31 / 31
第六章 家族
しおりを挟む
志乃がアルエライト王国が滅んだことを知ったのは、ジークリンデたちがすべての後処理を終えた時だった。
その話を聞いた時、一瞬明里のことを思い出したものの、何も感じない自分がいたことにショックを受ける。
そんな志乃の気持ちにいち早く気が付いたジークリンデは、志乃を辛抱強く慰めたのだ。
志乃も、そんなジークリンデの気持ちを知り、もう終わったことだと考えないようにすることにしたのだ。
それでも、この世を去ってしまった人々の冥福を祈り花を捧げることはした。
志乃が、アルエライト王国が滅亡したと知った数週間後、ジークリンデが沈んだ表情で志乃に聞いたのだ。
「シノ……。アルエライト王国が滅んだ今、完全に君をこの世界に呼び出した術式は失われてしまった。今更こんなことを言うのは卑怯だと思うが、それでも言わせてほしい」
そう言って、ジークリンデは心に秘めていた思いを口にしていた。
「君には、帰る方法はないと言った。だけど、君が望むならなんとしてでもその方法を見つける……。俺は、君に辛い思いをさせることだけは絶対にしたくないんだ」
ジークリンデのその言葉を聞いた志乃は、アルエライト王国が滅んだと聞いた時よりもショックを受けることとなった。
喉の奥が苦しくなって、無意識に涙が溢れた。
呆然とした表情で涙を静かに流す志乃を見たジークリンデは、慌てる。
「シノ? すまない。泣かないでくれ……」
「ジーク……。どうして急にこんなことを? もしかして、私……要らなくなった?」
志乃のその言葉にジークリンデは、衝撃を受ける。しかし、すぐに誤解だと全力で説明をする。
「違う! ずっと傍に居たい! 俺にはシノが必要だよ!!」
「なら、なんで!!」
「ごめん。ずっと見ないふりをしていたけど、シノには元の世界に家族だって、友人だっていたはずだ。だけど、急にこちらに呼びだされて……。今まで俺の都合を押し付けて、志乃の気持ちを知ろうとしなかった。もし帰りたいというのなら俺はその方法をどんなに時間がかかろうとも絶対に探し出す」
ジークのその言葉を聞いた志乃は、火が付いたように泣いてジークリンデに縋っていた。
「バカバカ!! こんなにジークのこと好きにさせておいて、今更離れるなんてできないよ!!」
志乃の叫びを聞いたジークリンデは、その小さな体をぎゅっと抱きしめていた。そして、愛おし気に言うのだ。
「ああ。俺も一生離れない」
「なら、なんで?」
「だから、君が戻るという言うのなら、俺もついていく」
「え?」
「ちゅっ。離れないって言ったろ。君が帰る場所が俺の居る場所だから」
ジークリンデの覚悟の籠った瞳を見た志乃は、驚きに目を丸くさせる。ジークリンデが言ったことは、志乃のために何もかもを捨てるということだったのだ。
その覚悟が嬉しく感じた志乃は、初めて自分からジークリンデにキスをしていた。
ジークリンデの両頬に手を添えて、顔を近づけさせてからそっと触れるだけのキスを贈る。
「ちゅっ。好き。ジークが好き。だから、私はこの世界でジークと家族になりたい」
志乃の言葉と行動に目を丸くさせたジークリンデは、すぐに微笑みを受けベていた。
そして、お返しというには激しいキスの雨を降らせたのだ。
「ああ、シノ。愛している。シノを大切にする。幸せにするから、俺こそ、シノと家族になりたい」
「うん。ジーク、私も愛してます」
「シノ……」
「ジーク……」
こうして、思いを一つにさせた志乃とジークリンデは、この世界で本当の家族となったのだ。
人々は知らない、デュセンバーグ王国にいる聖女の存在を。
そして、その聖女は人知れず、国を豊かにしていくが、聖女本人もそのことを知ることはなかった。
そんな聖女は、この世界で得た伴侶に守られ愛されて、幸福に満ちた一生を送ることとなる。
『聖女召喚に巻き込まれた挙句、ハズレの方と蔑まれていた私が隣国の過保護な王子に溺愛されている件』 おわり
その話を聞いた時、一瞬明里のことを思い出したものの、何も感じない自分がいたことにショックを受ける。
そんな志乃の気持ちにいち早く気が付いたジークリンデは、志乃を辛抱強く慰めたのだ。
志乃も、そんなジークリンデの気持ちを知り、もう終わったことだと考えないようにすることにしたのだ。
それでも、この世を去ってしまった人々の冥福を祈り花を捧げることはした。
志乃が、アルエライト王国が滅亡したと知った数週間後、ジークリンデが沈んだ表情で志乃に聞いたのだ。
「シノ……。アルエライト王国が滅んだ今、完全に君をこの世界に呼び出した術式は失われてしまった。今更こんなことを言うのは卑怯だと思うが、それでも言わせてほしい」
そう言って、ジークリンデは心に秘めていた思いを口にしていた。
「君には、帰る方法はないと言った。だけど、君が望むならなんとしてでもその方法を見つける……。俺は、君に辛い思いをさせることだけは絶対にしたくないんだ」
ジークリンデのその言葉を聞いた志乃は、アルエライト王国が滅んだと聞いた時よりもショックを受けることとなった。
喉の奥が苦しくなって、無意識に涙が溢れた。
呆然とした表情で涙を静かに流す志乃を見たジークリンデは、慌てる。
「シノ? すまない。泣かないでくれ……」
「ジーク……。どうして急にこんなことを? もしかして、私……要らなくなった?」
志乃のその言葉にジークリンデは、衝撃を受ける。しかし、すぐに誤解だと全力で説明をする。
「違う! ずっと傍に居たい! 俺にはシノが必要だよ!!」
「なら、なんで!!」
「ごめん。ずっと見ないふりをしていたけど、シノには元の世界に家族だって、友人だっていたはずだ。だけど、急にこちらに呼びだされて……。今まで俺の都合を押し付けて、志乃の気持ちを知ろうとしなかった。もし帰りたいというのなら俺はその方法をどんなに時間がかかろうとも絶対に探し出す」
ジークのその言葉を聞いた志乃は、火が付いたように泣いてジークリンデに縋っていた。
「バカバカ!! こんなにジークのこと好きにさせておいて、今更離れるなんてできないよ!!」
志乃の叫びを聞いたジークリンデは、その小さな体をぎゅっと抱きしめていた。そして、愛おし気に言うのだ。
「ああ。俺も一生離れない」
「なら、なんで?」
「だから、君が戻るという言うのなら、俺もついていく」
「え?」
「ちゅっ。離れないって言ったろ。君が帰る場所が俺の居る場所だから」
ジークリンデの覚悟の籠った瞳を見た志乃は、驚きに目を丸くさせる。ジークリンデが言ったことは、志乃のために何もかもを捨てるということだったのだ。
その覚悟が嬉しく感じた志乃は、初めて自分からジークリンデにキスをしていた。
ジークリンデの両頬に手を添えて、顔を近づけさせてからそっと触れるだけのキスを贈る。
「ちゅっ。好き。ジークが好き。だから、私はこの世界でジークと家族になりたい」
志乃の言葉と行動に目を丸くさせたジークリンデは、すぐに微笑みを受けベていた。
そして、お返しというには激しいキスの雨を降らせたのだ。
「ああ、シノ。愛している。シノを大切にする。幸せにするから、俺こそ、シノと家族になりたい」
「うん。ジーク、私も愛してます」
「シノ……」
「ジーク……」
こうして、思いを一つにさせた志乃とジークリンデは、この世界で本当の家族となったのだ。
人々は知らない、デュセンバーグ王国にいる聖女の存在を。
そして、その聖女は人知れず、国を豊かにしていくが、聖女本人もそのことを知ることはなかった。
そんな聖女は、この世界で得た伴侶に守られ愛されて、幸福に満ちた一生を送ることとなる。
『聖女召喚に巻き込まれた挙句、ハズレの方と蔑まれていた私が隣国の過保護な王子に溺愛されている件』 おわり
232
この作品の感想を投稿する
みんなの感想(2件)
あなたにおすすめの小説
【完結】聖女になり損なった刺繍令嬢は逃亡先で幸福を知る。
みやこ嬢
恋愛
「ルーナ嬢、神聖なる聖女選定の場で不正を働くとは何事だ!」
魔法国アルケイミアでは魔力の多い貴族令嬢の中から聖女を選出し、王子の妃とするという古くからの習わしがある。
ところが、最終試験まで残ったクレモント侯爵家令嬢ルーナは不正を疑われて聖女候補から外されてしまう。聖女になり損なった失意のルーナは義兄から襲われたり高齢宰相の後妻に差し出されそうになるが、身を守るために侍女ティカと共に逃げ出した。
あてのない旅に出たルーナは、身を寄せた隣国シュベルトの街で運命的な出会いをする。
【2024年3月16日完結、全58話】
【完結】経費削減でリストラされた社畜聖女は、隣国でスローライフを送る〜隣国で祈ったら国王に溺愛され幸せを掴んだ上に国自体が明るくなりました〜
よどら文鳥
恋愛
「聖女イデアよ、もう祈らなくとも良くなった」
ブラークメリル王国の新米国王ロブリーは、節約と経費削減に力を入れる国王である。
どこの国でも、聖女が作る結界の加護によって危険なモンスターから国を守ってきた。
国として大事な機能も経費削減のために不要だと決断したのである。
そのとばっちりを受けたのが聖女イデア。
国のために、毎日限界まで聖なる力を放出してきた。
本来は何人もの聖女がひとつの国の結界を作るのに、たった一人で国全体を守っていたほどだ。
しかも、食事だけで生きていくのが精一杯なくらい少ない給料で。
だがその生活もロブリーの政策のためにリストラされ、社畜生活は解放される。
と、思っていたら、今度はイデア自身が他国から高値で取引されていたことを知り、渋々その国へ御者アメリと共に移動する。
目的のホワイトラブリー王国へ到着し、クラフト国王に聖女だと話すが、意図が通じず戸惑いを隠せないイデアとアメリ。
しかし、実はそもそもの取引が……。
幸いにも、ホワイトラブリー王国での生活が認められ、イデアはこの国で聖なる力を発揮していく。
今までの過労が嘘だったかのように、楽しく無理なく力を発揮できていて仕事に誇りを持ち始めるイデア。
しかも、周りにも聖なる力の影響は凄まじかったようで、ホワイトラブリー王国は激的な変化が起こる。
一方、聖女のいなくなったブラークメリル王国では、結界もなくなった上、無茶苦茶な経費削減政策が次々と起こって……?
※政策などに関してはご都合主義な部分があります。
【完結】裏切られ婚約破棄した聖女ですが、騎士団長様に求婚されすぎそれどころではありません!
綺咲 潔
恋愛
クリスタ・ウィルキンスは魔導士として、魔塔で働いている。そんなある日、彼女は8000年前に聖女・オフィーリア様のみが成功した、生贄の試練を受けないかと打診される。
本来なら受けようと思わない。しかし、クリスタは身分差を理由に反対されていた魔導士であり婚約者のレアードとの結婚を認めてもらうため、試練を受けることを決意する。
しかし、この試練の裏で、レアードはクリスタの血の繋がっていない妹のアイラととんでもないことを画策していて……。
試練に出発する直前、クリスタは見送りに来てくれた騎士団長の1人から、とあるお守りをもらう。そして、このお守りと試練が後のクリスタの運命を大きく変えることになる。
◇ ◇ ◇
「ずっとお慕いしておりました。どうか私と結婚してください」
「お断りいたします」
恋愛なんてもう懲り懲り……!
そう思っている私が、なぜプロポーズされているの!?
果たして、クリスタの恋の行方は……!?
聖女の任期終了後、婚活を始めてみたら六歳の可愛い男児が立候補してきた!
澤谷弥(さわたに わたる)
恋愛
23歳のメルリラは、聖女の任期を終えたばかり。結婚適齢期を少し過ぎた彼女は、幸せな結婚を夢見て婚活に励むが、なかなか相手が見つからない。原因は「元聖女」という肩書にあった。聖女を務めた女性は慣例として専属聖騎士と結婚することが多く、メルリラもまた、かつての専属聖騎士フェイビアンと結ばれるものと世間から思われているのだ。しかし、メルリラとフェイビアンは口げんかが絶えない関係で、恋愛感情など皆無。彼を結婚相手として考えたことなどなかった。それでも世間の誤解は解けず、婚活は難航する。そんなある日、聖女を辞めて半年が経った頃、メルリラの婚活を知った公爵子息ハリソン(6歳)がやって来て――。
【完結】偽物聖女は冷血騎士団長様と白い結婚をしたはずでした。
雨宮羽那
恋愛
聖女補佐官であるレティノアは、補佐官であるにも関わらず、祈りをささげる日々を送っていた。
というのも、本来聖女であるはずの妹が、役目を放棄して遊び歩いていたからだ。
そんなある日、妹が「真実の愛に気づいたの」と言って恋人と駆け落ちしてしまう。
残されたのは、聖女の役目と――王命によって決められた聖騎士団長様との婚姻!?
レティノアは、妹の代わりとして聖女の立場と聖騎士団長との結婚を押し付けられることに。
相手のクラウスは、「血も涙もない冷血な悪魔」と噂される聖騎士団長。クラウスから「俺はあなたに触れるつもりはない」と言い放たれたレティノアは、「これは白い結婚なのだ」と理解する。
しかし、クラウスの態度は噂とは異なり、レティノアを愛しているようにしか思えなくて……?
これは、今まで妹の代わりの「偽物」として扱われてきた令嬢が「本物」として幸せをつかむ物語。
◇◇◇◇
お気に入り登録、♡、感想などいただければ、作者が大変喜びます!
モチベになるので良ければ応援していただければ嬉しいです♪
※いつも通りざまぁ要素は中盤以降。
※完結まで執筆済み
※表紙はAIイラストです
※アルファポリス先行投稿(他投稿サイトにも掲載予定です)
【完結】捨てられた聖女は王子の愛鳥を無自覚な聖なる力で助けました〜ごはんを貰ったら聖なる力が覚醒。私を捨てた方は聖女の仕組みを知らないようで
よどら文鳥
恋愛
ルリナは物心からついたころから公爵邸の庭、主にゴミ捨て場で生活させられていた。
ルリナを産んだと同時に公爵夫人は息絶えてしまったため、公爵は別の女と再婚した。
再婚相手との間に産まれたシャインを公爵令嬢の長女にしたかったがため、公爵はルリナのことが邪魔で追放させたかったのだ。
そのために姑息な手段を使ってルリナをハメていた。
だが、ルリナには聖女としての力が眠っている可能性があった。
その可能性のためにかろうじて生かしていたが、十四歳になっても聖女の力を確認できず。
ついに公爵家から追放させる最終段階に入った。
それは交流会でルリナが大恥をかいて貴族界からもルリナは貴族として人としてダメ人間だと思わせること。
公爵の思惑通りに進んだかのように見えたが、ルリナは交流会の途中で庭にある森の中へ逃げてから自体が変わる。
気絶していた白文鳥を発見。
ルリナが白文鳥を心配していたところにニルワーム第三王子がやってきて……。
【完結】『推しの騎士団長様が婚約破棄されたそうなので、私が拾ってみた。』
ぽんぽこ@3/28新作発売!!
恋愛
【完結まで執筆済み】筋肉が語る男、冷徹と噂される騎士団長レオン・バルクハルト。
――そんな彼が、ある日突然、婚約破棄されたという噂が城下に広まった。
「……えっ、それってめっちゃ美味しい展開じゃない!?」
破天荒で豪快な令嬢、ミレイア・グランシェリは思った。
重度の“筋肉フェチ”で料理上手、○○なのに自由すぎる彼女が取った行動は──まさかの自ら押しかけ!?
騎士団で巻き起こる爆笑と騒動、そして、不器用なふたりの距離は少しずつ近づいていく。
これは、筋肉を愛し、胃袋を掴み、心まで溶かす姉御ヒロインが、
推しの騎士団長を全力で幸せにするまでの、ときめきと笑いと“ざまぁ”の物語。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる
本作については削除予定があるため、新規のレンタルはできません。
このユーザをミュートしますか?
※ミュートすると該当ユーザの「小説・投稿漫画・感想・コメント」が非表示になります。ミュートしたことは相手にはわかりません。またいつでもミュート解除できます。
※一部ミュート対象外の箇所がございます。ミュートの対象範囲についての詳細はヘルプにてご確認ください。
※ミュートしてもお気に入りやしおりは解除されません。既にお気に入りやしおりを使用している場合はすべて解除してからミュートを行うようにしてください。
城の連中全員と元の世界の会社の連中全員を、ちゃんと思いっきり痛めつけてくださいね。
ジョグ泡様
お読みいただきありがとうございます。
ごめんなさい( ;∀;)
こちらの作品は、ざまぁ展開はこれと言ってなく、さら~って終わらせているので……。
でも、書かれていないところで壮大なしっぺ返しを食らっているはずです(;´∀`)
こんにちは。内容も面白そうだし文章も表現も申し分なかったのですが、
ヒーローの名前が女性の名前なので違和感ありすぎて無理でした。
nap様
そうでしたか、また機会があればお寄りください(*'▽')