1 / 31
第一章 聖女召喚(1)
しおりを挟む
アルエライト王国は、魔力災害の元凶と思われている魔力溜りの発生に悩まされていた。
魔力災害が起こると、国は甚大な被害を受け、立て直しには数十年かかると言われていた。
そんな、魔力災害の元となる魔力溜りは、澱んだマナが一所に留まることで発生すると言われていた。
通常、世界に溢れるマナは澱むことなどありえないのだが、人々が忘れるほどの大昔には、こう言い伝えられていたのだ。
「国が傾くと、マナが澱む」
しかし、そんな大昔の言い伝えなどすでに忘れ去られていた。
魔力災害が発生するかもしれない危機的状況を重く見た国の重鎮たちは、懸命に解決策を探したのだ。
そして、古い文献から聖女を召喚することで災害を回避したという伝承を見つけたのだ。
こうして、アルエライト王国は、藁にも縋る思いで聖女召喚をすることになる。
結果から言おう。
聖女召喚は成功した。
ただし、聖女ではない女性を巻き込んでしまうという結果を残すこととなったが、アルエライト王国は、そのことについて深く考えることをしなかったのだ。
そのことで国が亡びることになるなど、その時は知る由もなかった。
そして、聖女召喚で巻き込まれてしまった女性、山野辺志乃、二十三歳は、絶賛城勤めの下女たちに苛められていた。
「ハズレ、これもやっておいて」
「あんた! 今日中に終わらせなかったら食事はなしだからね」
「ハズレ! さっさとしなさい!」
満足に食事も与えられず、仕事を押し付けられながらも志乃は、唇を噛むことしかできずにいた。
いつだって、「こんなところから逃げ出してやる」と思っていてもそれを実行に移すことができずにいた。
それはそうだろう。
全く知らない世界。お金もない。頼れるような人もいない。
そんな状況で、ここから逃げても生き延びられる自信はなかった。
ここでなら、ひどい目には合っても死ぬことはないと高を括っていたのだ。
だが、日々押し付けられる仕事は増えていき、最近では「気にくわない」「口答えするな」と言いがかりをつけられては、鞭で打たれるという日々を送っていた。
不思議なことに、こちらの世界に来てから、何故か傷の治りが早くなり、視力の悪かった目も見えるようになっていたのだ。
志乃は、それを異世界に来たし、こんなものなのだろうと軽く思っていた。
それでも、鞭で叩かれれば痛いし、心が辛くなる。
どんなに泣こうとも助けてくれる人などいなかった。
数か月もそんな日々を送っていれば、どんなにひどい状況にも慣れてしまい、心が鈍くなってしまう。
それでも、どうしてこうなってしまったのかと嘆かずにはいられなかった。
志乃は眠りに落ちる前に、いつも思うことがある。
それは、目が覚めたらすべてが夢だったらいいのにということだ。
朝起きたら、一人暮らしのアパートのベッドの中だったらいいのにと。
そして、朝目覚めたときに自分の置かれている現実を思い出して気持ちが沈んでいく、そんな毎日だった。
どうしてこんなことになったのだろうと。
あの日、務めていた会社に辞表を叩きつけて、清々した気持ちで会社を後にするはずだったのにと。
そう、あの日のことを思い返して、あの時あんなことがなければ異世界になんて来ることはなかったのにと唇をかむのだった。
魔力災害が起こると、国は甚大な被害を受け、立て直しには数十年かかると言われていた。
そんな、魔力災害の元となる魔力溜りは、澱んだマナが一所に留まることで発生すると言われていた。
通常、世界に溢れるマナは澱むことなどありえないのだが、人々が忘れるほどの大昔には、こう言い伝えられていたのだ。
「国が傾くと、マナが澱む」
しかし、そんな大昔の言い伝えなどすでに忘れ去られていた。
魔力災害が発生するかもしれない危機的状況を重く見た国の重鎮たちは、懸命に解決策を探したのだ。
そして、古い文献から聖女を召喚することで災害を回避したという伝承を見つけたのだ。
こうして、アルエライト王国は、藁にも縋る思いで聖女召喚をすることになる。
結果から言おう。
聖女召喚は成功した。
ただし、聖女ではない女性を巻き込んでしまうという結果を残すこととなったが、アルエライト王国は、そのことについて深く考えることをしなかったのだ。
そのことで国が亡びることになるなど、その時は知る由もなかった。
そして、聖女召喚で巻き込まれてしまった女性、山野辺志乃、二十三歳は、絶賛城勤めの下女たちに苛められていた。
「ハズレ、これもやっておいて」
「あんた! 今日中に終わらせなかったら食事はなしだからね」
「ハズレ! さっさとしなさい!」
満足に食事も与えられず、仕事を押し付けられながらも志乃は、唇を噛むことしかできずにいた。
いつだって、「こんなところから逃げ出してやる」と思っていてもそれを実行に移すことができずにいた。
それはそうだろう。
全く知らない世界。お金もない。頼れるような人もいない。
そんな状況で、ここから逃げても生き延びられる自信はなかった。
ここでなら、ひどい目には合っても死ぬことはないと高を括っていたのだ。
だが、日々押し付けられる仕事は増えていき、最近では「気にくわない」「口答えするな」と言いがかりをつけられては、鞭で打たれるという日々を送っていた。
不思議なことに、こちらの世界に来てから、何故か傷の治りが早くなり、視力の悪かった目も見えるようになっていたのだ。
志乃は、それを異世界に来たし、こんなものなのだろうと軽く思っていた。
それでも、鞭で叩かれれば痛いし、心が辛くなる。
どんなに泣こうとも助けてくれる人などいなかった。
数か月もそんな日々を送っていれば、どんなにひどい状況にも慣れてしまい、心が鈍くなってしまう。
それでも、どうしてこうなってしまったのかと嘆かずにはいられなかった。
志乃は眠りに落ちる前に、いつも思うことがある。
それは、目が覚めたらすべてが夢だったらいいのにということだ。
朝起きたら、一人暮らしのアパートのベッドの中だったらいいのにと。
そして、朝目覚めたときに自分の置かれている現実を思い出して気持ちが沈んでいく、そんな毎日だった。
どうしてこんなことになったのだろうと。
あの日、務めていた会社に辞表を叩きつけて、清々した気持ちで会社を後にするはずだったのにと。
そう、あの日のことを思い返して、あの時あんなことがなければ異世界になんて来ることはなかったのにと唇をかむのだった。
186
あなたにおすすめの小説
【完結】聖女になり損なった刺繍令嬢は逃亡先で幸福を知る。
みやこ嬢
恋愛
「ルーナ嬢、神聖なる聖女選定の場で不正を働くとは何事だ!」
魔法国アルケイミアでは魔力の多い貴族令嬢の中から聖女を選出し、王子の妃とするという古くからの習わしがある。
ところが、最終試験まで残ったクレモント侯爵家令嬢ルーナは不正を疑われて聖女候補から外されてしまう。聖女になり損なった失意のルーナは義兄から襲われたり高齢宰相の後妻に差し出されそうになるが、身を守るために侍女ティカと共に逃げ出した。
あてのない旅に出たルーナは、身を寄せた隣国シュベルトの街で運命的な出会いをする。
【2024年3月16日完結、全58話】
【完結】経費削減でリストラされた社畜聖女は、隣国でスローライフを送る〜隣国で祈ったら国王に溺愛され幸せを掴んだ上に国自体が明るくなりました〜
よどら文鳥
恋愛
「聖女イデアよ、もう祈らなくとも良くなった」
ブラークメリル王国の新米国王ロブリーは、節約と経費削減に力を入れる国王である。
どこの国でも、聖女が作る結界の加護によって危険なモンスターから国を守ってきた。
国として大事な機能も経費削減のために不要だと決断したのである。
そのとばっちりを受けたのが聖女イデア。
国のために、毎日限界まで聖なる力を放出してきた。
本来は何人もの聖女がひとつの国の結界を作るのに、たった一人で国全体を守っていたほどだ。
しかも、食事だけで生きていくのが精一杯なくらい少ない給料で。
だがその生活もロブリーの政策のためにリストラされ、社畜生活は解放される。
と、思っていたら、今度はイデア自身が他国から高値で取引されていたことを知り、渋々その国へ御者アメリと共に移動する。
目的のホワイトラブリー王国へ到着し、クラフト国王に聖女だと話すが、意図が通じず戸惑いを隠せないイデアとアメリ。
しかし、実はそもそもの取引が……。
幸いにも、ホワイトラブリー王国での生活が認められ、イデアはこの国で聖なる力を発揮していく。
今までの過労が嘘だったかのように、楽しく無理なく力を発揮できていて仕事に誇りを持ち始めるイデア。
しかも、周りにも聖なる力の影響は凄まじかったようで、ホワイトラブリー王国は激的な変化が起こる。
一方、聖女のいなくなったブラークメリル王国では、結界もなくなった上、無茶苦茶な経費削減政策が次々と起こって……?
※政策などに関してはご都合主義な部分があります。
【完結】裏切られ婚約破棄した聖女ですが、騎士団長様に求婚されすぎそれどころではありません!
綺咲 潔
恋愛
クリスタ・ウィルキンスは魔導士として、魔塔で働いている。そんなある日、彼女は8000年前に聖女・オフィーリア様のみが成功した、生贄の試練を受けないかと打診される。
本来なら受けようと思わない。しかし、クリスタは身分差を理由に反対されていた魔導士であり婚約者のレアードとの結婚を認めてもらうため、試練を受けることを決意する。
しかし、この試練の裏で、レアードはクリスタの血の繋がっていない妹のアイラととんでもないことを画策していて……。
試練に出発する直前、クリスタは見送りに来てくれた騎士団長の1人から、とあるお守りをもらう。そして、このお守りと試練が後のクリスタの運命を大きく変えることになる。
◇ ◇ ◇
「ずっとお慕いしておりました。どうか私と結婚してください」
「お断りいたします」
恋愛なんてもう懲り懲り……!
そう思っている私が、なぜプロポーズされているの!?
果たして、クリスタの恋の行方は……!?
聖女の任期終了後、婚活を始めてみたら六歳の可愛い男児が立候補してきた!
澤谷弥(さわたに わたる)
恋愛
23歳のメルリラは、聖女の任期を終えたばかり。結婚適齢期を少し過ぎた彼女は、幸せな結婚を夢見て婚活に励むが、なかなか相手が見つからない。原因は「元聖女」という肩書にあった。聖女を務めた女性は慣例として専属聖騎士と結婚することが多く、メルリラもまた、かつての専属聖騎士フェイビアンと結ばれるものと世間から思われているのだ。しかし、メルリラとフェイビアンは口げんかが絶えない関係で、恋愛感情など皆無。彼を結婚相手として考えたことなどなかった。それでも世間の誤解は解けず、婚活は難航する。そんなある日、聖女を辞めて半年が経った頃、メルリラの婚活を知った公爵子息ハリソン(6歳)がやって来て――。
【完結】偽物聖女は冷血騎士団長様と白い結婚をしたはずでした。
雨宮羽那
恋愛
聖女補佐官であるレティノアは、補佐官であるにも関わらず、祈りをささげる日々を送っていた。
というのも、本来聖女であるはずの妹が、役目を放棄して遊び歩いていたからだ。
そんなある日、妹が「真実の愛に気づいたの」と言って恋人と駆け落ちしてしまう。
残されたのは、聖女の役目と――王命によって決められた聖騎士団長様との婚姻!?
レティノアは、妹の代わりとして聖女の立場と聖騎士団長との結婚を押し付けられることに。
相手のクラウスは、「血も涙もない冷血な悪魔」と噂される聖騎士団長。クラウスから「俺はあなたに触れるつもりはない」と言い放たれたレティノアは、「これは白い結婚なのだ」と理解する。
しかし、クラウスの態度は噂とは異なり、レティノアを愛しているようにしか思えなくて……?
これは、今まで妹の代わりの「偽物」として扱われてきた令嬢が「本物」として幸せをつかむ物語。
◇◇◇◇
お気に入り登録、♡、感想などいただければ、作者が大変喜びます!
モチベになるので良ければ応援していただければ嬉しいです♪
※いつも通りざまぁ要素は中盤以降。
※完結まで執筆済み
※表紙はAIイラストです
※アルファポリス先行投稿(他投稿サイトにも掲載予定です)
【完結】『推しの騎士団長様が婚約破棄されたそうなので、私が拾ってみた。』
ぽんぽこ@3/28新作発売!!
恋愛
【完結まで執筆済み】筋肉が語る男、冷徹と噂される騎士団長レオン・バルクハルト。
――そんな彼が、ある日突然、婚約破棄されたという噂が城下に広まった。
「……えっ、それってめっちゃ美味しい展開じゃない!?」
破天荒で豪快な令嬢、ミレイア・グランシェリは思った。
重度の“筋肉フェチ”で料理上手、○○なのに自由すぎる彼女が取った行動は──まさかの自ら押しかけ!?
騎士団で巻き起こる爆笑と騒動、そして、不器用なふたりの距離は少しずつ近づいていく。
これは、筋肉を愛し、胃袋を掴み、心まで溶かす姉御ヒロインが、
推しの騎士団長を全力で幸せにするまでの、ときめきと笑いと“ざまぁ”の物語。
【完結】捨てられた聖女は王子の愛鳥を無自覚な聖なる力で助けました〜ごはんを貰ったら聖なる力が覚醒。私を捨てた方は聖女の仕組みを知らないようで
よどら文鳥
恋愛
ルリナは物心からついたころから公爵邸の庭、主にゴミ捨て場で生活させられていた。
ルリナを産んだと同時に公爵夫人は息絶えてしまったため、公爵は別の女と再婚した。
再婚相手との間に産まれたシャインを公爵令嬢の長女にしたかったがため、公爵はルリナのことが邪魔で追放させたかったのだ。
そのために姑息な手段を使ってルリナをハメていた。
だが、ルリナには聖女としての力が眠っている可能性があった。
その可能性のためにかろうじて生かしていたが、十四歳になっても聖女の力を確認できず。
ついに公爵家から追放させる最終段階に入った。
それは交流会でルリナが大恥をかいて貴族界からもルリナは貴族として人としてダメ人間だと思わせること。
公爵の思惑通りに進んだかのように見えたが、ルリナは交流会の途中で庭にある森の中へ逃げてから自体が変わる。
気絶していた白文鳥を発見。
ルリナが白文鳥を心配していたところにニルワーム第三王子がやってきて……。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる