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第一部
第三章 血に染まった令嬢は、悪魔の子と蔑まれる 3
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騎士団最強クラスのカーシュではあったが度重なる戦闘でかなり疲労していた。
殺さないようにと、敵になった騎士たちを無効化しながらの戦いは思った以上にカーシュの神経をすり減らしていた。
カーシュは、無効化の手段を選んだことを少し後悔し始めていた。
いっそのこと、息の根を止めてしまったほうが簡単に片付くと考えては、彼らの様子がおかしい事から、それを躊躇った。
彼らが、何らかの手段で操られている可能性が少しでもある状態では、いくらカーシュがイシュミール至上主義とは言え、同僚とも言える騎士たちを手に掛けることに少しばかりの抵抗があったのだ。
そんな中、一瞬の油断を突かれた形で、カーシュは攻撃魔法をその身に受けてしまったのだ。
「ぐっ!!」
「カーシュ!!」
カーシュの発したぐももったうめき声にイシュミールは悲痛な声を上げた。
しかし、カーシュは歯を食いしばって次に来る攻撃に備えた。
今まで、剣や弓だけの攻撃だけだったので、まさか魔法が使えるものがいるとは思っていなかったための油断だったとも言えるし、騎士たちの中で魔法が使えると言った情報がなかったこともあったからだった。
風の刃で切り裂かれて、横っ腹から血がにじむが、それにかまっている時間はなかった。
後方から石礫が飛んでくることに気が付いたカーシュは、イシュミールを背に庇っていくつも飛んでくる石礫を剣で弾いた。
しかし、先程負った傷と攻撃の手数が多く全てを弾けないと判断したカーシュは、急所を外すようにして最低限の石礫だけを剣で弾いて、背後にいるイシュミールを守った。
そのため、先程風の刃で裂かれた脇腹を今度は石礫で抉られた。
傷から流れる血に、イシュミールは青ざめた。
「カーシュ!!はっ、早く止血を!!このままでは貴方が死んでしまう!!お願い、攻撃をやめて!!」
「姫!!駄目です。俺は大丈夫です。ですから俺の後ろに!!」
しかし、目の前で大怪我を負ってるカーシュの背に隠れたままでいることが出来ず、イシュミールは無謀にも飛び出して、攻撃をしてきたものへ言い放ったのだ。
「もうやめてください!!わたしの命が欲しいのでしたら差し上げます!!ですからもうやめ―――」
そこまで言ったところで、カーシュの前に出たイシュミールが後方に吹き飛ばされた。
とっさに抱きとめたカーシュは、イシュミールの姿を見て絶叫した。
そして、物陰にいる者に対して怒りのままに怒鳴りつけた。
あまりの怒りで頭が弾けるのではと思うほどの怒りを生まれてはじめて感じたのだ。
「ああああああーーーーーーーー!!!貴様ーーーーーー!!」
腕の中にいるぐったりとしたイシュミール、影から攻撃してくる何者かに攻撃をやめてほしいと訴えかけている途中で容赦なく攻撃されたのだ。
攻撃を受けたイシュミールの左腕は、石礫が当たったようで、骨が粉々に砕けてしまっていた。
幸いなことにイシュミールは衝撃で気を失っていたが、意識があったら痛みでのたうち回っていたことだろう。
カーシュは怒りに任せて、近くに落ちていた石を全力で影にいる相手に投げた。
力任せに投げた石は、影から攻撃していた男の頭に当たったようで、草陰から頭の潰れた男が前のめりに倒れてきた。
倒れてきた男は、騎士たちの中には居なかった。
そのことで、騎士以外にも敵が潜んでいることが分かったカーシュはきつく唇を噛んだ。
(くそ!!早く姫の手当をしないといけないのに、ここに来て新手だと……。くそ!!くそ!!!)
新手の存在に悪態を付きながらもカーシュは気を失ったイシュミールを背負い必死で逃げ回った。
そして、運良く森の中の洞窟に身を隠すことに成功した。
自分の怪我の手当もせずに、すぐにイシュミールの治療を開始したが、攻撃を受けた左腕の様子が可怪しかった。
同じ攻撃を受けたはずのカーシュは血が出ているだけだったが、何故かイシュミールの腕は変色していったのだ。
「同じ石礫を受けたはずなのに、どうして姫の腕だけ変色……。いや、この感じは壊死しているのか?だが、それだけではない。まさか毒か?くっ!!毒による壊死だとしたらこのままでは姫の命が!!」
そう、理由はわからないが、イシュミールの砕けた左腕はなぜか壊死し始めていたのだ。
必死に添え木で腕を固定して、持参していた薬を患部に塗ったが壊死した部分が徐々に広がっていくことに、カーシュは気が狂いそうになっていた。
そんな中、痛みで朦朧とした様子ではあったは、叫ぶこともなくイシュミールは目を覚ました。
「痛っ……。あら?どうしたのかしら、体中が痛いわ。それに、なんだかぼうっとするわ。体中が熱いわ。どうしたのかしら……」
意識を取り戻したものの、記憶が混濁しているようで、現在の状況をいまいち理解できていない様子だったが、近くにいるカーシュを見て状況を思い出したのだ。
「カーシュ!!大変。貴方血が!!血がすごく出ているわ!!手当を……。そうだわ、わたし……攻撃をやめてもらうようにお願いしたら……、そうだわ、石が飛んできてそれに当たって、気を……」
そして、自身の左腕に感覚がないことに気が付いたイシュミールは、思いの外冷静な様子でカーシュに状況を聞いてきた。
「カーシュ、わたし達は逃げ切れたの?」
イシュミールの質問に、カーシュは眉間にシワを寄せて、低い声で言った。
「ここは、森の中にあった洞窟の中です。今はなんとか身を隠せていますが、血の跡を追ってこられる可能性はあります」
「そうですか……。カーシュ、お願いですから止血をしてください。わたしがしてあげたいところですが、体が動きません」
「いえ、俺のこの傷ではもう止血をしても助かりません。それよりも、姫のことです。理由がわからないのですが、攻撃を受けたところが徐々に壊死しているのです。俺も同じ攻撃を受けたはずなのですが……。このままでは、姫の命が危険です。俺は、どうあっても姫に生きて欲しいのです」
真剣に話すカーシュにイシュミールは、弱く微笑んだ。
「それなら、わたしも同じです。カーシュに生きてほしい。だから止血をしてください。そして……わたしの……」
そう言って、イシュミールは自身の左腕を見つめた。
それを見たカーシュは自身も覚悟を決めた。
「わかりました。ですが、俺の止血は、姫の止血が終わってから行います」
「はい。わかりました。カーシュ、辛いことをお願いしますが、よろしくおねがいします」
そう言って、イシュミールはドレスの裾を口に詰めて歯を食いしばってから硬く目を瞑った。
それを見た、カーシュは覚悟を決めた。
イシュミールの左腕を肘の上でキツく縛った。
そして、腰に下げていた剣を、魔法で出した水で清めてから、炎で炙った。それが終わるとイシュミールの左腕を肘の下の位置で切断した。
殺さないようにと、敵になった騎士たちを無効化しながらの戦いは思った以上にカーシュの神経をすり減らしていた。
カーシュは、無効化の手段を選んだことを少し後悔し始めていた。
いっそのこと、息の根を止めてしまったほうが簡単に片付くと考えては、彼らの様子がおかしい事から、それを躊躇った。
彼らが、何らかの手段で操られている可能性が少しでもある状態では、いくらカーシュがイシュミール至上主義とは言え、同僚とも言える騎士たちを手に掛けることに少しばかりの抵抗があったのだ。
そんな中、一瞬の油断を突かれた形で、カーシュは攻撃魔法をその身に受けてしまったのだ。
「ぐっ!!」
「カーシュ!!」
カーシュの発したぐももったうめき声にイシュミールは悲痛な声を上げた。
しかし、カーシュは歯を食いしばって次に来る攻撃に備えた。
今まで、剣や弓だけの攻撃だけだったので、まさか魔法が使えるものがいるとは思っていなかったための油断だったとも言えるし、騎士たちの中で魔法が使えると言った情報がなかったこともあったからだった。
風の刃で切り裂かれて、横っ腹から血がにじむが、それにかまっている時間はなかった。
後方から石礫が飛んでくることに気が付いたカーシュは、イシュミールを背に庇っていくつも飛んでくる石礫を剣で弾いた。
しかし、先程負った傷と攻撃の手数が多く全てを弾けないと判断したカーシュは、急所を外すようにして最低限の石礫だけを剣で弾いて、背後にいるイシュミールを守った。
そのため、先程風の刃で裂かれた脇腹を今度は石礫で抉られた。
傷から流れる血に、イシュミールは青ざめた。
「カーシュ!!はっ、早く止血を!!このままでは貴方が死んでしまう!!お願い、攻撃をやめて!!」
「姫!!駄目です。俺は大丈夫です。ですから俺の後ろに!!」
しかし、目の前で大怪我を負ってるカーシュの背に隠れたままでいることが出来ず、イシュミールは無謀にも飛び出して、攻撃をしてきたものへ言い放ったのだ。
「もうやめてください!!わたしの命が欲しいのでしたら差し上げます!!ですからもうやめ―――」
そこまで言ったところで、カーシュの前に出たイシュミールが後方に吹き飛ばされた。
とっさに抱きとめたカーシュは、イシュミールの姿を見て絶叫した。
そして、物陰にいる者に対して怒りのままに怒鳴りつけた。
あまりの怒りで頭が弾けるのではと思うほどの怒りを生まれてはじめて感じたのだ。
「ああああああーーーーーーーー!!!貴様ーーーーーー!!」
腕の中にいるぐったりとしたイシュミール、影から攻撃してくる何者かに攻撃をやめてほしいと訴えかけている途中で容赦なく攻撃されたのだ。
攻撃を受けたイシュミールの左腕は、石礫が当たったようで、骨が粉々に砕けてしまっていた。
幸いなことにイシュミールは衝撃で気を失っていたが、意識があったら痛みでのたうち回っていたことだろう。
カーシュは怒りに任せて、近くに落ちていた石を全力で影にいる相手に投げた。
力任せに投げた石は、影から攻撃していた男の頭に当たったようで、草陰から頭の潰れた男が前のめりに倒れてきた。
倒れてきた男は、騎士たちの中には居なかった。
そのことで、騎士以外にも敵が潜んでいることが分かったカーシュはきつく唇を噛んだ。
(くそ!!早く姫の手当をしないといけないのに、ここに来て新手だと……。くそ!!くそ!!!)
新手の存在に悪態を付きながらもカーシュは気を失ったイシュミールを背負い必死で逃げ回った。
そして、運良く森の中の洞窟に身を隠すことに成功した。
自分の怪我の手当もせずに、すぐにイシュミールの治療を開始したが、攻撃を受けた左腕の様子が可怪しかった。
同じ攻撃を受けたはずのカーシュは血が出ているだけだったが、何故かイシュミールの腕は変色していったのだ。
「同じ石礫を受けたはずなのに、どうして姫の腕だけ変色……。いや、この感じは壊死しているのか?だが、それだけではない。まさか毒か?くっ!!毒による壊死だとしたらこのままでは姫の命が!!」
そう、理由はわからないが、イシュミールの砕けた左腕はなぜか壊死し始めていたのだ。
必死に添え木で腕を固定して、持参していた薬を患部に塗ったが壊死した部分が徐々に広がっていくことに、カーシュは気が狂いそうになっていた。
そんな中、痛みで朦朧とした様子ではあったは、叫ぶこともなくイシュミールは目を覚ました。
「痛っ……。あら?どうしたのかしら、体中が痛いわ。それに、なんだかぼうっとするわ。体中が熱いわ。どうしたのかしら……」
意識を取り戻したものの、記憶が混濁しているようで、現在の状況をいまいち理解できていない様子だったが、近くにいるカーシュを見て状況を思い出したのだ。
「カーシュ!!大変。貴方血が!!血がすごく出ているわ!!手当を……。そうだわ、わたし……攻撃をやめてもらうようにお願いしたら……、そうだわ、石が飛んできてそれに当たって、気を……」
そして、自身の左腕に感覚がないことに気が付いたイシュミールは、思いの外冷静な様子でカーシュに状況を聞いてきた。
「カーシュ、わたし達は逃げ切れたの?」
イシュミールの質問に、カーシュは眉間にシワを寄せて、低い声で言った。
「ここは、森の中にあった洞窟の中です。今はなんとか身を隠せていますが、血の跡を追ってこられる可能性はあります」
「そうですか……。カーシュ、お願いですから止血をしてください。わたしがしてあげたいところですが、体が動きません」
「いえ、俺のこの傷ではもう止血をしても助かりません。それよりも、姫のことです。理由がわからないのですが、攻撃を受けたところが徐々に壊死しているのです。俺も同じ攻撃を受けたはずなのですが……。このままでは、姫の命が危険です。俺は、どうあっても姫に生きて欲しいのです」
真剣に話すカーシュにイシュミールは、弱く微笑んだ。
「それなら、わたしも同じです。カーシュに生きてほしい。だから止血をしてください。そして……わたしの……」
そう言って、イシュミールは自身の左腕を見つめた。
それを見たカーシュは自身も覚悟を決めた。
「わかりました。ですが、俺の止血は、姫の止血が終わってから行います」
「はい。わかりました。カーシュ、辛いことをお願いしますが、よろしくおねがいします」
そう言って、イシュミールはドレスの裾を口に詰めて歯を食いしばってから硬く目を瞑った。
それを見た、カーシュは覚悟を決めた。
イシュミールの左腕を肘の上でキツく縛った。
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