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51~最終話
大きくなっても変わらないこと【下】
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「あの、先日はすみませんでした! 人間だと言いそびれて、騙した形になってしまって」
「いいえ、こちらこそお礼を言わせてくださいっ! ヒナ様のおかげで夢にまで見た殿下のご即位が――」
「あっ!!」
感激したように両手で手を掴まれ、大量の書類がバサッと床に散る。
制御する間もなく魔力が流れ込み、ヤシュームもドサッと床に散った。
「あーぁー……」
魔力吸収によってまたヤシュームが倒れてしまった。
これは私のせいになるのだろうか……。
「断りもなくヒナに触れるのが悪い。……が、そのままでは仕事にならないな。『マフェクト』」
執務机から一部始終を見ていたクロが、ヤシュームに手のひらを向け『魔力譲渡』の呪文を唱える。自分の魔力を与え、相手の残存魔力を二倍にする魔法だ。
立て続けに三度呪文を唱えれば、ヤシュームは完全復活して跳ね起きた。
ちなみに元々の魔力量よりも増やしすぎてしまうと、今度は許容値を超えた魔力が体内を蝕むのだとか。
「誠に恐れ入ります……っ!」
「ああ、さっさと仕事に戻ってくれ」
ヤシュームは感激に瞳を輝かせながら散らばった書類をかき集めて執務机に置くと、処理済みの書類を抱え持った。
「ヒナ様も申し訳ありませんでした。殿下のご即位を思うと、居ても立ってもいられず……!」
「いいえ、こちらこそ歓迎してくださってありがとうございます」
一番クロと関わりの深いヤシュームとは、私もきっと、これからたくさん関わることになる。
クロの相手として、好意的に受け入れてもらえたのなら何よりだ。
ヤシュームの退室を見送って振り返ると、クロが真後ろに立っていた。
「ひゃっ! びっくりしたぁ……」
「ヒナ、俺も癒してほしい」
そう言って、おいでとばかりに腕を広げる。
言っておくけれど、ヤシュームの件は不慮の事故であって私から魔力を吸収したわけではないし、ヤシュームのほうも決して癒されてなどいないと思う。
けど、まあ、クロと触れ合えるのは私も嬉しいので……。
一歩踏み出しクロの胸に頬を寄せれば、逞しい腕がすっぽりと私を包み込んだ。
「いいえ、こちらこそお礼を言わせてくださいっ! ヒナ様のおかげで夢にまで見た殿下のご即位が――」
「あっ!!」
感激したように両手で手を掴まれ、大量の書類がバサッと床に散る。
制御する間もなく魔力が流れ込み、ヤシュームもドサッと床に散った。
「あーぁー……」
魔力吸収によってまたヤシュームが倒れてしまった。
これは私のせいになるのだろうか……。
「断りもなくヒナに触れるのが悪い。……が、そのままでは仕事にならないな。『マフェクト』」
執務机から一部始終を見ていたクロが、ヤシュームに手のひらを向け『魔力譲渡』の呪文を唱える。自分の魔力を与え、相手の残存魔力を二倍にする魔法だ。
立て続けに三度呪文を唱えれば、ヤシュームは完全復活して跳ね起きた。
ちなみに元々の魔力量よりも増やしすぎてしまうと、今度は許容値を超えた魔力が体内を蝕むのだとか。
「誠に恐れ入ります……っ!」
「ああ、さっさと仕事に戻ってくれ」
ヤシュームは感激に瞳を輝かせながら散らばった書類をかき集めて執務机に置くと、処理済みの書類を抱え持った。
「ヒナ様も申し訳ありませんでした。殿下のご即位を思うと、居ても立ってもいられず……!」
「いいえ、こちらこそ歓迎してくださってありがとうございます」
一番クロと関わりの深いヤシュームとは、私もきっと、これからたくさん関わることになる。
クロの相手として、好意的に受け入れてもらえたのなら何よりだ。
ヤシュームの退室を見送って振り返ると、クロが真後ろに立っていた。
「ひゃっ! びっくりしたぁ……」
「ヒナ、俺も癒してほしい」
そう言って、おいでとばかりに腕を広げる。
言っておくけれど、ヤシュームの件は不慮の事故であって私から魔力を吸収したわけではないし、ヤシュームのほうも決して癒されてなどいないと思う。
けど、まあ、クロと触れ合えるのは私も嬉しいので……。
一歩踏み出しクロの胸に頬を寄せれば、逞しい腕がすっぽりと私を包み込んだ。
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