わたしを嫌う妹の企みで追放されそうになりました。だけど、保護してくれた公爵様から溺愛されて、すごく幸せです。

バナナマヨネーズ

文字の大きさ
105 / 111
翻訳版

第四十九話 〃

しおりを挟む
 恭子に乗っ取られたのだろう馬車を追いかけたウェインだったが、走り出してすぐに馬車の車輪が外れるというアクシデントに見舞われていた。
 必ず乗る前に点検を怠らない馬車の事故に嫌な予感を覚えたウェインは、無事だった御者に後処理を任せて馬の背に飛び乗ったのだった。
 しかし、ウェインが駆け出した先で、老婆が転倒したり、女性がひったくりに合う場面に遭遇したりと、素通りできない状況が続き、恭子からかなり遅れて屋敷に到着していた。
 屋敷の中は、ウェインの予想をはるかに超える大騒ぎになっていた。
 騒ぎの中心に向かっていくと、華火が閉じ込められた水晶を保管している部屋にたどり着いていた。
 まさか、マリアの守りを突破しているとは予想だにもしていなかったウェインは、嫌な予感に指先が冷たくなっていくのを感じていた。
 警戒しつつ部屋に入ると、あのマリアが真っ白な顔で苦しそうに横たわっていたのだ。
 慌てて駆け寄ると、マリアは苦しそうにではあるがウェインに忠告をするのだ。
 
「閣下……、申し訳ございません……。あの女は危険です……。よくわかりませんが、あの女がこちらに指先を向けたとたんに、生命力を吸われた……としか思えないような……。屋敷の者の全員が……」

「わかった。注意する」

 ぐったりとしているマリアからの報告に頷いたウェインは、鋭い視線を恭子に向けていた。
 しかし、恭子はそんなウェインの視線に気が付くどころか、水晶に閉じ込められた状態の華火に縋るようにして何かを口にしていたのだ。
 恭子から感じる、嫌な感じにウェインは、口を開いていた。
 
「今すぐにハナビから離れろ」

 ウェインがそう口にすると、目を血走らせた恭子が唾を飛ばしながらがなり立てた。
 
「どうしてよ!! なんで華火がこんなことになっているのよ!! あんたがやったの?! あたしの・・・・華火に何をしたのよ!!」

 自分のために華火がこのような姿になったと思っているウェインは、言葉を飲み込んでしまい、恭子に反論をすることが出来なかった。
 そのすきを突くように、恭子はウェインを言葉のナイフで攻撃していく。
 
「あんたの所為で華火がこうなったんでしょ?! 死んでよ! 華火を苦しめる人間は死ねばいいのよ!! 死んでよ? 死ねよ!!」

 そう言った恭子は、ウェインに向かって手を伸ばして歪んだ笑みを浮かべるのだ。
 
「そうよ。死んでよ。死ねよ。すぐに死んでよ」

 そう言って、恭子がニヤリと歪に笑ったと思った時だった。
 ウェインは、全身の力が奪われていくような感覚に襲われていた。
 マリアに忠告されていたというのに、無様に膝を付く自分の情けなさに打ちのめされそうになりながらも、心だけは折れることはなかった。
 
「そ……こから、離れろ……」

 切れ切れにそう口にするウェインを忌々しそうに睨んだ恭子は、吐き捨てるように言った。
 
「華火をこんな目に合わせたあんたなんて消えればいいのよ。死んでよ。死ねよ」

「おまえに……なんと言われようと、ハナビは……くっ……」

「うざいのよ。華火に近づく虫けらなんて死んで当然なのよ!! あんたさえいなければ、華火はあたしを頼って、あたしに依存して!! どうして余計なことしたのよ!! 言葉が分からない世界で頼れるのはあたしだけのはずなのに、なんであたしに頼らないのよ!! あんたさえいなければ!! 消えてよ。消えなさいよ!!」

 そう言った恭子は、苦しそうに膝を付くウェインの手を踏みつけながら、その髪を掴んで顔をあげさせた。
 
「ふーん。確かにイケメンね。どうやって、華火を落としたの? この顔? この顔であの子を誘惑したの?」

 そう言った恭子は、無理やり上を向かせたウェインの顔を拳で殴りつけた。
 
「いったーい。でも、許さない。この顔の所為で華火が誘惑されるっていうなら、見られないようにしてやらないと気が済まない……」

 情緒不安定な様子でそう呟いた恭子は、長く伸ばした爪でウェインの顔を抉るようにひっかいていくのだ。その顔は楽しそうに歪み、見ているものの心を不快にさせた。
 
「くすくす。いい気味。ねぇ、力はいらないでしょう? こんな小娘にいいようにされて……。悔しいでしょう? でも許さない。あっ、そうだ。その気に入らない目を抉って、華火を見られないようにしよう。うん。うん」

 楽しそうにそう呟いた恭子は、ウェインの瞳を抉ろうと指先を向けた。
 ウェインは、体がいうことをきかない状況でも心は折れることはなく、楽しそうに自分を痛めつけることを楽しむ恭子から視線を逸らすことなくキツク睨みつけたのだ。
 そんなウェインの視線が気に入らないとばかりに、恭子の鋭い爪先が今まさにウェインの瞳を抉ろうとしていた。

しおりを挟む
感想 21

あなたにおすすめの小説

【完結】 異世界に転生したと思ったら公爵令息の4番目の婚約者にされてしまいました。……はあ?

はくら(仮名)
恋愛
 ある日、リーゼロッテは前世の記憶と女神によって転生させられたことを思い出す。当初は困惑していた彼女だったが、とにかく普段通りの生活と学園への登校のために外に出ると、その通学路の途中で貴族のヴォクス家の令息に見初められてしまい婚約させられてしまう。そしてヴォクス家に連れられていってしまった彼女が聞かされたのは、自分が4番目の婚約者であるという事実だった。 ※本作は別ペンネームで『小説家になろう』にも掲載しています。

【完結】うっかり異世界召喚されましたが騎士様が過保護すぎます!

雨宮羽那
恋愛
 いきなり神子様と呼ばれるようになってしまった女子高生×過保護気味な騎士のラブストーリー。 ◇◇◇◇  私、立花葵(たちばなあおい)は普通の高校二年生。  元気よく始業式に向かっていたはずなのに、うっかり神様とぶつかってしまったらしく、異世界へ飛ばされてしまいました!  気がつくと神殿にいた私を『神子様』と呼んで出迎えてくれたのは、爽やかなイケメン騎士様!?  元の世界に戻れるまで騎士様が守ってくれることになったけど……。この騎士様、過保護すぎます!  だけどこの騎士様、何やら秘密があるようで――。 ◇◇◇◇ ※過去に同名タイトルで途中まで連載していましたが、連載再開にあたり設定に大幅変更があったため、加筆どころか書き直してます。 ※アルファポリス先行公開。 ※表紙はAIにより作成したものです。

龍王の番〜双子の運命の分かれ道・人生が狂った者たちの結末〜

クラゲ散歩
ファンタジー
ある小さな村に、双子の女の子が生まれた。 生まれて間もない時に、いきなり家に誰かが入ってきた。高貴なオーラを身にまとった、龍国の王ザナが側近二人を連れ現れた。 母親の横で、お湯に入りスヤスヤと眠っている子に「この娘は、私の○○の番だ。名をアリサと名付けよ。 そして18歳になったら、私の妻として迎えよう。それまでは、不自由のないようにこちらで準備をする。」と言い残し去って行った。 それから〜18年後 約束通り。贈られてきた豪華な花嫁衣装に身を包み。 アリサと両親は、龍の背中に乗りこみ。 いざ〜龍国へ出発した。 あれれ?アリサと両親だけだと数が合わないよね?? 確か双子だったよね? もう一人の女の子は〜どうしたのよ〜! 物語に登場する人物達の視点です。

『異世界転生してカフェを開いたら、庭が王宮より人気になってしまいました』

ヤオサカ
恋愛
申し訳ありません、物語の内容を確認しているため、一部非公開にしています この物語は完結しました。 前世では小さな庭付きカフェを営んでいた主人公。事故により命を落とし、気がつけば異世界の貧しい村に転生していた。 「何もないなら、自分で作ればいいじゃない」 そう言って始めたのは、イングリッシュガーデン風の庭とカフェづくり。花々に囲まれた癒しの空間は次第に評判を呼び、貴族や騎士まで足を運ぶように。 そんな中、無愛想な青年が何度も訪れるようになり――?

聖女の座を奪われてしまったけど、私が真の聖女だと思うので、第二の人生を始めたい! P.S.逆ハーがついてきました。

三月べに
恋愛
 聖女の座を奪われてしまったけど、私が真の聖女だと思う。だって、高校時代まで若返っているのだもの。  帰れないだって? じゃあ、このまま第二の人生スタートしよう!  衣食住を確保してもらっている城で、魔法の勉強をしていたら、あらら?  何故、逆ハーが出来上がったの?

異世界に落ちて、溺愛されました。

恋愛
満月の月明かりの中、自宅への帰り道に、穴に落ちた私。 落ちた先は異世界。そこで、私を番と話す人に溺愛されました。

男子高校生だった俺は異世界で幼児になり 訳あり筋肉ムキムキ集団に保護されました。

カヨワイさつき
ファンタジー
高校3年生の神野千明(かみの ちあき)。 今年のメインイベントは受験、 あとはたのしみにしている北海道への修学旅行。 だがそんな彼は飛行機が苦手だった。 電車バスはもちろん、ひどい乗り物酔いをするのだった。今回も飛行機で乗り物酔いをおこしトイレにこもっていたら、いつのまにか気を失った?そして、ちがう場所にいた?! あれ?身の危険?!でも、夢の中だよな? 急死に一生?と思ったら、筋肉ムキムキのワイルドなイケメンに拾われたチアキ。 さらに、何かがおかしいと思ったら3歳児になっていた?! 変なレアスキルや神具、 八百万(やおよろず)の神の加護。 レアチート盛りだくさん?! 半ばあたりシリアス 後半ざまぁ。 訳あり幼児と訳あり集団たちとの物語。 〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜 北海道、アイヌ語、かっこ良さげな名前 お腹がすいた時に食べたい食べ物など 思いついた名前とかをもじり、 なんとか、名前決めてます。     *** お名前使用してもいいよ💕っていう 心優しい方、教えて下さい🥺 悪役には使わないようにします、たぶん。 ちょっとオネェだったり、 アレ…だったりする程度です😁 すでに、使用オッケーしてくださった心優しい 皆様ありがとうございます😘 読んでくださる方や応援してくださる全てに めっちゃ感謝を込めて💕 ありがとうございます💞

兄みたいな騎士団長の愛が実は重すぎでした

鳥花風星
恋愛
代々騎士団寮の寮母を務める家に生まれたレティシアは、若くして騎士団の一つである「群青の騎士団」の寮母になり、 幼少の頃から仲の良い騎士団長のアスールは、そんなレティシアを陰からずっと見守っていた。レティシアにとってアスールは兄のような存在だが、次第に兄としてだけではない思いを持ちはじめてしまう。 アスールにとってもレティシアは妹のような存在というだけではないようで……。兄としてしか思われていないと思っているアスールはレティシアへの思いを拗らせながらどんどん膨らませていく。 すれ違う恋心、アスールとライバルの心理戦。拗らせ溺愛が激しい、じれじれだけどハッピーエンドです。 ☆他投稿サイトにも掲載しています。 ☆番外編はアスールの同僚ノアールがメインの話になっています。

処理中です...