54 / 75
54話
しおりを挟む
荷物を馬車の後ろに摘み、獣人のアオの耳と尻尾を隠すお揃いのローブと、楽な服装でカサンドラ達は馬車に乗り込んだ。2時間ずつの休みと、昼食を取るチルリの街まで4時間はかかる。
少し大きめの場所を借りたので、ゆったり出来るだろう。
「アオ君、シュシュ、クッションをたくさん用意したから、眠っていいからね」
「ドラお嬢様、ありがとうございます」
「じゃ、俺は寝てるな」
アオはクッションを頭と背にひき目をつむる、シュシュは恋愛物の本を読み始め、カサンドラは楽な姿勢で目を瞑った。
2度と戻ることはないと思っていた、そこにカサンドラは向かっている。2人の婚約は喜ばしいと思う反面、どうでもいいと思う気持ちもある。
ただ、アオとシュシュとの旅を楽しみたい。
カサンドラは1度の人生を終わり、大聖女マリアンヌ様の慈悲で時間が巻き戻っている。前の妹への恨みに沈んだカサンドラと、今のカサンドラは全く違う道を歩んでいるのだ。
カサンドラを大切にしてくれる、素敵な家族も出来た。他に欲しいものなんてない、静かに暮らしていたい。早く、一刻も早く舞踏会が終わって欲しいとでさえ、思っている。
(両親に頼んで別荘はいただいて、公爵家から籍も抜いてもらおうかしら?)
そうすれば煩わしいことら解放される。1度目のカサンドラの記憶はあの日見た最後の記憶以外、全くない。彼女も両親に愛されなくて、愛が欲しくて婚約者に依存した。
なのに、その愛を奪われたのだ。
心が壊れ、恨むに決まっている。
あれを目にしたから今のカサンドラは、妹を恨む道とは違う道を選ぶことが出来た。
――もう一度の命と、楽しい日々を与えてくださった。大聖女マリアンヌ様にお礼を言わなくてはね。
カサンドラ達を乗せた馬車は何事もなく、2時間ずつの休みを取り、昼食を取る予定のチリルの街へと着いた。
チリルの馬車置き場に着き。
「ドラお嬢様、どこか店に入りますか? それとも何か買ってきますか?」
「そうね、この街はラザニアが有名だったわね。ラザニアとパンを買ってきて馬車で食べましょう。それとシュシュ、御者に昼食代を渡してきてくださる? ここでの休憩は1時間半とも伝えて」
「かしこまりました、お嬢様」
シュシュは御者のところに向かい、カサンドラは別荘を出発してから目を覚まさず、ぐっすり眠るアオを見た。
もしかしたらアオは獣人――人間の国に向かうからと、緊張して眠れていないのかもしれない。と、考えたカサンドラはアオを起こさず、シュシュと2人で街に出て昼食を買うことにした。
「ドラお嬢様、御者に伝えてきました」
「ありがとう、シュシュ。私達もお昼を買いに向かいましょう!」
馬車を降りようとしたカサンドラの手を、物音で目を覚ましたアオが掴む。まだ起き抜けの瞳とアオに負担をかけないよう、カサンドラは伝えた。
「アオ君、街でお昼を買ってきますわ。すぐ戻るので、馬車で待っていてくださる?」
「ん? 街? チリルの地に着いたのか……俺もいく」
アオは耳と尻尾を消して、お揃いのローブを頭からスッポリ被り、カサンドラより先に馬車を降りると手を差し伸べた。
少し大きめの場所を借りたので、ゆったり出来るだろう。
「アオ君、シュシュ、クッションをたくさん用意したから、眠っていいからね」
「ドラお嬢様、ありがとうございます」
「じゃ、俺は寝てるな」
アオはクッションを頭と背にひき目をつむる、シュシュは恋愛物の本を読み始め、カサンドラは楽な姿勢で目を瞑った。
2度と戻ることはないと思っていた、そこにカサンドラは向かっている。2人の婚約は喜ばしいと思う反面、どうでもいいと思う気持ちもある。
ただ、アオとシュシュとの旅を楽しみたい。
カサンドラは1度の人生を終わり、大聖女マリアンヌ様の慈悲で時間が巻き戻っている。前の妹への恨みに沈んだカサンドラと、今のカサンドラは全く違う道を歩んでいるのだ。
カサンドラを大切にしてくれる、素敵な家族も出来た。他に欲しいものなんてない、静かに暮らしていたい。早く、一刻も早く舞踏会が終わって欲しいとでさえ、思っている。
(両親に頼んで別荘はいただいて、公爵家から籍も抜いてもらおうかしら?)
そうすれば煩わしいことら解放される。1度目のカサンドラの記憶はあの日見た最後の記憶以外、全くない。彼女も両親に愛されなくて、愛が欲しくて婚約者に依存した。
なのに、その愛を奪われたのだ。
心が壊れ、恨むに決まっている。
あれを目にしたから今のカサンドラは、妹を恨む道とは違う道を選ぶことが出来た。
――もう一度の命と、楽しい日々を与えてくださった。大聖女マリアンヌ様にお礼を言わなくてはね。
カサンドラ達を乗せた馬車は何事もなく、2時間ずつの休みを取り、昼食を取る予定のチリルの街へと着いた。
チリルの馬車置き場に着き。
「ドラお嬢様、どこか店に入りますか? それとも何か買ってきますか?」
「そうね、この街はラザニアが有名だったわね。ラザニアとパンを買ってきて馬車で食べましょう。それとシュシュ、御者に昼食代を渡してきてくださる? ここでの休憩は1時間半とも伝えて」
「かしこまりました、お嬢様」
シュシュは御者のところに向かい、カサンドラは別荘を出発してから目を覚まさず、ぐっすり眠るアオを見た。
もしかしたらアオは獣人――人間の国に向かうからと、緊張して眠れていないのかもしれない。と、考えたカサンドラはアオを起こさず、シュシュと2人で街に出て昼食を買うことにした。
「ドラお嬢様、御者に伝えてきました」
「ありがとう、シュシュ。私達もお昼を買いに向かいましょう!」
馬車を降りようとしたカサンドラの手を、物音で目を覚ましたアオが掴む。まだ起き抜けの瞳とアオに負担をかけないよう、カサンドラは伝えた。
「アオ君、街でお昼を買ってきますわ。すぐ戻るので、馬車で待っていてくださる?」
「ん? 街? チリルの地に着いたのか……俺もいく」
アオは耳と尻尾を消して、お揃いのローブを頭からスッポリ被り、カサンドラより先に馬車を降りると手を差し伸べた。
30
あなたにおすすめの小説
完】異端の治癒能力を持つ令嬢は婚約破棄をされ、王宮の侍女として静かに暮らす事を望んだ。なのに!王子、私は侍女ですよ!言い寄られたら困ります!
仰木 あん
恋愛
マリアはエネローワ王国のライオネル伯爵の長女である。
ある日、婚約者のハルト=リッチに呼び出され、婚約破棄を告げられる。
理由はマリアの義理の妹、ソフィアに心変わりしたからだそうだ。
ハルトとソフィアは互いに惹かれ、『真実の愛』に気付いたとのこと…。
マリアは色々な物を継母の連れ子である、ソフィアに奪われてきたが、今度は婚約者か…と、気落ちをして、実家に帰る。
自室にて、過去の母の言葉を思い出す。
マリアには、王国において、異端とされるドルイダスの異能があり、強力な治癒能力で、人を癒すことが出来る事を…
しかしそれは、この国では迫害される恐れがあるため、内緒にするようにと強く言われていた。
そんな母が亡くなり、継母がソフィアを連れて屋敷に入ると、マリアの生活は一変した。
ハルトという婚約者を得て、家を折角出たのに、この始末……。
マリアは父親に願い出る。
家族に邪魔されず、一人で静かに王宮の侍女として働いて生きるため、再び家を出るのだが………
この話はフィクションです。
名前等は実際のものとなんら関係はありません。
【本編完結】王子の寝た子を起こしたら、夢見る少女では居られなくなりました!
こさか りね
恋愛
私、フェアリエル・クリーヴランドは、ひょんな事から前世を思い出した。
そして、気付いたのだ。婚約者が私の事を良く思っていないという事に・・・。
婚約者の態度は前世を思い出した私には、とても耐え難いものだった。
・・・だったら、婚約解消すれば良くない?
それに、前世の私の夢は『のんびりと田舎暮らしがしたい!』と常々思っていたのだ。
結婚しないで済むのなら、それに越したことはない。
「ウィルフォード様、覚悟する事ね!婚約やめます。って言わせてみせるわ!!」
これは、婚約解消をする為に奮闘する少女と、本当は好きなのに、好きと気付いていない王子との攻防戦だ。
そして、覚醒した王子によって、嫌でも成長しなくてはいけなくなるヒロインのコメディ要素強めな恋愛サクセスストーリーが始まる。
※序盤は恋愛要素が少なめです。王子が覚醒してからになりますので、気長にお読みいただければ嬉しいです。
※本編完結しました。
※後日談を更新中です。
あなたの事は好きですが私が邪魔者なので諦めようと思ったのですが…様子がおかしいです
Karamimi
恋愛
公爵令嬢のカナリアは、原因不明の高熱に襲われた事がきっかけで、前世の記憶を取り戻した。そしてここが、前世で亡くなる寸前まで読んでいた小説の世界で、ヒーローの婚約者に転生している事に気が付いたのだ。
その物語は、自分を含めた主要の登場人物が全員命を落とすという、まさにバッドエンドの世界!
物心ついた時からずっと自分の傍にいてくれた婚約者のアルトを、心から愛しているカナリアは、酷く動揺する。それでも愛するアルトの為、自分が身を引く事で、バッドエンドをハッピーエンドに変えようと動き出したのだが、なんだか様子がおかしくて…
全く違う物語に転生したと思い込み、迷走を続けるカナリアと、愛するカナリアを失うまいと翻弄するアルトの恋のお話しです。
展開が早く、ご都合主義全開ですが、よろしくお願いしますm(__)m
【完結】『運命』を『気のせい』と答えたら、婚姻となりまして
うり北 うりこ@ざまされ2巻発売中
恋愛
ヴォレッカ・サミレットは、領地の危機をどうにかするために、三年ぶりに社交界へと婚姻相手を探しにやってきた。
第一にお金、次に人柄、後妻ではなく、できれば清潔感のある人と出会いたい。 そう思っていたのだが──。
「これは、運命だろうか……」 誰もが振り返るほどの美丈夫に、囁かれるという事態に。
「気のせいですね」 自身が平凡だと自覚があり、からかって遊ばれていると思って、そう答えたヴォレッカ。
だが、これがすべての始まりであった。 超絶平凡令嬢と、女性が苦手な美丈夫の織りなす、どこかかみ合わない婚姻ラブストーリー。
全43話+番外編です。
白百合の君を瞼に浮かべて
蒼あかり
恋愛
騎士隊副隊長のレイモンドは、第二王子アーサーの婚約者アリシアの事を密かに想っていた。
『白百合の君』と呼ばれるほどに美しいアリシアが、自分の起こした行動により婚約破棄を告げられてしまう。酔った勢いで婚約破棄を告げ後悔するアーサーだが、大きな力で婚約の存続は途絶えてしまった。それでもアリシアを手放せないアーサーが、執拗にアリシアを追い詰めてくる。そんなアリシアを守るために求め続けるも、二人はすれ違い続けついには行方知れずに。
年月を重ね、二人は再び出会うことができるだろうか?
他サイトでも掲載しております。
【完結】異世界から来た聖女ではありません!
五色ひわ
恋愛
ミシュリーヌは、第四王子オーギュストの妃としてフルーナ王国の王宮で暮らしている。しかし、夫であるオーギュストがミシュリーヌの寝室に訪れることはない。ミシュリーヌは聖女の力を持っていたため、妻に望まれただけなのだ。それでも、ミシュリーヌはオーギュストとの関係を改善したいと考えている。
どうすれば良いのかしら?
ミシュリーヌは焦っていた。七年間かけて国中の水晶を浄化したことにより、フルーナ王国は平穏を取り戻しつつある。それは同時に聖女の力がこの国に必要なくなったことを意味していた。
このまま、オーギュストの優しさに縋ってお飾りの妻を続けるしかないのだろうか。思い悩むミシュリーヌの前に現れたのは、オーギュストの恋人を名乗る女性だった。
・本編141話
・おまけの短編 ①9話②1話③5話
手作りお菓子をゴミ箱に捨てられた私は、自棄を起こしてとんでもない相手と婚約したのですが、私も含めたみんな変になっていたようです
珠宮さくら
恋愛
アンゼリカ・クリットの生まれた国には、不思議な習慣があった。だから、アンゼリカは必死になって頑張って馴染もうとした。
でも、アンゼリカではそれが難しすぎた。それでも、頑張り続けた結果、みんなに喜ばれる才能を開花させたはずなのにどうにもおかしな方向に突き進むことになった。
加えて好きになった人が最低野郎だとわかり、自棄を起こして婚約した子息も最低だったりとアンゼリカの周りは、最悪が溢れていたようだ。
【完結】虐げられて自己肯定感を失った令嬢は、周囲からの愛を受け取れない
春風由実
恋愛
事情があって伯爵家で長く虐げられてきたオリヴィアは、公爵家に嫁ぐも、同じく虐げられる日々が続くものだと信じていた。
願わくば、公爵家では邪魔にならず、ひっそりと生かして貰えたら。
そんなオリヴィアの小さな願いを、夫となった公爵レオンは容赦なく打ち砕く。
※完結まで毎日1話更新します。最終話は2/15の投稿です。
※「カクヨム」「小説家になろう」にも投稿しています。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる