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51~最終話
万全を期して臨みましょう【中】
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「ヒナ」
「――っ!」
吐息に耳をくすぐられ、危うく変な声が出そうになる。
毎晩クロがいろいろしてくるせいだ。
「今日は俺が与えるもの以外、何も口にしないでほしい」
「えっ? はい……」
なんだろう? 式典のご馳走をつまみ食いしそうだとでも思われているのだろうか?
出逢う以前にブドウを盗み食いした前科があるからなぁ。
「少々騒がしくなるだろうが、備えは万全だから心配いらない」
「? はい」
「最後の仕上げに――ヒナ、思い切り魔力を吸収してもらえないか?」
「もちろんいいですよ」
差し出された手を両手で握ると同時に、穏やかなぬくもりが流れ込む。
さらに大きく口を開くような感覚で、もっともっとと吸い込んでいく。
よくよく考えてみれば、クロから魔力吸収を頼まれるのは初めてだ。
『能力』のために一緒にいるわけではないと示そうとしてくれているのか、私から何か手伝わせてほしいとねだったとき以外でクロが魔力吸収を頼んできたことはない。
重要な会議があろうと、大規模な夜会があろうと。
そのクロが、式典だからといって魔力吸収を頼んでくるとは考えづらい。
そもそも今吸収しておいたところで、昼過ぎに始まる式典までには自然回復してしまうはずだ。
――――何か、あるのだろうか。
強い意志を宿した瞳をじっと覗き込む。
「……危ないことはしないでくださいね?」
「ああ、俺に何かあればヒナが悲しむからな」
「ん、わかってるならいいです」
詳しく話してくれるつもりはないらしく、クロは私の頬をひと撫でして支度へと見送った。
クロは本当に大丈夫だろうか。
四人いた護衛騎士は、二人ずつかと思いきや全員こちらについてきてしまった。
扉の前に四人を残し案内役のメイドとともに『私の部屋』に入ると、室内には女性騎士が二人、支度を手伝ってくれるのだろうメイドが数人、そしてなぜかマナーの先生までいる。
「おはようございます、ウルカノン先生」
「ヒナ様、この度はご婚約おめでとうございます。あの頑ななクローヴェル殿下に寄り添い、心を預けてくださって……ヒナ様を見つめる殿下の幸せそうなお顔といったらもう! 殿下がまだおしめも外れない頃からこんな日をわたくし、本当に、本当に……っ」
感極まって涙ぐむ先生にあわあわとうろたえていると、先生は自らのハンカチで目元を拭ってスッと表情を切り替えた。
「ということで、本日はヒナ様のお支度のあいだ側仕えを務めさせていただきます。殿方では同席できませんからね。――それから、レッスン以外の場では『先生』でなく『夫人』とお呼びください」
「わ、わかりました、ウルカノン夫人……。今日はお世話になります」
「――っ!」
吐息に耳をくすぐられ、危うく変な声が出そうになる。
毎晩クロがいろいろしてくるせいだ。
「今日は俺が与えるもの以外、何も口にしないでほしい」
「えっ? はい……」
なんだろう? 式典のご馳走をつまみ食いしそうだとでも思われているのだろうか?
出逢う以前にブドウを盗み食いした前科があるからなぁ。
「少々騒がしくなるだろうが、備えは万全だから心配いらない」
「? はい」
「最後の仕上げに――ヒナ、思い切り魔力を吸収してもらえないか?」
「もちろんいいですよ」
差し出された手を両手で握ると同時に、穏やかなぬくもりが流れ込む。
さらに大きく口を開くような感覚で、もっともっとと吸い込んでいく。
よくよく考えてみれば、クロから魔力吸収を頼まれるのは初めてだ。
『能力』のために一緒にいるわけではないと示そうとしてくれているのか、私から何か手伝わせてほしいとねだったとき以外でクロが魔力吸収を頼んできたことはない。
重要な会議があろうと、大規模な夜会があろうと。
そのクロが、式典だからといって魔力吸収を頼んでくるとは考えづらい。
そもそも今吸収しておいたところで、昼過ぎに始まる式典までには自然回復してしまうはずだ。
――――何か、あるのだろうか。
強い意志を宿した瞳をじっと覗き込む。
「……危ないことはしないでくださいね?」
「ああ、俺に何かあればヒナが悲しむからな」
「ん、わかってるならいいです」
詳しく話してくれるつもりはないらしく、クロは私の頬をひと撫でして支度へと見送った。
クロは本当に大丈夫だろうか。
四人いた護衛騎士は、二人ずつかと思いきや全員こちらについてきてしまった。
扉の前に四人を残し案内役のメイドとともに『私の部屋』に入ると、室内には女性騎士が二人、支度を手伝ってくれるのだろうメイドが数人、そしてなぜかマナーの先生までいる。
「おはようございます、ウルカノン先生」
「ヒナ様、この度はご婚約おめでとうございます。あの頑ななクローヴェル殿下に寄り添い、心を預けてくださって……ヒナ様を見つめる殿下の幸せそうなお顔といったらもう! 殿下がまだおしめも外れない頃からこんな日をわたくし、本当に、本当に……っ」
感極まって涙ぐむ先生にあわあわとうろたえていると、先生は自らのハンカチで目元を拭ってスッと表情を切り替えた。
「ということで、本日はヒナ様のお支度のあいだ側仕えを務めさせていただきます。殿方では同席できませんからね。――それから、レッスン以外の場では『先生』でなく『夫人』とお呼びください」
「わ、わかりました、ウルカノン夫人……。今日はお世話になります」
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