わたしを嫌う妹の企みで追放されそうになりました。だけど、保護してくれた公爵様から溺愛されて、すごく幸せです。

バナナマヨネーズ

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第二十二話

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 ランジヤの口から出た「隠ぺい」という言葉に、ウェインは首を振っていた。
 
「いや、この事は陛下に報告をする。そのうえで、我らの問題にハナビ嬢を巻き込まないように手を打つ。ランジヤ、ジンが持って帰った調査結果の解析は?」

 真面目な表情でそう言ったウェインに対して、ランジヤは、ほっとしたように息を吐いた後に眉を寄せた。
 
「まだかかりそうです。関係部署には急ぐように指示はしているのですが……」

「分かっている。隣国が消滅した翌日……、瘴気の嵐の中行った調査だ……。測定器の故障や報告書の破損……。調査班の意識の混濁……。今、意識を保っているだけで奇跡のような人だよ、ジンは。でも、そんなジンでも、調査中の記憶は……」

 そう言って、暗い顔をするウェインにランジヤは、不機嫌そうに言うのだ。
 
「先輩は何も悪くないです。ジンさんが勝手に諜報部隊の精鋭引き連れて隣国に行ったんです。死ぬ覚悟もあったと思います。だから……、だから、先輩がそんな顔をする必要もないし、一番悪いのは、マリアを心配させてるあのアホ師匠なんですよ!!」

「いや……。遅かれ早かれ、俺はジンに調査を命じていた。だから、責任は俺にある」

「…………。はぁ……、誰かがやる必要はあった訳ですけと……。でも、元を正せば、隣国が悪いんですよ!! 」

「そう……、だな。とにかく、陛下に報告するから、資料をまとめておいてくれ……」

「了解です……。って、先輩? 何帰ろうとしてんですか?」

 なんとなくの流れて帰ろうとしたウェインだったが、表情を引きつらせたランジヤに監視されて、その後溜まった仕事を片づけたのだった。
 
 休憩時間も取らずに書類を片付けたウェインは、今すぐにでも華火に会いたいと部屋を出たところで、会いたくなかった相手と顔を合わせてしまった。
 そんなことは一切表情に出さず、無表情で相手に黙礼だけを済ませてその場を去ろうとしたが、相手がそれを許さなかったのだ。
 
「やあ、ウェイン。ちょうどお前に用事があったんだ」

 そう言って、親し気にウェインの肩を抱いたのはこの国の王太子で、今回の拉致魔法の主犯である、ロイド・フェデル・イスカニアだった。
 ただし、その場にいたのは、ロイドだけではなかった。
 ロイドの背後に隠れるようにして立っていたのは、もう一人の被害者である恭子だった。
 恭子は、ロイドの背後から移動して、ウェインの両手を握って、にっこりと媚びるように微笑んで見せたのだ。
 ウェインは、醜い欲を孕んだ恭子の媚びた笑みを見向きもせずに、不愉快な思いを表情に出すようなこともなく、恭子の両手から掴まれていた手を抜き取っていた。
 そんな、ウェインの行動に対して、恭子は明らかに不機嫌そうな表情になる。
 
「あたし、この国を救う聖女なんですけど?」

 そう言って、再びウェインに触れようとする恭子から距離を取ったウェインは、はてと内心首を傾げていた。
 
(ハナビには常に触れたいと思うのに、この少女に触れられると、不快感が湧く……。ああ、ハナビに触れたい……。早く、彼女の元に戻ろう)

 そんな事を考えていたウェインだったが、恭子の言葉でその場の空気を凍らせていた。
 
「何よ。顔がいいからって調子に乗って! どうせ、あんたもあのバケモノの顔に騙されてるのよ!! あいつって、顔だけはいいからね。なんで、男どもはああいう見るからに儚げ~でか弱そうな顔が良いのかしら! マジあり得ない! あんな、まな板、顔は良くても男と変わんないじゃない!」

 恭子の明らかに、華火を貶めるような発言にウェインは、内心怒りの声を上げる。
 
(ハナビは、その存在がすでに愛おしいんだ! 確かに、顔はとても可愛い。胸については、年相応だろう。そのうち大きくなるさ……。まぁ、別に俺は小さくても大きくても……)

 そんな事を考えつつ、その場の温度を下げに下げまくったウェインは、聞いたものの腰を蕩けさせてしまいような低く甘い声で言うのだ。
 
「ハナビの良さは、俺だけが知っていればいい」

 華火を思い、表情さえも甘いものに変えたウェインをまじかで見た恭子は、顔を真っ赤にさせてが鳴り散らす。
 
「このロリコン野郎!! ハナビは父親を見殺しにしたバケモノなんだから!! 実の母親から産まなければよかったって言われるような、そんな世界にとって不要な存在なんだから!! ムカつくのよ! いつも、わたしって不幸って顔して!! 華火なんて、消えればいいの―――」

 恭子が最後まで言う前に鋭い視線のウェインによってその口は塞がれていた。
 ウェインは、我慢ならないとばかりに、恭子の口を片手で塞ぎ、絞り出すように声を出す。
 
「黙れ……」

 その一言で、恭子は涙目になり、ウェインがさっと手を離すと、その場に蹲り子供のように泣き出していた。
 
「なによぉ~、あたし、お母さんからきいたんだもん!! あの子が、変な力を使って、父親を殺したって! お母さんが言っているのきいたんだもん!! うわーーーーーーん!!」

 泣き崩れる恭子を見もせずに、ウェインはロイドに告げる。
 
「彼女は情緒不安定のようだ。きちんと医師に診てもらった方がいいだろう」

「あ……ああ」

 ロイドは、どうしたらいいのか分からずにそう言うだけで、ただ立ち尽くす。
 ウェインは、そんなロイドと恭子のことなど見ようともせずに、その場を後にしたのだ。
 屋敷に戻る馬車なのかで、ウェインは思うのだ。
 恭子が何を言いたくて、あんな嘘を吐くのかと。
 確かに、華火には何らかの力があるのだと感じ始めていたが、その力に対して、邪悪なものなど一切感じていなかったウェインは、拳をきつく握った。
 
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