元の世界に戻るなんて聞いてない!

バナナマヨネーズ

文字の大きさ
12 / 15

第四章 逃がすつもりはないと言った。たとえ君を閉じ込めることになったとしても離すつもりは毛頭ない 2

しおりを挟む
 スイーティオとイクストバルは促されるまま目の前の家に入った。
 そこは、外から見たよりも広い作りの家だった。
 玄関の先に、リビングと釜戸のついたキッチンが見えた。
 珍しそうに、家の中を見回していたイクストバルだったが、隣のスイーティオが小柄なローブの人物にまた飛びつかないように抑えることはやめなかった。
 
 家の中に入った二人に、リビングにあるソファーに座るように勧めた後に、キッチンでお茶とお菓子を用意して二人の座るソファーとは反対側に座ってから深く被っていたローブのフードを取った。
 
 そこには、昔スイーティオが贈った仮面を着けた愛しい少女がいた。
 レインは、自分の家だと言うのに居心地が悪そうな様子で二人の様子を窺っていた。
 スイーティオは、森に入る前までの荒れようが嘘のように、途端に機嫌を良くしてレインの座るソファーに移動した。
 レインは、諦めたように座る位置をずらして、スイーティオが座れるようにスペースを作った。
 それを見ていたイクストバルはため息を吐きながら思った。
 
(この二人はどうしてこんなにも想い合っているのに、くっつかないんだ?それが不思議でならない?)

 イクストバルは、レインが消える前。スイーティオが足繁く公爵家に通っていた時に、護衛として付き従っていたのだ。
 その時からイクストバルから見ても二人は、両思いなはずなのにお互いの気持が全然伝わっていないことにモヤモヤとしていたのだ。
 しかし、今の二人は以前と違って少しお互いの心の距離が近くなっているように感じて、静かに見守ることに決めたのだ。
 
 決めたのは良かったが、5年越しの再会と二週間ほどの別れから、スイーティオは馬鹿になっていた。
 いつもは、仏頂面で近付く者皆切り伏せると言わんばかりの雰囲気を纏っているスイーティオだったが、今は5年前にも見たことのないような、デレッデレのひどい顔だった。
 親友としての欲目抜きにしても、酷いデレ顔だった。
 イクストバルは思った。
 
(人間は、本当に好きな人を前にすると、酷いデレ顔になるんだな。鼻の下が伸びている今の顔を他の人間に言ってもきっと信じてくれないだろう……。いや、陛下なら信じてくれるかも……。しかし、イケメンが台無しだな……)

 そんなことを思っていると、レインが口を開いた。
 
「殿下……。ごめんなさい。でも、信じられなかったの。殿下が私のことを好きって言ってくれたことが……。だって、私はこんな醜い容姿だし、怖くて確認していないけど5年前よりも酷くなっているのが分かるの……。そんな、醜い私が殿下の側にいたら、殿下が周りの人に悪く言われるかも知れないと思うととても怖いの。私は、私が悪く言われるより、殿下が悪く言われることのほうが嫌なの!!」

 5年前とは打って変わって、自分の気持を素直に話してくれるレインにスイーティオは感動して話の途中にも関わらず抱きしめた。
 腕の中にある、確かの温もりに体中が歓喜した。もう絶対に離してやるものかと。
 そして、5年前よりも柔らかい膨らみに、鼻の下を伸ばしてデレッとした表情になる。
 抱きしめられていたレインはその、だらしないデレ顔に気が付かなかったが、向かい側のソファーに座るイクストバルはバッチリ見てしまったのだ。
 そして、「嫌なものを見てしまった……」と小声で言ってから、顔を背けた。武士の情けならぬ、騎士の情けだった。
 
 いつまでも抱きしめられることに焦ったレインは、スイーティオの背を叩いて離してくれるように訴えた。
 
「殿下、殿下……。もう離してください。もう逃げないから、それにここにいる理由もきちんと話すから」
しおりを挟む
感想 2

あなたにおすすめの小説

やけに居心地がいいと思ったら、私のための愛の巣でした。~いつの間にか約束された精霊婚~

小桜
恋愛
ルディエル・アレンフォードは森に住む麗しの精霊守。 そんな彼が、いよいよ伴侶を迎えようと準備を始めているらしい。 幼馴染という関係に甘んじていたネネリア・ソルシェは、密かにショックを受けていた。 そろそろ彼との関係も終わらせなければならないけれど、ルディエルも精霊達もネネリアだけに優しくて――? 「大丈夫。ずっと居たいと思えるような場所にしてみせるから」 鈍感なネネリアと、一途で奥手なルディエル。 精霊に導かれた恋は、本人だけが気づかない。

冷徹団長の「ここにいろ」は、騎士団公認の“抱きしめ命令”です

星乃和花
恋愛
⭐︎完結済ー全16話+後日談5話⭐︎ 王都最硬派、規律と責任の塊――騎士団長ヴァルド・アークライトは、夜の見回り中に路地で“落とし物”を拾った。 ……いや、拾ったのは魔物の卵ではなく、道端で寝ていた少女だった。しかも目覚めた彼女は満面の笑みで「落とし物です!拾ってくださってありがとうございます!」と言い張り、団長の屋敷を“保護施設”だと勘違いして、掃除・料理・当番表作りに騎士の悩み相談まで勝手に開始。 追い出せば泣く、士気は落ちる、そして何より――ヴァルド自身の休息が、彼女の存在に依存し始めていく。 無表情のまま「危ないから、ここにいろ」と命令し続ける団長に、周囲はざわつく。「それ、溺愛ですよ」 騎士団内ではついに“団長語翻訳係”まで誕生し、命令が全部“愛の保護”に変換されていく甘々溺愛コメディ!

神様の手違いで、おまけの転生?!お詫びにチートと無口な騎士団長もらっちゃいました?!

カヨワイさつき
恋愛
最初は、日本人で受験の日に何かにぶつかり死亡。次は、何かの討伐中に、死亡。次に目覚めたら、見知らぬ聖女のそばに、ポツンとおまけの召喚?あまりにも、不細工な為にその場から追い出されてしまった。 前世の記憶はあるものの、どれをとっても短命、不幸な出来事ばかりだった。 全てはドジで少し変なナルシストの神様の手違いだっ。おまけの転生?お詫びにチートと無口で不器用な騎士団長もらっちゃいました。今度こそ、幸せになるかもしれません?!

一夜限りの関係だったはずなのに、責任を取れと迫られてます。

甘寧
恋愛
魔女であるシャルロッテは、偉才と呼ばれる魔導師ルイースとひょんなことから身体の関係を持ってしまう。 だがそれはお互いに同意の上で一夜限りという約束だった。 それなのに、ルイースはシャルロッテの元を訪れ「責任を取ってもらう」と言い出した。 後腐れのない関係を好むシャルロッテは、何とかして逃げようと考える。しかし、逃げれば逃げるだけ愛が重くなっていくルイース… 身体から始まる恋愛模様◎ ※タイトル一部変更しました。

天然だと思ったギルド仲間が、実は策士で独占欲強めでした

星乃和花
恋愛
⭐︎完結済ー本編8話+後日談7話⭐︎ ギルドで働くおっとり回復役リィナは、 自分と似た雰囲気の“天然仲間”カイと出会い、ほっとする。 ……が、彼は実は 天然を演じる策士だった!? 「転ばないで」 「可愛いって言うのは僕の役目」 「固定回復役だから。僕の」 優しいのに過保護。 仲間のはずなのに距離が近い。 しかも噂はいつの間にか——「軍師(彼)が恋してる説」に。 鈍感で頑張り屋なリィナと、 策を捨てるほど恋に負けていくカイの、 コメディ強めの甘々ギルド恋愛、開幕! 「遅いままでいい――置いていかないから。」

国外追放されたくないので第二王子の胃袋を掴んだら溺愛されました!

和栗かのこ
恋愛
乙女ゲームが趣味の社畜・美咲は、階段から落ちて乙女ゲーム「クレセント・ナイト」の悪役令嬢に転生してしまう。 悪役令嬢セセリアに転生した美咲は、国外追放される展開を変えるため、婚約者である第二王子の胃袋を掴むことを思いつく。

完 独身貴族を謳歌したい男爵令嬢は、女嫌い公爵さまと結婚する。

水鳥楓椛
恋愛
 男爵令嬢オードリー・アイリーンはある日父が負った借金により、大好きな宝石だけでは食べていけなくなってしまった。そんな時、オードリーの前に現れたのは女嫌いと有名な公爵エドワード・アーデルハイトだった。愛する家族を借金苦から逃すため、オードリーは悪魔に嫁ぐ。結婚の先に待ち受けるのは不幸か幸せか。少なくとも、オードリーは自己中心的なエドワードが大嫌いだった………。  イラストは友人のしーなさんに描いていただきました!!

周囲からはぐうたら聖女と呼ばれていますがなぜか専属護衛騎士が溺愛してきます

鳥花風星
恋愛
聖女の力を酷使しすぎるせいで会議に寝坊でいつも遅れてしまう聖女エリシアは、貴族たちの間から「ぐうたら聖女」と呼ばれていた。 そんなエリシアを毎朝護衛騎士のゼインは優しく、だが微妙な距離感で起こしてくれる。今までは護衛騎士として適切な距離を保ってくれていたのに、なぜか最近やたらと距離が近く、まるでエリシアをからかっているかのようなゼインに、エリシアの心は揺れ動いて仕方がない。 そんなある日、エリシアはゼインに縁談が来ていること、ゼインが頑なにそれを拒否していることを知る。貴族たちに、ゼインが縁談を断るのは聖女の護衛騎士をしているからだと言われ、ゼインを解放してやれと言われてしまう。 ゼインに幸せになってほしいと願うエリシアは、ゼインを護衛騎士から解任しようとするが……。 「俺を手放そうとするなんて二度と思わせませんよ」 聖女への思いが激重すぎる護衛騎士と、そんな護衛騎士を本当はずっと好きだった聖女の、じれじれ両片思いのラブストーリー。

処理中です...