103 / 165
31~40話
被害状況の確認と……【中】
しおりを挟む
大切な大切な宝物みたいに、すっぽりと両手に包み込まれる。
「クロ、クロ……!」
拐われてから一時間も経っていないというのに、この手のひらの温もりがひどく懐かしい。
寄せられた額にへばりついて、ぐりぐりと潤む目元を擦りつける。
クロが助けにきてくれた。私を探してくれた。
クロの側にさえいればもう大丈夫だと、心がほどけていく。
「……ねぇ~、いい加減その魔力放出やめてくれるぅ? 壊した備品もちゃ~んと弁償――ぅぐっ!」
ぐったりと机に突っ伏したまま顔だけをこちらに向けて不満を口にしたミディルアードが、鈍い呻き声を残して後方へ吹っ飛んだ。
ガッシャーンと派手な音を立てて棚に激突し、ボロ雑巾のように崩れ落ちてゲホゴホとひどく咳き込む。
突然椅子が爆発でもしたのかと驚いて下を見れば、クロの脚が真っ直ぐ横に突き出されているのが見えた。
「ヒナ、無事か!? 何かされなかったか!?」
ミディルアードのことなど意に介さず、クロは迷子になった子どものような、今にも泣き出しそうな顔で私を覗き込む。
クロまで泣きそうな顔をしていたら、私だってますます涙が滲んできてしまう。
「いろいろされました……」
潤む瞳でそう口にした途端、クロの顔から色が消えた。
「――ヒナ、少々待っていてくれるか? 元凶を消してくる」
私に語りかける口調は優しいけれど、め、目が……。
空洞の中を覗き込んでいるかのような感情の読めない瞳が恐ろしくて、涙も引っ込む。
「あ、あの……、私のためにクロが人殺しになっちゃうのは嫌です」
「ゲホッ、僕のことはぁ……?」
「ヒナの心と身体に取り返しのつかない傷をつけたんだ。死を以て――」
「待って待って! 待ってください! 私、そこまでのことはされてませんっ!」
ミディルアードを庇うつもりはさらさらない。さらさらないけれど、私が深く傷ついたと誤解したままクロが悲しむことになるのは嫌だ。
「クロ、クロ……!」
拐われてから一時間も経っていないというのに、この手のひらの温もりがひどく懐かしい。
寄せられた額にへばりついて、ぐりぐりと潤む目元を擦りつける。
クロが助けにきてくれた。私を探してくれた。
クロの側にさえいればもう大丈夫だと、心がほどけていく。
「……ねぇ~、いい加減その魔力放出やめてくれるぅ? 壊した備品もちゃ~んと弁償――ぅぐっ!」
ぐったりと机に突っ伏したまま顔だけをこちらに向けて不満を口にしたミディルアードが、鈍い呻き声を残して後方へ吹っ飛んだ。
ガッシャーンと派手な音を立てて棚に激突し、ボロ雑巾のように崩れ落ちてゲホゴホとひどく咳き込む。
突然椅子が爆発でもしたのかと驚いて下を見れば、クロの脚が真っ直ぐ横に突き出されているのが見えた。
「ヒナ、無事か!? 何かされなかったか!?」
ミディルアードのことなど意に介さず、クロは迷子になった子どものような、今にも泣き出しそうな顔で私を覗き込む。
クロまで泣きそうな顔をしていたら、私だってますます涙が滲んできてしまう。
「いろいろされました……」
潤む瞳でそう口にした途端、クロの顔から色が消えた。
「――ヒナ、少々待っていてくれるか? 元凶を消してくる」
私に語りかける口調は優しいけれど、め、目が……。
空洞の中を覗き込んでいるかのような感情の読めない瞳が恐ろしくて、涙も引っ込む。
「あ、あの……、私のためにクロが人殺しになっちゃうのは嫌です」
「ゲホッ、僕のことはぁ……?」
「ヒナの心と身体に取り返しのつかない傷をつけたんだ。死を以て――」
「待って待って! 待ってください! 私、そこまでのことはされてませんっ!」
ミディルアードを庇うつもりはさらさらない。さらさらないけれど、私が深く傷ついたと誤解したままクロが悲しむことになるのは嫌だ。
43
あなたにおすすめの小説
異世界は『一妻多夫制』!?溺愛にすら免疫がない私にたくさんの夫は無理です!?
すずなり。
恋愛
ひょんなことから異世界で赤ちゃんに生まれ変わった私。
一人の男の人に拾われて育ててもらうけど・・・成人するくらいから回りがなんだかおかしなことに・・・。
「俺とデートしない?」
「僕と一緒にいようよ。」
「俺だけがお前を守れる。」
(なんでそんなことを私にばっかり言うの!?)
そんなことを思ってる時、父親である『シャガ』が口を開いた。
「何言ってんだ?この世界は男が多くて女が少ない。たくさん子供を産んでもらうために、何人とでも結婚していいんだぞ?」
「・・・・へ!?」
『一妻多夫制』の世界で私はどうなるの!?
※お話は全て想像の世界になります。現実世界とはなんの関係もありません。
※誤字脱字・表現不足は重々承知しております。日々精進いたしますのでご容赦ください。
ただただ暇つぶしに楽しんでいただけると幸いです。すずなり。
推しの幸せをお願いしたら異世界に飛ばされた件について
あかね
恋愛
いつも推しは不遇で、現在の推しの死亡フラグを年末の雑誌で立てられたので、新年に神社で推しの幸せをお願いしたら、翌日異世界に飛ばされた話。無事、推しとは会えましたが、同居とか無理じゃないですか。
極上イケメン先生が秘密の溺愛教育に熱心です
朝陽七彩
恋愛
私は。
「夕鶴、こっちにおいで」
現役の高校生だけど。
「ずっと夕鶴とこうしていたい」
担任の先生と。
「夕鶴を誰にも渡したくない」
付き合っています。
♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡
神城夕鶴(かみしろ ゆづる)
軽音楽部の絶対的エース
飛鷹隼理(ひだか しゅんり)
アイドル的存在の超イケメン先生
♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡
彼の名前は飛鷹隼理くん。
隼理くんは。
「夕鶴にこうしていいのは俺だけ」
そう言って……。
「そんなにも可愛い声を出されたら……俺、止められないよ」
そして隼理くんは……。
……‼
しゅっ……隼理くん……っ。
そんなことをされたら……。
隼理くんと過ごす日々はドキドキとわくわくの連続。
……だけど……。
え……。
誰……?
誰なの……?
その人はいったい誰なの、隼理くん。
ドキドキとわくわくの連続だった私に突如現れた隼理くんへの疑惑。
その疑惑は次第に大きくなり、私の心の中を不安でいっぱいにさせる。
でも。
でも訊けない。
隼理くんに直接訊くことなんて。
私にはできない。
私は。
私は、これから先、一体どうすればいいの……?
今夜は帰さない~憧れの騎士団長と濃厚な一夜を
澤谷弥(さわたに わたる)
恋愛
ラウニは騎士団で働く事務官である。
そんな彼女が仕事で第五騎士団団長であるオリベルの執務室を訪ねると、彼の姿はなかった。
だが隣の部屋からは、彼が苦しそうに呻いている声が聞こえてきた。
そんな彼を助けようと隣室へと続く扉を開けたラウニが目にしたのは――。
『身長185cmの私が異世界転移したら、「ちっちゃくて可愛い」って言われました!? 〜女神ルミエール様の気まぐれ〜』
透子(とおるこ)
恋愛
身長185cmの女子大生・三浦ヨウコ。
「ちっちゃくて可愛い女の子に、私もなってみたい……」
そんな密かな願望を抱えながら、今日もバイト帰りにクタクタになっていた――はずが!
突然現れたテンションMAXの女神ルミエールに「今度はこの子に決〜めた☆」と宣言され、理由もなく異世界に強制転移!?
気づけば、森の中で虫に囲まれ、何もわからずパニック状態!
けれど、そこは“3メートル超えの巨人たち”が暮らす世界で――
「なんて可憐な子なんだ……!」
……え、私が“ちっちゃくて可愛い”枠!?
これは、背が高すぎて自信が持てなかった女子大生が、異世界でまさかのモテ無双(?)!?
ちょっと変わった視点で描く、逆転系・異世界ラブコメ、ここに開幕☆
人狼な幼妻は夫が変態で困り果てている
井中かわず
恋愛
古い魔法契約によって強制的に結ばれたマリアとシュヤンの14歳年の離れた夫婦。それでも、シュヤンはマリアを愛していた。
それはもう深く愛していた。
変質的、偏執的、なんとも形容しがたいほどの狂気の愛情を注ぐシュヤン。異常さを感じながらも、なんだかんだでシュヤンが好きなマリア。
これもひとつの夫婦愛の形…なのかもしれない。
全3章、1日1章更新、完結済
※特に物語と言う物語はありません
※オチもありません
※ただひたすら時系列に沿って変態したりイチャイチャしたりする話が続きます。
※主人公の1人(夫)が気持ち悪いです。
借金まみれで高級娼館で働くことになった子爵令嬢、密かに好きだった幼馴染に買われる
しおの
恋愛
乙女ゲームの世界に転生した主人公。しかしゲームにはほぼ登場しないモブだった。
いつの間にか父がこさえた借金を返すため、高級娼館で働くことに……
しかしそこに現れたのは幼馴染で……?
宿敵の家の当主を妻に貰いました~妻は可憐で儚くて優しくて賢くて可愛くて最高です~
紗沙
恋愛
剣の名家にして、国の南側を支配する大貴族フォルス家。
そこの三男として生まれたノヴァは一族のみが扱える秘技が全く使えない、出来損ないというレッテルを貼られ、辛い子供時代を過ごした。
大人になったノヴァは小さな領地を与えられるものの、仕事も家族からの期待も、周りからの期待も0に等しい。
しかし、そんなノヴァに舞い込んだ一件の縁談話。相手は国の北側を支配する大貴族。
フォルス家とは長年の確執があり、今は栄華を極めているアークゲート家だった。
しかも縁談の相手は、まさかのアークゲート家当主・シアで・・・。
「あのときからずっと……お慕いしています」
かくして、何も持たないフォルス家の三男坊は性格良し、容姿良し、というか全てが良しの妻を迎え入れることになる。
ノヴァの運命を変える、全てを与えてこようとする妻を。
「人はアークゲート家の当主を恐ろしいとか、血も涙もないとか、冷酷とか散々に言うけど、
シアは可愛いし、優しいし、賢いし、完璧だよ」
あまり深く考えないノヴァと、彼にしか自分の素を見せないシア、二人の結婚生活が始まる。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる