妹に全てを奪われた令嬢は第二の人生を満喫することにしました。

バナナマヨネーズ

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番外編

【後日談】 シーナの隠し事 1

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「と、いう夢を見たんだ」

「勝手に俺のシーたんと結婚する妄想をするな。死ね」

「え~、夢で見るくらいいいじゃないか」

「よくない。領主様、そこの不届き者を今すぐ処してもいいですか?というか、処します」

「ちょっ!!」

 どうしてこうなった……。俺は、自分の置かれている状況に頭を抱えていた。
 初めは、シエテに相談事があって呼び出したが、何故かその友人の男まで付いてきた。
 そして、気がつくとクリストフの妄想話が始まっていた。
 はぁ、本当にどうしてこうなった。
 
 ここのところ、シーナの様子がおかしい。
 元気がなく、大好きなお菓子を用意しても手を付けようとしないのだ。
 俺がなにかしてしまったのかと、いろいろ考えたが思い当たることがまったくなかった。
 お手上げだった俺は、俺の次に彼女のことを分かっているシエテに止む無く相談することにしたのだ。
 だが、シーナのことを相談しようとしたのだが何故かシエテはのらりくらりと俺の話を聞き流すだけで何のアドバイスもくれない。
 このままでは、シーナに理由もわからないまま嫌われてしまうと俺は焦ったいたところもある。
 
 そう、シーナの元気がなくなってから俺は彼女に避けられているのだ。
 彼女に理由を聞いても目を逸らしながら、「そ、そんなことないですよ?」としか言ってはくれないのだ。
 
 彼女を怒らせるようなことなど、心当たりがなさ過ぎて苦肉の策ではあったが、背に腹は変えられなかったのだ。
 しかし、藁にもすがる思いで相談したにも関わらず、シエテは俺の助けには一切なってくれなかった。
 それどころか、クリストフの妄想話を聞かされる羽目になった俺は、頭を抱えていた。
 妄想の中で、シーナと夫婦になって子宝にも恵まれるという内容の話をイライラしながらも聞いていたが、途中で何度黙らせようとしたか……。
 結局、黙らせることもできず最後まで妄想話を聞いてしまっていた。
 ようやく、妄想話も終わったのだから今度こそ俺の相談に乗って欲しいものだ。そう思って、シエテの方を向いて口を開くのと同時に応接室の扉をノックする音が聞こえてきた。
 扉の外から、シーナの声が聞こえてきた。
 
「カイン様……、にーにが来てるって聞いたんですけど……」

 元気のない様子のシーナの声に俺が反応するよりも早く、シエテが扉に向かっていた。出遅れた俺は、慌ててシエテの後を追って扉に向かっていた。
 一足遅く俺がたどり着くと、扉を開けたシエテに抱きついているシーナの姿が目に入った。
 二人は、俺に聞こえないような小さな声で何事かをやり取りをした後に、きつく抱きしめあってから離れた。
 その光景に、シエテが兄だと理解していても俺の心はズキズキと痛んでいた。
 無意識にシャツの胸元を握りしめていると、シエテが俺に向かって言ったのだ。
 
「あ~、領主様。当分シーナを実家に連れて帰ります」

「は?」

「それじゃ、行こうか。シーたん」

 そう言ってシエテは、そのままシーナを連れて行ってしまったのだ。シーナは、一瞬俺の方を見てなにか言いたげな表情をしていたが、一言だけ言葉を発してからその場を去っていってしまった。
 
「カイン様……ごめんなさい」

 シーナが俺に謝る理由などなにもないのに、あんなに苦しそうな表情でそう言ったことに俺は何も言葉を返すこともできずにその場に立ち尽くすことしかできなかった。
 
 それから、数日が過ぎた。
 何度も敷地内にある彼女の実家に迎えに赴いたが、シエテがそれを許さなかった。
 ただし、シエテの表情からシエテ複雑な思いでいることが分かったため、俺も無理にシーナを連れて帰ることはしなかった。
 毎回、シエテはこう言って俺を阻んだからという理由もあった。
 
「領主様、今はそっとしておいてあげて欲しい。男の俺たちにはどうしようもない問題のようなんだ。俺でも、どうすることもできない……」

 そう言って、つらそうな表情をしていたからだ。
 
 だが、黙って待つこともできず毎日のように彼女の実家に足を向けていた。
 そんなある日のことだった。
 その日も会えないと分かっていてもシーナの実家に向かっていた。
 しかし、その日はシエテの出迎えがなかった。
 首を傾げつつも、これはチャンスだと考えた俺は、誰に断るでもなく一言「入るぞ」と宣言した後に、無防備に開いた扉を開けて中に入っていった。
 
 勝手知ったるとばかりに、シーナの部屋に向かって歩いていた。
 シーナの部屋の前までたどり着いた時に、俺は突然臆病になっていた。
 もし、勝手に押しかけてシーナにますます避けられるようになって、最悪別れたいなんて言われた日には、俺はきっと生きていけない自信があった。
 そんな、臆病風に吹かれた俺は扉の前で立ち尽くしていた。
 しかし、どのくらいそうしていたのか分からないが、中から苦しそうな声が聞こえたのだ。
 俺は、今まで散々悩んでいたことが嘘のように、扉を開けて中に勢い良く入っていった。
 俺の目に飛び込んできたのは、ベッドに横になって苦しそうにしているシーナの姿だった。
 苦しむシーナを見た俺は、弾かれたように彼女の側に寄っていた。
 眠っているようで、俺の存在には気がついていなかった。俺は、彼女の手を取り握りしめてから、彼女の顔を見た。
 シーナは苦しそうに汗をかいていた。そんな苦しそうな彼女を一人きりにしてしまったことに、俺は心が苦しくなった。それと同時に、衝撃・・を受けた俺は、一瞬意識が遠くなった。
 しかし、彼女の苦しそうな息遣いで我に返った俺は、持っていたハンカチで彼女の額の汗を拭うことにした。
 シーナの額の汗を拭いながら、俺は心によぎる不安に頭が痛くなっていた。
 
(もしかして、シーナは何か悪い病気なのか?それで、俺を避けていたのか?彼女まで失ってしまうというのか?)

 そんな、不吉な思いから無意識に繋いでいたシーナの手を強く握りしめてしまった。
 すると、シーナが目を薄く開いた。
 朦朧とした様子で、俺のことを見た後に周囲に視線を向けてから困ったような表情で言ったのだ。
 
「これは、夢かな……?」

 シーナの余りにもか細い声に、心臓がぎゅっと引き絞られたように感じた俺は必死に声を掛けていた。
 
「シーナ、俺はここにいる!夢なんかじゃない」

 俺の必死な声が聞こえたのか、シーナは薄く微笑んでから、眉を寄せた表情で言った。
 
「カイン様……、ごめんなさい」

「どうしたんだ?どうして謝るんだ?シーナが謝る必要なんてなにもないんだ」

「いいえ、いいえ……。私は、今までカイン様に黙っていたことがあります。言うのが怖かったんです。嫌われてしまうのが怖かったんです……」

 シーナの悲しみに満ちた表情と言葉に俺は、否定の言葉を口にすることしかできなかった。
 
「そんなことない。俺が、シーナを嫌いになることなんてありはしない!お願いだから、俺から離れていくな」

「でも、私の秘密を知ったら……、きっとカイン様は許してくれない……と、思います」

「秘密なんて誰にでもある!!それに、シーナの秘密を知ったとしても、俺は絶対にシーナから離れてなんてやらないからな!!嫌われても側にいる。俺から勝手に離れようとしないでくれ!!」

 必死で、シーナの言葉を否定した。彼女の秘密を知ったとしても、嫌いになることなどありえないと俺は自信を持って言うことが出来る。だから、俺は必死に否定した。
 しかし、彼女はそんな俺に詫びるように一言言ったのだ。
 その言葉は、俺にはとても信じられない内容だった。だが、彼女の言葉を否定することなどできない俺は、その信じられない言葉を何故か痛む頭で反芻していた。
 彼女は、苦しそうにこう言ったのだ。
 
「ごめんなさい。私は……、イシュミールの生まれ変わりなんです。今まで騙していてごめんなさい。でも、この世を去ってしまう前に言わなくちゃいけないって……。ごめんなさい」
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