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第一章 聖女召喚(3)
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「せんぱ~い。待ってくださいよ~」
甘えるような声で、そう志乃に声をかけてきたのは、後輩の白崎明里だった。
志乃の一つ下の二十二歳の明里は、男受けのするメイクとゆるふわにセットした茶髪の女性だった。
女性陣には心底嫌われていたが、男性陣からの受けのいい明里は、男性社員にうまく取り入って仕事をサボっていたのだ。
そして、サボり切れないときには、志乃を利用していたのだ。
そんな明里が追いかけてくることに志乃はうんざりした表情を隠すことを敢えてしなかった。
うんざりした表情を隠そうともしない志乃に対して、明里は悲しそうな顔でとんでもなく非常識なことを口走ったのだ。
「先輩が辞めたら誰があたしの仕事を代わりにやってくれるんですか! あたしが困るんです。だから先輩は辞めたらだめなんです!」
開いた口が塞がらないとはこのことだ。
そんなことを思いながらも、痛む頭に手を置いた志乃は、呆れを隠さず、うんざりした表情で言った。
「はぁ。貴方の仕事は、貴方がするのよ」
「嫌です! あたしは、男の人にチヤホヤされて、楽に働きたいんです!」
「ああ、もういいから。そういうの。私はもうこの会社とは関係ないの。これからは、貴方が自分で頑張りなさい」
それだけ言うと、志乃は振り切るように背を向けた。
しかし、納得がいかないといった様子の明里は、志乃のスーツを思いっきり引っ張り引き留めたのだ。
「駄目ったら駄目!」
駄々っ子もここまでひどくはないなと思いながらも、掴まれていたスーツをから明里の手を引き離そうとした時だった。
突然足元が眩く光りだしたことに驚き目を瞑った瞬間だった。
一瞬の浮遊感の後、周辺が暗くなっていたのだ。
驚きつつも周囲に視線を向けると、目が慣れてきたのかぼんやりと周りが見えるようになってきた。
遠くの方には、ゆらゆらと揺れる松明のような明かりが見えていた。
目を凝らすと、明かりのすぐそばには誰かが立っていることが分かった。
意外と冷静な自分に感心していると、すぐ近くにいた明里が騒ぎ出していた。
「きゃー、ここはどこなの? 誰か、誰かいないの!」
近くから聞こえる金切声にうんざりしながらも志乃は様子を見守ることに決めた。
すると、意外と近くから志乃と明里に近づいてくる人物がいたのだ。
仄暗い明かりでもその人物が、イケメンだということが分かった。
恐らく、金髪碧眼と思われる長身の男が胡散臭い笑みを浮かべて、騒ぐ明里に声をかけたのだ。
「お嬢さん。突然のことで申し訳ない。オレは、このアルエライト王国の第三王子、シージエ・アルエライトという。ああ、聖女よ、よく我々の呼びかけに答えてくれた。心から感謝する」
そう言って、芝居臭い動作で片膝を付き、明里の手の甲に口づけたのだ。
志乃は、その茶番を呆れたように見ていたが、明里は違った。
お姫様扱いに一気にテンションを上げていたのだ。
そして、甘えるような声で言った。
「王子様があたしを呼んだの?」
甘えるようにそう尋ねられたシージエは、ニヤリと口角を上げてきっぱりと言ったのだ。
「ああ。君を呼んだのはオレだよ。どうか、異世界から来た聖女よ、我が国を救ってくれ」
「はい」
まるで芝居のような二人のやり取りにバカバカしという思いをできるだけ隠して、ここは穏便に済ませようとした志乃だったが、それを許さない者がいた。
そう、明里だ。
明里は、ここでちやほやされるのは自分一人だけで、邪魔者は排除したいと瞬時に思いついたのだ。
「王子様、実はあたしの召喚? に巻き込まれた可哀相な人がいるんです……」
そう言って、完全に忘れ去られていた志乃を指さしたのだ。
志乃としては、忘れたままでもよかったと思いつつも、そう言う訳にもいかないかと、諦め半分で状況確認をすることにした。
しかし、それすらも明里によって阻止されてしまったのだ。
「はぁ。そうみたいですね。私は巻き込まれた一般人なので、家にかえし―――」
「王子様、この人は元の世界であたしを苛めていた悪女なんです!! 聖女のあたしを羨んできっとまた苛めてくるわ! この悪女を排除して!」
何言ってんのよこの女は? そんなことを思いつつも志乃が口を挟める状況ではなくなっていた。
明里の言葉を鵜飲みにしたバカ王子は、とんでもないことだと声を上げたのだ。
「なんだと?! 分かった君を守るから安心してくれ。おい、衛兵! そこの見すぼらしいブスを牢屋に入れておけ!」
そう命令された衛兵によって、弁明することも許されなかった志乃は、訳が分からないまま牢屋送りとなったのだった。
甘えるような声で、そう志乃に声をかけてきたのは、後輩の白崎明里だった。
志乃の一つ下の二十二歳の明里は、男受けのするメイクとゆるふわにセットした茶髪の女性だった。
女性陣には心底嫌われていたが、男性陣からの受けのいい明里は、男性社員にうまく取り入って仕事をサボっていたのだ。
そして、サボり切れないときには、志乃を利用していたのだ。
そんな明里が追いかけてくることに志乃はうんざりした表情を隠すことを敢えてしなかった。
うんざりした表情を隠そうともしない志乃に対して、明里は悲しそうな顔でとんでもなく非常識なことを口走ったのだ。
「先輩が辞めたら誰があたしの仕事を代わりにやってくれるんですか! あたしが困るんです。だから先輩は辞めたらだめなんです!」
開いた口が塞がらないとはこのことだ。
そんなことを思いながらも、痛む頭に手を置いた志乃は、呆れを隠さず、うんざりした表情で言った。
「はぁ。貴方の仕事は、貴方がするのよ」
「嫌です! あたしは、男の人にチヤホヤされて、楽に働きたいんです!」
「ああ、もういいから。そういうの。私はもうこの会社とは関係ないの。これからは、貴方が自分で頑張りなさい」
それだけ言うと、志乃は振り切るように背を向けた。
しかし、納得がいかないといった様子の明里は、志乃のスーツを思いっきり引っ張り引き留めたのだ。
「駄目ったら駄目!」
駄々っ子もここまでひどくはないなと思いながらも、掴まれていたスーツをから明里の手を引き離そうとした時だった。
突然足元が眩く光りだしたことに驚き目を瞑った瞬間だった。
一瞬の浮遊感の後、周辺が暗くなっていたのだ。
驚きつつも周囲に視線を向けると、目が慣れてきたのかぼんやりと周りが見えるようになってきた。
遠くの方には、ゆらゆらと揺れる松明のような明かりが見えていた。
目を凝らすと、明かりのすぐそばには誰かが立っていることが分かった。
意外と冷静な自分に感心していると、すぐ近くにいた明里が騒ぎ出していた。
「きゃー、ここはどこなの? 誰か、誰かいないの!」
近くから聞こえる金切声にうんざりしながらも志乃は様子を見守ることに決めた。
すると、意外と近くから志乃と明里に近づいてくる人物がいたのだ。
仄暗い明かりでもその人物が、イケメンだということが分かった。
恐らく、金髪碧眼と思われる長身の男が胡散臭い笑みを浮かべて、騒ぐ明里に声をかけたのだ。
「お嬢さん。突然のことで申し訳ない。オレは、このアルエライト王国の第三王子、シージエ・アルエライトという。ああ、聖女よ、よく我々の呼びかけに答えてくれた。心から感謝する」
そう言って、芝居臭い動作で片膝を付き、明里の手の甲に口づけたのだ。
志乃は、その茶番を呆れたように見ていたが、明里は違った。
お姫様扱いに一気にテンションを上げていたのだ。
そして、甘えるような声で言った。
「王子様があたしを呼んだの?」
甘えるようにそう尋ねられたシージエは、ニヤリと口角を上げてきっぱりと言ったのだ。
「ああ。君を呼んだのはオレだよ。どうか、異世界から来た聖女よ、我が国を救ってくれ」
「はい」
まるで芝居のような二人のやり取りにバカバカしという思いをできるだけ隠して、ここは穏便に済ませようとした志乃だったが、それを許さない者がいた。
そう、明里だ。
明里は、ここでちやほやされるのは自分一人だけで、邪魔者は排除したいと瞬時に思いついたのだ。
「王子様、実はあたしの召喚? に巻き込まれた可哀相な人がいるんです……」
そう言って、完全に忘れ去られていた志乃を指さしたのだ。
志乃としては、忘れたままでもよかったと思いつつも、そう言う訳にもいかないかと、諦め半分で状況確認をすることにした。
しかし、それすらも明里によって阻止されてしまったのだ。
「はぁ。そうみたいですね。私は巻き込まれた一般人なので、家にかえし―――」
「王子様、この人は元の世界であたしを苛めていた悪女なんです!! 聖女のあたしを羨んできっとまた苛めてくるわ! この悪女を排除して!」
何言ってんのよこの女は? そんなことを思いつつも志乃が口を挟める状況ではなくなっていた。
明里の言葉を鵜飲みにしたバカ王子は、とんでもないことだと声を上げたのだ。
「なんだと?! 分かった君を守るから安心してくれ。おい、衛兵! そこの見すぼらしいブスを牢屋に入れておけ!」
そう命令された衛兵によって、弁明することも許されなかった志乃は、訳が分からないまま牢屋送りとなったのだった。
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