贖罪のセツナ~このままだと地獄行きなので、異世界で善行積みます~

鐘雪アスマ

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第5章波乱と激動の王都観光

285・リョーコのお店

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私は合言葉言って扉をくぐると、
エドナ達と合流した。

「どうだった?」
「完全に生まれ変わらせるには、
また来ないといけないみたいです」
「そうそれなら王都で時間を潰しましょう」
「え、でもお姫様を治療した方がいいんじゃあ」
「それは急がなくても大丈夫みたいですよ。
今日はもう遅いですし、また明日聞いてみましょう」
「そうですか、じゃあこの際王都を観光しましょう」

今の時刻は夜の6時、お腹が減ってきたし、
王都のグルメを堪能するのも悪くは無い。

「あ、そうだ。王都に行くなら絶対に行きたい所があったんです。
今日はそこで食べましょう」

そうして転移魔法で私達は王都に戻った。
そして私はエリアマップを起動し、
目的の店まで歩いていく。
ちなみにイオは目立つのでフード付きのマントで顔を隠している。
聖眼も幻惑魔法で隠している。
そして歩いていくと王都の片隅にその店はあった。

「ここです。私が来たかった場所は」

ここに私と同じ日本人の人が働いているらしい。
そう以前ジェイミーから聞いていたので、
どうしてもここに来たかったのだ。
そして私は店の中に入ると、
そこではたくさんの人が料理を食べていた。
それもかなりおいしいのか、みんな嬉しそうだった。

「あのー、すみません、ちょっといいですか?」
「すみません、当店は完全予約制になっていまして、
新規のお客様はお断りしています」

そう店員の男性は言った。

「そうじゃなくて、私この店で働くリョーコさんと同じ所から来たんです。
その、日本から来たって行ったら分かると思うのでそう伝えてください」
「分かりました。伝えてみます」

そうして店員が厨房に入ると、
奥の方からガラガラガッシャンと派手な音がした。
そしてしばらくすると黒髪の女性が厨房から出てきた。

「待たせてごめんなさい。
ちょっと驚いて鍋を落としてしまってね。
あなたが私と同じ日本人の人かしら?」
「はい、そうです」
「ここで話すのもなんだからテーブル席で話しましょう」

そうして唯一空いていたテーブル席に移動する。

「私の名前は柳村やなぎむら涼子りょうこよ。
あなたの名前は?」
「海道刹那です」
「そう、あなたはどうやってこの世界に来たの?」
「通学路を歩いていたら、
変な穴があってそれに触ったらこの世界に来てました」
「そう私は登山をしていたら、穴に落ちてしまって、
気がついたらこの世界に来ていたわ」
「へぇ、それは大変でしたね」
「まぁ大変って言葉じゃ説明出来ないぐらいに最初は大変だったわ。
言葉が通じたのは良かったけど、
ろくに準備すら出来ずに異世界に来てしまったんだもの。
とりあえずお金を稼ぐために働こうかと思ったら、
分からないことだらけで常識を身につけるのに苦労したわ。
最初は泣いてばかりだったけど、
料理が趣味だったから、その料理をみんなに振る舞ったら、
みんな喜んでくれてね。
そしたら私を助けてくれる男性が現れたの。
それが今の夫になるわ」
「結婚したんですか?」
「ええ、今は子供も居るわ。
このお店は夫の実家なんだけど、
それを私が継いでリフォームして店をオープンしたのよ」
「え、リフォームですか」
「ああ、私は日本では土木会社に勤めていてね。
住宅の建設から治水工事まで幅広く仕事をしていたわ」
「そうなんですか」
「最初は元の世界に帰ることばかり考えていたけど、
だんだんこの世界も悪くないんじゃないのかって思うようになってね。
10年も経った今ではさっぱり帰る気持ちは失せたわ。
ただ唯一心残りがあってね。
私の弟が元気に暮らしているか知りたいの。
だから知らないかしら?」
「その弟さんの名前って何て言うんですか?」
「柳村新太よ」
「え、それスケボーの金メダリストの名前ですよ」
「スケボー?
そういえばあの子はスケボーを趣味でやっていたけど、
金メダリストになったの?」
「はい、オリンピックで金メダルを取っていました。
見た感じはすごく元気そうでした。
それに結婚したってテレビで言ってました」
「そうだったの。私が高校の頃に両親が亡くなってね。
あの子を養うために私は高校を中退して、
必死に働いてあの子を養ったのよ。
だから私が居なくなって、
あの子は食べていけているのか心配だったの。
でも結婚したのね。1人じゃなくて良かったわ」
「お金に関しては大丈夫だと思いますよ。
よくテレビに出てましたし、
自宅の横の庭に、
スケボーのスケートパーク作ったってテレビで言ってましたし、
充分食べていけていると思いますよ」
「そう良かったわ…」

リョーコさんは涙ぐんでいた。

「それと金メダルを取った時に言ってました。
天国のお姉ちゃんに自慢したいって、
お姉ちゃんは僕のヒーローだって言ってました」
「ありがとう、おかげで私の心残りは消えたわ。
本当にありがとう…」

そうリョーコさんは涙ながらに言った。

「そうだ。教えてくれたお礼にあなたにごちそうするわ。
お金は取らないから好きな物を好きなだけ注文して!」
「分かりました。ありがとうございます」

そうして私達はメニュー表を見て、料理を注文した。
そしてしばらくして料理が運ばれてきた。

「この料理懐かしいです」

私が頼んだのは中にチーズが入ったハンバーグと餃子だ。
仲間達も同様に好きな物を注文する。

「これおいしいわ」
「おいしいです。こんなにおいしい物は久しぶりに食べました」
「はむ、おいしいのだ~」
「見て、このハンバーグ、中にチーズが入っているよ!」

仲間達全員喜んでいるようだった。
そういえばタツキは今どうしているのだろうか。
さっきから何度も携帯紋で連絡しているのだが、音沙汰が無い。
もしかしてヤトノカミで何が大事件でも起きて帰ったのだろうか。
だとしたら一言ぐらい言っても良さそうだが、
何かあったのだろうか。
そう思いながら料理を全部食べた。

「お腹いっぱいになりましたね」
「そうね。まぁ腹八分目ぐらいにしておきましょう」

ステーキ3枚も頼んでおいてよく言うよ。
エドナは本当に大食いだな。

そう思った時だった。

「わしを入れぬとはどういうことだ!」
「え?」

声のした方を見ると1人のヒゲが生えた中年の男が、
何やら店の入り口で叫んでいた。

「わしはこの国の宰相。タイ・オドール侯爵だぞ!」

タイ・オドール。たい・おどる。鯛が踊る?
何てこったい、偉そうに言った名前が…。
私は思わず笑ってしまった。

「しかし当店は完全予約制でして、
予約をしていないお客様はお断りしています」
「何だと宰相のわしを入れぬというのか!」

宰相? そういえば王と謁見した時に、
王の近くにいたような気がする。
まぁあの時は緊張していたので、
詳しく見る余裕は無かったので記憶が曖昧だが。

「何かあったの?」

すると騒ぎを聞きつけたのか、
リョーコさんが厨房から出てきた。

「お前が店長か!?
わしをこの店に入れろ!」
「残念ですが、今は席が全て埋まっていまして、
また後日に来てくれませんか?」
「何だと宰相のわしに待てというのか!
ならば貴族の権限でこの店を潰してやる!!」
「リョーコさん」

私は席から立ち上がった。

「私達が出て行くのでこの席を使ってください」
「え、でも…」
「幸い食事はもう済ませましたし、
私達さえ出て行ってこの席を片づければ、
この席で料理が食べられます」
「でもあなたは特別なお客様で…」
「元々いきなり来た私達のせいで、席が埋まってしまっていたんです。
これ以上は迷惑はかけられません」
「分かったわ。
この埋め合わせはいつかするから」
「じゃあさよならです」

そうして私達は店から出て行った。

「ふん、分かればいいのだ!
分かれば!」

そうして宰相の男は最後まで偉そうにしていた。

「あの男何だったのかしら」
「………」
「フォルトゥーナどうしたの?」
「いえ、何でもありません。
醜悪な心の中を読んで少し気分が悪くなっただけです」

そういえばレオンの時もそうだったが、
フォルトゥーナは辛そうにしていたな。
言わなくても察してくれるから便利ぐらいにしか私は思っていなかったが、
他人の心が読めるのはそれなりにしんどいことかもしれない。
そう思った私だった。


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