13 / 18
4b、ネモフィラの海と結界魔法
しおりを挟む
「なるほど……。そんならこの森で命を落としたとでも思っといてもらったほうが安全ですね」
「そうね……——そうよ! 私が張った結界を解除しておかなくっちゃ!」
特殊な魔導具で維持される王国の結界とは違い、通常は結界の発現者が死ねばその結界も解除される。
逆に言えば、結界を解除することで私が死んだと思わせることができるかもしれないのだ。
さっそく手を組み合わせて目を閉じる。
「————よし、全部解除できたわ!」
「そんじゃ、ここに根を張る準備をはじめますか! つっても斧は持参していないんで、剣とナイフだけで家を組むのにゃかなりかかると思いますが」
ダーナンは笑顔で私の提案を受け入れてくれる。
先ほどだってそうだ。魔獣の森に入ってほしいという無謀ともいえる要求を呑み、私を信じて真っ直ぐに突っ込んでくれた。
私のすべてを信じ肯定してくれるダーナンに、今まで何度救われてきたことか。
「家のことなら心配いらないわ。ちょっと待ってね」
ネモフィラのまばらな一角に目をつけると、座り込んで手を組み、まぶたを閉じてしっかりと祈りを捧げる。
キッチン……、ダイニング……、それぞれの私室に、寝室……、浴室もいるわね……。
「————できた! どうかしら!?」
「はぁ……。なんかその辺が、うっすら光ってんのは見えますが」
「あっ、透明なままだったわ!」
慌てて光を通さない結界も足しておく。
再び目を開ければ、そこには真っ白な一軒家が建っていた。
「どう!?」
「……なんですか、こりゃあ……」
ダーナンは驚きにあんぐりと口を開けたまま、ふらふらと一軒家に歩み寄る。
「結界魔法よ。独自に改良を重ねたの!」
ダーナンと私の二人しか通さない結界をベースに、空間を隔てる結界で細かく部屋を区切って、すべての壁に光を通さない効力を重ねた自信作だ。
「結界魔法ってのはこんなことができるんですか……」
「私以外にやっている人を見たことはないけれどね。時間ならたっぷりあったから、結界の可能性について模索していたの。……以前、お城の周囲に『悪意のある人間を通さない結界』を張ったときには、ほとんどの貴族が入城できなくなっちゃってものすごく怒られたわ。改良して張り直したのだけど」
「そいつぁなんとも……」
「さあ、とりあえず中に入ってみましょ!」
「そうね……——そうよ! 私が張った結界を解除しておかなくっちゃ!」
特殊な魔導具で維持される王国の結界とは違い、通常は結界の発現者が死ねばその結界も解除される。
逆に言えば、結界を解除することで私が死んだと思わせることができるかもしれないのだ。
さっそく手を組み合わせて目を閉じる。
「————よし、全部解除できたわ!」
「そんじゃ、ここに根を張る準備をはじめますか! つっても斧は持参していないんで、剣とナイフだけで家を組むのにゃかなりかかると思いますが」
ダーナンは笑顔で私の提案を受け入れてくれる。
先ほどだってそうだ。魔獣の森に入ってほしいという無謀ともいえる要求を呑み、私を信じて真っ直ぐに突っ込んでくれた。
私のすべてを信じ肯定してくれるダーナンに、今まで何度救われてきたことか。
「家のことなら心配いらないわ。ちょっと待ってね」
ネモフィラのまばらな一角に目をつけると、座り込んで手を組み、まぶたを閉じてしっかりと祈りを捧げる。
キッチン……、ダイニング……、それぞれの私室に、寝室……、浴室もいるわね……。
「————できた! どうかしら!?」
「はぁ……。なんかその辺が、うっすら光ってんのは見えますが」
「あっ、透明なままだったわ!」
慌てて光を通さない結界も足しておく。
再び目を開ければ、そこには真っ白な一軒家が建っていた。
「どう!?」
「……なんですか、こりゃあ……」
ダーナンは驚きにあんぐりと口を開けたまま、ふらふらと一軒家に歩み寄る。
「結界魔法よ。独自に改良を重ねたの!」
ダーナンと私の二人しか通さない結界をベースに、空間を隔てる結界で細かく部屋を区切って、すべての壁に光を通さない効力を重ねた自信作だ。
「結界魔法ってのはこんなことができるんですか……」
「私以外にやっている人を見たことはないけれどね。時間ならたっぷりあったから、結界の可能性について模索していたの。……以前、お城の周囲に『悪意のある人間を通さない結界』を張ったときには、ほとんどの貴族が入城できなくなっちゃってものすごく怒られたわ。改良して張り直したのだけど」
「そいつぁなんとも……」
「さあ、とりあえず中に入ってみましょ!」
68
あなたにおすすめの小説
ドレスが似合わないと言われて婚約解消したら、いつの間にか殿下に囲われていた件
ぽぽよ
恋愛
似合わないドレスばかりを送りつけてくる婚約者に嫌気がさした令嬢シンシアは、婚約を解消し、ドレスを捨てて男装の道を選んだ。
スラックス姿で生きる彼女は、以前よりも自然体で、王宮でも次第に評価を上げていく。
しかしその裏で、爽やかな笑顔を張り付けた王太子が、密かにシンシアへの執着を深めていた。
一方のシンシアは極度の鈍感で、王太子の好意をすべて「親切」「仕事」と受け取ってしまう。
「一生お仕えします」という言葉の意味を、まったく違う方向で受け取った二人。
これは、男装令嬢と爽やか策士王太子による、勘違いから始まる婚約(包囲)物語。
【完結】無能な聖女はいらないと婚約破棄され、追放されたので自由に生きようと思います
黒幸
恋愛
辺境伯令嬢レイチェルは学園の卒業パーティーでイラリオ王子から、婚約破棄を告げられ、国外追放を言い渡されてしまう。
レイチェルは一言も言い返さないまま、パーティー会場から姿を消した。
邪魔者がいなくなったと我が世の春を謳歌するイラリオと新たな婚約者ヒメナ。
しかし、レイチェルが国からいなくなり、不可解な事態が起き始めるのだった。
章を分けるとかえって、ややこしいとの御指摘を受け、章分けを基に戻しました。
どうやら、作者がメダパニ状態だったようです。
表紙イラストはイラストAC様から、お借りしています。
【完結】「お前に聖女の資格はない!」→じゃあ隣国で王妃になりますね
ぽんぽこ@3/28新作発売!!
恋愛
【全7話完結保証!】
聖王国の誇り高き聖女リリエルは、突如として婚約者であるルヴェール王国のルシアン王子から「偽聖女」の烙印を押され追放されてしまう。傷つきながらも母国へ帰ろうとするが、運命のいたずらで隣国エストレア新王国の策士と名高いエリオット王子と出会う。
「僕が君を守る代わりに、その力で僕を助けてほしい」
甘く微笑む彼に導かれ、戸惑いながらも新しい人生を歩み始めたリリエル。けれど、彼女を追い詰めた隣国の陰謀が再び迫り――!?
追放された聖女と策略家の王子が織りなす、甘く切ない逆転ロマンス・ファンタジー。
聖女の力を妹に奪われ魔獣の森に捨てられたけど、何故か懐いてきた白狼(実は呪われた皇帝陛下)のブラッシング係に任命されました
AK
恋愛
「--リリアナ、貴様との婚約は破棄する! そして妹の功績を盗んだ罪で、この国からの追放を命じる!」
公爵令嬢リリアナは、腹違いの妹・ミナの嘘によって「偽聖女」の汚名を着せられ、婚約者の第二王子からも、実の父からも絶縁されてしまう。 身一つで放り出されたのは、凶暴な魔獣が跋扈する北の禁足地『帰らずの魔の森』。
死を覚悟したリリアナが出会ったのは、伝説の魔獣フェンリル——ではなく、呪いによって巨大な白狼の姿になった隣国の皇帝・アジュラ四世だった!
人間には効果が薄いが、動物に対しては絶大な癒やし効果を発揮するリリアナの「聖女の力」。 彼女が何気なく白狼をブラッシングすると、苦しんでいた皇帝の呪いが解け始め……?
「余の呪いを解くどころか、極上の手触りで撫でてくるとは……。貴様、責任を取って余の専属ブラッシング係になれ」
こうしてリリアナは、冷徹と恐れられる氷の皇帝(中身はツンデレもふもふ)に拾われ、帝国で溺愛されることに。 豪華な離宮で美味しい食事に、最高のもふもふタイム。虐げられていた日々が嘘のような幸せスローライフが始まる。
一方、本物の聖女を追放してしまった祖国では、妹のミナが聖女の力を発揮できず、大地が枯れ、疫病が蔓延し始めていた。 元婚約者や父が慌ててミレイユを連れ戻そうとするが、時すでに遅し。 「私の主人は、この可愛い狼様(皇帝陛下)だけですので」 これは、すべてを奪われた令嬢が、最強のパートナーを得て幸せになり、自分を捨てた者たちを見返す逆転の物語。
婚約破棄の上に家を追放された直後に聖女としての力に目覚めました。
三葉 空
恋愛
ユリナはバラノン伯爵家の長女であり、公爵子息のブリックス・オメルダと婚約していた。しかし、ブリックスは身勝手な理由で彼女に婚約破棄を言い渡す。さらに、元から妹ばかり可愛がっていた両親にも愛想を尽かされ、家から追放されてしまう。ユリナは全てを失いショックを受けるが、直後に聖女としての力に目覚める。そして、神殿の神職たちだけでなく、王家からも丁重に扱われる。さらに、お祈りをするだけでたんまりと給料をもらえるチート職業、それが聖女。さらに、イケメン王子のレオルドに見初められて求愛を受ける。どん底から一転、一気に幸せを掴み取った。その事実を知った元婚約者と元家族は……
婚約者に「愛することはない」と言われたその日にたまたま出会った隣国の皇帝から溺愛されることになります。~捨てる王あれば拾う王ありですわ。
松ノ木るな
恋愛
純真無垢な侯爵令嬢レヴィーナは、国の次期王であるフィリベールと固い絆で結ばれる未来を夢みていた。しかし王太子はそのような意思を持つ彼女を生意気だと疎み、気まぐれに婚約破棄を言い渡す。
伴侶と寄り添う幸せな未来を諦めた彼女は悲観し、井戸に身を投げたのだった。
あの世だと思って辿りついた先は、小さな貴族の家の、こじんまりとした食堂。そこには呑めもしないのに酒を舐め、身分社会に恨み節を唱える美しい青年がいた。
どこの家の出の、どの立場とも知らぬふたりが、一目で恋に落ちたなら。
たまたま出会って離れていてもその存在を支えとする、そんなふたりが再会して結ばれる初恋ストーリーです。
旦那様が遊び呆けている間に、家を取り仕切っていた私が権力を握っているのは、当然のことではありませんか。
木山楽斗
恋愛
伯爵令嬢であるフェレーナは、同じく伯爵家の令息であり幼馴染でもあるラヴァイルの元に嫁いだ。
しかし彼は、それからすぐに伯爵家の屋敷から姿を消した。ラヴァイルは、フェレーナに家のことを押し付けて逃げ出したのである。
それに彼女は当然腹を立てたが、その状況で自分までいなくなってしまえば、領地の民達が混乱し苦しむということに気付いた。
そこで彼女は嫁いだ伯爵家に残り、義理の父とともになんとか執務を行っていたのである。
それは、長年の苦労が祟った義理の父が亡くなった後も続いていた。
フェレーナは正当なる血統がいない状況でも、家を存続させていたのである。
そんな彼女の努力は周囲に認められていき、いつしか彼女は義理の父が築いた関係も含めて、安定した基盤を築けるようになっていた。
そんな折、ラヴァイルが伯爵家の屋敷に戻って来た。
彼は未だに自分に権力が残っていると勘違いしており、家を開けていたことも問題ではないと捉えていたのである。
しかし既に、彼に居場所などというものはなかった。既にラヴァイルの味方はおらず、むしろフェレーナに全てを押し付けて遊び呆けていた愚夫としてしか見られていなかったのである。
出来損ないと言われて、国を追い出されました。魔物避けの効果も失われるので、魔物が押し寄せてきますが、頑張って倒してくださいね
猿喰 森繁
恋愛
「婚約破棄だ!」
広間に高らかに響く声。
私の婚約者であり、この国の王子である。
「そうですか」
「貴様は、魔法の一つもろくに使えないと聞く。そんな出来損ないは、俺にふさわしくない」
「… … …」
「よって、婚約は破棄だ!」
私は、周りを見渡す。
私を見下し、気持ち悪そうに見ているもの、冷ややかな笑いを浮かべているもの、私を守ってくれそうな人は、いないようだ。
「王様も同じ意見ということで、よろしいでしょうか?」
私のその言葉に王は言葉を返すでもなく、ただ一つ頷いた。それを確認して、私はため息をついた。たしかに私は魔法を使えない。魔力というものを持っていないからだ。
なにやら勘違いしているようだが、聖女は魔法なんて使えませんよ。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる