悲しいほど君を愛している

青空一夏

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悲しいほど君を愛している

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俺と美月は幼なじみだ。

産まれた時から一番、身近な存在だったのはお互いの母親が親友だったからだ。

「この二人は本当に仲がいいわね!」

「そうね。大きくなったら悠人君と結婚するって美月はいつも言っているのよ」

「悠人も美月ちゃんが大好きよ。相思相愛ね」

俺と美月の母親たちが、そんな会話をしているのを気恥ずかしく聞いていた。





俺が10歳になった頃、母が妊娠し琴音という妹ができた。

生まれつき心臓疾患を抱える琴音は外で遊ぶこともままならない。

「琴音、俺が医者になって病気を治してあげるから待っていて」

病室から出られない琴音は、信じきった瞳でうなづいた。

「うん、お兄ちゃん大好きよ!背が高くてかっこいいお兄ちゃんは看護婦さんに大人気なんだよ?」
おませなことを言って俺たちを笑わせた。

「お姉ちゃんも、また会いに来てくれる?」
綺麗な大きな瞳を美月に向けた琴音は可愛い声でそう聞いた。

「もちろんよ」


琴音は美月にとても懐いていた。
美月お姉ちゃんのように綺麗なお姉さんになりたい、と言う琴音に美月は恥ずかしそうに照れている。

琴音は俺の妹であり、美月にとっても妹のような存在だった。





俺が医学部に入った時に真っ先に声をかけてくれたのが大和だった。

大和は男にしては小柄で見た目は小猿のような陽気な奴だった。

気さくな大和は俺の家によく来るようになり、そこで美月と会った。

「すごく綺麗な人だね!悠人の恋人なの?」

「うーーん、美月の家は隣なんだよ。ずっと一緒に育った家族のようなもんだよ」
俺は照れ隠しにそう言ってごまかしたんだ。

「ふーーん。そう」
俺は大和が顔を赤らめて目を輝かせていたことに少しも気がつかなかった。





「悠人、ごめんなさい!私、大和君と付き合うことになった‥‥」

まさか、美月が俺を裏切るなんて思わなかった。

俺とあれだけ一緒に過ごした歳月をすぐに捨て去れる美月が信じられなかった。

俺は自分で言うのもなんだが、女にはもてるタイプだったけれど美月ひとすじだったのに。

女って、そんなに切り替えができるものなのか?

俺は夜はよく眠れないし、当然食欲もなくなっていった。

それ以来、どんなに日の光が輝いている日であろうと、俺の世界の天気はいつも灰色の厚い雲で覆われている。

「悠人、美月ちゃんと巡り合わせてくれてありがとう!僕にとってすごく大事な子だ。」

「そうか、良かったな」
俺は、それしか大和には言えなかった。
大事な子、俺にとってはそんな言葉じゃもの足りないさ。
俺の分身みたいな存在だった美月を失ったこの胸の痛みは決して消えない‥‥







「婚約、おめでとう!」

「婚約、おめでとーー大和!美月さん」

共通の友人たちが祝福の声をあげているけれど、俺だけが海の底に沈んでいる。

その海は寒い冬の夜の海‥‥

「‥‥悠人の妹の琴音ちゃんは美月の妹みたいなものなんだって?安心して!僕の父が手術の執刀医になる」

大和に話しかけられたことにも気がつかなかった俺は、琴音の名前を聞いてはじめて大和の顔を見た。

「大和の父親?」

「あぁ、言わなかったっけ?心臓外科医の榊原匠だよ」
あの「神の手をもつ」といわれる榊原匠?

大金を積んでも、有名人でも、なかなか執刀医にはならない世界的に有名な名医‥‥

俺は大和の隣に寄り添う美月を見つめる。

美月は柔らかく微笑んでいるが、その瞳の奥には悲しみと俺への愛が溢れていた。

俺も同じような瞳で見つめ返し、お互いが小さく頷くと俺はできるだけ明るい声で言ったんだ。


「ありがとう!感謝しているよ。俺はいい親友と、そしてとても大事な幼なじみをもてた。ずっと、ずっと愛しているよ」

「ははは、愛しているなんて気持ち悪いぞ!!俺たちはずっと親友だよ、死ぬまでな」
あぁ、そうだ、死ぬまでお前とは親友でいるとも。

そして、美月、俺は悲しいほど君を愛している‥‥
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みんなの感想(1件)

2020.09.29 ユーザー名の登録がありません

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2020.09.29 青空一夏

Maro様
感想、ありがとうございまぁす😆
思いつきで書いただけで、なんかそのへんに転がってるような話に
感想いただいて恐縮です!

解除

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