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閑話2
50 名もないモブの独り言4
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俺は、名もないモブだ。
俺はとても運が悪くて運がいい。
その日、非番だった俺は寮にいてもやることがなかったので、街をブラブラとしていた。
ちょうど、冒険者組合の近くを通った時だった。
黒髪の青年と、眼鏡を掛けた明るい茶髪の青年が冒険者組合の建物に入って行くのが見えた。
組合の建物に入っていった黒髪の青年は、高い身長に一見細身に見えるが、相当鍛えている体つきをしていた。
それに加えて、短く切られた髪は硬質そうだったが、それが彼をより硬派に見せているように感じた。
ヴェイン補佐官とは違ったイケメンは、あまり見掛けない変わった剣を携えていた。
彼と一緒にいた茶髪の方は、スラリとした長身に、柔和な笑顔の似合う甘いマスクの男だった。一見、知的に見える風貌だったが、どことなくチャラい空気を感じた。
俺は、その二人組みのことを知っていた。
彼らは、一ヶ月ほど前に王都を旅立った、上級星5ランクの冒険者だ。
その最高ランクの冒険者は、とても腕の立つ剣士と術士の二人組みだった。
その二人は、二ヶ月以上前に王都にやって来て冒険者登録をしたと思ったら、あっという間に最上ランクまで駆け上がった期待の新人だと、組合長が言っていたのを覚えている。
彼らは、探し人が居るだとかで、指名依頼を果たした後に、王都を離れていたのだ。
王都を離れる時、いつ戻れるか分からないと言っていたそうだが、意外と早く戻ってきたことに正直驚いていた。
ついつい、興味が湧いてしまった俺は彼らの後を追うように、冒険者組合の建物にフラフラっと入って行っていた。
中に入って、周辺を視線だけで見回していると、奥から組合長が出てくるのが見えた。
組合長は、二人の最高ランク冒険者と、短いやり取りをした後に、奥の部屋に二人を伴って行ってしまった。
その場にいても仕方ないと、建物から出ようとしたら、奥から物凄い怒鳴り声が聞こえてきたのだ。
驚いていると、奥から黒髪の青年が鬼のような形相で出てくるのが見えた。
「手が無いってどういうことだよ!!あのクソジジィ!!」
「落ち着けよ」
「落ち着けるかよ!!こうしている間にもあいつは!!」
「まあまあ、おまえが怒ったところで、状況は変わらないし、もっと気楽にだなぁ」
「気楽になれるか!!俺は、あいつが消える瞬間、何も出来なかったんだ!!あいつが消える瞬間、確かに目が合ったんだ!!俺は……、俺は!!」
「はぁ。おまえさぁ、本当にあの子のこと好きだよなぁ。なんで本人に素直に気持ち伝えなかったんだよ?いつも、照れ隠しにしては酷い態度だったから、おまえの気持ちを知ってる俺でも、本当に好きなのか疑うレベルだったぞ?」
「……、分かってる。自分がどんなに幼稚だったか……」
「はぁ。で、どうする?闇雲に動いても、無駄になるだけだと思うけど?まぁ、実際に無駄足踏んだのは事実だしなぁ」
「……、中央図書館で文献を探す。他にも、元冒険者とか、騎士団とか、情報持ってそうな奴がいないか探す。それで、少しでも魔の森の情報を得た上で、もう一度あいつを探す……」
「オッケー。手伝うよ」
ついつい、その二人の話を立ち聞きしてしまっていた。
魔の森について情報を探すって言っても無理だと思うぞ?
そんな情報あれば、魔の森は、ただの森になってるさ。
情報がないからこそ、未だに魔物が跋扈する魔の森だと恐れられてるんだ。
そこまで考えた俺は、何か引っかかるものがあったのだ。
最近、どこかで魔の森という単語を聞いたような?
あぁ~、どこだったかなぁ?
聞いたと言うか、見掛けた?読んだ?
「あっ、そうだ。補佐官が魔の森から帰ってきたって言ってたんだ……」
そうだ、報告書にそうあったんだ。
俺は、魔の森に入って無事に出てこられるわけ無いと思っているから、ヴェイン補佐官の勘違いだと思っていた。
だけど、ヴェイン補佐官の方向音痴が逆に作用して、魔の森を抜けられたとかはあるかもしれないな。
うん。方向音痴凄いな。
そんな事を考えていたら、強い力で肩を掴まれていた。
嫌な予感がしたので、振り向きたくなかったけど、背後からの圧に振り向かざるを得なかった。
錆びついた人形のように、ぎこちない動きで背後を振り返った俺に黒髪の青年は鬼気迫る表情で言った。
「おい、あんた。今、なんて言った?魔の森から帰ってきたって言わなかったか?言ったよな?」
俺は、目を泳がせてこの状況について頭をフル回転させていた。
だってそうだろう?
もし、このままヴェイン補佐官のことを話してしまったら、俺の毛根は死滅するかもしれないからだ。
そう、ヴェイン補佐官に迷惑を掛けたと見なされて、確実にヤツにマークされる……。
なんとしてでも、俺の毛根を守らなければ!!
という事で、俺は全力で誤魔化すことにした。
「はい?なんのことです?」
「だから、さっきあんたが言った」
「はて?何か言いました?空耳じゃないですか?あっ、大変だ!用事があるんだった!!」
そう言って、体を捻ってするりと身を翻してから、全力で駆け出した。
「おい、こら、ちょっと待てって!!」
待つ訳がない。俺は全力で逃げるぞ。
大人気なくも、気配を殺しつつ身を低くした状態で全力で疾走し、全力で跳躍し屋根伝いに一目散に逃げ出したのだった。
今日の不運は、用もないのにブラブラしたことだと、俺は全力で自分の行動を反省したのは言うまでもない。
俺はとても運が悪くて運がいい。
その日、非番だった俺は寮にいてもやることがなかったので、街をブラブラとしていた。
ちょうど、冒険者組合の近くを通った時だった。
黒髪の青年と、眼鏡を掛けた明るい茶髪の青年が冒険者組合の建物に入って行くのが見えた。
組合の建物に入っていった黒髪の青年は、高い身長に一見細身に見えるが、相当鍛えている体つきをしていた。
それに加えて、短く切られた髪は硬質そうだったが、それが彼をより硬派に見せているように感じた。
ヴェイン補佐官とは違ったイケメンは、あまり見掛けない変わった剣を携えていた。
彼と一緒にいた茶髪の方は、スラリとした長身に、柔和な笑顔の似合う甘いマスクの男だった。一見、知的に見える風貌だったが、どことなくチャラい空気を感じた。
俺は、その二人組みのことを知っていた。
彼らは、一ヶ月ほど前に王都を旅立った、上級星5ランクの冒険者だ。
その最高ランクの冒険者は、とても腕の立つ剣士と術士の二人組みだった。
その二人は、二ヶ月以上前に王都にやって来て冒険者登録をしたと思ったら、あっという間に最上ランクまで駆け上がった期待の新人だと、組合長が言っていたのを覚えている。
彼らは、探し人が居るだとかで、指名依頼を果たした後に、王都を離れていたのだ。
王都を離れる時、いつ戻れるか分からないと言っていたそうだが、意外と早く戻ってきたことに正直驚いていた。
ついつい、興味が湧いてしまった俺は彼らの後を追うように、冒険者組合の建物にフラフラっと入って行っていた。
中に入って、周辺を視線だけで見回していると、奥から組合長が出てくるのが見えた。
組合長は、二人の最高ランク冒険者と、短いやり取りをした後に、奥の部屋に二人を伴って行ってしまった。
その場にいても仕方ないと、建物から出ようとしたら、奥から物凄い怒鳴り声が聞こえてきたのだ。
驚いていると、奥から黒髪の青年が鬼のような形相で出てくるのが見えた。
「手が無いってどういうことだよ!!あのクソジジィ!!」
「落ち着けよ」
「落ち着けるかよ!!こうしている間にもあいつは!!」
「まあまあ、おまえが怒ったところで、状況は変わらないし、もっと気楽にだなぁ」
「気楽になれるか!!俺は、あいつが消える瞬間、何も出来なかったんだ!!あいつが消える瞬間、確かに目が合ったんだ!!俺は……、俺は!!」
「はぁ。おまえさぁ、本当にあの子のこと好きだよなぁ。なんで本人に素直に気持ち伝えなかったんだよ?いつも、照れ隠しにしては酷い態度だったから、おまえの気持ちを知ってる俺でも、本当に好きなのか疑うレベルだったぞ?」
「……、分かってる。自分がどんなに幼稚だったか……」
「はぁ。で、どうする?闇雲に動いても、無駄になるだけだと思うけど?まぁ、実際に無駄足踏んだのは事実だしなぁ」
「……、中央図書館で文献を探す。他にも、元冒険者とか、騎士団とか、情報持ってそうな奴がいないか探す。それで、少しでも魔の森の情報を得た上で、もう一度あいつを探す……」
「オッケー。手伝うよ」
ついつい、その二人の話を立ち聞きしてしまっていた。
魔の森について情報を探すって言っても無理だと思うぞ?
そんな情報あれば、魔の森は、ただの森になってるさ。
情報がないからこそ、未だに魔物が跋扈する魔の森だと恐れられてるんだ。
そこまで考えた俺は、何か引っかかるものがあったのだ。
最近、どこかで魔の森という単語を聞いたような?
あぁ~、どこだったかなぁ?
聞いたと言うか、見掛けた?読んだ?
「あっ、そうだ。補佐官が魔の森から帰ってきたって言ってたんだ……」
そうだ、報告書にそうあったんだ。
俺は、魔の森に入って無事に出てこられるわけ無いと思っているから、ヴェイン補佐官の勘違いだと思っていた。
だけど、ヴェイン補佐官の方向音痴が逆に作用して、魔の森を抜けられたとかはあるかもしれないな。
うん。方向音痴凄いな。
そんな事を考えていたら、強い力で肩を掴まれていた。
嫌な予感がしたので、振り向きたくなかったけど、背後からの圧に振り向かざるを得なかった。
錆びついた人形のように、ぎこちない動きで背後を振り返った俺に黒髪の青年は鬼気迫る表情で言った。
「おい、あんた。今、なんて言った?魔の森から帰ってきたって言わなかったか?言ったよな?」
俺は、目を泳がせてこの状況について頭をフル回転させていた。
だってそうだろう?
もし、このままヴェイン補佐官のことを話してしまったら、俺の毛根は死滅するかもしれないからだ。
そう、ヴェイン補佐官に迷惑を掛けたと見なされて、確実にヤツにマークされる……。
なんとしてでも、俺の毛根を守らなければ!!
という事で、俺は全力で誤魔化すことにした。
「はい?なんのことです?」
「だから、さっきあんたが言った」
「はて?何か言いました?空耳じゃないですか?あっ、大変だ!用事があるんだった!!」
そう言って、体を捻ってするりと身を翻してから、全力で駆け出した。
「おい、こら、ちょっと待てって!!」
待つ訳がない。俺は全力で逃げるぞ。
大人気なくも、気配を殺しつつ身を低くした状態で全力で疾走し、全力で跳躍し屋根伝いに一目散に逃げ出したのだった。
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