(完結〉恐怖のギロチン回避! 皇太子との婚約は妹に譲ります〜 え? 私のことはお気になさらずに

にのまえ

文字の大きさ
67 / 75

66話

しおりを挟む
 薬を被り、ふくよかになったシェリィは泣き叫ぶ。そして、会場の何処かにいるのだろうけど、一向に姿を現さない、お祖母様の怒りの声だけが響いた。

 その言葉はカラスにとって図星だったのだろう、息を吸い込み、彼は口をつぐんだ。

「…………」
 
「ハァ――人々に優しい、魔女の私を騙すとは悲しいねぇ……伯爵家、長子ロバート・サンロバ君。君、ご両親にも魔法をかけているね、なんて親不孝な酷い息子だ」

 カラスの瞳が開かれる。

「うっ、やめろ! 僕をその名前で呼ぶな……僕は魔法使いのカラスだ! そして、カサンドラを助ける……カラスなんだぁ」

 本当の名を呼ばれても尚、自分をカラスだという男性にお祖母様は「クックク」と低い声で笑った。お祖母様は彼がやったことを、許せないのだろう。しかし、冷たいなかに……悲しみの声が混じっているように、カサンドラには聞こえていた。

 それは当たり前だ……人は信じた人に裏切られると、心を痛める。その理由が己の事しか考えない、身勝手な思考が多いほど。

「惚けたことを抜かすな! カサンドラを助けるのは、たぬっころとシュシュ以外許さない。私はね、君がしたことを許さないよ。だから、お前から魔法の全てを奪うことにしたよ……普通のロバートになるといい」

「ふつう? ま、ま、待ってくれ……僕から、魔法を取り上げるな!」

 カツンと会場に響いた杖の音と、メイド姿の若くなったお祖母様が舞踏会の会場へと現れた。




 ♱♱♱




 カサンドラ達と見た目が変わらない、メイド服のお祖母様は静かに怒っていた。その逆鱗に触れたシャリィと、男性の、泣き叫ぶ声が会場内に響く。

「君は普通のロバートだ。これからは地道に生きていきな。案外楽しいかもよ」

「そんなはずない! 返せ、僕の魔力を返してくれ!」

「私も元の姿に戻してよ、お願い……謝るから、こんな姿ヤダぁ!」

 いくら2人が泣こうが、喚こうが、お祖母様は聞く耳を持たず――冷ややかに2人を見つめた。

「自業自得だね。そろそろ魔法も解けてみんなの時が戻る……カサンドラ、たぬっころ、シュシュ帰ろうかい。私はこんな格好……早く脱ぎたいよ」

 会場から去ろうとすると、他なりにドラゴンのシャルル様が現れ、お祖母様を優しく見つめた。カラスに裏切られたお祖母様は……少なからず心を痛めた。

(だけど、お祖母様の側には――お祖母様を愛するシャルル様がいらっしゃるから……安心ですわね)

「さぁ私達も、こんなところから帰りましょう」

 カサンドラは舞踏会の会場を後にするとき、バルコニーから見えた大聖女マリアンヌ様を見つめ。2度目の生をありがとうと、心の中でお礼を言い。

 かけがえのない、家族に会えたことを伝えると。
 一瞬だけ、大聖女マリアンヌ様が微笑んだように、カサンドラには見えた。これからも楽しく、みんなと仲良く生きていきます。

「カサンドラお姉様、お願い助けて」
「カサンドラ、魔女に頼んでくれ」

 お祖母様を怒らせた……2人に言われて、カサンドラは微笑み。

「私にそんな事を言われても、何もできませんわ。シュシュ、アオ君、明日は王都観光よ! 思いっきり遊ぶわよ!」

「はい、たくさん遊びましょう」
「楽しみだ!」

 カサンドラ達が舞踏会の会場から出ると同時に、中の時が戻る。アサルト皇太殿下の叫び声が聞こえ、舞踏会の会場内は姿が変わったシャリィを見て騒がしくなる。

 だけど、一度婚約破棄しているアサルト皇太子殿下に、2度目はないだろうし。実はあの薬――シャリィだけではなく側にいたアサルト皇太子殿下にも、かかっていたみたいで。


 ――あ、あらら。


 時が止まるなか、徐々にふくよかになっていく、彼の姿をカサンドラは見ていた。でもよかった。シャリィ1人だけではなく、アサルト皇太子殿下もだから、一緒にお痩せになってください。

 カラス……いいえ、ロバート君には何も言うことはないわ。


 カサンドラ達は手を繋ぎ、軽やかに舞踏会の会場を後にした。
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

完】異端の治癒能力を持つ令嬢は婚約破棄をされ、王宮の侍女として静かに暮らす事を望んだ。なのに!王子、私は侍女ですよ!言い寄られたら困ります!

仰木 あん
恋愛
マリアはエネローワ王国のライオネル伯爵の長女である。 ある日、婚約者のハルト=リッチに呼び出され、婚約破棄を告げられる。 理由はマリアの義理の妹、ソフィアに心変わりしたからだそうだ。 ハルトとソフィアは互いに惹かれ、『真実の愛』に気付いたとのこと…。 マリアは色々な物を継母の連れ子である、ソフィアに奪われてきたが、今度は婚約者か…と、気落ちをして、実家に帰る。 自室にて、過去の母の言葉を思い出す。 マリアには、王国において、異端とされるドルイダスの異能があり、強力な治癒能力で、人を癒すことが出来る事を… しかしそれは、この国では迫害される恐れがあるため、内緒にするようにと強く言われていた。 そんな母が亡くなり、継母がソフィアを連れて屋敷に入ると、マリアの生活は一変した。 ハルトという婚約者を得て、家を折角出たのに、この始末……。 マリアは父親に願い出る。 家族に邪魔されず、一人で静かに王宮の侍女として働いて生きるため、再び家を出るのだが……… この話はフィクションです。 名前等は実際のものとなんら関係はありません。

【本編完結】王子の寝た子を起こしたら、夢見る少女では居られなくなりました!

こさか りね
恋愛
私、フェアリエル・クリーヴランドは、ひょんな事から前世を思い出した。 そして、気付いたのだ。婚約者が私の事を良く思っていないという事に・・・。 婚約者の態度は前世を思い出した私には、とても耐え難いものだった。 ・・・だったら、婚約解消すれば良くない? それに、前世の私の夢は『のんびりと田舎暮らしがしたい!』と常々思っていたのだ。 結婚しないで済むのなら、それに越したことはない。 「ウィルフォード様、覚悟する事ね!婚約やめます。って言わせてみせるわ!!」 これは、婚約解消をする為に奮闘する少女と、本当は好きなのに、好きと気付いていない王子との攻防戦だ。 そして、覚醒した王子によって、嫌でも成長しなくてはいけなくなるヒロインのコメディ要素強めな恋愛サクセスストーリーが始まる。 ※序盤は恋愛要素が少なめです。王子が覚醒してからになりますので、気長にお読みいただければ嬉しいです。 ※本編完結しました。 ※後日談を更新中です。

あなたの事は好きですが私が邪魔者なので諦めようと思ったのですが…様子がおかしいです

Karamimi
恋愛
公爵令嬢のカナリアは、原因不明の高熱に襲われた事がきっかけで、前世の記憶を取り戻した。そしてここが、前世で亡くなる寸前まで読んでいた小説の世界で、ヒーローの婚約者に転生している事に気が付いたのだ。 その物語は、自分を含めた主要の登場人物が全員命を落とすという、まさにバッドエンドの世界! 物心ついた時からずっと自分の傍にいてくれた婚約者のアルトを、心から愛しているカナリアは、酷く動揺する。それでも愛するアルトの為、自分が身を引く事で、バッドエンドをハッピーエンドに変えようと動き出したのだが、なんだか様子がおかしくて… 全く違う物語に転生したと思い込み、迷走を続けるカナリアと、愛するカナリアを失うまいと翻弄するアルトの恋のお話しです。 展開が早く、ご都合主義全開ですが、よろしくお願いしますm(__)m

【完結】『運命』を『気のせい』と答えたら、婚姻となりまして

うり北 うりこ@ざまされ2巻発売中
恋愛
 ヴォレッカ・サミレットは、領地の危機をどうにかするために、三年ぶりに社交界へと婚姻相手を探しにやってきた。  第一にお金、次に人柄、後妻ではなく、できれば清潔感のある人と出会いたい。 そう思っていたのだが──。 「これは、運命だろうか……」 誰もが振り返るほどの美丈夫に、囁かれるという事態に。 「気のせいですね」 自身が平凡だと自覚があり、からかって遊ばれていると思って、そう答えたヴォレッカ。  だが、これがすべての始まりであった。 超絶平凡令嬢と、女性が苦手な美丈夫の織りなす、どこかかみ合わない婚姻ラブストーリー。 全43話+番外編です。

白百合の君を瞼に浮かべて

蒼あかり
恋愛
騎士隊副隊長のレイモンドは、第二王子アーサーの婚約者アリシアの事を密かに想っていた。 『白百合の君』と呼ばれるほどに美しいアリシアが、自分の起こした行動により婚約破棄を告げられてしまう。酔った勢いで婚約破棄を告げ後悔するアーサーだが、大きな力で婚約の存続は途絶えてしまった。それでもアリシアを手放せないアーサーが、執拗にアリシアを追い詰めてくる。そんなアリシアを守るために求め続けるも、二人はすれ違い続けついには行方知れずに。 年月を重ね、二人は再び出会うことができるだろうか? 他サイトでも掲載しております。

【完結】異世界から来た聖女ではありません!

五色ひわ
恋愛
 ミシュリーヌは、第四王子オーギュストの妃としてフルーナ王国の王宮で暮らしている。しかし、夫であるオーギュストがミシュリーヌの寝室に訪れることはない。ミシュリーヌは聖女の力を持っていたため、妻に望まれただけなのだ。それでも、ミシュリーヌはオーギュストとの関係を改善したいと考えている。  どうすれば良いのかしら?  ミシュリーヌは焦っていた。七年間かけて国中の水晶を浄化したことにより、フルーナ王国は平穏を取り戻しつつある。それは同時に聖女の力がこの国に必要なくなったことを意味していた。  このまま、オーギュストの優しさに縋ってお飾りの妻を続けるしかないのだろうか。思い悩むミシュリーヌの前に現れたのは、オーギュストの恋人を名乗る女性だった。 ・本編141話 ・おまけの短編 ①9話②1話③5話

手作りお菓子をゴミ箱に捨てられた私は、自棄を起こしてとんでもない相手と婚約したのですが、私も含めたみんな変になっていたようです

珠宮さくら
恋愛
アンゼリカ・クリットの生まれた国には、不思議な習慣があった。だから、アンゼリカは必死になって頑張って馴染もうとした。 でも、アンゼリカではそれが難しすぎた。それでも、頑張り続けた結果、みんなに喜ばれる才能を開花させたはずなのにどうにもおかしな方向に突き進むことになった。 加えて好きになった人が最低野郎だとわかり、自棄を起こして婚約した子息も最低だったりとアンゼリカの周りは、最悪が溢れていたようだ。

【完結】虐げられて自己肯定感を失った令嬢は、周囲からの愛を受け取れない

春風由実
恋愛
事情があって伯爵家で長く虐げられてきたオリヴィアは、公爵家に嫁ぐも、同じく虐げられる日々が続くものだと信じていた。 願わくば、公爵家では邪魔にならず、ひっそりと生かして貰えたら。 そんなオリヴィアの小さな願いを、夫となった公爵レオンは容赦なく打ち砕く。 ※完結まで毎日1話更新します。最終話は2/15の投稿です。 ※「カクヨム」「小説家になろう」にも投稿しています。

処理中です...