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41~50話
おくすりの時間です【下】
しおりを挟む…………ゴクッ、……ゴクッ、……
クロが慎重に薬液を押し出すのに合わせ、到底可食物とは思えない真っ青なインクを強烈なえぐみと共に嚥下していく。
この量では飲みきるより先にお腹がパンパンになってしまうのではとも懸念したけれど、飲み込んだ薬はたっぷりの生姜を食べたあとのように、カァーッと喉の奥に広がる熱だけを残して染み込むように消えていった。
全身の血管を細かな粒子が流動するように、ざぁざぁと血液の流れを感じる。
心臓は破裂しそうなほど強く収縮を繰り返し、炎の塊を飲み込んだかのように身体の奥がぐらぐらと沸き立つ。
最後の一滴まで飲み干すと、クロが心配そうに私を覗き込んだ。
「どうだ?」
「身体が、すごく熱いです……」
私に触れているクロは何も感じていない様子だから、きっと本当に体温が上昇しているわけではないのだろう。
そう頭でわかってはいても、今にも全身が燃え出しそうだ。
「口述魔法より効きは遅いけど、百数えるくらいで効果が出るはずだよぉ。……ああ、服は脱いでおいたほうがいいんじゃない~? どうせ破けるだけだけど、部分的に負荷がかかってたら均一に拡大しないかもしれないしぃ」
「えっ」
突然もたらされた情報に、自分の身体を見下ろす。
元の大きさに戻ることで頭がいっぱいで、服のことなんて考えていなかった。
「服ごと大きくなるんじゃないのか!?」
「内用薬が服にまで効くわけないでしょぉ~? 生物と無生物じゃ薬の配合だって全然違うのにさぁ~」
そうこうしている間にも、二十秒ほど経っただろうか。
クロが焦ったように腰を浮かせる。
「おまえは今すぐ部屋を出ていけ」
「えぇ~、何かあったときに対処できなくなるよぉ?」
「扉の前で待機していろ。何かあれば呼ぶ」
さっさと行けとせっつかれて、ミディルアードが面倒くさそうに部屋を出ていく。
残りは、一分を切っただろうか。
「ヒナ、急いで服を脱ぐんだ」
「はい!」
ソファの上に降ろされ、慌ててカプセルを置いて服に手をかけ、はたと視線に気付いた。
「恥ずかしいのでクロもあっち向いててください!」
「しかし……」
「早く早くっ!」
お風呂場で二人して裸になるのと、明るい室内で一人だけ全裸になるのとではわけが違うのだ。
これも、クロにはわからない複雑な乙女心なのだろう。
「……服はこれを。何かあったら声を上げてくれ」
クロがロングジャケットを脱いでローテーブルに置く。少し離れた位置でソファに背を向けたのを確認すると、私は大慌てで服を脱ぎにかかった。
服を脱ぎ、肌着を脱ぎ、恥ずかしさに躊躇する暇もなく一思いに下着の紐を解くと同時に。
ひときわ強く――バクンと、心臓が弾けた。
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