90 / 113
番外編
【後日談】シエテの憂鬱
しおりを挟む
シーナが結婚した後、シエテは家業の手伝いの傍らある仕事をすることになった。
それは辺境騎士団の第二班の隊長という面倒極まりない役職を義理の弟となったカインから押し付けられたのだ。
最初は断ろうとしたシエテだったが、シーナのキラキラと輝く瞳で尊敬するような眼差しの前に断ることが出来なかったのだ。
シーナ曰く、「騎士団の制服姿のにーに、格好いい!!」とのことだったので、まんざらでもなかったシエテだった。
しかし、家業の傍らの任務は多忙を極めていた。
カインからは、「義父上と義母上の手伝いの空いてる時間でいいので、騎士たちに稽古を付けてやってほしい」とのことだったのだ。
シエテの中では、屋敷に住むようになったシーナと会えるチャンスだという思惑もあって引き受けたのだが、気がつけば最初の思惑とは別方向にズレ始めていたのだ。
初めの頃は、シエテの訓練中にシーナが差し入れを持って見学に来ていたのだ。
しかし、可愛いシーナの見守る中の訓練は、まだ若い連中が集まった第二班には目の毒だった。
シエテが、騎士たちに指導をしている姿を見学しながら、兄の格好いい姿に頬を染めるシーナの姿は騎士たちの間で「天使たん」と言われるようになっていったのだ。
シエテのシスコンが強烈過ぎて周りは気が付いていなかったが、シーナも十分ブラコンだったのだ。
栗色の短い髪を揺らして、剣を振るシエテの姿にシーナは頬を染めて、胸元で手を握りしめて見つめる姿はまるで恋人を見つめるかのような熱い眼差しだったのだ。
そんな姿を見た騎士たちは、まるで自分を見つめてくれているような錯覚に陥っていた。
その効果なのか、訓練に参加する騎士たちの士気は日々うなぎ登りに上昇していたのだ。
可愛いシーナに見つめられるのは嬉しかったシエテだったが、騎士たちがシーナにデレデレになる姿を見るのは複雑な心境だったのだ。
シエテ的には、可愛いシーナを自慢したい気持ちと、独り占めしたい気持ちで複雑な思いをしていたのだ。
そんなある日、シーナの見学にカインも付いてきたのだ。
カインは、普段は書類仕事に明け暮れているが、手が空いた時は騎士たちの訓練に参加することもあったのだ。
結婚後、初めて訓練に参加するカインを見たシーナはその出で立ちにうっとりした表情をしていたのだ。
訓練場に現れたカインは、カイン専用の騎士服に身を包んでいたのだ。通常の制服よりも訓練用の略式の物だったが、青を基調とした騎士服を着たカインに見惚れていたのだ。
シエテのときも、シーナは心から喜んでくれていたのだが、カインに向けるうっとりとした表情はとても気に入らなかったのだ。
だからシエテは意地になっていたのだ。
カインをボロカスに負かせば、カインの格好は形だけだとがっかりするはずだと。
以前、王都で決闘した時は侮りもあって不覚を取ったシエテだったが、ある程度の実力を踏まえた上で最初から全力でぶつかれば、余裕で勝てる自信があったのだ。
しかし、その時のカインはシーナの「カイン様、頑張って」という、応援というバフを受けたためなのか、実力以上の動きを見せたのだ。
結果は、僅差でシエテの勝ちだった。
シエテが勝ったにも関わらず、シーナはカインに駆け寄り、手に持ったタオルをカインに差し出して言ったのだ。
「カイン様!凄く格好良かったです!!やっぱりカイン様は素敵です」
「いや、義兄上には勝てなかったよ。義兄上は流石だな。騎士団に参加してもらってよかったよ」
「はい。にーにはすごいんです!」
「ははは、シーナは義兄上が本当に大好きだね」
「はい!にーにのこと大好きです」
「俺は、シーナが一番好きだけどね」
「っ!!カイン様の意地悪……。にーには家族として大好きですけど、カイン様はにーにとは別の大好きなんです!!」
「くくっ、俺のこと大好きなんだ?それってどのくらいかな?」
「世界一大好きです!!」
「ふっ、俺もシーナのこと世界で一番大好きで、愛してるよ」
「あっ、カイン様ずるいです。私もカイン様のこと世界一愛してます!!」
そう言って、気がつけばイチャイチャしだす最愛の妹と義弟の砂糖を吐きそうな姿に胸焼けがしていたシエテは、がっくりと肩を落としていた。
そして、その場にいた騎士たちは全員が心の中で毒づいていた。
―――リヤ充爆発しろ!!!!!!
そんなこともあり、シエテは苦渋の選択としてシーナに言ったのだ。
「シーたん。騎士たちの精神面の問題なんだけど、可愛いシーたんが見ていると、彼女のいない騎士たちが精神的なダメージを受けるから、見学の回数を少し減らしてほしいかも……。俺は、シーたんに見てて欲しいんだけど、領主様とのイチャイチャ……、いや、なんでもない。兎に角、見学の回数を少し減らしてほしいんだ……。シーたん、ごめんね」
シエテがそう言うと、シーナは残念そうにしながらも頷いてくれたのだ。
しかし、それからはシーナの訪れが減り、その代わりに、指導していた騎士達が何故かシエテのことを「兄貴!!」と呼ぶようになり、シエテの精神はガリガリと日々削られていくのだった。
【後日談】シエテの憂鬱 おわり
それは辺境騎士団の第二班の隊長という面倒極まりない役職を義理の弟となったカインから押し付けられたのだ。
最初は断ろうとしたシエテだったが、シーナのキラキラと輝く瞳で尊敬するような眼差しの前に断ることが出来なかったのだ。
シーナ曰く、「騎士団の制服姿のにーに、格好いい!!」とのことだったので、まんざらでもなかったシエテだった。
しかし、家業の傍らの任務は多忙を極めていた。
カインからは、「義父上と義母上の手伝いの空いてる時間でいいので、騎士たちに稽古を付けてやってほしい」とのことだったのだ。
シエテの中では、屋敷に住むようになったシーナと会えるチャンスだという思惑もあって引き受けたのだが、気がつけば最初の思惑とは別方向にズレ始めていたのだ。
初めの頃は、シエテの訓練中にシーナが差し入れを持って見学に来ていたのだ。
しかし、可愛いシーナの見守る中の訓練は、まだ若い連中が集まった第二班には目の毒だった。
シエテが、騎士たちに指導をしている姿を見学しながら、兄の格好いい姿に頬を染めるシーナの姿は騎士たちの間で「天使たん」と言われるようになっていったのだ。
シエテのシスコンが強烈過ぎて周りは気が付いていなかったが、シーナも十分ブラコンだったのだ。
栗色の短い髪を揺らして、剣を振るシエテの姿にシーナは頬を染めて、胸元で手を握りしめて見つめる姿はまるで恋人を見つめるかのような熱い眼差しだったのだ。
そんな姿を見た騎士たちは、まるで自分を見つめてくれているような錯覚に陥っていた。
その効果なのか、訓練に参加する騎士たちの士気は日々うなぎ登りに上昇していたのだ。
可愛いシーナに見つめられるのは嬉しかったシエテだったが、騎士たちがシーナにデレデレになる姿を見るのは複雑な心境だったのだ。
シエテ的には、可愛いシーナを自慢したい気持ちと、独り占めしたい気持ちで複雑な思いをしていたのだ。
そんなある日、シーナの見学にカインも付いてきたのだ。
カインは、普段は書類仕事に明け暮れているが、手が空いた時は騎士たちの訓練に参加することもあったのだ。
結婚後、初めて訓練に参加するカインを見たシーナはその出で立ちにうっとりした表情をしていたのだ。
訓練場に現れたカインは、カイン専用の騎士服に身を包んでいたのだ。通常の制服よりも訓練用の略式の物だったが、青を基調とした騎士服を着たカインに見惚れていたのだ。
シエテのときも、シーナは心から喜んでくれていたのだが、カインに向けるうっとりとした表情はとても気に入らなかったのだ。
だからシエテは意地になっていたのだ。
カインをボロカスに負かせば、カインの格好は形だけだとがっかりするはずだと。
以前、王都で決闘した時は侮りもあって不覚を取ったシエテだったが、ある程度の実力を踏まえた上で最初から全力でぶつかれば、余裕で勝てる自信があったのだ。
しかし、その時のカインはシーナの「カイン様、頑張って」という、応援というバフを受けたためなのか、実力以上の動きを見せたのだ。
結果は、僅差でシエテの勝ちだった。
シエテが勝ったにも関わらず、シーナはカインに駆け寄り、手に持ったタオルをカインに差し出して言ったのだ。
「カイン様!凄く格好良かったです!!やっぱりカイン様は素敵です」
「いや、義兄上には勝てなかったよ。義兄上は流石だな。騎士団に参加してもらってよかったよ」
「はい。にーにはすごいんです!」
「ははは、シーナは義兄上が本当に大好きだね」
「はい!にーにのこと大好きです」
「俺は、シーナが一番好きだけどね」
「っ!!カイン様の意地悪……。にーには家族として大好きですけど、カイン様はにーにとは別の大好きなんです!!」
「くくっ、俺のこと大好きなんだ?それってどのくらいかな?」
「世界一大好きです!!」
「ふっ、俺もシーナのこと世界で一番大好きで、愛してるよ」
「あっ、カイン様ずるいです。私もカイン様のこと世界一愛してます!!」
そう言って、気がつけばイチャイチャしだす最愛の妹と義弟の砂糖を吐きそうな姿に胸焼けがしていたシエテは、がっくりと肩を落としていた。
そして、その場にいた騎士たちは全員が心の中で毒づいていた。
―――リヤ充爆発しろ!!!!!!
そんなこともあり、シエテは苦渋の選択としてシーナに言ったのだ。
「シーたん。騎士たちの精神面の問題なんだけど、可愛いシーたんが見ていると、彼女のいない騎士たちが精神的なダメージを受けるから、見学の回数を少し減らしてほしいかも……。俺は、シーたんに見てて欲しいんだけど、領主様とのイチャイチャ……、いや、なんでもない。兎に角、見学の回数を少し減らしてほしいんだ……。シーたん、ごめんね」
シエテがそう言うと、シーナは残念そうにしながらも頷いてくれたのだ。
しかし、それからはシーナの訪れが減り、その代わりに、指導していた騎士達が何故かシエテのことを「兄貴!!」と呼ぶようになり、シエテの精神はガリガリと日々削られていくのだった。
【後日談】シエテの憂鬱 おわり
14
あなたにおすすめの小説
【完結】転生したので悪役令嬢かと思ったらヒロインの妹でした
果実果音
恋愛
まあ、ラノベとかでよくある話、転生ですね。
そういう類のものは結構読んでたから嬉しいなーと思ったけど、
あれあれ??私ってもしかしても物語にあまり関係の無いというか、全くないモブでは??だって、一度もこんな子出てこなかったもの。
じゃあ、気楽にいきますか。
*『小説家になろう』様でも公開を始めましたが、修正してから公開しているため、こちらよりも遅いです。また、こちらでも、『小説家になろう』様の方で完結しましたら修正していこうと考えています。
我儘令嬢なんて無理だったので小心者令嬢になったらみんなに甘やかされました。
たぬきち25番
恋愛
「ここはどこですか?私はだれですか?」目を覚ましたら全く知らない場所にいました。
しかも以前の私は、かなり我儘令嬢だったそうです。
そんなマイナスからのスタートですが、文句はいえません。
ずっと冷たかった周りの目が、なんだか最近優しい気がします。
というか、甘やかされてません?
これって、どういうことでしょう?
※後日談は激甘です。
激甘が苦手な方は後日談以外をお楽しみ下さい。
※小説家になろう様にも公開させて頂いております。
ただあちらは、マルチエンディングではございませんので、その関係でこちらとは、内容が大幅に異なります。ご了承下さい。
タイトルも違います。タイトル:異世界、訳アリ令嬢の恋の行方は?!~あの時、もしあなたを選ばなければ~
【完結】物置小屋の魔法使いの娘~父の再婚相手と義妹に家を追い出され、婚約者には捨てられた。でも、私は……
buchi
恋愛
大公爵家の父が再婚して新しくやって来たのは、義母と義妹。当たり前のようにダーナの部屋を取り上げ、義妹のマチルダのものに。そして社交界への出入りを禁止し、館の隣の物置小屋に移動するよう命じた。ダーナは亡くなった母の血を受け継いで魔法が使えた。これまでは使う必要がなかった。だけど、汚い小屋に閉じ込められた時は、使用人がいるので自粛していた魔法力を存分に使った。魔法力のことは、母と母と同じ国から嫁いできた王妃様だけが知る秘密だった。
みすぼらしい物置小屋はパラダイスに。だけど、ある晩、王太子殿下のフィルがダーナを心配になってやって来て……
主人公の義兄がヤンデレになるとか聞いてないんですけど!?
玉響なつめ
恋愛
暗殺者として生きるセレンはふとしたタイミングで前世を思い出す。
ここは自身が読んでいた小説と酷似した世界――そして自分はその小説の中で死亡する、ちょい役であることを思い出す。
これはいかんと一念発起、いっそのこと主人公側について保護してもらおう!と思い立つ。
そして物語がいい感じで進んだところで退職金をもらって夢の田舎暮らしを実現させるのだ!
そう意気込んでみたはいいものの、何故だかヒロインの義兄が上司になって以降、やたらとセレンを気にして――?
おかしいな、貴方はヒロインに一途なキャラでしょ!?
※小説家になろう・カクヨムにも掲載
お母様が国王陛下に見染められて再婚することになったら、美麗だけど残念な義兄の王太子殿下に婚姻を迫られました!
奏音 美都
恋愛
まだ夜の冷気が残る早朝、焼かれたパンを店に並べていると、いつもは慌ただしく動き回っている母さんが、私の後ろに立っていた。
「エリー、実は……国王陛下に見染められて、婚姻を交わすことになったんだけど、貴女も王宮に入ってくれるかしら?」
国王陛下に見染められて……って。国王陛下が母さんを好きになって、求婚したってこと!? え、で……私も王宮にって、王室の一員になれってこと!?
国王陛下に挨拶に伺うと、そこには美しい顔立ちの王太子殿下がいた。
「エリー、どうか僕と結婚してくれ! 君こそ、僕の妻に相応しい!」
え……私、貴方の妹になるんですけど?
どこから突っ込んでいいのか分かんない。
妹に魅了された婚約者の王太子に顔を斬られ追放された公爵令嬢は辺境でスローライフを楽しむ。
克全
恋愛
「カクヨム」と「小説家になろう」にも投稿しています。
マクリントック公爵家の長女カチュアは、婚約者だった王太子に斬られ、顔に醜い傷を受けてしまった。王妃の座を狙う妹が王太子を魅了して操っていたのだ。カチュアは顔の傷を治してももらえず、身一つで辺境に追放されてしまった。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる