聖女召喚に巻き込まれた挙句、ハズレの方と蔑まれていた私が隣国の過保護な王子に溺愛されている件

バナナマヨネーズ

文字の大きさ
14 / 31

第三章 デュセンバーグ王国へ(2)

しおりを挟む
 スプーンを差し出された志乃はフリーズしていた。
 目の前の見知らぬ、イケメンが何故かあーんをしてくることに混乱中の志乃だったが、ジークリンデは、そんな志乃を他所にさらにスプーンを突き出すのだ。
 
「ほら、ハルトの作る料理はうまいぞ? いい子だから口を開けて、あーん」

 ままよ! とばかりに、ぎゅっと目を瞑った志乃は口を開けた。
 ジークリンデは、そんな志乃の様子を「ああ、可愛いな」と思いながらも、そっとその小さな口にスプーンを差し込んだ。
 半年ぶりのまともな食事に志乃は、自然と涙がこみ上げる。
 口に広がる、優しい甘みと少しの塩気、麦とサツマイモの優しい味の粥が志乃の体を優しく温めてくれた。
 
 突然泣き出した志乃に慌てたのはジークリンデだった。
 
「どうした? もしかして、熱かったか? どこか火傷をしたのか?」

 オロオロとするジークリンデが急に可愛らしく見えた志乃は、思わずと言った様子で笑ってしまっていた。
 その小さな笑みを見たジークリンデは、胸に砲弾がぶち当たったのような衝撃を受けていた。
 全力疾走した後のように鼓動が脈を打ち、呼吸が荒くなる。
 その可愛い笑顔をもっと見たいと思うジークリンデの表情は、見る者が虜になるような甘やかな、蕩けるよう、そんな表情だった。
 しかし、久しぶりのまともな食事に感動している志乃は、そんな顔面凶器と化したジークリンデには全く気が付いていなかった。
 
 可愛い志乃をもっと見ていたかったジークリンデだったが、自分の欲よりも志乃の食事の方が優先だと、再びスプーンに粥を掬って冷ます作業を開始した。
 志乃は、再び差し出されたスプーンに戸惑いながらも、差し出されるたびにそれを口にした。
 
 自分の差し出す粥を一生懸命に食べる志乃を見ていると、雛が親鳥からご飯を与えられている様子が頭に思い浮かび、より一層志乃が愛おしくなっていく。
 皿の中の粥がなくなった後、志乃の口元をハンカチで拭ったジークリンデは、優しい手つきで志乃の頭を撫でた。
 
「うん。いい子だ。少し眠るといい」

 起きたばかりではあったが、久しぶりに腹が満たされた志乃は、押し寄せてくる眠気には勝てなかった。
 こくりと小さく頷いた志乃は、そのままベッドに横になる。
 うとうととしながら、そう言えばまだ名前を聞いていなかったと思ったが、遅く、最後まで言葉を口にすることは出来なかった。
 
「あり……と、う……。わた…し、なま……、しの……。あ……なた……は…………」

 切れ切れにそう言った志乃は、そのまま眠りに落ちていたのだった。
 
 志乃の小さな呟きのような言葉を聞き逃さなかったジークリンデは、志乃の名前を聞いた瞬間、ドキリと大きな音を立てた心臓をぎゅっと押さえるように、胸に手を当てる。
 
「シノ……。シノ。君はシノというんだな……。ああ、名前まで可愛いのだな」

 知りたかった志乃の名前を聞くことのできたジークリンデは、上機嫌で食べ終わった食器をトレイに載せて部屋を出た。
 鼻歌交じりに、食器を洗ったジークリンデを見ていたハルバートは、そのいつにない上機嫌なジークリンデに不審な目を向けるも敢えて聞くことはしなかった。
 自分の中の誰かが警告したのだ。迂闊に声をかければ、面倒なこととになるぞと。
 
 そうこうしているうちに、立ち寄る予定だった街に着いたため、昨日渡された買い物リストを持って任務を果たすべくハルバートは立ち上がったのだった。
 
 
しおりを挟む
感想 2

あなたにおすすめの小説

【完結】聖女になり損なった刺繍令嬢は逃亡先で幸福を知る。

みやこ嬢
恋愛
「ルーナ嬢、神聖なる聖女選定の場で不正を働くとは何事だ!」 魔法国アルケイミアでは魔力の多い貴族令嬢の中から聖女を選出し、王子の妃とするという古くからの習わしがある。 ところが、最終試験まで残ったクレモント侯爵家令嬢ルーナは不正を疑われて聖女候補から外されてしまう。聖女になり損なった失意のルーナは義兄から襲われたり高齢宰相の後妻に差し出されそうになるが、身を守るために侍女ティカと共に逃げ出した。 あてのない旅に出たルーナは、身を寄せた隣国シュベルトの街で運命的な出会いをする。 【2024年3月16日完結、全58話】

【完結】経費削減でリストラされた社畜聖女は、隣国でスローライフを送る〜隣国で祈ったら国王に溺愛され幸せを掴んだ上に国自体が明るくなりました〜

よどら文鳥
恋愛
「聖女イデアよ、もう祈らなくとも良くなった」  ブラークメリル王国の新米国王ロブリーは、節約と経費削減に力を入れる国王である。  どこの国でも、聖女が作る結界の加護によって危険なモンスターから国を守ってきた。  国として大事な機能も経費削減のために不要だと決断したのである。  そのとばっちりを受けたのが聖女イデア。  国のために、毎日限界まで聖なる力を放出してきた。  本来は何人もの聖女がひとつの国の結界を作るのに、たった一人で国全体を守っていたほどだ。  しかも、食事だけで生きていくのが精一杯なくらい少ない給料で。  だがその生活もロブリーの政策のためにリストラされ、社畜生活は解放される。  と、思っていたら、今度はイデア自身が他国から高値で取引されていたことを知り、渋々その国へ御者アメリと共に移動する。  目的のホワイトラブリー王国へ到着し、クラフト国王に聖女だと話すが、意図が通じず戸惑いを隠せないイデアとアメリ。  しかし、実はそもそもの取引が……。  幸いにも、ホワイトラブリー王国での生活が認められ、イデアはこの国で聖なる力を発揮していく。  今までの過労が嘘だったかのように、楽しく無理なく力を発揮できていて仕事に誇りを持ち始めるイデア。  しかも、周りにも聖なる力の影響は凄まじかったようで、ホワイトラブリー王国は激的な変化が起こる。  一方、聖女のいなくなったブラークメリル王国では、結界もなくなった上、無茶苦茶な経費削減政策が次々と起こって……? ※政策などに関してはご都合主義な部分があります。

【完結】裏切られ婚約破棄した聖女ですが、騎士団長様に求婚されすぎそれどころではありません!

綺咲 潔
恋愛
クリスタ・ウィルキンスは魔導士として、魔塔で働いている。そんなある日、彼女は8000年前に聖女・オフィーリア様のみが成功した、生贄の試練を受けないかと打診される。 本来なら受けようと思わない。しかし、クリスタは身分差を理由に反対されていた魔導士であり婚約者のレアードとの結婚を認めてもらうため、試練を受けることを決意する。 しかし、この試練の裏で、レアードはクリスタの血の繋がっていない妹のアイラととんでもないことを画策していて……。 試練に出発する直前、クリスタは見送りに来てくれた騎士団長の1人から、とあるお守りをもらう。そして、このお守りと試練が後のクリスタの運命を大きく変えることになる。 ◇   ◇   ◇ 「ずっとお慕いしておりました。どうか私と結婚してください」 「お断りいたします」 恋愛なんてもう懲り懲り……! そう思っている私が、なぜプロポーズされているの!? 果たして、クリスタの恋の行方は……!?

聖女の任期終了後、婚活を始めてみたら六歳の可愛い男児が立候補してきた!

澤谷弥(さわたに わたる)
恋愛
23歳のメルリラは、聖女の任期を終えたばかり。結婚適齢期を少し過ぎた彼女は、幸せな結婚を夢見て婚活に励むが、なかなか相手が見つからない。原因は「元聖女」という肩書にあった。聖女を務めた女性は慣例として専属聖騎士と結婚することが多く、メルリラもまた、かつての専属聖騎士フェイビアンと結ばれるものと世間から思われているのだ。しかし、メルリラとフェイビアンは口げんかが絶えない関係で、恋愛感情など皆無。彼を結婚相手として考えたことなどなかった。それでも世間の誤解は解けず、婚活は難航する。そんなある日、聖女を辞めて半年が経った頃、メルリラの婚活を知った公爵子息ハリソン(6歳)がやって来て――。

【完結】偽物聖女は冷血騎士団長様と白い結婚をしたはずでした。

雨宮羽那
恋愛
 聖女補佐官であるレティノアは、補佐官であるにも関わらず、祈りをささげる日々を送っていた。  というのも、本来聖女であるはずの妹が、役目を放棄して遊び歩いていたからだ。  そんなある日、妹が「真実の愛に気づいたの」と言って恋人と駆け落ちしてしまう。  残されたのは、聖女の役目と――王命によって決められた聖騎士団長様との婚姻!?  レティノアは、妹の代わりとして聖女の立場と聖騎士団長との結婚を押し付けられることに。  相手のクラウスは、「血も涙もない冷血な悪魔」と噂される聖騎士団長。クラウスから「俺はあなたに触れるつもりはない」と言い放たれたレティノアは、「これは白い結婚なのだ」と理解する。  しかし、クラウスの態度は噂とは異なり、レティノアを愛しているようにしか思えなくて……?  これは、今まで妹の代わりの「偽物」として扱われてきた令嬢が「本物」として幸せをつかむ物語。 ◇◇◇◇ お気に入り登録、♡、感想などいただければ、作者が大変喜びます! モチベになるので良ければ応援していただければ嬉しいです♪ ※いつも通りざまぁ要素は中盤以降。 ※完結まで執筆済み ※表紙はAIイラストです ※アルファポリス先行投稿(他投稿サイトにも掲載予定です)

【完結】『推しの騎士団長様が婚約破棄されたそうなので、私が拾ってみた。』

ぽんぽこ@3/28新作発売!!
恋愛
【完結まで執筆済み】筋肉が語る男、冷徹と噂される騎士団長レオン・バルクハルト。 ――そんな彼が、ある日突然、婚約破棄されたという噂が城下に広まった。 「……えっ、それってめっちゃ美味しい展開じゃない!?」 破天荒で豪快な令嬢、ミレイア・グランシェリは思った。 重度の“筋肉フェチ”で料理上手、○○なのに自由すぎる彼女が取った行動は──まさかの自ら押しかけ!? 騎士団で巻き起こる爆笑と騒動、そして、不器用なふたりの距離は少しずつ近づいていく。 これは、筋肉を愛し、胃袋を掴み、心まで溶かす姉御ヒロインが、 推しの騎士団長を全力で幸せにするまでの、ときめきと笑いと“ざまぁ”の物語。

公爵令嬢が婚約破棄され、弟の天才魔導師が激怒した。

克全
恋愛
「カクヨム」と「小説家になろう」にも投稿しています

【完結】捨てられた聖女は王子の愛鳥を無自覚な聖なる力で助けました〜ごはんを貰ったら聖なる力が覚醒。私を捨てた方は聖女の仕組みを知らないようで

よどら文鳥
恋愛
 ルリナは物心からついたころから公爵邸の庭、主にゴミ捨て場で生活させられていた。  ルリナを産んだと同時に公爵夫人は息絶えてしまったため、公爵は別の女と再婚した。  再婚相手との間に産まれたシャインを公爵令嬢の長女にしたかったがため、公爵はルリナのことが邪魔で追放させたかったのだ。  そのために姑息な手段を使ってルリナをハメていた。  だが、ルリナには聖女としての力が眠っている可能性があった。  その可能性のためにかろうじて生かしていたが、十四歳になっても聖女の力を確認できず。  ついに公爵家から追放させる最終段階に入った。  それは交流会でルリナが大恥をかいて貴族界からもルリナは貴族として人としてダメ人間だと思わせること。  公爵の思惑通りに進んだかのように見えたが、ルリナは交流会の途中で庭にある森の中へ逃げてから自体が変わる。  気絶していた白文鳥を発見。  ルリナが白文鳥を心配していたところにニルワーム第三王子がやってきて……。

処理中です...