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第一章 聖女召喚(6)
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それから、志乃がこの世界に召喚されてから半年ほどが経過していた。
この世界のことなど何も知らない志乃は、ひどい扱いを受けていても逃げ出すことなどできなかった。
お金も知識もない。そんな状況でここから逃げて生き延びることなどできる気がしなかったのだ。
そもそも、ここから外に逃げること自体不可能に思えていた。
そのころには、志乃のことを周囲の人々は「ハズレ」と呼ぶようになっていた。
実は、この世界では黒髪は非常に珍しく、さらに言うと、黒目の人間は存在しなかったのだ。だから、志乃が異世界人だとすぐに周囲に発覚していたのだ。
人の口に戸は立てられぬとはよく言ったもので、志乃が聖女召喚に巻き込まれたハズレだとすぐに知られることとなったのだ。
その日も、下女たちの不満のはけ口として謂れのない暴力を振るわれ、必要以上の仕事を押し付けられていた。
当然、痛む体では時間内に終わらせることはできず、そのせいでまた暴力を振るわれた。
そして、仕事が終わらなかったため、食事は与えられなかった。
空腹に耐えかねた志乃は、木の根を齧ると疲労からそのまま寝てしまった。
そんな疲労困憊の志乃に近づく人物がいた。
その人物は、疲労の滲む志乃を見て息をのむ。
その人は、意識のない志乃をそっと自分が身に着けていたマントで包む。
ふいに訪れた暖かさに、志乃はぼんやりとした様子で目を覚ます。
ここに連れてこられてから、まともにしゃべることがなかった志乃の喉はひりつき、言葉を発することはできなかった。
志乃が何かを言おうとしていることに気が付いたその人は、落ち着きのある声で志乃に言う。
「大丈夫。俺が君を助けるから。だから、安心して休んでいていいから」
その言葉を聞いた志乃は、こちらに来て初めて聞く優しい労りの言葉に胸が温かくなるのを感じていた。
不思議と、この人なら信じられると思っている自分がいることに驚きつつも、何故か安心できるその人の腕の中でこくりと頷いた後に意識を手放したのだった。
そして、志乃を抱き上げていたその人は、志乃が眠ってしまったことに気が付くと、その場を歩き出したのだった。
その人は、志乃を保護するべく動き出した。
この二人の出会いが、運命の出会いだということに気が付く者はいなかった。
しかし、その人は、腕の中にいる志乃を一目見た瞬間から、この手で守りたいと強く思ったのだ。
そして、俺なら彼女につらい思いなんてさせない。大切にするという思いを込めて、志乃の折れそうに細い体をこの世の何よりも大切なもののように柔らかく抱きしめたのだった。
この世界のことなど何も知らない志乃は、ひどい扱いを受けていても逃げ出すことなどできなかった。
お金も知識もない。そんな状況でここから逃げて生き延びることなどできる気がしなかったのだ。
そもそも、ここから外に逃げること自体不可能に思えていた。
そのころには、志乃のことを周囲の人々は「ハズレ」と呼ぶようになっていた。
実は、この世界では黒髪は非常に珍しく、さらに言うと、黒目の人間は存在しなかったのだ。だから、志乃が異世界人だとすぐに周囲に発覚していたのだ。
人の口に戸は立てられぬとはよく言ったもので、志乃が聖女召喚に巻き込まれたハズレだとすぐに知られることとなったのだ。
その日も、下女たちの不満のはけ口として謂れのない暴力を振るわれ、必要以上の仕事を押し付けられていた。
当然、痛む体では時間内に終わらせることはできず、そのせいでまた暴力を振るわれた。
そして、仕事が終わらなかったため、食事は与えられなかった。
空腹に耐えかねた志乃は、木の根を齧ると疲労からそのまま寝てしまった。
そんな疲労困憊の志乃に近づく人物がいた。
その人物は、疲労の滲む志乃を見て息をのむ。
その人は、意識のない志乃をそっと自分が身に着けていたマントで包む。
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ここに連れてこられてから、まともにしゃべることがなかった志乃の喉はひりつき、言葉を発することはできなかった。
志乃が何かを言おうとしていることに気が付いたその人は、落ち着きのある声で志乃に言う。
「大丈夫。俺が君を助けるから。だから、安心して休んでいていいから」
その言葉を聞いた志乃は、こちらに来て初めて聞く優しい労りの言葉に胸が温かくなるのを感じていた。
不思議と、この人なら信じられると思っている自分がいることに驚きつつも、何故か安心できるその人の腕の中でこくりと頷いた後に意識を手放したのだった。
そして、志乃を抱き上げていたその人は、志乃が眠ってしまったことに気が付くと、その場を歩き出したのだった。
その人は、志乃を保護するべく動き出した。
この二人の出会いが、運命の出会いだということに気が付く者はいなかった。
しかし、その人は、腕の中にいる志乃を一目見た瞬間から、この手で守りたいと強く思ったのだ。
そして、俺なら彼女につらい思いなんてさせない。大切にするという思いを込めて、志乃の折れそうに細い体をこの世の何よりも大切なもののように柔らかく抱きしめたのだった。
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