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第三章「苦愛離暫別(くあいはなれるしばしのわかれ)」
【魂魄・参】『時空を刻む針を見よ』26話「鯉乃滝昇」
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「な、なんだ……あれ」
「トキッ、僕たちも行くよ」
二人はそう言うとゴジョウとイノコにキジの亡骸とキザシを任せ、姉妹を追い穴の中へと入っていった。
再び火焔城内部に入ると、先ほどの腕の主であろう、山のように巨大な牛半獣が城を破壊しながら暴れていた。檮杌よりも巨大なそれが城の中で暴れる度に、再燃した城は無残にも崩壊していく。
牛魔王を鎮めようと姉妹が彼の周囲を飛び回り説得した。
「お鎮まり下さいっ。キャアッ」
「姉上ッ……よくもッ」
銀閣は吹き飛ばされた姉を見ると、牛魔王に向け何重にも気の砲弾を撃ち込み威嚇する。
しかし、牛魔王はそんな彼女の攻撃に少しも傷つく事なく、我を忘れて暴れ続け、遂には姉妹を両手に鷲掴みにし、喰らおうと大口を開けた。
「おい、やめろっ!」
「ムダだよっ、アイツは我を失ってる。今のうちに逃げようっ」
そう言うとハルは崩壊する物見台から降りてきた仲間を伴い、トキと共に出口を目指す。しかし、火焔城は意思を持っているように激しく燃焼し、炎で出口を塞いでしまった。
今にも牛魔王に喰われそうな金閣銀閣にトキが叫んだ。
「おいッ、ここからはどうやって出られるッ」
「愚か者め、敵に言うと思うか」
「お前たちはここで我らと共に死ぬのだッ」
牛魔王に捕まれた姉妹は最期まで一行の邪魔をし、観念したように抵抗をやめると牛魔王に口の中へと入っていった。
「ハルの名において命ずる……土蜘蛛ッ」
「お前、なにして……ッ」
概念がハルから放たれ牛魔王の両目に光の糸を放出する。その強酸の糸はジュワッと怪物の目を焼き、その拍子に解放された金閣銀閣が翼をひるがえして逃げ飛んだ。
「阿呆がッ、敵に情けをかけるとはなッ」
「違うッ……葛葉さんが言ってたんだ。目に見えるものだけが真実じゃないって、容易に敵と判断するのは……きっと間違いだ」
「戯言を……行くぞ、銀閣。あの呆け坊主に二度と下らぬことを言わせなくしてやるッ」
「……」
「銀閣?」
彼女は黙ったまま空中から動かなかった。そして、姉とハルを交互に見て呟いた。
「姉上……羅刹女さまは我らを見捨てたのでは? 気の乱れた牛魔王と共にここに残したのが、なによりの証拠……」
「愚かな妹めッ、羅刹女さまが長年連れ添った我らを見捨てるハズがないッッ」
「しかし、姉上……新たに羅刹女さまは四凶を迎えました。我らの居場所はもう……」
「……ッ」
金閣は妹の言葉を聞き混乱した。生涯の主と慕った羅刹女が自分達を見捨てるはずはないが、気の乱れた牛魔王と取り残されたのは事実だ。
本来こんな役目は下っ端でよいのではないか。疑念が頭を巡る。
「……我らは捨て駒か」
そう呟いた金閣は空中でうな垂れたが、キッと妹を睨み付けると翼をはばかせて牛魔王めがけて飛んだ。
「だが、敵に弱みは見せられん……愚かな牛め、我らに歯向かったこと、後悔させてやるッ」
「姉上ッッ」
金閣は妹の制止も聞かず牛魔王に勢いよく飛び込んだ。しかし、盲目とはいえ巨大な魔王は、虫を蹴散らすように金閣を壁に吹き飛ばし、姉に駆け寄る妹と共に押し潰そうと手を伸ばす。
「助けるよ、トキッ」
「なんだってッ」
「敵の敵は味方だよ。彼女たちしか、この城から逃げる方法を知らない」
「くそッ」
二人が玄武斬と土蜘蛛で牛魔王の腕を止める。そんな二人の姿を見た金閣銀閣は目を見開き驚くが、彼らの必死の抵抗も虚しく、巨大な掌は姉妹を押し潰した。
牛魔王の手が壁から離れると抱き合った二人がピクリとも動かずに傷だらけで崩れ落ちた。
「金閣、銀閣ッ」
「もう二人は助からないッ、ハル……他に何か召喚できないかッ」
ハルは姉妹と牛魔王を交互に見て考えた。釣り竿のない今、召喚できるのは醜女と土蜘蛛だけ。攻撃用ではないし、海とは距離があるので竜宮の使いで逃げることも出来ない。
打つ手がないと諦めかけたが、須羽湖で水龍が協力てくれた事を思い出す――。
「トキッ、一か八かだ。水龍を召喚してみる。みんなを連れて出口に向かってッ」
「なッ……水龍を、できるのかッ」
「いいからッ」
「わかったッ」
トキは叫んでハルを信じて駆け出した。ハルは静かに瞳を閉じて記憶の泉にいる水龍に気を伸ばしていく。彼の魂魄を繋いだ気は泉の奥へと伸び、奥で眠る水龍の概念を捕獲した。
「よしっ!あとは放出だ……行けぇ!水龍ッッ!」
それは記憶の泉から出現すると周囲を水で覆い尽くしながら出口に向かい泳いで行った。
その水圧で扉が開き、火焔城を満たした水が一同を外へと押し流す。城を取り囲んだ火炎は洪水によって消えて、至るところで黒煙があがった。
出口に流される巨大な牛魔王を見て、トキは危険を感じマサカリを構え駆け出した。
「トキッ」
「俺に向かってもう一度、水龍を出してくれっ!」
「えッ、ダメだよ!」
「いいから!信じろッ」
「わかったッ、ハルの名において命ずる……出でよ、水龍ッッ」
ハルが牛魔王に向かうトキの背に水龍を放つ。すると虚空の魔法陣から出現した水龍がトキの背中を貫いた……かのように見えたが、彼は少しも傷つくこと無く押されて加速し、牛魔王目がけて突進した――甲羅を持つゴジョウを背負いながら。
「ぐぉぉォォオオッ、これが日ノ本版昇気術……鯉乃滝昇じゃぁぁッッ!!」
「トキッ、僕たちも行くよ」
二人はそう言うとゴジョウとイノコにキジの亡骸とキザシを任せ、姉妹を追い穴の中へと入っていった。
再び火焔城内部に入ると、先ほどの腕の主であろう、山のように巨大な牛半獣が城を破壊しながら暴れていた。檮杌よりも巨大なそれが城の中で暴れる度に、再燃した城は無残にも崩壊していく。
牛魔王を鎮めようと姉妹が彼の周囲を飛び回り説得した。
「お鎮まり下さいっ。キャアッ」
「姉上ッ……よくもッ」
銀閣は吹き飛ばされた姉を見ると、牛魔王に向け何重にも気の砲弾を撃ち込み威嚇する。
しかし、牛魔王はそんな彼女の攻撃に少しも傷つく事なく、我を忘れて暴れ続け、遂には姉妹を両手に鷲掴みにし、喰らおうと大口を開けた。
「おい、やめろっ!」
「ムダだよっ、アイツは我を失ってる。今のうちに逃げようっ」
そう言うとハルは崩壊する物見台から降りてきた仲間を伴い、トキと共に出口を目指す。しかし、火焔城は意思を持っているように激しく燃焼し、炎で出口を塞いでしまった。
今にも牛魔王に喰われそうな金閣銀閣にトキが叫んだ。
「おいッ、ここからはどうやって出られるッ」
「愚か者め、敵に言うと思うか」
「お前たちはここで我らと共に死ぬのだッ」
牛魔王に捕まれた姉妹は最期まで一行の邪魔をし、観念したように抵抗をやめると牛魔王に口の中へと入っていった。
「ハルの名において命ずる……土蜘蛛ッ」
「お前、なにして……ッ」
概念がハルから放たれ牛魔王の両目に光の糸を放出する。その強酸の糸はジュワッと怪物の目を焼き、その拍子に解放された金閣銀閣が翼をひるがえして逃げ飛んだ。
「阿呆がッ、敵に情けをかけるとはなッ」
「違うッ……葛葉さんが言ってたんだ。目に見えるものだけが真実じゃないって、容易に敵と判断するのは……きっと間違いだ」
「戯言を……行くぞ、銀閣。あの呆け坊主に二度と下らぬことを言わせなくしてやるッ」
「……」
「銀閣?」
彼女は黙ったまま空中から動かなかった。そして、姉とハルを交互に見て呟いた。
「姉上……羅刹女さまは我らを見捨てたのでは? 気の乱れた牛魔王と共にここに残したのが、なによりの証拠……」
「愚かな妹めッ、羅刹女さまが長年連れ添った我らを見捨てるハズがないッッ」
「しかし、姉上……新たに羅刹女さまは四凶を迎えました。我らの居場所はもう……」
「……ッ」
金閣は妹の言葉を聞き混乱した。生涯の主と慕った羅刹女が自分達を見捨てるはずはないが、気の乱れた牛魔王と取り残されたのは事実だ。
本来こんな役目は下っ端でよいのではないか。疑念が頭を巡る。
「……我らは捨て駒か」
そう呟いた金閣は空中でうな垂れたが、キッと妹を睨み付けると翼をはばかせて牛魔王めがけて飛んだ。
「だが、敵に弱みは見せられん……愚かな牛め、我らに歯向かったこと、後悔させてやるッ」
「姉上ッッ」
金閣は妹の制止も聞かず牛魔王に勢いよく飛び込んだ。しかし、盲目とはいえ巨大な魔王は、虫を蹴散らすように金閣を壁に吹き飛ばし、姉に駆け寄る妹と共に押し潰そうと手を伸ばす。
「助けるよ、トキッ」
「なんだってッ」
「敵の敵は味方だよ。彼女たちしか、この城から逃げる方法を知らない」
「くそッ」
二人が玄武斬と土蜘蛛で牛魔王の腕を止める。そんな二人の姿を見た金閣銀閣は目を見開き驚くが、彼らの必死の抵抗も虚しく、巨大な掌は姉妹を押し潰した。
牛魔王の手が壁から離れると抱き合った二人がピクリとも動かずに傷だらけで崩れ落ちた。
「金閣、銀閣ッ」
「もう二人は助からないッ、ハル……他に何か召喚できないかッ」
ハルは姉妹と牛魔王を交互に見て考えた。釣り竿のない今、召喚できるのは醜女と土蜘蛛だけ。攻撃用ではないし、海とは距離があるので竜宮の使いで逃げることも出来ない。
打つ手がないと諦めかけたが、須羽湖で水龍が協力てくれた事を思い出す――。
「トキッ、一か八かだ。水龍を召喚してみる。みんなを連れて出口に向かってッ」
「なッ……水龍を、できるのかッ」
「いいからッ」
「わかったッ」
トキは叫んでハルを信じて駆け出した。ハルは静かに瞳を閉じて記憶の泉にいる水龍に気を伸ばしていく。彼の魂魄を繋いだ気は泉の奥へと伸び、奥で眠る水龍の概念を捕獲した。
「よしっ!あとは放出だ……行けぇ!水龍ッッ!」
それは記憶の泉から出現すると周囲を水で覆い尽くしながら出口に向かい泳いで行った。
その水圧で扉が開き、火焔城を満たした水が一同を外へと押し流す。城を取り囲んだ火炎は洪水によって消えて、至るところで黒煙があがった。
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「トキッ」
「俺に向かってもう一度、水龍を出してくれっ!」
「えッ、ダメだよ!」
「いいから!信じろッ」
「わかったッ、ハルの名において命ずる……出でよ、水龍ッッ」
ハルが牛魔王に向かうトキの背に水龍を放つ。すると虚空の魔法陣から出現した水龍がトキの背中を貫いた……かのように見えたが、彼は少しも傷つくこと無く押されて加速し、牛魔王目がけて突進した――甲羅を持つゴジョウを背負いながら。
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