈放か。いいだろう。認める」
「ね、あなたも良いですよね」
「あ、ああ、でも俺、本部の場所知らないんだ…」
そう少年は言った。
「いつも目隠しをされて本部に行っていたから、
本部がどこにあるのか知らない」
「え、操られていたのに目隠しですか?」
「万が一傀儡魔法が解けた時のためだって言っていた。
それに組織の全貌だっていちいち知らされていたわけじゃないから、
釈放されるだけの情報は持って居ないんだ…」
「なるほどだったら…」
「奴らの本拠地の場所なら私が知ってます 」
「「は?」」
私の言葉に少年も伯爵夫人も目を丸くする。
「えっとエリアマップといって、地図を表示する魔法が私には使えます。
それで分かったんですよ」
「なるほどギルドマスターが、
お前は必要な素材が必ず見つけられると言っていたが、
そのおかげとはな。しかも政府でも、
なかなか見つけられなかった奴らの本拠地が分かるとはな。
そうだな。奴らの本拠地の場所は政府の人間なら、
喉から手が出るほど知りたい情報だ。
いいだろう、その少年を解放しよう。
だがお前の魔法で分かったということは伏せておく。
希少価値が高まるからな。
捕まえたその少年が白状したということにしよう」
賢い人は何も言わなくても察してくれるから助かるな。
「で、その少年はどうするつもりだ?」
「あー、それなら私の従者にするのはどうでしょう?」
「は!? 従者?
あの付き従う者と書く、あの従者のことか!?」
「はい、そうです」
「お前が変人で、お人好しで、考え無しに動くのは知っていたが、
いくらなんでもこれは止めておくべきだ…!」
「もう決めましたから、あなたも良いですよね」
「え? ああ、あんたがそう言うなら…」
少年も同意したし、これでいいだろう。
「頭が痛いな…。
お前の今までの奇行の中で一番おかしい。
自分が殺されるとは思わないのか?」
「思わないです。大丈夫な予感がするので」
「はぁあ…心配だ。
お前は変な行動をばかりする。
これに付き合う仲間の気がしれん…」
「それで咎の輪廻教はどうなるんですか?」
「それは私にまかせてくれ、
咎の輪廻教のことは政府が解決するべき問題だ。
後は警察と軍隊に任せてくれ。
すぐに本部を叩き潰すだろう。
私の旦那様に手を出したんだ…。
それなりの報いは受けてもらうッ」
「ヒッ」
普段冷静な人程怒らせると怖いと聞くが、本当だ…。
その雰囲気は無関係な私が見ても怖かった。
漫画だったらゴゴゴと擬音が入っているだろう。
それを見て、
伯爵夫人が私が敵に回したくない人ランキングの2位に駆け上がった。
1位は地獄神だが、この人だけは絶対に怒らせないようにしよう。
いや本当にマジで。
◆
「は…従者にする?」
少年を従者にすると言うと、
仲間のみんなはフォルトゥーナ以外唖然とした
「あなたの行動の中で一番のキテレツだわ」
そうエドナが言った。
うん、それは伯爵夫人にも言われた。
「まぁ私はセツナが決めたのなら反対はしないのだ」
「幸い部屋は余ってますし、彼が一緒に暮らすのは問題ないでしょう」
イオとフォルトゥーナがそう言った。
「俺といい、フォルトゥーナとイオといい、
お前は変なものを拾ってくる達人だな」
ガイそれって褒めてるのか、けなしているのかどっちなの?
まぁそういうことで我が家に居候が一人増えたのだった。
◆
「あれ…」
寝たと思ったら久しぶりの真っ暗闇空間だ。
ここに来たということは…。
「やぁ久しぶり」
地獄神が王座に腰掛けていた。
相変わらず美少年だ。目の保養になる。
「僕に聞きたいことがあったんでしょう?」
「あの咎の輪廻教ってなんで地獄神を崇拝しているんでしょう?」
「咎の輪廻教というのは元々神殿の幹部が作っていてね。
だが神殿のやり方に疑問を持ち、僕に目をつけた。
天上界に刃向かったことのある僕を崇拝すれば、
神殿に対する反逆になるだろうと思ったんだろうね」
「彼らがあなたを崇拝するのは、
神殿へのアンチテーゼだったわけですか」
「そう聖眼持ちを敵視するのも、
聖眼持ちばかりを崇め、特別視する神殿に対する嫉妬だよ。
設立者は聖眼持ちに異常なまでに嫉妬していた。
自分が聖眼持ちで無かったことが嫌だったんだろうね」
誰かを強く批判するのはその人に嫉妬しているからとはよく聞くが、
個人的な嫉妬のためにテロ組織を作るなんて、
狂っているとしか思えない。
「これからも咎の輪廻教は私の前に現れると思いますが、
どうしたらいいですか?」
「容赦なく殺していいよ。
彼らが相手なら特別に人殺しを許可しよう」
吐き捨てるように地獄神はそう言った。
「え? でも彼らはあなたを崇拝しているんですよ」
「君はさ。君のためにと人殺しをする人間を喜べる?
僕は絶対に無理。奴らが行くのは楽園ではなくて、地獄だよ。
僕を崇拝していようがそんなことは関係ない。
むしろそんなことで特別扱いする気なんて僕にはサラサラ無い。
人殺しを良いことだと思っている狂人の戯言なんてどうでもいい。
むしろ見るのが不愉快だから、死滅して欲しいぐらいだよ」
うわぁ、自分が崇拝している神からこんなことを思われているなんて、
信者可哀想。
「可哀想ってね。当然の反応だよ。
あなたのために人を殺します。
人を殺すことは良いことです。
テロで町を爆破しました。
なーんて言われたら普通喜ぶよりドン引きだよ」
まぁ確かにそうだな。
私が同じ立場でも引くだろう。
「だから容赦なく、情け無用で、手加減無く、
一人残らず滅ぼしてくれると嬉しいな」
「いやいやいやいや、人殺しは私は絶対嫌です」
「そうか、残念だな。
まぁ君が本部の場所を、
マティルダ・フィールディング伯爵夫人に教えたから良かったよ。
これで本部は壊滅になる。
地上から咎の輪廻教が無くなる日も遠くない。
ああ、嬉しいな」
心底そう思っているのか地獄神は晴れやかな笑顔でそう言った。
うん、崇拝対象からこう思われているんなんて、
少し気の毒になってきたぞ。
「だってさぁ、彼らが人を殺す度、冥府には人があふれかえるんだよ。
ただでさえ仕事が増えるのに、うっとうしいよ。全く」
やはり自分を崇拝していても全く特別扱いしないんだな。
その点は公平だと思ったが、
私の敵に回したくない人ランキングの1位は、
やっぱり地獄神であることは変わりないのだった。
私は布を被せられ動かなくなった死体を見てそう言った。
警察署で怪我をした人をフォルトゥーナと治療したが、
助からなかった人もいた。
死んだ人は全部で5人。
警察署の関係者が3人、伯爵夫人達の護衛の兵士が2人だった。
「もっと早くに私が気が付いていたら…」
「いや、それは私のセリフだ」
伯爵夫人が疲れきった顔でそう言った。
「私はてっきり奴らの狙いはお前らだと思っていた。
そのために怪しい場所が無いか徹底的に町中を調べたのに…。
まさか旦那様を狙うとは…完全に読みが外れた」
「私もです」
「もしかしたら領主邸の警備が厳しいから、
別のターゲットを狙った方がいいと思ったのかもしれんな。
獣人達もお前らの警備に振り分けていたから居なかったし、
まさに絶好のチャンスだったわけだ。
おかげでこのザマだ。自分が嫌になる…」
「そんな…落ち込まないでください。
もっと私が早く気づいていればこんなことは無かったのに」
「2人ともお前らは神じゃないんだぞ。
仕方の無いことだったんだよ」
ガイが励ますようにそう言った。
それはそうだが、もっと何か出来なかっただろうか。
「とりあえず被害者の遺族には事情を説明して、
きちんと謝りたいと思う…」
「そんな伯爵夫人のせいじゃ…」
多分私がどれだけ言葉を尽くしても、
伯爵夫人の後悔は残り続けるだろうことが予想出来た。
自分に厳しい人だからきっとそうなるだろう。
「セツナ…捕まえたあの男達だけど、牢屋に入れておいたわよ」
「エドナ、ご苦労。
後でそいつらを拷問するからあまり痛めつけるなよ」
やっぱりあの狂信者の男は悲惨な目に遭うのか。
正直自業自得だと思うので同情は出来ない。
「少年の方はどうなるんですか?」
「まぁ操られていたとはいえ、人を殺したことは事実だ。
死刑は免れんだろうな」
「あのー会いに行ってもいいですか」
「別にいいが、何をする気だ?」
「彼がかけられた魔法、私ならきっと解除出来るからです」
「え?」
伯爵夫人がぽかんとした顔で私を見た。
◆
私は警察署の地下牢に来ていた。
そこにあの少年は居た。生気のない目で天井を見ていた。
「これからあなたにかかった魔法を解きます。
《解除》」
魔法を唱えると少年の目に生気が戻った。
呆然としたように少年は自分の両手を見る。
「良かった。戻せて」
「何で解除した!?」
少年がそう怒鳴った。
「俺は生きていちゃいけない人間だ!!
人を山のように殺した!!
そんな俺が今更自由になったって意味が無い!!
俺は死なないとダメなんだ!!」
血を吐くような言葉だった。
そうだ。彼は家族を殺され、
そしてずっと操られて人を殺してきたのだ。
今更自由になったところで、その事実が消えるわけじゃない。
「死んでも地獄に行くだけですよ」
「それも当然の報いだ!!
俺は、俺は死んで償わないと…」
「バカなこと言わないでください!!
私はあなたに生きていて欲しいから、
助けたんですよ!!
関わったからにはあなたには死なないで欲しいです。
死にたいなんて言わないでください!」
「お前に何が分かるんだよ!!
俺は、俺は…うわぁぁあああー!!」
少年は大粒の涙を流し、
気が付いたら私は彼を抱きしめて一緒に泣いていた。
胸の中にヒョウム国のことが思い出される。
私はきっと彼と同じだ。
皇帝の操り人形だった。
そして多くの人を不幸にしてきた。
でもむごいことに私は生きなければならない。
生きてカルマを消さないと地獄に落ちる。
だから死ぬことが出来ない…。
ヒョウム国のことを思うだけで、
苦しくて仕方が無いのに。
◆
「で、どうするつもりだ?」
ようく私達が落ち着くと伯爵夫人がそう言った。
「その少年は死刑だ。これは変わらない」
「……」
伯爵夫人の言葉に少年は無言だった。
「何とかならないんですか?」
「ダメだ。操られていた点は同情できるがな」
「そうだ。彼を解放すれば、
咎の輪廻教の情報を知っているだけ教えるというのはどうですか?」
「情報提供することを条件に釈放か。いいだろう。認める」
「ね、あなたも良いですよね」
「あ、ああ、でも俺、本部の場所知らないんだ…」
そう少年は言った。
「いつも目隠しをされて本部に行っていたから、
本部がどこにあるのか知らない」
「え、操られていたのに目隠しですか?」
「万が一傀儡魔法が解けた時のためだって言っていた。
それに組織の全貌だっていちいち知らされていたわけじゃないから、
釈放されるだけの情報は持って居ないんだ…」
「なるほどだったら…」
「奴らの本拠地の場所なら私が知ってます 」
「「は?」」
私の言葉に少年も伯爵夫人も目を丸くする。
「えっとエリアマップといって、地図を表示する魔法が私には使えます。
それで分かったんですよ」
「なるほどギルドマスターが、
お前は必要な素材が必ず見つけられると言っていたが、
そのおかげとはな。しかも政府でも、
なかなか見つけられなかった奴らの本拠地が分かるとはな。
そうだな。奴らの本拠地の場所は政府の人間なら、
喉から手が出るほど知りたい情報だ。
いいだろう、その少年を解放しよう。
だがお前の魔法で分かったということは伏せておく。
希少価値が高まるからな。
捕まえたその少年が白状したということにしよう」
賢い人は何も言わなくても察してくれるから助かるな。
「で、その少年はどうするつもりだ?」
「あー、それなら私の従者にするのはどうでしょう?」
「は!? 従者?
あの付き従う者と書く、あの従者のことか!?」
「はい、そうです」
「お前が変人で、お人好しで、考え無しに動くのは知っていたが、
いくらなんでもこれは止めておくべきだ…!」
「もう決めましたから、あなたも良いですよね」
「え? ああ、あんたがそう言うなら…」
少年も同意したし、これでいいだろう。
「頭が痛いな…。
お前の今までの奇行の中で一番おかしい。
自分が殺されるとは思わないのか?」
「思わないです。大丈夫な予感がするので」
「はぁあ…心配だ。
お前は変な行動をばかりする。
これに付き合う仲間の気がしれん…」
「それで咎の輪廻教はどうなるんですか?」
「それは私にまかせてくれ、
咎の輪廻教のことは政府が解決するべき問題だ。
後は警察と軍隊に任せてくれ。
すぐに本部を叩き潰すだろう。
私の旦那様に手を出したんだ…。
それなりの報いは受けてもらうッ」
「ヒッ」
普段冷静な人程怒らせると怖いと聞くが、本当だ…。
その雰囲気は無関係な私が見ても怖かった。
漫画だったらゴゴゴと擬音が入っているだろう。
それを見て、
伯爵夫人が私が敵に回したくない人ランキングの2位に駆け上がった。
1位は地獄神だが、この人だけは絶対に怒らせないようにしよう。
いや本当にマジで。
◆
「は…従者にする?」
少年を従者にすると言うと、
仲間のみんなはフォルトゥーナ以外唖然とした
「あなたの行動の中で一番のキテレツだわ」
そうエドナが言った。
うん、それは伯爵夫人にも言われた。
「まぁ私はセツナが決めたのなら反対はしないのだ」
「幸い部屋は余ってますし、彼が一緒に暮らすのは問題ないでしょう」
イオとフォルトゥーナがそう言った。
「俺といい、フォルトゥーナとイオといい、
お前は変なものを拾ってくる達人だな」
ガイそれって褒めてるのか、けなしているのかどっちなの?
まぁそういうことで我が家に居候が一人増えたのだった。
◆
「あれ…」
寝たと思ったら久しぶりの真っ暗闇空間だ。
ここに来たということは…。
「やぁ久しぶり」
地獄神が王座に腰掛けていた。
相変わらず美少年だ。目の保養になる。
「僕に聞きたいことがあったんでしょう?」
「あの咎の輪廻教ってなんで地獄神を崇拝しているんでしょう?」
「咎の輪廻教というのは元々神殿の幹部が作っていてね。
だが神殿のやり方に疑問を持ち、僕に目をつけた。
天上界に刃向かったことのある僕を崇拝すれば、
神殿に対する反逆になるだろうと思ったんだろうね」
「彼らがあなたを崇拝するのは、
神殿へのアンチテーゼだったわけですか」
「そう聖眼持ちを敵視するのも、
聖眼持ちばかりを崇め、特別視する神殿に対する嫉妬だよ。
設立者は聖眼持ちに異常なまでに嫉妬していた。
自分が聖眼持ちで無かったことが嫌だったんだろうね」
誰かを強く批判するのはその人に嫉妬しているからとはよく聞くが、
個人的な嫉妬のためにテロ組織を作るなんて、
狂っているとしか思えない。
「これからも咎の輪廻教は私の前に現れると思いますが、
どうしたらいいですか?」
「容赦なく殺していいよ。
彼らが相手なら特別に人殺しを許可しよう」
吐き捨てるように地獄神はそう言った。
「え? でも彼らはあなたを崇拝しているんですよ」
「君はさ。君のためにと人殺しをする人間を喜べる?
僕は絶対に無理。奴らが行くのは楽園ではなくて、地獄だよ。
僕を崇拝していようがそんなことは関係ない。
むしろそんなことで特別扱いする気なんて僕にはサラサラ無い。
人殺しを良いことだと思っている狂人の戯言なんてどうでもいい。
むしろ見るのが不愉快だから、死滅して欲しいぐらいだよ」
うわぁ、自分が崇拝している神からこんなことを思われているなんて、
信者可哀想。
「可哀想ってね。当然の反応だよ。
あなたのために人を殺します。
人を殺すことは良いことです。
テロで町を爆破しました。
なーんて言われたら普通喜ぶよりドン引きだよ」
まぁ確かにそうだな。
私が同じ立場でも引くだろう。
「だから容赦なく、情け無用で、手加減無く、
一人残らず滅ぼしてくれると嬉しいな」
「いやいやいやいや、人殺しは私は絶対嫌です」
「そうか、残念だな。
まぁ君が本部の場所を、
マティルダ・フィールディング伯爵夫人に教えたから良かったよ。
これで本部は壊滅になる。
地上から咎の輪廻教が無くなる日も遠くない。
ああ、嬉しいな」
心底そう思っているのか地獄神は晴れやかな笑顔でそう言った。
うん、崇拝対象からこう思われているんなんて、
少し気の毒になってきたぞ。
「だってさぁ、彼らが人を殺す度、冥府には人があふれかえるんだよ。
ただでさえ仕事が増えるのに、うっとうしいよ。全く」
やはり自分を崇拝していても全く特別扱いしないんだな。
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