異世界に召喚されたけど、従姉妹に嵌められて即森に捨てられました。

バナナマヨネーズ

文字の大きさ
69 / 123
再会編

69 あいつとの思わぬ再開

しおりを挟む
 結果から言おう。俺たちは、魔の森に入ることが出来なかった。
 何度足を踏み入れても、気が付くと森の外に出されていた。
 ソウのスキルを使っても無駄だった。
 森の木々を薙ぎ倒して進もうとしても、木々は直ぐに再生されて、全く踏み入ることが出来なかった。
 持ってきていた食料も無くなり、近くで動物を狩りつつ何度も魔の森に挑戦したが無駄だった。
 
 ソウは、何も言わずに俺の無茶に付き合ってくれたが、このままでは前に進まないと考え直した俺は、一度王都に戻って、もう一度魔の森について情報がないか調べることにした。
 それと同時に、ソウがベルディアーノ王国を離れる時に、念の為にと置いてきたという式神からの報告で、国が傾いていることを知った。
 王宮の中までは探れなかったため、詳しくはわからないということだったが、そんな国どうでもよかった。
 俺には、静弥のほうが大事だった。
 
 そして、王都に帰って直ぐに冒険者組合に行った時に、やけに印象の薄い男から、魔の森から帰還したという男の話を聞いた俺は、なんとしてでもその男から話を聞き出したかったが、印象の薄い男は、気が付けは消えていた。
 だが、男は手がかりを残してくれたのだ。
 男は、補佐官と言ったのだ。
 その言葉から、ソウと手分けして調べた結果、ヴェインという男のもとにたどり着いた。
 
 その男は、一ヶ月以上前に行方不明になり、帰ってきた時に美少女をお持ち帰りしていたという話を聞いた俺は、もしかしたらという気持ちで一杯になっていた。
 
「ヴェインという男が連れ帰ったという美少女……、気になるな」

「えっ?お前、幼馴染ちゃんが好きなんじゃなかったのかよ!この浮気者!!今頃、香澄静弥は、泣いてるぞ?」

「は?だから、その美少女が静弥だと」

「えっ!あらやだ、恋って盲目ぅ♡かっちゃんには、あの子が美少女に見えるフィルターが掛かってるんだね?」

 そう言って身をくねらせてしゃべるソウにイラッとした。それに、俺をかっちゃんと呼んでいいのは、この世で静弥だけだと言う思いから、ついつい怒鳴りつけていた。

「お前がかっちゃん言うな!!あいつは、世界一可愛いんだよ!!」

「はいはい。お前には悪いけど、俺にはどう見てももっさりメガネの地味子ちゃんにしか見えなかったが?それに、凄い猫背で、前髪も超長くて、顔なんて見えなかったしなぁ?」

「あいつの可愛さは俺だけが知ってればいいから、お前は見んな!」

「はいはい。ごっそさんです~。おっと、奴さんのしっぽ掴んだぜ?」

 そんなくだらない話をしていると、式神を飛ばしていたソウが言った。
 ここ数日、俺達はヴェインという男を嗅ぎ回っていた。奴は、毎日どこかに出かけていたが、その行き先は全く掴めていなかった。
 奴は、毎回違う道を通り、俺たちを警戒するように動いていたのだ。
 そんな奴に対して、ソウは式神を各路地に仕込んでセンサーを張っていたのだ。
 その結果、この日初めてヤツの足取りを掴むことが出来たのだ。
 奴は、三角屋根の家に入って行った。
 そして、日付が変わる前にその家を後から入っていった男と共に出て行った。
 
 そこに静弥がいるかも知れないと思うと直ぐにでも会いに行きたかったが、既に遅い時間だったこともあり、俺は日が昇ってからと考えて、その場を後にしようとした。
 しかし、俺の気配察知とソウの式神センサーに不審な人物が引っかかったのだ。
 気配を探ると、ヴェインとも、さっきヴェインと一緒にいた男とも違う気配だった。
 
 今にでも飛び出したいところだったが、ソウに一度様子を見たほうがいいと止められたため、少し離れた場所で窺っていると、家と併設されている店らしき扉を開けている姿が目に入った。
 ソウには止められたが、嫌な予感がした俺は開いていた扉に近づいていた。
 開いていた扉から、明かりが漏れているのが見えた時、しずの知り合いなのかと思ったが、明かりが点いてすぐに、その光が消えたことで何かあったのではないかと、急いで扉を開いて中に入った。
 すると、暗がりで誰かが叩かれているのが気配で分かった。
 
 考える前に体が動いていた。
 全力で、横たわる気配に覆いかぶさる人物を引き剥がし殴り飛ばしていた。
 殴る感触から相手は男だと分かった。
 男は、何やら口走っていたがそれを無視して、男が動かなくなるまで殴り続けていた。
 
 その頃には、暗闇に目がなれていた。
 男を大人しくさせた後に、横渡る気配に視線を向けた。
 
 そこには、薄着でボンヤリとした表情の静弥がいた。
 唇が切れて、頬が腫れている姿が目に入った時、あまりの痛々しさに抱きしめていた。
 
 腕の中に感じる、求めていた柔らかく温かい体温を感じて、泣きたくなった。
 
 俺の腕の中で、ぼんやりしていた静弥は、堰を切ったように泣き出していた。
 
「うぁぁぁ!!うっ!!ひっく!!わ、わたし……、し、死んじゃうって……。こ、こわ。怖かったよ!!ヴェインさん!!ヴェインさん!!わ、わたし、わたし!!うぁぁぁぁん!!」

 必死に助けを求めるその声は、俺ではない男の名を呼んでいたことに、知らず知らず、抱きしめる腕の力が強くなっていた。
 
 
 その後、外で様子を窺っていたソウが、俺が殴り飛ばした男を縄で縛って、騎士団に報告に走っていた。
 
 気を失った静弥を離して、横にさせていると、後ろから襲いかかられていた。
 まだ仲間がいたのかと、舌打ちしながら腰の刀を抜いていた。
 
 結局、俺と打ち合っていた男が、静弥が助けを求めたヴェインだと分かり、苛つきながらも刀を収めた。
 
 こうして、静弥と思わぬ形で再会することとなった。
しおりを挟む
感想 160

あなたにおすすめの小説

【完結】うっかり異世界召喚されましたが騎士様が過保護すぎます!

雨宮羽那
恋愛
 いきなり神子様と呼ばれるようになってしまった女子高生×過保護気味な騎士のラブストーリー。 ◇◇◇◇  私、立花葵(たちばなあおい)は普通の高校二年生。  元気よく始業式に向かっていたはずなのに、うっかり神様とぶつかってしまったらしく、異世界へ飛ばされてしまいました!  気がつくと神殿にいた私を『神子様』と呼んで出迎えてくれたのは、爽やかなイケメン騎士様!?  元の世界に戻れるまで騎士様が守ってくれることになったけど……。この騎士様、過保護すぎます!  だけどこの騎士様、何やら秘密があるようで――。 ◇◇◇◇ ※過去に同名タイトルで途中まで連載していましたが、連載再開にあたり設定に大幅変更があったため、加筆どころか書き直してます。 ※アルファポリス先行公開。 ※表紙はAIにより作成したものです。

【完結】 異世界に転生したと思ったら公爵令息の4番目の婚約者にされてしまいました。……はあ?

はくら(仮名)
恋愛
 ある日、リーゼロッテは前世の記憶と女神によって転生させられたことを思い出す。当初は困惑していた彼女だったが、とにかく普段通りの生活と学園への登校のために外に出ると、その通学路の途中で貴族のヴォクス家の令息に見初められてしまい婚約させられてしまう。そしてヴォクス家に連れられていってしまった彼女が聞かされたのは、自分が4番目の婚約者であるという事実だった。 ※本作は別ペンネームで『小説家になろう』にも掲載しています。

獣人の世界に落ちたら最底辺の弱者で、生きるの大変だけど保護者がイケオジで最強っぽい。

真麻一花
恋愛
私は十歳の時、獣が支配する世界へと落ちてきた。 狼の群れに襲われたところに現れたのは、一頭の巨大な狼。そのとき私は、殺されるのを覚悟した。 私を拾ったのは、獣人らしくないのに町を支配する最強の獣人だった。 なんとか生きてる。 でも、この世界で、私は最低辺の弱者。

我儘令嬢なんて無理だったので小心者令嬢になったらみんなに甘やかされました。

たぬきち25番
恋愛
「ここはどこですか?私はだれですか?」目を覚ましたら全く知らない場所にいました。 しかも以前の私は、かなり我儘令嬢だったそうです。 そんなマイナスからのスタートですが、文句はいえません。 ずっと冷たかった周りの目が、なんだか最近優しい気がします。 というか、甘やかされてません? これって、どういうことでしょう? ※後日談は激甘です。  激甘が苦手な方は後日談以外をお楽しみ下さい。 ※小説家になろう様にも公開させて頂いております。  ただあちらは、マルチエンディングではございませんので、その関係でこちらとは、内容が大幅に異なります。ご了承下さい。  タイトルも違います。タイトル:異世界、訳アリ令嬢の恋の行方は?!~あの時、もしあなたを選ばなければ~

【完結】神から貰ったスキルが強すぎなので、異世界で楽しく生活します!

桜もふ
恋愛
神の『ある行動』のせいで死んだらしい。私の人生を奪った神様に便利なスキルを貰い、転生した異世界で使えるチートの魔法が強すぎて楽しくて便利なの。でもね、ここは異世界。地球のように安全で自由な世界ではない、魔物やモンスターが襲って来る危険な世界……。 「生きたければ魔物やモンスターを倒せ!!」倒さなければ自分が死ぬ世界だからだ。 異世界で過ごす中で仲間ができ、時には可愛がられながら魔物を倒し、食料確保をし、この世界での生活を楽しく生き抜いて行こうと思います。 初めはファンタジー要素が多いが、中盤あたりから恋愛に入ります!!

無能だとクビになったメイドですが、今は王宮で筆頭メイドをしています

如月ぐるぐる
恋愛
「お前の様な役立たずは首だ! さっさと出て行け!」 何年も仕えていた男爵家を追い出され、途方に暮れるシルヴィア。 しかし街の人々はシルビアを優しく受け入れ、宿屋で住み込みで働く事になる。 様々な理由により職を転々とするが、ある日、男爵家は爵位剥奪となり、近隣の子爵家の代理人が統治する事になる。 この地域に詳しく、元男爵家に仕えていた事もあり、代理人がシルヴィアに協力を求めて来たのだが…… 男爵メイドから王宮筆頭メイドになるシルビアの物語が、今始まった。

巻き込まれ召喚のモブの私だけが還れなかった件について

みん
恋愛
【モブ】シリーズ①(本編) 異世界を救うために聖女として、3人の女性が召喚された。しかし、召喚された先に4人の女性が顕れた。そう、私はその召喚に巻き込まれたのだ。巻き込まれなので、特に何かを持っていると言う事は無く…と思っていたが、この世界ではレアな魔法使いらしい。でも、日本に還りたいから秘密にしておく。ただただ、目立ちたくないのでひっそりと過ごす事を心掛けていた。 それなのに、周りはおまけのくせにと悪意を向けてくる。それでも、聖女3人のお姉さん達が私を可愛がって守ってくれるお陰でやり過ごす事ができました。 そして、3年後、聖女の仕事が終わり、皆で日本に還れる事に。いざ、魔法陣展開で日本へ!となったところで…!? R4.6.5 なろうでの投稿を始めました。

最初から勘違いだった~愛人管理か離縁のはずが、なぜか公爵に溺愛されまして~

猪本夜
恋愛
前世で兄のストーカーに殺されてしまったアリス。 現世でも兄のいいように扱われ、兄の指示で愛人がいるという公爵に嫁ぐことに。 現世で死にかけたことで、前世の記憶を思い出したアリスは、 嫁ぎ先の公爵家で、美味しいものを食し、モフモフを愛で、 足技を磨きながら、意外と幸せな日々を楽しむ。 愛人のいる公爵とは、いずれは愛人管理、もしくは離縁が待っている。 できれば離縁は免れたいために、公爵とは友達夫婦を目指していたのだが、 ある日から愛人がいるはずの公爵がなぜか甘くなっていき――。 この公爵の溺愛は止まりません。 最初から勘違いばかりだった、こじれた夫婦が、本当の夫婦になるまで。

処理中です...