ちっちゃくて可愛いものがお好きですか。そうですかそうですか。もう十分わかったので放してもらっていいですか。

南田 此仁

文字の大きさ
148 / 165
51~最終話

差し伸べられた手《クロ視点》【下】

しおりを挟む
 魔力の吸収を防ぐ練習と、より多く吸収する練習。
 相反するようでいて、両者は同一線上にある。

 元の大きさに戻っても魔力の吸収量に変化はないが、以前よりも感覚が掴みやすくなったという。
 ヒナいわく、動きの鈍い『口』を開閉するような感覚らしい。

 なにも意識しなければ口はぼんやりと半開きになっていて、そこから魔力が流れ込む。
 防ぎたいときは固く口を結ぶようにして、たくさん吸収したいときには大きく大きく口を開く。
 大きく開くより、固く結ぶほうが難しいのだそうだ。

「だからいつも、特訓中に口を開閉していたのか」

「えっ、口まで動いてましたか!?」

 微笑ましい事実を告げれば、恥ずかしそうに頬を染める。
 愛しさに絶えきれず、頬と唇に一つずつ口づけを落とした。

「そういえばっ! クロから吸収した魔力があれば、魔力のない私でも魔法を使えたりしますか……?」

 たった今思い付いた風を装って、その瞳に隠しきれない期待を輝かせながらヒナが問いかける。
 どうやらヒナは、元の世界には存在しないという『魔法』に強い憧れを抱いているらしいのだ。

 どんなに期待を叶えてやりたくとも、現実は変わらない。
 たった今俺から大量の魔力を吸収したばかりだというのに、ヒナからはいつも通り、微塵も魔力を感じないのだ。

「吸収された魔力はヒナの中に留まっていないようだ。おそらく、吸収と同時に中性魔素として空気中に放出しているのだろう」

 ヒナの魔力吸収は、『風穴』のようなものだと思う。
 風穴は空けた内部に溜まった空気を放出しこそすれ、穴自体に何かを蓄えることはない。
 俺の魔力そのものを放出しているわけではないので、フィルターを通すように成分の分解がなされているようではあるが。

 魔法のない世界から来たことと関係しているのではないだろうか。
 魔力干渉も受けないことから、体内に魔力を溜めおく器官自体がないと考えられる。
 推察を伝えれば、ヒナはしょんぼりと肩を落としてしまった。

「ヒナの能力は他の誰も持ち得ない貴重なものだ。魔法を使いたいときには、いつでも俺が手足となろう」

 衝動のまま抱きしめれば、抱きしめ返してくる小さな手に一層愛おしさが募る。
 俺のものだ。何ものにも傷つけさせはしない。

「箒で空が飛びたかった……」

「…………それは練習がいるな」

 ソファでもカーペットでもなく、なぜそんなに難易度の高いチョイスなのだろうか……。
しおりを挟む
感想 36

あなたにおすすめの小説

推しの幸せをお願いしたら異世界に飛ばされた件について

あかね
恋愛
いつも推しは不遇で、現在の推しの死亡フラグを年末の雑誌で立てられたので、新年に神社で推しの幸せをお願いしたら、翌日異世界に飛ばされた話。無事、推しとは会えましたが、同居とか無理じゃないですか。

落ちて拾われて売られて買われた私

ざっく
恋愛
この世界に来た日のことは、もうあまり覚えていない。ある日突然、知らない場所にいて、拾われて売られて遊女になった。そんな私を望んでくれた人がいた。勇者だと讃えられている彼が、私の特殊能力を見初め、身請けしてくれることになった。 最終的には溺愛になる予定です。

辺境のスローライフを満喫したいのに、料理が絶品すぎて冷酷騎士団長に囲い込まれました

腐ったバナナ
恋愛
異世界に転移した元会社員のミサキは、現代の調味料と調理技術というチート能力を駆使し、辺境の森で誰にも邪魔されない静かなスローライフを送ることを目指していた。 しかし、彼女の作る絶品の料理の香りは、辺境を守る冷酷な「鉄血」騎士団長ガイウスを引き寄せてしまった。

異世界に行った、そのあとで。

神宮寺 あおい
恋愛
新海なつめ三十五歳。 ある日見ず知らずの女子高校生の異世界転移に巻き込まれ、気づけばトルス国へ。 当然彼らが求めているのは聖女である女子高校生だけ。 おまけのような状態で現れたなつめに対しての扱いは散々な中、宰相の協力によって職と居場所を手に入れる。 いたって普通に過ごしていたら、いつのまにか聖女である女子高校生だけでなく王太子や高位貴族の子息たちがこぞって悩み相談をしにくるように。 『私はカウンセラーでも保健室の先生でもありません!』 そう思いつつも生来のお人好しの性格からみんなの悩みごとの相談にのっているうちに、いつの間にか年下の美丈夫に好かれるようになる。 そして、気づけば異世界で求婚されるという本人大混乱の事態に!

異世界は『一妻多夫制』!?溺愛にすら免疫がない私にたくさんの夫は無理です!?

すずなり。
恋愛
ひょんなことから異世界で赤ちゃんに生まれ変わった私。 一人の男の人に拾われて育ててもらうけど・・・成人するくらいから回りがなんだかおかしなことに・・・。 「俺とデートしない?」 「僕と一緒にいようよ。」 「俺だけがお前を守れる。」 (なんでそんなことを私にばっかり言うの!?) そんなことを思ってる時、父親である『シャガ』が口を開いた。 「何言ってんだ?この世界は男が多くて女が少ない。たくさん子供を産んでもらうために、何人とでも結婚していいんだぞ?」 「・・・・へ!?」 『一妻多夫制』の世界で私はどうなるの!? ※お話は全て想像の世界になります。現実世界とはなんの関係もありません。 ※誤字脱字・表現不足は重々承知しております。日々精進いたしますのでご容赦ください。 ただただ暇つぶしに楽しんでいただけると幸いです。すずなり。

男嫌いな王女と、帰ってきた筆頭魔術師様の『執着的指導』 ~魔道具は大人の玩具じゃありません~

花虎
恋愛
魔術大国カリューノスの現国王の末っ子である第一王女エレノアは、その見た目から妖精姫と呼ばれ、可愛がられていた。  だが、10歳の頃男の家庭教師に誘拐されかけたことをきっかけに大人の男嫌いとなってしまう。そんなエレノアの遊び相手として送り込まれた美少女がいた。……けれどその正体は、兄王子の親友だった。  エレノアは彼を気に入り、嫌がるのもかまわずいたずらまがいにちょっかいをかけていた。けれど、いつの間にか彼はエレノアの前から去り、エレノアも誘拐の恐ろしい記憶を封印すると共に少年を忘れていく。  そんなエレノアの前に、可愛がっていた男の子が八年越しに大人になって再び現れた。 「やっと、あなたに復讐できる」 歪んだ復讐心と執着で魔道具を使ってエレノアに快楽責めを仕掛けてくる美形の宮廷魔術師リアン。  彼の真意は一体どこにあるのか……わからないままエレノアは彼に惹かれていく。 過去の出来事で男嫌いとなり引きこもりになってしまった王女(18)×王女に執着するヤンデレ天才宮廷魔術師(21)のラブコメです。 ※ムーンライトノベルにも掲載しております。

今夜は帰さない~憧れの騎士団長と濃厚な一夜を

澤谷弥(さわたに わたる)
恋愛
ラウニは騎士団で働く事務官である。 そんな彼女が仕事で第五騎士団団長であるオリベルの執務室を訪ねると、彼の姿はなかった。 だが隣の部屋からは、彼が苦しそうに呻いている声が聞こえてきた。 そんな彼を助けようと隣室へと続く扉を開けたラウニが目にしたのは――。

借金まみれで高級娼館で働くことになった子爵令嬢、密かに好きだった幼馴染に買われる

しおの
恋愛
乙女ゲームの世界に転生した主人公。しかしゲームにはほぼ登場しないモブだった。 いつの間にか父がこさえた借金を返すため、高級娼館で働くことに…… しかしそこに現れたのは幼馴染で……?

処理中です...