(完結〉恐怖のギロチン回避! 皇太子との婚約は妹に譲ります〜 え? 私のことはお気になさらずに

にのまえ

文字の大きさ
14 / 75

14話

しおりを挟む
 国境門を越えて先は、アオの出身国カーシン。
 この国は人族、亜人種族がいがみあうことなく暮らす国。

「アオ君、このままカーシン国の王都に行くの?」

 大陸の中央にあるのはカーシン国の王都。
 今の国王陛下は亜人種族で、今年の秋には国王祭があり、デュオン国の皇太子アサルト殿下が招待されている。

「いいや、王都まで行かなくてもいいんだ。もうすぐ到着する第二都市ララサ街にも冒険者ギルドはあるから、そっちにいくよ」

「第二都市ララサ街かぁ」
「ドラ様、楽しみですね」

「えぇ楽しみですわ。教育でカーシン国のことは――各々の特長をいかし、剣、織物、食器、毛皮、数多くの特産品があると習ったわ。確か、シシン語を話すのよね」

「そうだ、カーシンの言語はシシン語」

 だとすると、アオはデュオン国の言語ロース語をゆうちょうに話せるから、かなりの勉強したのだろう。――彼はいったい何者? というより……彼は冒険者で、色んな国を回るはずだから、他の国の言語が必要になった。

「ドラはシシン語を話せるの?」

「えぇ一応話せるわ。あとは色んな種類の鉱石が採取できるモタマリン国のリン語でしょ。小麦粉、野菜、果物が豊富に摂れるサーロン国のサーロン語。アマラン魔法都市の新アマラン語と古代アマラン語。どれも発音が違って覚えるのに苦労した覚えがあるわ。あと、形式的な挨拶だけなら、何ヶ国語は話せる」

「ハァ、スゲェ」
「ドラお嬢様、ステキです」

「シュシュ、ありがとう。でも、しかたなかったのよ」
 
 これだけの言語をカサンドラが覚えたのには訳がある。皇太子アサルト殿下が各国の挨拶だけを覚えて、それ以外まじめに覚えようとしない。
 彼が皇太子から国王になったとき、横で私が補佐する為に覚えた。

「婚約破棄したから必要なくなったけど……苦労して覚えておいてよかったかも。いつか、古代アマラン魔法都市に行ってみたいわ」


 
 第二都市ララサに着く前に昼食にしようと、小脇道にそれて開けた場所に荷馬車を止めた。次にアオは荷馬車の馬を近くの木にロープで結び、シュシュは飲み水が入った桶を馬の前に置いて、二人とも後ろの荷台に乗り込んだ。

 カサンドラは「お疲れさま」と、バスケットから今朝作った塩とレモンの果実水をコップに注ぎ、生活魔法で出した小さな氷をコップに入れた。
 コップの中でジワジワと氷が溶け、レモンの果実水が冷える。

 アオは冷えた果実水を手に取ると、いっきに飲み干した。

「プファ、うまっ。魔法で出した氷で飲み物を冷やすのか……実用的で面白いな」

「そうでしょう『侯爵夫人の長い夏休み』と言う物語の主人公がやっていたのを真似したの」

「冷えた果実水は美味しい。ドラお嬢様の氷魔法最高です」
 
「だよな、いつもより美味い」

「フフ、二人に喜んでいただいてなによりですわ」

(この氷魔法も、アサルト殿下には手ひどく言われたのよね。まぁ、今となってはいい思い出ね)



 荷馬車の荷台に座り、みんなで昼食をとりながら話すのは、カサンドラが言った古代アマラン魔法都市の話。

「さっき、ドラが古代アマラン魔法都市に行きたいって言っていたよな。行く時、オレも連れて行ってくれ、古代のダンジョン、古代魔道具とか魔法がみたい」

「アオ君も? 私も一度は行って見たいとおもっていたの」

「ドラ様、旅行の計画をたてましよう。古代魔法の国アマラン……ミートパイ包、アップルパイ、チーズパイが有名ですよね」

 シュシュがいま言ったパイの種類。
 最近、読んだ本に出ていた。

「フフ、恋する二人が旅先の古代アマラン魔法都市で食べるのよね。どれも美味しそうかパイだったわ」

「色んな種類のパイか……それって『恋と食べもの旅行記』か? 恋人同士の二人が旅先で事件に巻き込まれ、解決しながら、その国の名物料理を食べるんだよな」

「アオ君も、その本を読んだの」
「まぁ、読んだのですか?」

 アオはコクリとうなずいた。

 食べもの旅行記は人気のシリーズで、色んな国の言葉で翻訳されているから、他の国の本は違うニュアンスで面白い。

「ムフフ、冒険に出たばかりなのに、次の旅行が決まったわ。さぁアオ君、シュシュ、今日の冒険も楽しむわよ!」

「「おう!」」

 



 隣国カーシンまで冒険に出たカサンドラの別荘に、黒いローブを見にまとった誰かが近付いた。その人物はエントランスに置かれた、真っ白な箱を見つけて手に取る。

「ん? これは本人にしか開けられない魔道具の手紙箱……わたし宛ではないな、誰宛だ?」

 しばらく、白い箱を眺めフンフンと頷き。その人物が手をかざすと、手元に水晶玉が現れる。それを手の上に乗せて『遡りの魔法』をつかった。
 
 水晶玉の中で『ときが戻り』型の古い馬車から降り、屋敷の鍵を開けて中に入る長い黒髪の女性と、眼鏡のメイド服を着た二人の姿がうつる。

 それを見て困った表情を浮かべた。

「おやおや、わたしは娘に屋敷の鍵を預けただけだが、その鍵が娘の子供に渡り、最終的にその子の娘に渡ったのか」

 旦那も亡くなり娘も結婚をしたからと、フラッと旅に出て、数十年ぶりに戻ればそうなるか。
 
「ご、ご主人様~」
「ジョロどうした?」

 そこに一羽のフクロウ――ジョロが飛んできて、その人物の肩にとまり、なにらや二人で会話をはじめた。

「そうか、ひ孫はカサンドラと言って、いま隣国のカーシン国に行っているのか。帰ってくるまでゆっくり待つかな」

 水晶玉をしまい、白い箱を持ったまま屋敷の鍵を開けて、中に入っていった。
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

完】異端の治癒能力を持つ令嬢は婚約破棄をされ、王宮の侍女として静かに暮らす事を望んだ。なのに!王子、私は侍女ですよ!言い寄られたら困ります!

仰木 あん
恋愛
マリアはエネローワ王国のライオネル伯爵の長女である。 ある日、婚約者のハルト=リッチに呼び出され、婚約破棄を告げられる。 理由はマリアの義理の妹、ソフィアに心変わりしたからだそうだ。 ハルトとソフィアは互いに惹かれ、『真実の愛』に気付いたとのこと…。 マリアは色々な物を継母の連れ子である、ソフィアに奪われてきたが、今度は婚約者か…と、気落ちをして、実家に帰る。 自室にて、過去の母の言葉を思い出す。 マリアには、王国において、異端とされるドルイダスの異能があり、強力な治癒能力で、人を癒すことが出来る事を… しかしそれは、この国では迫害される恐れがあるため、内緒にするようにと強く言われていた。 そんな母が亡くなり、継母がソフィアを連れて屋敷に入ると、マリアの生活は一変した。 ハルトという婚約者を得て、家を折角出たのに、この始末……。 マリアは父親に願い出る。 家族に邪魔されず、一人で静かに王宮の侍女として働いて生きるため、再び家を出るのだが……… この話はフィクションです。 名前等は実際のものとなんら関係はありません。

【本編完結】王子の寝た子を起こしたら、夢見る少女では居られなくなりました!

こさか りね
恋愛
私、フェアリエル・クリーヴランドは、ひょんな事から前世を思い出した。 そして、気付いたのだ。婚約者が私の事を良く思っていないという事に・・・。 婚約者の態度は前世を思い出した私には、とても耐え難いものだった。 ・・・だったら、婚約解消すれば良くない? それに、前世の私の夢は『のんびりと田舎暮らしがしたい!』と常々思っていたのだ。 結婚しないで済むのなら、それに越したことはない。 「ウィルフォード様、覚悟する事ね!婚約やめます。って言わせてみせるわ!!」 これは、婚約解消をする為に奮闘する少女と、本当は好きなのに、好きと気付いていない王子との攻防戦だ。 そして、覚醒した王子によって、嫌でも成長しなくてはいけなくなるヒロインのコメディ要素強めな恋愛サクセスストーリーが始まる。 ※序盤は恋愛要素が少なめです。王子が覚醒してからになりますので、気長にお読みいただければ嬉しいです。 ※本編完結しました。 ※後日談を更新中です。

あなたの事は好きですが私が邪魔者なので諦めようと思ったのですが…様子がおかしいです

Karamimi
恋愛
公爵令嬢のカナリアは、原因不明の高熱に襲われた事がきっかけで、前世の記憶を取り戻した。そしてここが、前世で亡くなる寸前まで読んでいた小説の世界で、ヒーローの婚約者に転生している事に気が付いたのだ。 その物語は、自分を含めた主要の登場人物が全員命を落とすという、まさにバッドエンドの世界! 物心ついた時からずっと自分の傍にいてくれた婚約者のアルトを、心から愛しているカナリアは、酷く動揺する。それでも愛するアルトの為、自分が身を引く事で、バッドエンドをハッピーエンドに変えようと動き出したのだが、なんだか様子がおかしくて… 全く違う物語に転生したと思い込み、迷走を続けるカナリアと、愛するカナリアを失うまいと翻弄するアルトの恋のお話しです。 展開が早く、ご都合主義全開ですが、よろしくお願いしますm(__)m

【完結】『運命』を『気のせい』と答えたら、婚姻となりまして

うり北 うりこ@ざまされ2巻発売中
恋愛
 ヴォレッカ・サミレットは、領地の危機をどうにかするために、三年ぶりに社交界へと婚姻相手を探しにやってきた。  第一にお金、次に人柄、後妻ではなく、できれば清潔感のある人と出会いたい。 そう思っていたのだが──。 「これは、運命だろうか……」 誰もが振り返るほどの美丈夫に、囁かれるという事態に。 「気のせいですね」 自身が平凡だと自覚があり、からかって遊ばれていると思って、そう答えたヴォレッカ。  だが、これがすべての始まりであった。 超絶平凡令嬢と、女性が苦手な美丈夫の織りなす、どこかかみ合わない婚姻ラブストーリー。 全43話+番外編です。

白百合の君を瞼に浮かべて

蒼あかり
恋愛
騎士隊副隊長のレイモンドは、第二王子アーサーの婚約者アリシアの事を密かに想っていた。 『白百合の君』と呼ばれるほどに美しいアリシアが、自分の起こした行動により婚約破棄を告げられてしまう。酔った勢いで婚約破棄を告げ後悔するアーサーだが、大きな力で婚約の存続は途絶えてしまった。それでもアリシアを手放せないアーサーが、執拗にアリシアを追い詰めてくる。そんなアリシアを守るために求め続けるも、二人はすれ違い続けついには行方知れずに。 年月を重ね、二人は再び出会うことができるだろうか? 他サイトでも掲載しております。

【完結】異世界から来た聖女ではありません!

五色ひわ
恋愛
 ミシュリーヌは、第四王子オーギュストの妃としてフルーナ王国の王宮で暮らしている。しかし、夫であるオーギュストがミシュリーヌの寝室に訪れることはない。ミシュリーヌは聖女の力を持っていたため、妻に望まれただけなのだ。それでも、ミシュリーヌはオーギュストとの関係を改善したいと考えている。  どうすれば良いのかしら?  ミシュリーヌは焦っていた。七年間かけて国中の水晶を浄化したことにより、フルーナ王国は平穏を取り戻しつつある。それは同時に聖女の力がこの国に必要なくなったことを意味していた。  このまま、オーギュストの優しさに縋ってお飾りの妻を続けるしかないのだろうか。思い悩むミシュリーヌの前に現れたのは、オーギュストの恋人を名乗る女性だった。 ・本編141話 ・おまけの短編 ①9話②1話③5話

手作りお菓子をゴミ箱に捨てられた私は、自棄を起こしてとんでもない相手と婚約したのですが、私も含めたみんな変になっていたようです

珠宮さくら
恋愛
アンゼリカ・クリットの生まれた国には、不思議な習慣があった。だから、アンゼリカは必死になって頑張って馴染もうとした。 でも、アンゼリカではそれが難しすぎた。それでも、頑張り続けた結果、みんなに喜ばれる才能を開花させたはずなのにどうにもおかしな方向に突き進むことになった。 加えて好きになった人が最低野郎だとわかり、自棄を起こして婚約した子息も最低だったりとアンゼリカの周りは、最悪が溢れていたようだ。

【完結】虐げられて自己肯定感を失った令嬢は、周囲からの愛を受け取れない

春風由実
恋愛
事情があって伯爵家で長く虐げられてきたオリヴィアは、公爵家に嫁ぐも、同じく虐げられる日々が続くものだと信じていた。 願わくば、公爵家では邪魔にならず、ひっそりと生かして貰えたら。 そんなオリヴィアの小さな願いを、夫となった公爵レオンは容赦なく打ち砕く。 ※完結まで毎日1話更新します。最終話は2/15の投稿です。 ※「カクヨム」「小説家になろう」にも投稿しています。

処理中です...