ちっちゃくて可愛いものがお好きですか。そうですかそうですか。もう十分わかったので放してもらっていいですか。

南田 此仁

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21~30話

怪我のチェックもほどほどに【上】

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 コンコンコンコン

 頬に口付けられた驚きですっかり涙も止まり呆然とクロを見つめ返していた私は、不意に響いたノックの音にぴゃっと飛び跳ねた。

「ヤシュームです。頼まれたものをお持ちしました」

 わたわたと手から降りてクロの陰に隠れる。

「……入れ」

「失礼いたします」

 ガチャリと扉を開けて入室した人物を、クロの背後からこっそりと観察する。
 ヤシュームと名乗ったこの人はたしか、隠し部屋の存在を知らされている『信頼できる人』だ。

 長いブルーシルバーの髪をきっちりと後ろでまとめ、細いシルバーフレームの眼鏡をかけた、見るからに真面目そうな細身の男性。
 クロほどではないけれど、この人もスラリとして背が高い。

「頼まれていた書類をお持ちしました。……こんなときくらい、何もなさらず休まれてもいいでしょうに」

 ヤシュームはクロの手元にベッドテーブルをセットして、抱えていた書類をどさりと載せた。

「そうもいかない。俺の目が離れるのを心待ちにしている連中がいるからな」

「……お身体のほうは、もうよろしいのですか?」

「ああ、咄嗟に払い落としたから切っ先が肩を掠めた程度だ。失った血が戻るまで、大人しく寝ていろとは言われたが」

 クロの言葉を聞き、ヤシュームはほっとしたように眉尻を下げた。
 私も改めてほっと胸を撫で下ろす。

「ご無事で何よりです」

「――で、犯人は捕らえたのか?」

 一段低くなったクロの声に、私も身を乗り出してヤシュームの答えを待つ。

「はい、見習い騎士の一人でした。『素振り中に剣が手からすっぽ抜けてしまった』と話しているようです」

 訓練場にそんな危険が潜んでいたとは。不注意な見習い騎士にはぜひとも厳重な処分を求めたいところだ。一歩間違えば取り返しのつかない大惨事を招いていたのだから。
 もしまた訓練場を訪れることがあれば、私も最大限周囲を警戒しておこう。

「何かしら繋がりが出ればいいが」

「引き続き尋問は続けますが……難しいでしょうね」

「だろうな」

 ヤシュームが、キッと眉を吊り上げる。

「こういった事態を招かないためにも、護衛はちゃんとお側に置いてくださいと何度も申し上げているではありませんか!」

「側に置いた護衛が俺の魔力干渉で倒れたのでは、本末転倒だろう」

「しかし……、そこは頻繁ひんぱんに交代するなりして、どうにか……」

 自分でも現実性が薄いと思っているのか、ヤシュームの言葉は尻すぼみに消えていった。
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