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第一章「怪妖人形森(あやしあやかしひとかたのもり)」
【魂魄・肆】『鬼神啼く声儺にて聞く』4話「癒やしの気操術」
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元々、刀鍛冶は大陸の技術だったが、日ノ本特有の神聖かつ繊細な技術が加わり、長い時間をかけて洗練されていったという。その技術を最初に編み出したのが、宗家と呼ばれる伝説的な刀鍛冶職人集団だ。
「私の技術など足元にも及ばぬ。乱世だった世界から戦闘が減り、平和に近づく事は良いことじゃが、それにつれ技術の伝承が少しずつ失われていくのじゃよ」
光阿弥は茶をズズッとすすった。一同はその言葉を聞いて驚く。
この光阿弥も日ノ本一と呼ばれる名匠だ。彼が足元にも及ばないと言う、その宗家刀文字は一体どれほどの威力があるというのだろうか。
「刀には格がある。一般の店頭に並ぶ刀、そして経験値が上がり切れ味が鋭くなった名刀、更に経験値が上がり妖気を帯びるまでに至った妖刀じゃ。この格に到達すると国宝級と言われるな。一薙ぎで数十の兵士を一瞬で薙ぐことができる」
「す、すごい」
「げへへ、まだまだ上には上があるぞ」
そこには目を覚ました暁斎がニヤリと不敵な笑みを浮かべていた。彼が言うには国宝級の妖刀が束になっても敵わない威力を持つ「天下六刀」があるという。
「天下六刀?」
「そうじゃ、陽三刀と謳われる、天乃羽々矢、布都御魂、破邪之太刀。それにと陰三刃と謳われる、変化刀、三毒の魔剣、騒速じゃ。確かに現存するという話じゃが……所在を知るものは少ない。この六刀は刀宗家中興の祖と呼ばれる数百年前の作品じゃ」
「す、数百年」
「ふん、愚か者め。じゃから上には上があると言ったじゃろう。この六刀は妖刀が束になっても敵わんが、六刀が合わさった以上の威力を放つ刀がある。宗の文字を冠した四刀『一文字正宗』『左文字宗近』『右文字貞宗』『大文字亮宗』じゃ。創始者の高弟によって作られた宗家初期の作品だという」
「ぽかぁん」
一同は言葉も見つからずに茫然とした。
上には上があることにも驚いたが、先ほどの破廉恥な行いをした暁斎が博識を持ちあわせていることにも驚いた。
確かに光阿弥の言う通り、ただ者ではないらしい。そんな彼らの様子に満足したのか暁斎は話を続けた。
「芸術家という者は馬鹿が付くほど研究熱心なのじゃ。例えば先ほど娘の胸を揉んだが、あれは身体に流れる気の流れを観ておったのじゃ。おい娘。お前の気操術は、ちと特殊じゃぞ」
「え、私も気操術が使えるの?」
カグヤは驚いて声をあげた。言われてみれば確かに、ヨイチやサロクが扱えるのだからカグヤが使えない道理はない。
「うむ、まぁ見ておれ」
暁斎はそう言うと俊敏に飛び跳ね、巨大な筆をキザシの腕に走らせた。すると先ほどの蜈蚣切りと同じくキザシの腕が壊死し、腐り始めた。
「ぐわぁぁぁッ!」
「キザシくんッ!」
「わしの気操術は筆を通して対象を変化させる。初めは驚いたぞ、満足いかない駄作に乱雑に筆を走らせると、望んだように駄作が腐り消滅したのじゃ」
カグヤは腕を抱えてもがくキザシに駆け寄った。そんな二人を見て周囲は激しく動揺したが、暁斎は少しも悪びれることなく話を続ける。
「カグヤとやら、早くせねば彼の腕は消えて無くなるぞ。先ほどの駄刀のようにな」
「私に……なにをしたらいいっていうのッ?」
カグヤは取り乱して叫ぶ。そんな様子に暁斎はただ下卑た笑いを浮かべるだけで助言はない。するとサロクが叫んだ。
「カグヤッ、目を閉じて落ち着いて深呼吸するんだ。体の中に流れる暖かいものを感じてッ、それが気の流れだよッ」
「うぅッ、やってみるッ」
――スゥ
――ハァ
カグヤはサロクに言われた通り、泣くのをやめて瞳を閉じて深く呼吸する。
鼻から空気をゆっくりと吸い口から少しずつ出す。すると確かに、自分の身体に流れる血とは別の……なにかか暖かいものが流れているのを感じた。
今まで笑っていた暁斎が真剣な眼差しでカグヤを見た。
「心は体に宿り、魂は魄に宿る。体には血液が流れ、魄には気が流れるのじゃ。荒魂、和魂、幸魂、奇魂の四魂を繋ぎながらな。お主は幸魂が抜きんでておる。つまり……治癒の気操術」
「私に……そんな力が」
「流れる気を操り……思い描くのじゃ。お主は何を望む?」
「もちろん……キザシくんの傷が治りますように」
するとカグヤに流れる気が穏やかな凪となる。
彼女は両手を優しくキザシに向けると暖かい気が月の形となりキザシを照らし、柔らかな光の雪として降り注ぎ、辺りは気の花々が咲き乱れた。
光に包まれたカグヤは一糸まとわぬ姿となったが、その両手が当てられたキザシの腕の傷はみるみるうちに回復していく。
「雪月花か……なんと雅な」
暁斎はその姿に直感が働いたのか、一心不乱に光景を絵にしたためた。するとその絵に描かれた雪月花の振袖が光を放ちカグヤに纏っていく
。
「胸を揉んだ詫びじゃ。わしの気で描きあげた雪月花をやろう。どうやらお主は気操術発動の際には、一時的にスッポンポンになるみたいじゃからな」
「カグヤ……ありがとう」
「うぅ、キザシくん……よかった」
するとカグヤは光に包まれた雪月花の振袖から元の服へと戻った。彼女の気操術は他者に癒しを与えるため一時的に物理的な障害を取り除くようだ。
「体の距離は心の距離じゃからな。まぁ、もう少し裸体を見ていたい気もするが、ゲヘヘ……」
「暁斎やるじゃないか」
光阿弥は感心して茶飲み友達を見た。すると暁斎は光阿弥を見返して、今度はお前の番だと言わんばかりにニヤリと笑った。
「小僧、さっさと光阿弥に夫婦刀を預けろ。未熟なお前にはもっと強力な刀が必要だ」
「なっ、キザシくんが未熟ですってッ」
「老いぼれの筆も避けられんかったろうが。いいから光阿弥に任せておけ」
「……うん。光阿弥さん、宜しくお願いします」
キザシはカグヤによって癒された腕を見つめたあと、干将莫邪を光阿弥に手渡した。その瞬間に光阿弥は胸の首飾りを見つけ驚きの声をあげた。
「キザシ殿、この首飾りはッ!」
「あぁこれも刀なんです。どういう仕組みか分からないけど、使わない時は小さくなるから首飾りに……」
「ちょっと見せてくれるかっ?」
「え、はい……」
キザシは首から小さくなった刀を引きちぎり、巨大化させて光阿弥に渡した。
「これは獅子王、魂魄を繋いだり分けたり出来るけど、不斬刀なんです」
「キザシくんっ、この刀も使おう……もしかすると、凄い刀ができるかも知れん」
「私の技術など足元にも及ばぬ。乱世だった世界から戦闘が減り、平和に近づく事は良いことじゃが、それにつれ技術の伝承が少しずつ失われていくのじゃよ」
光阿弥は茶をズズッとすすった。一同はその言葉を聞いて驚く。
この光阿弥も日ノ本一と呼ばれる名匠だ。彼が足元にも及ばないと言う、その宗家刀文字は一体どれほどの威力があるというのだろうか。
「刀には格がある。一般の店頭に並ぶ刀、そして経験値が上がり切れ味が鋭くなった名刀、更に経験値が上がり妖気を帯びるまでに至った妖刀じゃ。この格に到達すると国宝級と言われるな。一薙ぎで数十の兵士を一瞬で薙ぐことができる」
「す、すごい」
「げへへ、まだまだ上には上があるぞ」
そこには目を覚ました暁斎がニヤリと不敵な笑みを浮かべていた。彼が言うには国宝級の妖刀が束になっても敵わない威力を持つ「天下六刀」があるという。
「天下六刀?」
「そうじゃ、陽三刀と謳われる、天乃羽々矢、布都御魂、破邪之太刀。それにと陰三刃と謳われる、変化刀、三毒の魔剣、騒速じゃ。確かに現存するという話じゃが……所在を知るものは少ない。この六刀は刀宗家中興の祖と呼ばれる数百年前の作品じゃ」
「す、数百年」
「ふん、愚か者め。じゃから上には上があると言ったじゃろう。この六刀は妖刀が束になっても敵わんが、六刀が合わさった以上の威力を放つ刀がある。宗の文字を冠した四刀『一文字正宗』『左文字宗近』『右文字貞宗』『大文字亮宗』じゃ。創始者の高弟によって作られた宗家初期の作品だという」
「ぽかぁん」
一同は言葉も見つからずに茫然とした。
上には上があることにも驚いたが、先ほどの破廉恥な行いをした暁斎が博識を持ちあわせていることにも驚いた。
確かに光阿弥の言う通り、ただ者ではないらしい。そんな彼らの様子に満足したのか暁斎は話を続けた。
「芸術家という者は馬鹿が付くほど研究熱心なのじゃ。例えば先ほど娘の胸を揉んだが、あれは身体に流れる気の流れを観ておったのじゃ。おい娘。お前の気操術は、ちと特殊じゃぞ」
「え、私も気操術が使えるの?」
カグヤは驚いて声をあげた。言われてみれば確かに、ヨイチやサロクが扱えるのだからカグヤが使えない道理はない。
「うむ、まぁ見ておれ」
暁斎はそう言うと俊敏に飛び跳ね、巨大な筆をキザシの腕に走らせた。すると先ほどの蜈蚣切りと同じくキザシの腕が壊死し、腐り始めた。
「ぐわぁぁぁッ!」
「キザシくんッ!」
「わしの気操術は筆を通して対象を変化させる。初めは驚いたぞ、満足いかない駄作に乱雑に筆を走らせると、望んだように駄作が腐り消滅したのじゃ」
カグヤは腕を抱えてもがくキザシに駆け寄った。そんな二人を見て周囲は激しく動揺したが、暁斎は少しも悪びれることなく話を続ける。
「カグヤとやら、早くせねば彼の腕は消えて無くなるぞ。先ほどの駄刀のようにな」
「私に……なにをしたらいいっていうのッ?」
カグヤは取り乱して叫ぶ。そんな様子に暁斎はただ下卑た笑いを浮かべるだけで助言はない。するとサロクが叫んだ。
「カグヤッ、目を閉じて落ち着いて深呼吸するんだ。体の中に流れる暖かいものを感じてッ、それが気の流れだよッ」
「うぅッ、やってみるッ」
――スゥ
――ハァ
カグヤはサロクに言われた通り、泣くのをやめて瞳を閉じて深く呼吸する。
鼻から空気をゆっくりと吸い口から少しずつ出す。すると確かに、自分の身体に流れる血とは別の……なにかか暖かいものが流れているのを感じた。
今まで笑っていた暁斎が真剣な眼差しでカグヤを見た。
「心は体に宿り、魂は魄に宿る。体には血液が流れ、魄には気が流れるのじゃ。荒魂、和魂、幸魂、奇魂の四魂を繋ぎながらな。お主は幸魂が抜きんでておる。つまり……治癒の気操術」
「私に……そんな力が」
「流れる気を操り……思い描くのじゃ。お主は何を望む?」
「もちろん……キザシくんの傷が治りますように」
するとカグヤに流れる気が穏やかな凪となる。
彼女は両手を優しくキザシに向けると暖かい気が月の形となりキザシを照らし、柔らかな光の雪として降り注ぎ、辺りは気の花々が咲き乱れた。
光に包まれたカグヤは一糸まとわぬ姿となったが、その両手が当てられたキザシの腕の傷はみるみるうちに回復していく。
「雪月花か……なんと雅な」
暁斎はその姿に直感が働いたのか、一心不乱に光景を絵にしたためた。するとその絵に描かれた雪月花の振袖が光を放ちカグヤに纏っていく
。
「胸を揉んだ詫びじゃ。わしの気で描きあげた雪月花をやろう。どうやらお主は気操術発動の際には、一時的にスッポンポンになるみたいじゃからな」
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するとカグヤは光に包まれた雪月花の振袖から元の服へと戻った。彼女の気操術は他者に癒しを与えるため一時的に物理的な障害を取り除くようだ。
「体の距離は心の距離じゃからな。まぁ、もう少し裸体を見ていたい気もするが、ゲヘヘ……」
「暁斎やるじゃないか」
光阿弥は感心して茶飲み友達を見た。すると暁斎は光阿弥を見返して、今度はお前の番だと言わんばかりにニヤリと笑った。
「小僧、さっさと光阿弥に夫婦刀を預けろ。未熟なお前にはもっと強力な刀が必要だ」
「なっ、キザシくんが未熟ですってッ」
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「キザシ殿、この首飾りはッ!」
「あぁこれも刀なんです。どういう仕組みか分からないけど、使わない時は小さくなるから首飾りに……」
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「え、はい……」
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