妹に全てを奪われた令嬢は第二の人生を満喫することにしました。

バナナマヨネーズ

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番外編

【後日談】夫婦喧嘩は……

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 シーナと夫婦になって三日が経っていた。
 俺は、簡単な書類仕事をしつつ、未だに領地に帰らない悪友をスルーしていた。
 セシルは、執務室で優雅にお茶を飲みながら、仕事中の俺にだらだらと話しかけてくる。
 
「なぁ~、今日も幼妻ちゃんは起きられないの?なぁなぁ~」

 無視だ。ヤツの言葉に反応しては、セシルの思うツボだ。ここは、無反応が一番。反応したが最後、ヤツは弄り倒してくるに決まっている。
 
「なぁなぁ~。カインってそこまで色事にのめり込む方じゃなかったよな?」

 無視だ無視。
 
「あ~、でも。お前って、赤毛の胸の大きめなのが好きだったよなぁ~。ほら、お前がよく通ってたあの子とか、たまに行ってたあの子とかさ~」

 おい!なぜ、俺が行っていた花街の娼婦の特徴を知っている!!
 いや、ここはツッコんではいけない。
 無視だ無視!!
 
「そう言えば、お前ってばさ~、【マグロチャレンジ】って言われてたよなぁ」

 はっ?初耳だ。何だそれ?!
 俺がツッコまないことをいいことに、セシルは話を続けていた。
 
「ほら、うちの領地の花街にお前を連れて行った後に、カイン一人で何度も行ってたよな?それでさ、お前って女の子に全部させて、ただ発散させるだけで何もしないって有名だったんだけどさ~」

 おい!不名誉な言いがかりはやめろ!!
 いや、ここでツッコんだら俺の負けだ。無視だ無視。
 
「でもさ、ある子が自慢してたんだよなぁ。「あの、マグロ王子が積極的になって腰を振ってきたわ!でも、今回も口付けは拒否されちゃった、残念~」ってさ。んで、その子さ、それから花街での指名ランクが上位になったんだとよ。んで、カインが本気出した子は人気になるってジンクスが出来たんよ。で、カインを本気にさせるチャレンジを通称【マグロチャレンジ】って言うようになったんだと」

「知るか!!」

 俺は思わずツッコんでしまった。
 なんだ、マグロチャレンジって!!
 俺が、セシルをギロリと睨むつけると、ヤツは気にした風もなく続けて言いやがった。
 
「あはは!この話には続きがあってさ、カインが本気になる子は赤毛の子が殆どだったことから、花街で髪を赤く染めることが流行ったんだよね~。ウケるわ!!そんなお前も、今じゃ幼妻にメロメロとはなぁ~」

 はぁ、この男は……。
 俺がまだまだ子供だったから、訳のわからないまま花街に連れて行かれて「失恋の傷は新しい恋でしか癒せはしない!!しかし、なかなか新しい運命とは出会えないものだ。ということで、先ずは体を満たすんだ!!」とかなんとか言って、ヤツの行きつけの娼館で気が付いたら初体験を終えていた。
 初めての経験が、玄人の手練手管で良いようにされてしまったのは俺の消し去りたい黒歴史だったりする。
 そんな事を苦々しく考えていると、セシルのヤツは爆弾を投下しやがった。
 
「俺はてっきり、赤毛でボインの子がドストライクだと思ってたけど、貧ny―――」

 俺は、ヤツが言いきる前に手元にあった文鎮を勢い良くセシルに向かって全力で投げつけた。
 セシルが、それを簡単に避けたため、文鎮はヤツの座っていたソファーに突き刺さった。
 俺は、セシルを睨みつけてから全力で言った。
 
「ささやか系だ!!それに、まだ成長の余地はある!!俺のこの手で育てるから問題ない!!それに、大きさが全てではない!形、手に収まるフィット感、感度!!それらも非常に重要だ!!」

「おっ、おおぅ……。お前、いつからおっぱいニストになったんだよ……。って、言うか、幼妻は、感度がいいのか、そうかそうか」

「貴様!!今想像したことを頭から消し去れ!!いや、俺がお前の頭ごと消し飛ばす!!」

「は?!ちょっと!!やめやめ!!」

 俺は、手元にあったもう一つの文鎮を片手にセシルににじり寄った。
 しかし、文鎮をセシルの脳天に振り下ろす前に、俺に悲劇が起こった。
 
「~~~~~~、カ、カイン様のおバカ~~~~!!!おっぱい星人!!変態!!」

 そう言って、真っ赤な顔で震えるシーナが執務室の扉の前にいたのだ。
 俺は焦った。
 何処から聞かれていたのかということもだが、シーナにあらぬ誤解を与えてしまったことに、俺は動揺していた。
 だからだと言い訳させてもらいたい。
 
「シーナ誤解だ!!俺は、誰でもない、お前の手に収まる胸だからこそ興奮するんだ!!」

 あっ、違う!!そうじゃない!!
 俺が、動揺からとんでもないことを口走ってしまったことに気が付いたときには、既に全てが遅かった。
 
「~~~~!!それって、私の胸が小さいってことですか?」

 シーナは、まったく笑っていない目で俺を見ていた。
 ハイライトの消えたその瞳は、俺を汚い物でも見るかのように蔑んでいたように感じた。
 
「ちっ、違う。いや、違わないが……って、そうではない!!俺は、お前の全てが好きで愛してるんだ!!小さかろうと大きかろうと、俺にはどっちでも良いんだ!!お前だから興奮するし、ついつい夢中でがっついてしまう」

「っ!!でも、セシル様が、カイン様はボインの子がドストライクだって……」

「いや、無いよりはあったほうが……って、そうじゃない。昔の話だ!!今は、シーナが好きなんだ。シーナにしかそういう気持ちにならない!」

「でも……」

 必死に言い訳をしている俺に、シーナは疑いの目を向けているが、これは俺の身から出た錆……。
 なんとしてでもシーナに分かって貰う必要があると考えた俺は、怖がられないようにゆっくりとシーナとの距離を詰めた。
 そして、シーナを腕に抱きしめて耳元で囁く。
 
「そうだろう?毎夜、あんなにシーナを求めてしまう。すまない。体、辛いだろう?でも、お前が側にいると思うと求めずにはいられないんだ。こんな悪い大人でごめんな?でも、シーナが好きで好きで抑えられないんだ……」

 俺がそう言って、シーナの細い体を抱きしめると、腕の中のシーナが小さく震えるのが分かった。
 シーナは、大きな瞳を潤ませて小声で言った。
 
「カイン様はずるいです……。そんな風に言われたら……私……。もう、仕方のない人ですね。その、初めは色々と驚きましたけど、カイン様が私を求めてくれるのは……、その、うっ、うれしい……です……」

 そう言って、最後には語尾を小さくして話すシーナに、無性に理性を揺さぶられた。
 まだ昼だと言うのに、盛ってしまう自分に呆れる。
 
 シーナといい雰囲気になっていると、咳払いが聞こえた。
 あぁ、そう言えば忘れていた。
 ここには、セシルがいたということを。
 これ以上シーナの可愛い顔を見せるわけにはいかないと、俺は手に持っていた文鎮をセシルのいる方に無造作に投げつけた。後ろで、「へぶっ!!あっ、あっぶな!!」という声が聞こえたが無視をして、シーナを連れて執務室を出たのだった。
 
 そして、向かった先で昼だと言うのにシーナに無理をさせてしまったことは本当に悪かったと思うが、後悔は全くしていない。
 
 
 
【後日談】夫婦喧嘩は…… おわり
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