ちっちゃくて可愛いものがお好きですか。そうですかそうですか。もう十分わかったので放してもらっていいですか。

南田 此仁

文字の大きさ
118 / 165
41~50話

まだちっちゃい!?【下】

しおりを挟む


「…………」

 部屋にクロと二人。
 変化魔法が使えないはずの城内で姿を保てていることを考えれば、たしかに私の大きさはこれで合っていたようだ。残念ながら……。

 クロは大きくなった私を見て、どう思っただろうか。
 そろりと振り返ると、クロが愕然がくぜんとした表情でこちらを見下ろしていた。

「クロ……あの、私……」

「大きくなったヒナが小さい……。可愛すぎる……」

「えっ?」

 一瞬自分に都合のいい言葉が聞こえた気がしたけれど、そんなはずはないと考えを打ち消す。
 深刻そうな顔をして何を言ったのかと聞き返せば、クロは上体を屈め、私の頬に手を添えてじっくりと顔を覗き込んだ。

 今までは大きさが違いすぎて、クロの整った顔を寄せられてもどこか美しい彫刻を間近に眺めているような気持ちだった。
 しかしこうして同じ人間サイズになってみると、格好いい男の人に鼻先が触れそうなほど顔を寄せられているという状況が、今さらながら恥ずかしくなってくる。

 クロは真剣な面持ちで熱を集めはじめた頬に手を滑らせ、摘まんだ耳をすりすりと撫で、髪に指を差し入れて地肌の頭部に触れた。

「んっ……」

 首筋に指を添え、つうと鎖骨まで撫で下ろされてぴくりと肩が跳ねる。
 私は裾を引きずるほど大きなロングジャケットにすっぽりと呑み込まれていて、頭と首元しか出ていないのだ。

 ジャケット越しの両肩を掴んだクロは、肩から腕の先まで中身が入っていることを確かめるようにきゅっきゅっと触れ下りる。
 手首まで下りて納得したように一つ頷くと、そのままひょいと私を抱き上げた。

「?」

 今の私の大きさであれば、運んでもらわなくても自力で移動できるのに。

 クロはソファに腰を下ろすと、脱ぎ散らかしたままになっていた『小さな私』の服をちょいちょいと畳んでローテーブルに置き、それをクッション代わりに丁重におじいちゃんのカプセルを乗せる。
 私はといえば、クロのももを跨ぐように向かい合わせに乗せられて、恥ずかしさに顔を上げられずにいた。

 だって手のひらの温かさだけじゃない、クロのすべてを感じるのだ。

 ローテーブルへ手を伸ばすたび抱き込まれる格好になって、クロの香りと温もりが私を包む。
 髪にかかる息遣いも、呼吸に合わせて上下する胸も、お尻の下に敷いた筋肉質な脚の硬さも、全身で、五感すべてでクロを感じる。

「ヒナ」

 落ち着いた低音が鼓膜を揺らし、隠すすべもなくゆるゆると赤い顔を上げた。
しおりを挟む
感想 36

あなたにおすすめの小説

推しの幸せをお願いしたら異世界に飛ばされた件について

あかね
恋愛
いつも推しは不遇で、現在の推しの死亡フラグを年末の雑誌で立てられたので、新年に神社で推しの幸せをお願いしたら、翌日異世界に飛ばされた話。無事、推しとは会えましたが、同居とか無理じゃないですか。

落ちて拾われて売られて買われた私

ざっく
恋愛
この世界に来た日のことは、もうあまり覚えていない。ある日突然、知らない場所にいて、拾われて売られて遊女になった。そんな私を望んでくれた人がいた。勇者だと讃えられている彼が、私の特殊能力を見初め、身請けしてくれることになった。 最終的には溺愛になる予定です。

男嫌いな王女と、帰ってきた筆頭魔術師様の『執着的指導』 ~魔道具は大人の玩具じゃありません~

花虎
恋愛
魔術大国カリューノスの現国王の末っ子である第一王女エレノアは、その見た目から妖精姫と呼ばれ、可愛がられていた。  だが、10歳の頃男の家庭教師に誘拐されかけたことをきっかけに大人の男嫌いとなってしまう。そんなエレノアの遊び相手として送り込まれた美少女がいた。……けれどその正体は、兄王子の親友だった。  エレノアは彼を気に入り、嫌がるのもかまわずいたずらまがいにちょっかいをかけていた。けれど、いつの間にか彼はエレノアの前から去り、エレノアも誘拐の恐ろしい記憶を封印すると共に少年を忘れていく。  そんなエレノアの前に、可愛がっていた男の子が八年越しに大人になって再び現れた。 「やっと、あなたに復讐できる」 歪んだ復讐心と執着で魔道具を使ってエレノアに快楽責めを仕掛けてくる美形の宮廷魔術師リアン。  彼の真意は一体どこにあるのか……わからないままエレノアは彼に惹かれていく。 過去の出来事で男嫌いとなり引きこもりになってしまった王女(18)×王女に執着するヤンデレ天才宮廷魔術師(21)のラブコメです。 ※ムーンライトノベルにも掲載しております。

今夜は帰さない~憧れの騎士団長と濃厚な一夜を

澤谷弥(さわたに わたる)
恋愛
ラウニは騎士団で働く事務官である。 そんな彼女が仕事で第五騎士団団長であるオリベルの執務室を訪ねると、彼の姿はなかった。 だが隣の部屋からは、彼が苦しそうに呻いている声が聞こえてきた。 そんな彼を助けようと隣室へと続く扉を開けたラウニが目にしたのは――。

辺境のスローライフを満喫したいのに、料理が絶品すぎて冷酷騎士団長に囲い込まれました

腐ったバナナ
恋愛
異世界に転移した元会社員のミサキは、現代の調味料と調理技術というチート能力を駆使し、辺境の森で誰にも邪魔されない静かなスローライフを送ることを目指していた。 しかし、彼女の作る絶品の料理の香りは、辺境を守る冷酷な「鉄血」騎士団長ガイウスを引き寄せてしまった。

【R18】純粋無垢なプリンセスは、婚礼した冷徹と噂される美麗国王に三日三晩の初夜で蕩かされるほど溺愛される

奏音 美都
恋愛
数々の困難を乗り越えて、ようやく誓約の儀を交わしたグレートブルタン国のプリンセスであるルチアとシュタート王国、国王のクロード。 けれど、それぞれの執務に追われ、誓約の儀から二ヶ月経っても夫婦の時間を過ごせずにいた。 そんなある日、ルチアの元にクロードから別邸への招待状が届けられる。そこで三日三晩の甘い蕩かされるような初夜を過ごしながら、クロードの過去を知ることになる。 2人の出会いを描いた作品はこちら 「純粋無垢なプリンセスを野盗から助け出したのは、冷徹と噂される美麗国王でした」https://www.alphapolis.co.jp/novel/702276663/443443630 2人の誓約の儀を描いた作品はこちら 「純粋無垢なプリンセスは、冷徹と噂される美麗国王と誓約の儀を結ぶ」 https://www.alphapolis.co.jp/novel/702276663/183445041

【完結】嫌われ令嬢、部屋着姿を見せてから、王子に溺愛されてます。

airria
恋愛
グロース王国王太子妃、リリアナ。勝ち気そうなライラックの瞳、濡羽色の豪奢な巻き髪、スレンダーな姿形、知性溢れる社交術。見た目も中身も次期王妃として完璧な令嬢であるが、夫である王太子のセイラムからは忌み嫌われていた。 どうやら、セイラムの美しい乳兄妹、フリージアへのリリアナの態度が気に食わないらしい。 2ヶ月前に婚姻を結びはしたが、初夜もなく冷え切った夫婦関係。結婚も仕事の一環としか思えないリリアナは、セイラムと心が通じ合わなくても仕方ないし、必要ないと思い、王妃の仕事に邁進していた。 ある日、リリアナからのいじめを訴えるフリージアに泣きつかれたセイラムは、リリアナの自室を電撃訪問。 あまりの剣幕に仕方なく、部屋着のままで対応すると、なんだかセイラムの様子がおかしくて… あの、私、自分の時間は大好きな部屋着姿でだらけて過ごしたいのですが、なぜそんな時に限って頻繁に私の部屋にいらっしゃるの?

異世界は『一妻多夫制』!?溺愛にすら免疫がない私にたくさんの夫は無理です!?

すずなり。
恋愛
ひょんなことから異世界で赤ちゃんに生まれ変わった私。 一人の男の人に拾われて育ててもらうけど・・・成人するくらいから回りがなんだかおかしなことに・・・。 「俺とデートしない?」 「僕と一緒にいようよ。」 「俺だけがお前を守れる。」 (なんでそんなことを私にばっかり言うの!?) そんなことを思ってる時、父親である『シャガ』が口を開いた。 「何言ってんだ?この世界は男が多くて女が少ない。たくさん子供を産んでもらうために、何人とでも結婚していいんだぞ?」 「・・・・へ!?」 『一妻多夫制』の世界で私はどうなるの!? ※お話は全て想像の世界になります。現実世界とはなんの関係もありません。 ※誤字脱字・表現不足は重々承知しております。日々精進いたしますのでご容赦ください。 ただただ暇つぶしに楽しんでいただけると幸いです。すずなり。

処理中です...