ちっちゃくて可愛いものがお好きですか。そうですかそうですか。もう十分わかったので放してもらっていいですか。

南田 此仁

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21~30話

赤に染まる【下】

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「ヒナ……?」

「私のことなんてどうだっていい! 私は『クロの』心配をしてるの!!! ひどい怪我だったらどうしようって……、血がたくさん出て、しっ、死んじゃったらどうしようって……、怖くって、心配で、私……、……っ」

 眼球ごと溶け落ちてしまいそうなほどにぽろぽろとあふれ出る涙を、太い親指の腹が遠慮がちに拭う。

「……俺の身を?」

「あっ当たり前、でしょっ! クロのことっ、好き、だから……っ! 心配するに、決まっ……、うぅぅ……っ」

 心配と、安心と、八つ当たりめいた怒りと。
 今ようやく気付いたのだ。
 見知らぬ異世界に放り出されたにも関わらず、『飛ばされたのがここで』と思えたのも、前向きでいられたのも、全部――クロのおかげだ。
 クロが私を受け入れてくれたから。一緒に過ごしてくれたから。何の繋がりもなくなった元の世界より、ここで生きてみようと思えた。
 クロのいる、この世界で――――。

 ぐしょぐしょに泣き暮れる私を、クロがそっと顔の高さに抱き上げる。

「ヒナ、すまなかった……。俺の身を案じてくれてありがとう」

「っ、でもっ、なんにもできなっ……から……」

 ぶんぶんと首を振る。
 お礼を言われるようなことなんて、何一つしていない。
 ただ泣くばかりの自分の無力さに、腹が立ってしょうがないのに。

「そんなことはない。こんなにも心から心配してもらったのは初めてだ。地位でもない、責任でもない、他ならぬ俺自身を」

「でも……っ」

「嬉しいよ」

 目尻に溜まった涙を、ちゅっとやわらかな熱が吸い上げた。

「…………へ?」

 突然の出来事にぱちぱちと瞬けば、反対の目尻からころりと雫が零れて、またちゅっと吸い上げられる。

 離れていく唇を、真っ赤な顔で見つめ……。
 頭の中では、先日聞いた『食べてしまいたい』というクロの言葉が俄然がぜん現実味を帯びて再生されるのだった――。
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