61 / 165
21~30話
赤に染まる【下】
しおりを挟む
「ヒナ……?」
「私のことなんてどうだっていい! 私は『クロの』心配をしてるの!!! ひどい怪我だったらどうしようって……、血がたくさん出て、しっ、死んじゃったらどうしようって……、怖くって、心配で、私……、……っ」
眼球ごと溶け落ちてしまいそうなほどにぽろぽろとあふれ出る涙を、太い親指の腹が遠慮がちに拭う。
「……俺の身を?」
「あっ当たり前、でしょっ! クロのことっ、好き、だから……っ! 心配するに、決まっ……、うぅぅ……っ」
心配と、安心と、八つ当たりめいた怒りと。
今ようやく気付いたのだ。
見知らぬ異世界に放り出されたにも関わらず、『飛ばされたのがここでよかった』と思えたのも、前向きでいられたのも、全部――クロのおかげだ。
クロが私を受け入れてくれたから。一緒に過ごしてくれたから。何の繋がりもなくなった元の世界より、ここで生きてみようと思えた。
クロのいる、この世界で――――。
ぐしょぐしょに泣き暮れる私を、クロがそっと顔の高さに抱き上げる。
「ヒナ、すまなかった……。俺の身を案じてくれてありがとう」
「っ、でもっ、なんにもできなっ……から……」
ぶんぶんと首を振る。
お礼を言われるようなことなんて、何一つしていない。
ただ泣くばかりの自分の無力さに、腹が立ってしょうがないのに。
「そんなことはない。こんなにも心から心配してもらったのは初めてだ。地位でもない、責任でもない、他ならぬ俺自身を」
「でも……っ」
「嬉しいよ」
目尻に溜まった涙を、ちゅっとやわらかな熱が吸い上げた。
「…………へ?」
突然の出来事にぱちぱちと瞬けば、反対の目尻からころりと雫が零れて、またちゅっと吸い上げられる。
離れていく唇を、真っ赤な顔で見つめ……。
頭の中では、先日聞いた『食べてしまいたい』というクロの言葉が俄然現実味を帯びて再生されるのだった――。
「私のことなんてどうだっていい! 私は『クロの』心配をしてるの!!! ひどい怪我だったらどうしようって……、血がたくさん出て、しっ、死んじゃったらどうしようって……、怖くって、心配で、私……、……っ」
眼球ごと溶け落ちてしまいそうなほどにぽろぽろとあふれ出る涙を、太い親指の腹が遠慮がちに拭う。
「……俺の身を?」
「あっ当たり前、でしょっ! クロのことっ、好き、だから……っ! 心配するに、決まっ……、うぅぅ……っ」
心配と、安心と、八つ当たりめいた怒りと。
今ようやく気付いたのだ。
見知らぬ異世界に放り出されたにも関わらず、『飛ばされたのがここでよかった』と思えたのも、前向きでいられたのも、全部――クロのおかげだ。
クロが私を受け入れてくれたから。一緒に過ごしてくれたから。何の繋がりもなくなった元の世界より、ここで生きてみようと思えた。
クロのいる、この世界で――――。
ぐしょぐしょに泣き暮れる私を、クロがそっと顔の高さに抱き上げる。
「ヒナ、すまなかった……。俺の身を案じてくれてありがとう」
「っ、でもっ、なんにもできなっ……から……」
ぶんぶんと首を振る。
お礼を言われるようなことなんて、何一つしていない。
ただ泣くばかりの自分の無力さに、腹が立ってしょうがないのに。
「そんなことはない。こんなにも心から心配してもらったのは初めてだ。地位でもない、責任でもない、他ならぬ俺自身を」
「でも……っ」
「嬉しいよ」
目尻に溜まった涙を、ちゅっとやわらかな熱が吸い上げた。
「…………へ?」
突然の出来事にぱちぱちと瞬けば、反対の目尻からころりと雫が零れて、またちゅっと吸い上げられる。
離れていく唇を、真っ赤な顔で見つめ……。
頭の中では、先日聞いた『食べてしまいたい』というクロの言葉が俄然現実味を帯びて再生されるのだった――。
33
あなたにおすすめの小説
異世界は『一妻多夫制』!?溺愛にすら免疫がない私にたくさんの夫は無理です!?
すずなり。
恋愛
ひょんなことから異世界で赤ちゃんに生まれ変わった私。
一人の男の人に拾われて育ててもらうけど・・・成人するくらいから回りがなんだかおかしなことに・・・。
「俺とデートしない?」
「僕と一緒にいようよ。」
「俺だけがお前を守れる。」
(なんでそんなことを私にばっかり言うの!?)
そんなことを思ってる時、父親である『シャガ』が口を開いた。
「何言ってんだ?この世界は男が多くて女が少ない。たくさん子供を産んでもらうために、何人とでも結婚していいんだぞ?」
「・・・・へ!?」
『一妻多夫制』の世界で私はどうなるの!?
※お話は全て想像の世界になります。現実世界とはなんの関係もありません。
※誤字脱字・表現不足は重々承知しております。日々精進いたしますのでご容赦ください。
ただただ暇つぶしに楽しんでいただけると幸いです。すずなり。
落ちて拾われて売られて買われた私
ざっく
恋愛
この世界に来た日のことは、もうあまり覚えていない。ある日突然、知らない場所にいて、拾われて売られて遊女になった。そんな私を望んでくれた人がいた。勇者だと讃えられている彼が、私の特殊能力を見初め、身請けしてくれることになった。
最終的には溺愛になる予定です。
男嫌いな王女と、帰ってきた筆頭魔術師様の『執着的指導』 ~魔道具は大人の玩具じゃありません~
花虎
恋愛
魔術大国カリューノスの現国王の末っ子である第一王女エレノアは、その見た目から妖精姫と呼ばれ、可愛がられていた。
だが、10歳の頃男の家庭教師に誘拐されかけたことをきっかけに大人の男嫌いとなってしまう。そんなエレノアの遊び相手として送り込まれた美少女がいた。……けれどその正体は、兄王子の親友だった。
エレノアは彼を気に入り、嫌がるのもかまわずいたずらまがいにちょっかいをかけていた。けれど、いつの間にか彼はエレノアの前から去り、エレノアも誘拐の恐ろしい記憶を封印すると共に少年を忘れていく。
そんなエレノアの前に、可愛がっていた男の子が八年越しに大人になって再び現れた。
「やっと、あなたに復讐できる」
歪んだ復讐心と執着で魔道具を使ってエレノアに快楽責めを仕掛けてくる美形の宮廷魔術師リアン。
彼の真意は一体どこにあるのか……わからないままエレノアは彼に惹かれていく。
過去の出来事で男嫌いとなり引きこもりになってしまった王女(18)×王女に執着するヤンデレ天才宮廷魔術師(21)のラブコメです。
※ムーンライトノベルにも掲載しております。
推しの幸せをお願いしたら異世界に飛ばされた件について
あかね
恋愛
いつも推しは不遇で、現在の推しの死亡フラグを年末の雑誌で立てられたので、新年に神社で推しの幸せをお願いしたら、翌日異世界に飛ばされた話。無事、推しとは会えましたが、同居とか無理じゃないですか。
次期騎士団長の秘密を知ってしまったら、迫られ捕まってしまいました
Karamimi
恋愛
侯爵令嬢で貴族学院2年のルミナスは、元騎士団長だった父親を8歳の時に魔物討伐で亡くした。一家の大黒柱だった父を亡くしたことで、次期騎士団長と期待されていた兄は騎士団を辞め、12歳という若さで侯爵を継いだ。
そんな兄を支えていたルミナスは、ある日貴族学院3年、公爵令息カルロスの意外な姿を見てしまった。学院卒院後は騎士団長になる事も決まっているうえ、容姿端麗で勉学、武術も優れているまさに完璧公爵令息の彼とはあまりにも違う姿に、笑いが止まらない。
お兄様の夢だった騎士団長の座を奪ったと、一方的にカルロスを嫌っていたルミナスだが、さすがにこの秘密は墓場まで持って行こう。そう決めていたのだが、翌日カルロスに捕まり、鼻息荒く迫って来る姿にドン引きのルミナス。
挙句の果てに“ルミタン”だなんて呼ぶ始末。もうあの男に関わるのはやめよう、そう思っていたのに…
意地っ張りで素直になれない令嬢、ルミナスと、ちょっと気持ち悪いがルミナスを誰よりも愛している次期騎士団長、カルロスが幸せになるまでのお話しです。
よろしくお願いしますm(__)m
兄みたいな騎士団長の愛が実は重すぎでした
鳥花風星
恋愛
代々騎士団寮の寮母を務める家に生まれたレティシアは、若くして騎士団の一つである「群青の騎士団」の寮母になり、
幼少の頃から仲の良い騎士団長のアスールは、そんなレティシアを陰からずっと見守っていた。レティシアにとってアスールは兄のような存在だが、次第に兄としてだけではない思いを持ちはじめてしまう。
アスールにとってもレティシアは妹のような存在というだけではないようで……。兄としてしか思われていないと思っているアスールはレティシアへの思いを拗らせながらどんどん膨らませていく。
すれ違う恋心、アスールとライバルの心理戦。拗らせ溺愛が激しい、じれじれだけどハッピーエンドです。
☆他投稿サイトにも掲載しています。
☆番外編はアスールの同僚ノアールがメインの話になっています。
今夜は帰さない~憧れの騎士団長と濃厚な一夜を
澤谷弥(さわたに わたる)
恋愛
ラウニは騎士団で働く事務官である。
そんな彼女が仕事で第五騎士団団長であるオリベルの執務室を訪ねると、彼の姿はなかった。
だが隣の部屋からは、彼が苦しそうに呻いている声が聞こえてきた。
そんな彼を助けようと隣室へと続く扉を開けたラウニが目にしたのは――。
辺境のスローライフを満喫したいのに、料理が絶品すぎて冷酷騎士団長に囲い込まれました
腐ったバナナ
恋愛
異世界に転移した元会社員のミサキは、現代の調味料と調理技術というチート能力を駆使し、辺境の森で誰にも邪魔されない静かなスローライフを送ることを目指していた。
しかし、彼女の作る絶品の料理の香りは、辺境を守る冷酷な「鉄血」騎士団長ガイウスを引き寄せてしまった。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる