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21~30話
知らぬは私ばかりなり【中】
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「気に……? 心からクロのことを思ってるのが伝わってくるので、信じられるいい人だなぁとは思いますよ」
「なら俺のことは?」
「?? 何よりも信じてるし、大好きですよ? クロが一緒にいてくれるから、寂しくないんです」
何も疑うことなく、こんな姿の私をありのまま受け入れてくれるクロがいる。見知らぬ世界のなかで、それがどれほど心の支えになっているか。
本当は離れて暮らす未来なんて考えたくないほどに、一緒にいたいと思っている。――けれど、そんな負担になるとわかっていることを言えるわけがない。
クロは何がお気に召したのか満足そうに口角を上げ、一つ提案をしてくれた。
「魔力の制御に関してなら、俺で力になれるだろう。ヒナのそれは正確には魔力ではないが、制御の要領は同じはずだ。落ち着いて集中できる時間……そうだな、就寝前にでも一緒に特訓してみるか?」
「! ぜひお願いしますっ!」
つまみ食いをしつつお菓子の城を探索して、二階の窓から顔を出す。
「どうだ、気に入ったか?」
「はい、とっても!! 本当に全部お菓子でできてるんですよ! 上には、ほら! 綺麗なステンドグラスまで!」
「それはよかった」
ピンク色のクッションを抱えて階段を駆け下り、こちらを眺めながらお茶を飲んでいるクロの元へと走り寄る。
「これ! このクッションが一番美味しかったです! クロも食べてみてください!」
苺のフィナンシェでできたクッションを差し出せば、眩しそうに目を細めたクロが私ごと手のひらに抱き上げた。
「一番のお気に入りを貰ってしまっていいのか?」
「はい! なんと、ソファまで同じ素材でできてるんですよ……!」
「それなら呼ばれよう」
私を口の近くに運んで、クロが「あーん」と口を開ける。
手渡すつもりで差し出していたのだけれど……。まあいいか、いつも食べさせてもらっているお返しだ。
綺麗に並んだ歯列の間に、ひょいっとクッションを放り込む。
もぐもぐと動いた唇は、ゆるく弧を描いて止まった。
「うん、美味いな。ありがとう」
「えへへ」
美味しいものは、分け合ったほうがさらに美味しくなるのだ。
クロと出逢ってからの食事はいつも、豪華な料理だということ以上にとても美味しく感じている。
「……そういえば、ヤシュームさんがクロのこと『デンカ』って呼んでませんでした?」
「ああ、これでも王太子だからな」
「へー……」
オータイシ……、
おうたいし……、
王……太子…………!?
じわじわと見開いた目が限界に達する。
「おっ、王子様ってことですか……!?」
「言ってなかったか?」
「聞いてなーーーーーーーいっ!!!!」
「なら俺のことは?」
「?? 何よりも信じてるし、大好きですよ? クロが一緒にいてくれるから、寂しくないんです」
何も疑うことなく、こんな姿の私をありのまま受け入れてくれるクロがいる。見知らぬ世界のなかで、それがどれほど心の支えになっているか。
本当は離れて暮らす未来なんて考えたくないほどに、一緒にいたいと思っている。――けれど、そんな負担になるとわかっていることを言えるわけがない。
クロは何がお気に召したのか満足そうに口角を上げ、一つ提案をしてくれた。
「魔力の制御に関してなら、俺で力になれるだろう。ヒナのそれは正確には魔力ではないが、制御の要領は同じはずだ。落ち着いて集中できる時間……そうだな、就寝前にでも一緒に特訓してみるか?」
「! ぜひお願いしますっ!」
つまみ食いをしつつお菓子の城を探索して、二階の窓から顔を出す。
「どうだ、気に入ったか?」
「はい、とっても!! 本当に全部お菓子でできてるんですよ! 上には、ほら! 綺麗なステンドグラスまで!」
「それはよかった」
ピンク色のクッションを抱えて階段を駆け下り、こちらを眺めながらお茶を飲んでいるクロの元へと走り寄る。
「これ! このクッションが一番美味しかったです! クロも食べてみてください!」
苺のフィナンシェでできたクッションを差し出せば、眩しそうに目を細めたクロが私ごと手のひらに抱き上げた。
「一番のお気に入りを貰ってしまっていいのか?」
「はい! なんと、ソファまで同じ素材でできてるんですよ……!」
「それなら呼ばれよう」
私を口の近くに運んで、クロが「あーん」と口を開ける。
手渡すつもりで差し出していたのだけれど……。まあいいか、いつも食べさせてもらっているお返しだ。
綺麗に並んだ歯列の間に、ひょいっとクッションを放り込む。
もぐもぐと動いた唇は、ゆるく弧を描いて止まった。
「うん、美味いな。ありがとう」
「えへへ」
美味しいものは、分け合ったほうがさらに美味しくなるのだ。
クロと出逢ってからの食事はいつも、豪華な料理だということ以上にとても美味しく感じている。
「……そういえば、ヤシュームさんがクロのこと『デンカ』って呼んでませんでした?」
「ああ、これでも王太子だからな」
「へー……」
オータイシ……、
おうたいし……、
王……太子…………!?
じわじわと見開いた目が限界に達する。
「おっ、王子様ってことですか……!?」
「言ってなかったか?」
「聞いてなーーーーーーーいっ!!!!」
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