わたしを嫌う妹の企みで追放されそうになりました。だけど、保護してくれた公爵様から溺愛されて、すごく幸せです。

バナナマヨネーズ

文字の大きさ
35 / 111

第三十五話

しおりを挟む
 目の前に広がる光景に、息をのんだのは瞬きほどの時間だった。
 ウェインは、瘴気に当てられた騎士や魔法使いたちの救護の指示と同時に、空石による瘴気の排除を同時に進行していた。
 気休めではあるが、回復魔法を使える騎士たちに、瘴気で苦しむ者たちの応急手当の指示をしながら、自ら空石を持って幾度も結界を張りなおす魔法使いたちの元へ向かっていた。
 技術主任から、理論上は瘴気の元になっているゴーフェルを空石で吸収することで瘴気はなくなるはずだが、魔素と魔融合した状態のゴーフェルを吸収できるかは、半々といったところだったのだ。
 しかし、何もしないよりは少しでも可能性を信じたかったウェインは、先頭になって瘴気に向かっていったのだ。
 ただ、華火の内膜は出来つつあったが、外皮の問題は未解決だった。そのため、自分に何かあれば、華火を苦しめる結果になることが頭を過ったが、目の前で苦しむ人たちを見捨てることなどウェインには出来なかった。
 華火と離れて十日ほどだった。華火の体のことを考えれば、そろそろ限界だった。
 だから、無理でも無茶でも空石でのゴーフェル吸収作戦を成功させる必要がウェインにはあったのだ。
 すぐにでも華火の元に駆け付けたい気持ちを必死に殺し、少しでも早くこの状況を打破すべく、ウェインはまっすぐに結界が脆くなっている場所に向かっていたのだった。
 
 ウェインが結界に近寄ると、近くで結界を維持していた魔法使いが慌てて言うのだ。
 
「シグルド副団長?! だ、駄目です!! そちらは危険です。すぐに引き返してください!!」

 表情を青くさせた魔法使いがそうウェインに警告をするが、ウェインは止まらずに力強い言葉で言うのだ。
 
「大丈夫だ。勝算はある! お前たちは、そのまま結界の維持に努めよ!」

 ウェインにそう言われた魔法使いたちは、お互いに頷き合って結界の強度維持に意識を集中させていた。
 それを、気配で察したウェインは、すぐに前を見つめて、技術主任の言葉を思い出していた。
 技術主任は、ウェインたちに加工が終わった空石を渡すときにこう言ったのだ。
 
「十分な効果を発揮させるのであれば、空石を点火させた状態で瘴気の中に置くのが一番ですが、そんなことをすれば、点火のために空石に魔力を流している手が瘴気で最悪落ちる可能性があるので、必ず空石を瘴気に向かって、安全な場所から投げるようにしてください。くれぐれも、無茶はなさいませんように」

 そう釘を刺されていたウェインだったが、無茶は承知と行動を起こしていた。
 ただ、自分の身に何かあればきっと華火が悲しむと思うと、そこまで思い切ったことも出来ず、ぎりぎりを攻めることにしたウェインは、持っていた空石のうちの一つを技術主任の言うとおりに結界の中から瘴気の中に向かって放り投げたのだ。
 
 結果はすぐに出ていた。
 放物線を描いてポトリと瘴気の中に落ちた空石は、周囲のゴーフェルを吸収したようで、見る見るうちに灰色になっていき、最終的にドス黒い色になっていた。
 それを確認したウェインは、他に持っていた小さめの空石を次々に放り投げる。
 そして、左手に持つ空石に魔力を流しつつ、空石に刻まれた魔法式が立ち上がるのを確認したウェインは、放り投げた空石がドス黒くなる前に、結界の外側に空石を持った左手を伸ばしていたのだ。
 左手に走る激痛に眉を顰めながら、結界の外側の地面に拳ほどの大きさの空石を突き立てたのだ。
 
 地面に突き刺さった空石は、放り投げた空石とは違った反応を見せたのだ。
 色が灰色に濁るのは一緒だったが、そこからが大きく違ったのだ。
 透明な空石の中心だけが灰色に濁ったと思ったら、中心でそれが渦を巻くように流動しだしたのだ。
 瘴気は決して目には見えないが、空石の周囲の空気が明らかに違ったようにウェインには感じられたのだ。
 空石を地面に突き刺した後、すぐに左手を結界内に引っ込めたウェインは、激痛はあったが、手が駄目になるほどではなかったため、脆くなった結界の境界線上に次々と空石を突き刺して行ったのだ。
 第一部隊の騎士たちは、最初は技術主任の言う通りに、瘴気に向かって空石を放り投げていたが、ウェインの勇気が必要になるような行動を見て、それに続くようになっていた。
 部下たちの無謀とも思える行動を注意をしようとしたが、自分が一番無謀な行動をとったという自覚があったウェインは、部下たちの勇気に心の中で感謝をしたのだった。
 
 
しおりを挟む
感想 21

あなたにおすすめの小説

【完結】 異世界に転生したと思ったら公爵令息の4番目の婚約者にされてしまいました。……はあ?

はくら(仮名)
恋愛
 ある日、リーゼロッテは前世の記憶と女神によって転生させられたことを思い出す。当初は困惑していた彼女だったが、とにかく普段通りの生活と学園への登校のために外に出ると、その通学路の途中で貴族のヴォクス家の令息に見初められてしまい婚約させられてしまう。そしてヴォクス家に連れられていってしまった彼女が聞かされたのは、自分が4番目の婚約者であるという事実だった。 ※本作は別ペンネームで『小説家になろう』にも掲載しています。

【完結】うっかり異世界召喚されましたが騎士様が過保護すぎます!

雨宮羽那
恋愛
 いきなり神子様と呼ばれるようになってしまった女子高生×過保護気味な騎士のラブストーリー。 ◇◇◇◇  私、立花葵(たちばなあおい)は普通の高校二年生。  元気よく始業式に向かっていたはずなのに、うっかり神様とぶつかってしまったらしく、異世界へ飛ばされてしまいました!  気がつくと神殿にいた私を『神子様』と呼んで出迎えてくれたのは、爽やかなイケメン騎士様!?  元の世界に戻れるまで騎士様が守ってくれることになったけど……。この騎士様、過保護すぎます!  だけどこの騎士様、何やら秘密があるようで――。 ◇◇◇◇ ※過去に同名タイトルで途中まで連載していましたが、連載再開にあたり設定に大幅変更があったため、加筆どころか書き直してます。 ※アルファポリス先行公開。 ※表紙はAIにより作成したものです。

異世界に落ちて、溺愛されました。

恋愛
満月の月明かりの中、自宅への帰り道に、穴に落ちた私。 落ちた先は異世界。そこで、私を番と話す人に溺愛されました。

『異世界転生してカフェを開いたら、庭が王宮より人気になってしまいました』

ヤオサカ
恋愛
申し訳ありません、物語の内容を確認しているため、一部非公開にしています この物語は完結しました。 前世では小さな庭付きカフェを営んでいた主人公。事故により命を落とし、気がつけば異世界の貧しい村に転生していた。 「何もないなら、自分で作ればいいじゃない」 そう言って始めたのは、イングリッシュガーデン風の庭とカフェづくり。花々に囲まれた癒しの空間は次第に評判を呼び、貴族や騎士まで足を運ぶように。 そんな中、無愛想な青年が何度も訪れるようになり――?

無能だとクビになったメイドですが、今は王宮で筆頭メイドをしています

如月ぐるぐる
恋愛
「お前の様な役立たずは首だ! さっさと出て行け!」 何年も仕えていた男爵家を追い出され、途方に暮れるシルヴィア。 しかし街の人々はシルビアを優しく受け入れ、宿屋で住み込みで働く事になる。 様々な理由により職を転々とするが、ある日、男爵家は爵位剥奪となり、近隣の子爵家の代理人が統治する事になる。 この地域に詳しく、元男爵家に仕えていた事もあり、代理人がシルヴィアに協力を求めて来たのだが…… 男爵メイドから王宮筆頭メイドになるシルビアの物語が、今始まった。

王宮侍女は穴に落ちる

斑猫
恋愛
婚約破棄されたうえ養家を追い出された アニエスは王宮で運良く職を得る。 呪われた王女と呼ばれるエリザベ―ト付き の侍女として。 忙しく働く毎日にやりがいを感じていた。 ところが、ある日ちょっとした諍いから 突き飛ばされて怪しい穴に落ちてしまう。 ちょっと、とぼけた主人公が足フェチな 俺様系騎士団長にいじめ……いや、溺愛され るお話です。

兄みたいな騎士団長の愛が実は重すぎでした

鳥花風星
恋愛
代々騎士団寮の寮母を務める家に生まれたレティシアは、若くして騎士団の一つである「群青の騎士団」の寮母になり、 幼少の頃から仲の良い騎士団長のアスールは、そんなレティシアを陰からずっと見守っていた。レティシアにとってアスールは兄のような存在だが、次第に兄としてだけではない思いを持ちはじめてしまう。 アスールにとってもレティシアは妹のような存在というだけではないようで……。兄としてしか思われていないと思っているアスールはレティシアへの思いを拗らせながらどんどん膨らませていく。 すれ違う恋心、アスールとライバルの心理戦。拗らせ溺愛が激しい、じれじれだけどハッピーエンドです。 ☆他投稿サイトにも掲載しています。 ☆番外編はアスールの同僚ノアールがメインの話になっています。

龍王の番〜双子の運命の分かれ道・人生が狂った者たちの結末〜

クラゲ散歩
ファンタジー
ある小さな村に、双子の女の子が生まれた。 生まれて間もない時に、いきなり家に誰かが入ってきた。高貴なオーラを身にまとった、龍国の王ザナが側近二人を連れ現れた。 母親の横で、お湯に入りスヤスヤと眠っている子に「この娘は、私の○○の番だ。名をアリサと名付けよ。 そして18歳になったら、私の妻として迎えよう。それまでは、不自由のないようにこちらで準備をする。」と言い残し去って行った。 それから〜18年後 約束通り。贈られてきた豪華な花嫁衣装に身を包み。 アリサと両親は、龍の背中に乗りこみ。 いざ〜龍国へ出発した。 あれれ?アリサと両親だけだと数が合わないよね?? 確か双子だったよね? もう一人の女の子は〜どうしたのよ〜! 物語に登場する人物達の視点です。

処理中です...