55 / 165
11~20話
クロも食べ物ではありません(はい【下】
しおりを挟む
執務室に戻るクロを見送ると、くるりと踵を返し一目散にドールハウスに駆け込んだ。
「トイレ、トイレっ!」
頬を撫でる心地良いそよ風。
大きく息を吸い込めば、草花の香りを含んだ新鮮な空気が肺を満たす。
「あまり身を乗り出すと落ちてしまうぞ」
「はーい」
大きな手のひらがポケットの外側から支えるように私を包む。
昼食を終えたあと「気分転換がてら体を動かしに行くが、ヒナも来るか?」との誘いに諸手を挙げて応じた私は、クロに連れられ庭に来ていた。
この世界に来て初めての屋外だ。
迷いなく歩を進めるクロのポケットの中で、キョロキョロと周囲を観察する。
色とりどりの花が咲き乱れる花壇に、動物型に刈り込まれたトピアリー。噴水、オブジェ、向こうに見えるのは東屋?
一体この庭はどれほどの広さがあるのだろう。
さんさんと降り注ぐ日差しがふと陰って上を見上げれば、毒々しい赤紫色をした巨大な怪鳥が上空を旋回していた。
「グギョーロロロロロロ」
響き渡る恐ろしい鳴き声に、ポケットの縁を握りしめて首をすくめる。
もしも見つかったら、私なんてひと飲みにされてしまいそうだ。
段々と周囲の飾り気がなくなっていき、だだっ広い広場のような場所に差し掛かると、向かう先から号令や掛け声のような雄々しい声が聞こえてきた。
よくよく目を凝らせば、剣を素振りしている人にランニングしている人、試合をしている人も見える。
どうやらこの先は訓練場のようだ。
「ここは人が多い。しっかり隠れていてくれ」
「はい!」
周囲の観察はおしまいにして、すぽんと頭までポケットの中に収まる。
訓練場の一角へと歩を進めていたクロが、何かに気付いたようにぴたりと足を止めた。
どうしたのだろうと見上げると、一拍遅れて進行方向から呼びかける声があった。
「クローヴェル~! ちょうどいい所に来たねぇ!」
「……げっ」
「トイレ、トイレっ!」
頬を撫でる心地良いそよ風。
大きく息を吸い込めば、草花の香りを含んだ新鮮な空気が肺を満たす。
「あまり身を乗り出すと落ちてしまうぞ」
「はーい」
大きな手のひらがポケットの外側から支えるように私を包む。
昼食を終えたあと「気分転換がてら体を動かしに行くが、ヒナも来るか?」との誘いに諸手を挙げて応じた私は、クロに連れられ庭に来ていた。
この世界に来て初めての屋外だ。
迷いなく歩を進めるクロのポケットの中で、キョロキョロと周囲を観察する。
色とりどりの花が咲き乱れる花壇に、動物型に刈り込まれたトピアリー。噴水、オブジェ、向こうに見えるのは東屋?
一体この庭はどれほどの広さがあるのだろう。
さんさんと降り注ぐ日差しがふと陰って上を見上げれば、毒々しい赤紫色をした巨大な怪鳥が上空を旋回していた。
「グギョーロロロロロロ」
響き渡る恐ろしい鳴き声に、ポケットの縁を握りしめて首をすくめる。
もしも見つかったら、私なんてひと飲みにされてしまいそうだ。
段々と周囲の飾り気がなくなっていき、だだっ広い広場のような場所に差し掛かると、向かう先から号令や掛け声のような雄々しい声が聞こえてきた。
よくよく目を凝らせば、剣を素振りしている人にランニングしている人、試合をしている人も見える。
どうやらこの先は訓練場のようだ。
「ここは人が多い。しっかり隠れていてくれ」
「はい!」
周囲の観察はおしまいにして、すぽんと頭までポケットの中に収まる。
訓練場の一角へと歩を進めていたクロが、何かに気付いたようにぴたりと足を止めた。
どうしたのだろうと見上げると、一拍遅れて進行方向から呼びかける声があった。
「クローヴェル~! ちょうどいい所に来たねぇ!」
「……げっ」
33
あなたにおすすめの小説
異世界は『一妻多夫制』!?溺愛にすら免疫がない私にたくさんの夫は無理です!?
すずなり。
恋愛
ひょんなことから異世界で赤ちゃんに生まれ変わった私。
一人の男の人に拾われて育ててもらうけど・・・成人するくらいから回りがなんだかおかしなことに・・・。
「俺とデートしない?」
「僕と一緒にいようよ。」
「俺だけがお前を守れる。」
(なんでそんなことを私にばっかり言うの!?)
そんなことを思ってる時、父親である『シャガ』が口を開いた。
「何言ってんだ?この世界は男が多くて女が少ない。たくさん子供を産んでもらうために、何人とでも結婚していいんだぞ?」
「・・・・へ!?」
『一妻多夫制』の世界で私はどうなるの!?
※お話は全て想像の世界になります。現実世界とはなんの関係もありません。
※誤字脱字・表現不足は重々承知しております。日々精進いたしますのでご容赦ください。
ただただ暇つぶしに楽しんでいただけると幸いです。すずなり。
推しの幸せをお願いしたら異世界に飛ばされた件について
あかね
恋愛
いつも推しは不遇で、現在の推しの死亡フラグを年末の雑誌で立てられたので、新年に神社で推しの幸せをお願いしたら、翌日異世界に飛ばされた話。無事、推しとは会えましたが、同居とか無理じゃないですか。
落ちて拾われて売られて買われた私
ざっく
恋愛
この世界に来た日のことは、もうあまり覚えていない。ある日突然、知らない場所にいて、拾われて売られて遊女になった。そんな私を望んでくれた人がいた。勇者だと讃えられている彼が、私の特殊能力を見初め、身請けしてくれることになった。
最終的には溺愛になる予定です。
男嫌いな王女と、帰ってきた筆頭魔術師様の『執着的指導』 ~魔道具は大人の玩具じゃありません~
花虎
恋愛
魔術大国カリューノスの現国王の末っ子である第一王女エレノアは、その見た目から妖精姫と呼ばれ、可愛がられていた。
だが、10歳の頃男の家庭教師に誘拐されかけたことをきっかけに大人の男嫌いとなってしまう。そんなエレノアの遊び相手として送り込まれた美少女がいた。……けれどその正体は、兄王子の親友だった。
エレノアは彼を気に入り、嫌がるのもかまわずいたずらまがいにちょっかいをかけていた。けれど、いつの間にか彼はエレノアの前から去り、エレノアも誘拐の恐ろしい記憶を封印すると共に少年を忘れていく。
そんなエレノアの前に、可愛がっていた男の子が八年越しに大人になって再び現れた。
「やっと、あなたに復讐できる」
歪んだ復讐心と執着で魔道具を使ってエレノアに快楽責めを仕掛けてくる美形の宮廷魔術師リアン。
彼の真意は一体どこにあるのか……わからないままエレノアは彼に惹かれていく。
過去の出来事で男嫌いとなり引きこもりになってしまった王女(18)×王女に執着するヤンデレ天才宮廷魔術師(21)のラブコメです。
※ムーンライトノベルにも掲載しております。
人狼な幼妻は夫が変態で困り果てている
井中かわず
恋愛
古い魔法契約によって強制的に結ばれたマリアとシュヤンの14歳年の離れた夫婦。それでも、シュヤンはマリアを愛していた。
それはもう深く愛していた。
変質的、偏執的、なんとも形容しがたいほどの狂気の愛情を注ぐシュヤン。異常さを感じながらも、なんだかんだでシュヤンが好きなマリア。
これもひとつの夫婦愛の形…なのかもしれない。
全3章、1日1章更新、完結済
※特に物語と言う物語はありません
※オチもありません
※ただひたすら時系列に沿って変態したりイチャイチャしたりする話が続きます。
※主人公の1人(夫)が気持ち悪いです。
借金まみれで高級娼館で働くことになった子爵令嬢、密かに好きだった幼馴染に買われる
しおの
恋愛
乙女ゲームの世界に転生した主人公。しかしゲームにはほぼ登場しないモブだった。
いつの間にか父がこさえた借金を返すため、高級娼館で働くことに……
しかしそこに現れたのは幼馴染で……?
次期騎士団長の秘密を知ってしまったら、迫られ捕まってしまいました
Karamimi
恋愛
侯爵令嬢で貴族学院2年のルミナスは、元騎士団長だった父親を8歳の時に魔物討伐で亡くした。一家の大黒柱だった父を亡くしたことで、次期騎士団長と期待されていた兄は騎士団を辞め、12歳という若さで侯爵を継いだ。
そんな兄を支えていたルミナスは、ある日貴族学院3年、公爵令息カルロスの意外な姿を見てしまった。学院卒院後は騎士団長になる事も決まっているうえ、容姿端麗で勉学、武術も優れているまさに完璧公爵令息の彼とはあまりにも違う姿に、笑いが止まらない。
お兄様の夢だった騎士団長の座を奪ったと、一方的にカルロスを嫌っていたルミナスだが、さすがにこの秘密は墓場まで持って行こう。そう決めていたのだが、翌日カルロスに捕まり、鼻息荒く迫って来る姿にドン引きのルミナス。
挙句の果てに“ルミタン”だなんて呼ぶ始末。もうあの男に関わるのはやめよう、そう思っていたのに…
意地っ張りで素直になれない令嬢、ルミナスと、ちょっと気持ち悪いがルミナスを誰よりも愛している次期騎士団長、カルロスが幸せになるまでのお話しです。
よろしくお願いしますm(__)m
辺境のスローライフを満喫したいのに、料理が絶品すぎて冷酷騎士団長に囲い込まれました
腐ったバナナ
恋愛
異世界に転移した元会社員のミサキは、現代の調味料と調理技術というチート能力を駆使し、辺境の森で誰にも邪魔されない静かなスローライフを送ることを目指していた。
しかし、彼女の作る絶品の料理の香りは、辺境を守る冷酷な「鉄血」騎士団長ガイウスを引き寄せてしまった。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる