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#1 追放
しおりを挟む──サポーターは冒険者を支える職業だ。
その仕事は、冒険者が運びきれないアイテムの運搬や倒された魔物からの素材回収はもちろんのこと、遠征で訪れた町での宿泊施設の手配など多岐に渡る。
しかしその役割上、冒険者からは軽んじられる職業であり、入れ替わりが激しい職業だ。
その結果として真の仲間として扱われることは少なく、今日もまた一人のサポーターが契約を解除される。
■■■
「マルコ、今日で君との契約は終わりだ」
「えっ…………」
いつものように依頼を達成しギルドで報告を終えた所で、所属している冒険者パーティー[ゴバスト]のリーダーであるフォクスから解雇を告げられた。
「えっと……それはなぜ?」
フォクスが駆け出し冒険者の折りにギルドで出会い、この冒険者パーティーの結成時から貢献し続けてきた自負がある。初めの頃は分からないことばかりで迷惑を掛けたと思うが、今ではAランクとなった冒険者パーティーに相応しい働きは出来ていると思っていたのだが。
「なぜかだって? それは君が一番分かるんじゃないかい?」
「それは…………戦力にならないということか?」
サポーターの役割は文字通り冒険者を支えることが仕事なのだが、Sランクの冒険者パーティーになると戦力としても期待される。それは単に強い魔物との戦いで、自分の身を守れるだけの力が必要ということでもあるが、少しでも戦力が増えると挑める依頼の幅が広がるからだ。
現にSランクに認定されている冒険者パーティーのサポーターは、単独の冒険者として少なくともCランクの実力を有している。さらに最も魔王を討伐することを期待され、国王から勇者一向と名乗ることを許されたパーティーのサポーターにもなると、単独でAランクの実力者がサポーターを務めているのだ。
「君にはこれまで色々と助けてもらったけど、Aランクになった今、これからSランクを目指すにはEランクの実力しかない君ではね……」
自分の冒険者ランクであるEというのも、素材回収系の依頼を達成したに過ぎなく、魔物を討伐して得た称号では無い。
冒険者を志すも戦う才能に恵まれなかった自分が、生きる道としてサポーターという職を選んだのだが、所属しているパーティーがSランクを目指せる所にたどり着いた今、またしても戦力不足で道を断たれたようだ。
「他の皆も知っていたのか?」
「ごめんね……でも貴方もこれ以上私たちに付いてくるのも難しいでしょ?」
「そういうことだマルコ。俺達は上を目指すんだ。その為にはお前では力不足なんだよ」
「マルコ弱い。私たち強い。だから釣り合わない」
どうやら皆が一致した意見であるらしい。
確かに皆がSランクを目指していることは分かっていた。でも自分も一緒にその夢を追いかけたかったので、何とか頑張ってきたのだが、いつの間にかこのパーティーにしがみついているだけになっていたのかも知れない。
「フォクス、僕は皆とSランクを目指そうと──」
「くどいよマルコ! これは決定事項なんだ。もう既に代わりのサポーターも見つけているんだ」
代わりとなるその人は、かつて魔王に挑んだSランクパーティーのサポーターを務めていたベテラン冒険者らしい。その実力は単独でBランクの冒険者にも匹敵するが、魔王にパーティーが敗れて以降は冒険者を辞めていたので、今はEランクで燻っているそうだ。
同じEランクであっても、そこには大きな違いがある。Bランクの実力を有しているEランクと、成長しないEランクのどちらを選べと言われたら、誰しもが前者を選ぶだろう。
既に何もかもが決まってしまっており、今回の依頼が終われば解雇されることはパーティーで話し合われた後なのだ。これ以上は何を言っても無駄なのであろう。
「分かったよ……皆、今までありがとな」
冒険者パーティーから解雇されたので、ギルドから立ち去ろうとすると背後から呼び止められる。
思い直してくれたのかと思い、後ろを振り替えるも、立ち去る前に置いていく物があるだろうと言われてしまった。
確かにパーティーとして買ったアイテムは返却するのが筋だろう。
──こうして完全に冒険者パーティー[ゴバスト]との縁が切れたマルコは、肩を落とし去っていくのであった。
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