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第三章 デュセンバーグ王国へ(3)
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夕暮れ前に買い物を終えたハルバートは、重い足取りで魔動車に戻ってきていた。
志乃を動かすことができないため、というか、無理をさせたくないジークリンデが魔動車で寝起きするというのに、部下の自分たちだけ宿に泊まるわけにはいかないと、全員が車中泊をすることになったのだ。
ただし、魔動車の中は、安い宿屋よりも快適なため、不満に思う者はいなかった。
疲れた様子のハルバートを出迎えたジークリンデは、労いの言葉をかける。
「ありがとうな」
「はい……。ですが、これっきりにして欲しいです」
「ああ。次からは、俺がシノに似合う物を俺自身で選びたいからそうする」
「シノ?」
「ああ、あの子の名前だ。今朝、聞いた」
にやけた表情をしているジークリンデが、本気で志乃を大切に、というか、これは惚れているな? とそう感じたハルバートだったが、面倒なことになりそうだったので、敢えて何も言うことはしなかった。
代わりに、買ってきた荷物をジークリンデに差し出した。
「そうですか。はい。適当にいろいろ見繕ってきましたよ」
そう言われたジークリンデは、荷物を受け取って中身を確認する。
中からは、可愛らしいワンピースが数着と踵の高くない歩きやすそうな靴、シンプルでいて可愛らしい寝間着、そして数着の下着が出てきた。
その他にも、女性向けの石鹸や香油などいろいろと入っていた。
ジークリンデは、ワンピースを広げて眉をひそめる。
それに気が付いたハルバートは、何かやってしまったのかと不安になっていると、ジークリンデはぶつくさと文句を言った。
「流石ハルトだ。だが、シノに似合う物を一番に見つけられるのはこの俺だからな。今回は仕方ないが、シノの一番はこの俺だ」
「ああ……。はいはい。お気に召していただけたようで何よりですよ」
「うん。それに、この下着もシンプルながらワンポイントの花の刺繍がとてもいいな。うんうん。おお、この水玉もなかなか……」
下着を見て何を想像したのか、一目瞭然だったハルバートは、咳払いとともに忠告する。
「ごほん。ジークリンデ様、決してそんなだらしない顔を他でしないでくださいね。特に、女性の前では絶対だめですよ。百年の恋も一瞬で冷めますから」
「ぬっ!! 分かっている! というか、そんなに駄目な顔をしていたか?」
「はい。鼻の下が床に付くと思えるくらい伸びていました」
「……善処する」
多少自覚があったジークリンデは、そっぽを向きながら恥ずかしそうにそう言うと荷物をもって部屋に戻って行った。
その背中を、やれやれといった様子で見送るハルバートは、夕食の支度のためキッチンに向かったのだった。
ジークリンデが部屋に戻ると、ちょうど志乃が目を覚ましたところだった。
志乃に声をかけながらゆっくりと近づいたジークリンデは、ハルバートが買ってきた荷物をベッドの上に降ろしていた。
「シノ、目が覚めたか。よかったら、風呂に入るか?」
声をかけられた志乃は、一瞬びくりと肩を震わせた後に、じっとジークリンデを見つめた。
数回深呼吸をした志乃は、ばっと頭を下げていた。
「えっと、よくわかりませんが、ご飯ありがとうございました」
お礼を言われるようなことをした覚えがなかったジークリンデは、一瞬目を丸くしたが、次の瞬間には笑顔になっていた。
そして、ベッドの傍に片膝を突いて、志乃の細い顎を指先で掬って上を向かせたのだ。
「シノ、したくてやったことだから」
優しくそう言うと、志乃はふるふると首を小さく横に振った。
「いいえ、いいえ。私に優しくしてくれて、ご飯もくれて……。初めてです。こんなこと……。貴方は私の命の恩人です……。あっ、ごめんなさい。私、山野辺志乃って言います……。あれ? さっき私の名前?」
混乱に目をくるくるとさせる志乃の様子があまりにも可愛くて、ジークリンデは、悶えそうになったが何とか堪えて、きりりとした表情を作って言葉を返していた。
ただし、本音がダダ洩れではあったが。
「可愛いなぁ。くすくす。本当にいいんだ。俺を恩人だと思うなら、いっぱい飯を食って、元気な姿を俺に見せてくれ。そして、いっぱい笑ってくれ。それが俺にとってのご褒美だ。それと、名前は、今朝、眠る前にシノが俺に教えてくれたんだ」
そう言ったジークリンデは、見た者が蕩けてしまいそうな甘い笑みを浮かべて志乃の頭を撫でる。
「本当に可愛いな。そうだ、俺の名前も教えておかないとな。俺はジークリンデだ。気軽に、ジークと呼んでくれ」
志乃を動かすことができないため、というか、無理をさせたくないジークリンデが魔動車で寝起きするというのに、部下の自分たちだけ宿に泊まるわけにはいかないと、全員が車中泊をすることになったのだ。
ただし、魔動車の中は、安い宿屋よりも快適なため、不満に思う者はいなかった。
疲れた様子のハルバートを出迎えたジークリンデは、労いの言葉をかける。
「ありがとうな」
「はい……。ですが、これっきりにして欲しいです」
「ああ。次からは、俺がシノに似合う物を俺自身で選びたいからそうする」
「シノ?」
「ああ、あの子の名前だ。今朝、聞いた」
にやけた表情をしているジークリンデが、本気で志乃を大切に、というか、これは惚れているな? とそう感じたハルバートだったが、面倒なことになりそうだったので、敢えて何も言うことはしなかった。
代わりに、買ってきた荷物をジークリンデに差し出した。
「そうですか。はい。適当にいろいろ見繕ってきましたよ」
そう言われたジークリンデは、荷物を受け取って中身を確認する。
中からは、可愛らしいワンピースが数着と踵の高くない歩きやすそうな靴、シンプルでいて可愛らしい寝間着、そして数着の下着が出てきた。
その他にも、女性向けの石鹸や香油などいろいろと入っていた。
ジークリンデは、ワンピースを広げて眉をひそめる。
それに気が付いたハルバートは、何かやってしまったのかと不安になっていると、ジークリンデはぶつくさと文句を言った。
「流石ハルトだ。だが、シノに似合う物を一番に見つけられるのはこの俺だからな。今回は仕方ないが、シノの一番はこの俺だ」
「ああ……。はいはい。お気に召していただけたようで何よりですよ」
「うん。それに、この下着もシンプルながらワンポイントの花の刺繍がとてもいいな。うんうん。おお、この水玉もなかなか……」
下着を見て何を想像したのか、一目瞭然だったハルバートは、咳払いとともに忠告する。
「ごほん。ジークリンデ様、決してそんなだらしない顔を他でしないでくださいね。特に、女性の前では絶対だめですよ。百年の恋も一瞬で冷めますから」
「ぬっ!! 分かっている! というか、そんなに駄目な顔をしていたか?」
「はい。鼻の下が床に付くと思えるくらい伸びていました」
「……善処する」
多少自覚があったジークリンデは、そっぽを向きながら恥ずかしそうにそう言うと荷物をもって部屋に戻って行った。
その背中を、やれやれといった様子で見送るハルバートは、夕食の支度のためキッチンに向かったのだった。
ジークリンデが部屋に戻ると、ちょうど志乃が目を覚ましたところだった。
志乃に声をかけながらゆっくりと近づいたジークリンデは、ハルバートが買ってきた荷物をベッドの上に降ろしていた。
「シノ、目が覚めたか。よかったら、風呂に入るか?」
声をかけられた志乃は、一瞬びくりと肩を震わせた後に、じっとジークリンデを見つめた。
数回深呼吸をした志乃は、ばっと頭を下げていた。
「えっと、よくわかりませんが、ご飯ありがとうございました」
お礼を言われるようなことをした覚えがなかったジークリンデは、一瞬目を丸くしたが、次の瞬間には笑顔になっていた。
そして、ベッドの傍に片膝を突いて、志乃の細い顎を指先で掬って上を向かせたのだ。
「シノ、したくてやったことだから」
優しくそう言うと、志乃はふるふると首を小さく横に振った。
「いいえ、いいえ。私に優しくしてくれて、ご飯もくれて……。初めてです。こんなこと……。貴方は私の命の恩人です……。あっ、ごめんなさい。私、山野辺志乃って言います……。あれ? さっき私の名前?」
混乱に目をくるくるとさせる志乃の様子があまりにも可愛くて、ジークリンデは、悶えそうになったが何とか堪えて、きりりとした表情を作って言葉を返していた。
ただし、本音がダダ洩れではあったが。
「可愛いなぁ。くすくす。本当にいいんだ。俺を恩人だと思うなら、いっぱい飯を食って、元気な姿を俺に見せてくれ。そして、いっぱい笑ってくれ。それが俺にとってのご褒美だ。それと、名前は、今朝、眠る前にシノが俺に教えてくれたんだ」
そう言ったジークリンデは、見た者が蕩けてしまいそうな甘い笑みを浮かべて志乃の頭を撫でる。
「本当に可愛いな。そうだ、俺の名前も教えておかないとな。俺はジークリンデだ。気軽に、ジークと呼んでくれ」
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