わたしを嫌う妹の企みで追放されそうになりました。だけど、保護してくれた公爵様から溺愛されて、すごく幸せです。

バナナマヨネーズ

文字の大きさ
36 / 111

第三十六話

しおりを挟む
 工夫たちと技術者たちの頑張りのお陰で小型の荷馬車一台分ほど用意されていた空石だったが、陽が暮れるころには三分の一の量が無くなっていた。
 その分の成果は十分なほど出ていたが、一度脆くなった結界は、連鎖的に消滅と再構築を繰り返していたのだ。
 ただし、結界と瘴気の境界線上に空石を設置した場所は今のところ安定していた。
 目に見えない瘴気の存在を確認するためにアイラナクという鳥が使われていた。
 長い棒の先に付けた鳥籠に入れられたアイラナクは、瘴気を感じると激しく鳴き叫び、瘴気の存在を人々に教えたのだ。
 そのアイラナクが、結界の外側に出されても鳴かないことから、ゴーフェルを空石が吸収することで瘴気がなくなっている事を証明していた。
 結界の崩壊の連鎖を何とか食い止めるため、ウェインたちは奔走していたのだ。
 
 ある時から、結界の崩壊が一時的にだと思われるが落ち着いたタイミングで、騎士たちを順番で休ませていたウェインは、これからのことを考えていた。
 空石の有用性をオニラノツ王国と接する他の国に知らせて、各国で防衛ラインの維持と拡大をするために、魔法式の公開と空石の確保が急務となっていた。
 ただ、空石の確保はどの国も非常に困難なことだろうとウェインは思うのだ。
 今回、たまたま廃坑に眠っていた空石が大量に確保できただけで、こんな偶然はなかなか起こるものではないだろう。
 
 無茶をした自覚のあるウェインは、左手の感覚が鈍くなってきていることに苦笑いをする。
 左手を失うことになっても、この局面を乗り切り華火の元にいち早く戻りたかったのだ。
 華火の体のことも心配だったが、ただ彼女に会って、声を聴いて、抱きしめたかった。
 そんなことを考える自分を知り、ウェインは乾いた笑いを漏らすのだ。
 
「くくっ……。二週間ほどでこれでは、もしハナビが元の世界に帰る選択をしたとき、俺はどうやって残りの人生を生きるつもりなのだろうな……。ああ、俺はなんて自分勝手で酷い人間なんだ……。ハナビに俺を選んで欲しいと、心から思ってしまう……。元の世界を捨てて俺を選べと……。ああ、なんて傲慢な考えなんだ。本当に反吐が出る……」

 そんなことを考えながらも、空石の設置を続けるウェインは、瘴気に触れた影響が出始めたのか、めまいを覚えていた。
 歪む世界の中で、愛おしい少女の声が遠くで聞こえた気がしたのだ。
 華火が恋しくて幻聴が聞こえてくるなど、相当だなと自分を笑っていたが、幻聴のはずの声が徐々にはっきりと聞こえてきて、ウェインは目頭を指先で揉み解すような仕草をした後に、首をぐるりと回してから天を仰いでいた。
 
「動きっぱなしだったしな……。皆に悪いが俺も少し休憩を……」

 途中で言葉を止めたウェインは、陽が落ちて暗くなった空から何かがこちらに近づいてくる影が見えた気がして、目を凝らす。
 それは気のせいではなく、確実に地上に近づいてきていたのだ。
 瘴気の所為で、とうとう星でも落ちてきたのかと表情を硬くしたウェインは、声を張り上げて周囲に命令していた。
 
「総員退避!! 魔法の使える者は頭上に障壁を展開。他の者は、障壁の下に走れ!!」

 突然のウェインの言葉だったが、その場にいた者たちはすぐに行動を起こしていた。
 各々魔法障壁を張り、魔法が使えない者は、障壁の下に滑り込むように走り出していた。
 ウェインも特大の障壁を展開させながら、近づいてくる影に目を凝らす。
 すると、上空から何かが聞こえてきた気がしたウェインは、耳に意識を集中させていた。
 
「ーーーーーーゃーーーーー!!」

 微かにか細い悲鳴が聞こえた気がしたウェインは、目を凝らすのと同時に耳を澄ます。
 そして聞こえてきたにウェインは、頭上に展開させていた障壁を解いて両手を大きく広げていた。
 
「きゃーーーーーーーーーー!! まりあ※※※※※※※※ーーーーーーー!」

 間違えるはずもない、愛おしい少女の声に、ウェインは声を張り上げていた。
 
「ハナビ!! 大丈夫だ! 俺が必ず受け止める!!」

 両手を大きく広げて、自身に身体強化魔法と両手の間に風魔法で空気のクッションを作ったウェインは、空から落ちてくる影を受け止めるべく動いたのだ。
 
 ドゴゴゴゴォォォーーーーン!!!!!
 
 しかし、空から落ちてきた影は……、ウェインを避けるかのように、一歩ほどウェインの横にずれた位置に轟音を響かせ、土煙をあげて着地したのだった。

しおりを挟む
感想 21

あなたにおすすめの小説

【完結】 異世界に転生したと思ったら公爵令息の4番目の婚約者にされてしまいました。……はあ?

はくら(仮名)
恋愛
 ある日、リーゼロッテは前世の記憶と女神によって転生させられたことを思い出す。当初は困惑していた彼女だったが、とにかく普段通りの生活と学園への登校のために外に出ると、その通学路の途中で貴族のヴォクス家の令息に見初められてしまい婚約させられてしまう。そしてヴォクス家に連れられていってしまった彼女が聞かされたのは、自分が4番目の婚約者であるという事実だった。 ※本作は別ペンネームで『小説家になろう』にも掲載しています。

【完結】うっかり異世界召喚されましたが騎士様が過保護すぎます!

雨宮羽那
恋愛
 いきなり神子様と呼ばれるようになってしまった女子高生×過保護気味な騎士のラブストーリー。 ◇◇◇◇  私、立花葵(たちばなあおい)は普通の高校二年生。  元気よく始業式に向かっていたはずなのに、うっかり神様とぶつかってしまったらしく、異世界へ飛ばされてしまいました!  気がつくと神殿にいた私を『神子様』と呼んで出迎えてくれたのは、爽やかなイケメン騎士様!?  元の世界に戻れるまで騎士様が守ってくれることになったけど……。この騎士様、過保護すぎます!  だけどこの騎士様、何やら秘密があるようで――。 ◇◇◇◇ ※過去に同名タイトルで途中まで連載していましたが、連載再開にあたり設定に大幅変更があったため、加筆どころか書き直してます。 ※アルファポリス先行公開。 ※表紙はAIにより作成したものです。

龍王の番〜双子の運命の分かれ道・人生が狂った者たちの結末〜

クラゲ散歩
ファンタジー
ある小さな村に、双子の女の子が生まれた。 生まれて間もない時に、いきなり家に誰かが入ってきた。高貴なオーラを身にまとった、龍国の王ザナが側近二人を連れ現れた。 母親の横で、お湯に入りスヤスヤと眠っている子に「この娘は、私の○○の番だ。名をアリサと名付けよ。 そして18歳になったら、私の妻として迎えよう。それまでは、不自由のないようにこちらで準備をする。」と言い残し去って行った。 それから〜18年後 約束通り。贈られてきた豪華な花嫁衣装に身を包み。 アリサと両親は、龍の背中に乗りこみ。 いざ〜龍国へ出発した。 あれれ?アリサと両親だけだと数が合わないよね?? 確か双子だったよね? もう一人の女の子は〜どうしたのよ〜! 物語に登場する人物達の視点です。

『異世界転生してカフェを開いたら、庭が王宮より人気になってしまいました』

ヤオサカ
恋愛
申し訳ありません、物語の内容を確認しているため、一部非公開にしています この物語は完結しました。 前世では小さな庭付きカフェを営んでいた主人公。事故により命を落とし、気がつけば異世界の貧しい村に転生していた。 「何もないなら、自分で作ればいいじゃない」 そう言って始めたのは、イングリッシュガーデン風の庭とカフェづくり。花々に囲まれた癒しの空間は次第に評判を呼び、貴族や騎士まで足を運ぶように。 そんな中、無愛想な青年が何度も訪れるようになり――?

聖女の座を奪われてしまったけど、私が真の聖女だと思うので、第二の人生を始めたい! P.S.逆ハーがついてきました。

三月べに
恋愛
 聖女の座を奪われてしまったけど、私が真の聖女だと思う。だって、高校時代まで若返っているのだもの。  帰れないだって? じゃあ、このまま第二の人生スタートしよう!  衣食住を確保してもらっている城で、魔法の勉強をしていたら、あらら?  何故、逆ハーが出来上がったの?

異世界に落ちて、溺愛されました。

恋愛
満月の月明かりの中、自宅への帰り道に、穴に落ちた私。 落ちた先は異世界。そこで、私を番と話す人に溺愛されました。

男子高校生だった俺は異世界で幼児になり 訳あり筋肉ムキムキ集団に保護されました。

カヨワイさつき
ファンタジー
高校3年生の神野千明(かみの ちあき)。 今年のメインイベントは受験、 あとはたのしみにしている北海道への修学旅行。 だがそんな彼は飛行機が苦手だった。 電車バスはもちろん、ひどい乗り物酔いをするのだった。今回も飛行機で乗り物酔いをおこしトイレにこもっていたら、いつのまにか気を失った?そして、ちがう場所にいた?! あれ?身の危険?!でも、夢の中だよな? 急死に一生?と思ったら、筋肉ムキムキのワイルドなイケメンに拾われたチアキ。 さらに、何かがおかしいと思ったら3歳児になっていた?! 変なレアスキルや神具、 八百万(やおよろず)の神の加護。 レアチート盛りだくさん?! 半ばあたりシリアス 後半ざまぁ。 訳あり幼児と訳あり集団たちとの物語。 〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜 北海道、アイヌ語、かっこ良さげな名前 お腹がすいた時に食べたい食べ物など 思いついた名前とかをもじり、 なんとか、名前決めてます。     *** お名前使用してもいいよ💕っていう 心優しい方、教えて下さい🥺 悪役には使わないようにします、たぶん。 ちょっとオネェだったり、 アレ…だったりする程度です😁 すでに、使用オッケーしてくださった心優しい 皆様ありがとうございます😘 読んでくださる方や応援してくださる全てに めっちゃ感謝を込めて💕 ありがとうございます💞

兄みたいな騎士団長の愛が実は重すぎでした

鳥花風星
恋愛
代々騎士団寮の寮母を務める家に生まれたレティシアは、若くして騎士団の一つである「群青の騎士団」の寮母になり、 幼少の頃から仲の良い騎士団長のアスールは、そんなレティシアを陰からずっと見守っていた。レティシアにとってアスールは兄のような存在だが、次第に兄としてだけではない思いを持ちはじめてしまう。 アスールにとってもレティシアは妹のような存在というだけではないようで……。兄としてしか思われていないと思っているアスールはレティシアへの思いを拗らせながらどんどん膨らませていく。 すれ違う恋心、アスールとライバルの心理戦。拗らせ溺愛が激しい、じれじれだけどハッピーエンドです。 ☆他投稿サイトにも掲載しています。 ☆番外編はアスールの同僚ノアールがメインの話になっています。

処理中です...