ちっちゃくて可愛いものがお好きですか。そうですかそうですか。もう十分わかったので放してもらっていいですか。

南田 此仁

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31~40話

溺れる者は犯人をも掴む【上】

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「ヒナが、人間……?」

 クロの呟きに青ざめる。
 なんて重要なことを忘れていたんだろう!
 それ! それだよ! 『クロに言っておかなきゃいけないこと』!!

「――はっ。城内で変化の魔法が使えないことを忘れたとでも? 今すぐ息の根を止められたくなければ、二度とヒナを『ソレ』と呼ぶな」

 ミディルアードに一瞥いちべつをくれ、クロが一蹴する。
 その手のひらを、慌ててぺちぺちと叩いて呼びかけた。

「クロっ! クロっ!」

「ん? どうした、ヒナ」

 こちらに戻った視線を真正面から捉えて、深く息を吸い込み。


「私、実は人間なんです――っ!」





 私の告白に、クロはぱちりと一回瞬いて口を開いた。

「それは……ヒナのように小さな人族がいるということか?」

「いえ、そうじゃなくって……。本当は、クロみたいに普通の大きさの人間なんです!」

 眉は情けなく八の字を描きながらも、ぐっと目に力を込めて真剣に訴える。
 嘘をつくつもりも隠すつもりもなかったのだ。
 ミディルアードに指摘されてから打ち明けるなんて、正体を隠し通そうとしていたと思われても仕方がない状況だけれど……。

「ほらねぇ~」

「隠すつもりはなかったんです、本当に……。ただ、言うタイミングを逃しちゃって……」

 今さら何を言ったところで言い訳にしか聞こえないだろう。
 私に向けられるこの優しい眼差しに、猜疑心さいぎしん嫌悪けんおが混ざったらどうしよう。クロにだけは、信じていてもらいたかったのに。

「……わかった。その話は、この罪人を衛兵に引き渡してから二人きりでゆっくり聞こう」

 冷静な声からは感情が読めない。
 怒ってる? 呆れてる? いっそのこと、そのどちらかであればいい。
 騙されていたのだと傷つけ、悲しませてしまうよりは……。

 部屋を満たしていた温かな空気が、すぅっと引いていく。
 おそらく衛兵を呼ぶために、解放していた魔力を抑制したのだろう。

「ふぅ~、きつかったぁ。……でもさぁクローヴェル。気付いてて放置してるんだか本気で気付いてないんだか知らないけどぉ、そのままにしておくとソ――の小さいの、もうすぐと思うよぉ?」

「えっ!?」

 『死』という言葉に思わず反応してしまう。
 勢いよくミディルアードを振り返ってから、衛兵に引き渡されないためのハッタリかもしれないという可能性に気付いた。


「――どういうことだ」

 同じく反応を示したクロの、地を這うような声にぶるりと身を震わせる。

 ミディルアードはのんびりとした動作で立ち上がると、ガラス片や謎の粉末のついた白衣をぱたぱたとはたきながら天気の話でもするかのように言った。

「そのまんまの意味だよぉ。さっき調けど、魂と器のサイズが全然合ってない。持ってあと半月ってところかな。キミもどうやって小さいままでいるんだか知らないけどさぁ、肉体の損傷、始まりかけてるよねぇ~?」
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