異世界に召喚されたけど、従姉妹に嵌められて即森に捨てられました。

バナナマヨネーズ

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お店編

56 彼女の花のような笑顔

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 シズは、ベッドに横になると直ぐに眠ってしまった。
 俺たちに気を使って気丈に振る舞っていたのだろう。
 スヤスヤと眠るシズの頬に髪の毛が掛かっていたので、横に流してから頭を撫でると、薄っすらと微笑みを浮かべてくれたことに嬉しさがこみ上げた。
 ついつい、緩む顔を引き締めていると、後ろから突き刺さるような視線を感じたが敢えて無視をした。

「それじゃ、君たちは宿に戻ってくれ」

 そう言って、シズの幼馴染だという男と、その連れの男に言い放った。
 しかしカツヒトは、不満を一切隠そうともせずに言ったのだ。
 
「は?俺は、しずの側に付いてるから、他人のあんたこそ自分の家に帰ったらどうだ?」

 彼から放たれる、聞き捨てならないセリフに、大人気なくも言い返していた。
 
「他人?それは君のことだろう?もし、シズが君のことを大切に思っていたら、彼女の口から君の名を聞いていただろう。だが、今の今まで、君の名をシズの口から聞いたことは一度もないな。そんな相手を他人と言うんだろう?俺は、彼女の……、父親的な存在だ」

 実際には、寝言で愛称を呼んでいたことがあったが、寝言なのでノーカンだ。
 それに、自分で言っていて悲しくなったが、シズにとって俺は、信頼に値する頼れる男なのだと言っておきたかった。
 今はまだ父親的な存在だが、何れは異性として見てもらえるように、これからも努力を惜しむつもりはない。
 だが今は、少しでもシズに近い存在なのだとカツヒトに言っておかなければならない気がしたんだ。
 
 だが、カツヒトは引かなかった。
 
「ふん。いい気になるなよ。しずは……多少ファザコン気味だが、所詮は父親だ。それに、出会ってまだ2、3ヶ月程度だろう?俺なんで、生まれた時からの付き合いだっつうの」

 生まれた時からの……。小さい頃のシズもきっと可愛かったに違いない……。って、そうじゃないな。
 だが、生まれた時から一緒にいて、恋仲に発展していないとは……。
 
「生まれた時から一緒にいたのに、なんの進展もないなんて、君こそ男として見られていないんじゃないのか?」

 なんだが不憫な気がして、カツヒトに少しだけ同情してしまった。
 俺が同情の目で見ていることに気が付いたようで、カツヒトは引きつった表情ながらも精一杯の言い訳をしていた。
 
「うっ……。確かに、しずに長年片思いしてる……。俺だって、好きでここまで拗らせたんじゃない……。日に日に可愛くなるしずを独り占めしたいと思ったけど、いつも邪魔が入って、つい照れ隠しでつい反対のことを……。って、変な同情すんな!!とにかく、しずには俺が付いてるから、お前が帰れ」

「君が帰りなさい」

「おまえが帰れ」

 こうして、この日もお互いに睨み合ったまま、しずの家に泊まることになったのだった。
 あの事件の日から、毎日のように繰り返される不毛な争いだ。
 
 だが、俺はシズの側を離れる気はない。
 
 いつものように、俺とカツヒトが睨み合っていると、疲れた表情のアークが割って入って仲裁をした。

「兄様……。シズが起きてしまいます。続きはリビングで……、と言いたいところですが、仕方ないので今日もこの人達をここに置いてあげましょう。放り出したらきっと、家の前で騒ぎ出して、ご近所迷惑になってしまいますから……」

 アークが俺とカツヒトを諌めるように言うと、何故かソウジがしたり顔で言った。

「うんうん。アグアグの言う通りだよ~。二人共仲良くしろよ?」

 アークに諌められた俺とカツヒトは、大人しくリビングに向かった。
 そして、この日もお互いに牽制しあったのは言うまでもないな。
 


 次の日、キッチンから聞こえる物音と、優しい匂いで目を覚ました。
 不思議に思いながらも、キッチンに向かうとエプロン姿のシズがいた。
 その姿を見た途端、俺は駆け出して彼女を抱きしめていた。
 
「シズ……」

 突然抱きしめられたシズは、驚きながらも俺の背中に腕を回して、背中を優しくトントンと叩いてくれた。
 
「ヴェインさん、心配掛けてごめんなさい。私はもう大丈夫です」

「大丈夫なものか!!体も心もいっぱい傷ついている!!」

 こんな時でも俺たちのことを気遣って、元気に振る舞おうとするシズの優しさが辛かった。
 辛い時は辛いと言って、甘えてほしかった。
 
「はい……。でも、体の傷はポーションを飲んだら治りました。だから大丈夫です」

「だとしてもだ!!」

「はい。だから、ヴェインさんとアーくんに側に居て欲しいです……。二人が一緒にいてくれたら、きっと良くなります……。だから、ここに一緒に住んでほしいです……。駄目ですか?」

 そう言って、心細そうに俺の目を見つめて言うシズに、力強く言っていた。
 
「ああ。シズが嫌だと言っても俺はずっと側に居るからな。アークもだ。だから、安心して俺に甘えなさい」

 俺がそう言うと、シズは照れながらも、可愛らしい表情で笑ってくれた。
 久しぶりに見たシズの笑顔に、俺は再び誓っていた。今度こそ、この子を守ると。
 
 そんなことを考えていると、背中に殺意の籠もった視線が突き刺さっていたが、それを黙殺してシズを腕の中に閉じ込めたまま微笑み合っていた。
 すると、何も気が付いていないシズが言った。
 
「ふふ。それじゃ、二人のお部屋の準備をしなくちゃ。あっ、そうだ。朝ごはんの用意の途中でした。今日は、久しぶりに腕を振るいました。ヴェインさんの好きなロールパンを焼きましたから、沢山食べてくださいね」

 そう言って、花が綻ぶように微笑むシズを見た俺は、無意識に言っていた。

「好きだ……」

 俺の言葉を聞いたシズは、目を丸くした後に、小さく笑っていた。
 
「くすくす。知ってます。ヴェインさんがロールパンを大好きなこと。ジャムもいろいろ用意してますから、沢山食べてくださいね」

「……。ああ、楽しみだ……」

 うん。知ってた。俺の気持ちが全然伝わってないこと!!
 そして、さっきまで背中に突き刺さっていた殺意の籠もった視線が、一転して温い空気を纏いだしていたことに、俺は全力で背後に殺気を飛ばしていたのは仕方ないことだろう……。
 
 
 こうして、久しぶりにシズの用意してくれた食事を摂った後に、改めて今回の事件についてシズに話をすることになった。
 
「シズ、君を襲った犯人だが、ガーメトゥ商会に雇われて騒動を起こしたと自供した」
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