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3 お姉様が二人?
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「ふざけるのも大概になさい! 私の妹を愚弄することは決して許しませんよ」
お姉様はきっとそうおっしゃってくださるはず。でも現実は違った。
「失礼な者達め! 伯爵家の分際で、わたし達の愛娘であるティベリアを粗末に扱うなど到底許せるものではない! 思い知らせてくれよう」
お父様は憤怒に駆られて声を荒げるはず。でも、相変わらず穏やかな表情で不快に思っている様子はない。
私の大好きだった家族達はワイアット様の申し出については返答を避けていた。この世界ではこのような場合には、少し検討する時間が必要という意味になるのは、貴族間の常識だった。つまり家族間で話し合う必要があるほどその話しを真剣にとらえているということになる。
(嘘でしょう? まさか、こんなに私に惨めな思いをさせた男性を、お姉様はお婿さんにすることを検討するの? 即刻、断るのではないの? ウォーク公爵家の力ならいくらでも潰せるほどの家格のはずなのに・・・・・・)
私は裏切られた気持ちでいっぱいになる。大好きだったお姉様だったし、心から信頼していたお父様とお母様だったから、ショックはとても大きかった。
(こんな家は出て行くに限るわ。よしっ! 私、家出するっ!)
そのように決心した私は、夜中にお姉様のお部屋を横切る。その際、お姉様のお部屋の扉が少しばかり開いていて、なんと夕方お帰りになったはずのワイアット様の後ろ姿が見えた。
(え? ・・・・・・なんで?)
頭が混乱して家出する気力もなくなって私は自室に戻って思い悩む。もしかしたら、お姉様もワイアット様に一目惚れしたの? だったら、譲っても良い。だって、あんな失礼な男に未練なんてないし嫌悪感しかないから。でも同じぐらい、いいえ、それ以上にお姉様にも強い嫌悪感を感じてしまう。
だってお姉様は私の憧れで自慢で・・・・・・幼い頃から大好きだったのよ。なのに・・・・・・
翌朝、お姉様はいつものように朗らかに私に挨拶をし、両親もいつも通りでなにも変わらない。
(ワイアット様はいつの間に帰ったのかしら? もうどこにもいないわ)
それからワイアット様は毎日のように午後から夕方まで入り浸って帰って行く。それなのに、夜中にお姉様の部屋を横切ると、ワイアット様のつけているオーディコロンの香りがした。
(また連れ込んでいるのね? 気持ち悪い。そんなふしだらなお姉様なんて要らない!)
聖女のイメージだったお姉様は、淫らな娼婦のイメージに書き換えられて私の幻想は打ち砕かれた。すごく悲しくて、私はお姉様をどうしても許せなくなっていた。
私はお姉様の部屋にあるお気に入りのワインボトルに毒を入れた。
(毎晩、婚約者にもなっていないワイアット様を部屋に連れ込む悪女なんて、私の大好きなお姉様じゃないもの!)
翌朝、お姉様は起きてこなかった。昼になっても部屋の扉は閉まったままだ。私はお姉様の部屋の扉をほんの少しだけ開けてみる。お姉様はウエディングベールの上に倒れ込んでいた。
そのウエディングベールは私へのプレゼントだと言って編んでいた物よ。お姉様はレース編みがとてもお上手だったから、私の晴れの日の衣装を自分が編むと張り切っていたの。それに、よく見ればお姉様が着ている寝間着は、3年前に私がプレゼントしたもので私とお揃いの物だ。ところどころ着古して色あせているのに、今でも着ていてくださっていたなんて。
「お姉様、死なないで。ごめんなさい! ごめんなさい! 私がお姉様を殺しちゃったんだ。どうしよう? 大好きなお姉様なのに・・・・・・そうだ。私も死んでお詫びをするわ。お姉様に天国で謝ってくる」
護身用のナイフを自分の喉元に突きつけると、目をつぶってそのナイフを引き寄せた。
「お止め! ばかなことをするんじゃないよ。人間のそなたがそのようなことをすれば、すぐに死んでしまうだろう?」
私の手を握ってナイフを取り上げた人物を私は凝視した。
「お、お姉様? なんでお姉様が二人いるのぉお?」
お姉様はきっとそうおっしゃってくださるはず。でも現実は違った。
「失礼な者達め! 伯爵家の分際で、わたし達の愛娘であるティベリアを粗末に扱うなど到底許せるものではない! 思い知らせてくれよう」
お父様は憤怒に駆られて声を荒げるはず。でも、相変わらず穏やかな表情で不快に思っている様子はない。
私の大好きだった家族達はワイアット様の申し出については返答を避けていた。この世界ではこのような場合には、少し検討する時間が必要という意味になるのは、貴族間の常識だった。つまり家族間で話し合う必要があるほどその話しを真剣にとらえているということになる。
(嘘でしょう? まさか、こんなに私に惨めな思いをさせた男性を、お姉様はお婿さんにすることを検討するの? 即刻、断るのではないの? ウォーク公爵家の力ならいくらでも潰せるほどの家格のはずなのに・・・・・・)
私は裏切られた気持ちでいっぱいになる。大好きだったお姉様だったし、心から信頼していたお父様とお母様だったから、ショックはとても大きかった。
(こんな家は出て行くに限るわ。よしっ! 私、家出するっ!)
そのように決心した私は、夜中にお姉様のお部屋を横切る。その際、お姉様のお部屋の扉が少しばかり開いていて、なんと夕方お帰りになったはずのワイアット様の後ろ姿が見えた。
(え? ・・・・・・なんで?)
頭が混乱して家出する気力もなくなって私は自室に戻って思い悩む。もしかしたら、お姉様もワイアット様に一目惚れしたの? だったら、譲っても良い。だって、あんな失礼な男に未練なんてないし嫌悪感しかないから。でも同じぐらい、いいえ、それ以上にお姉様にも強い嫌悪感を感じてしまう。
だってお姉様は私の憧れで自慢で・・・・・・幼い頃から大好きだったのよ。なのに・・・・・・
翌朝、お姉様はいつものように朗らかに私に挨拶をし、両親もいつも通りでなにも変わらない。
(ワイアット様はいつの間に帰ったのかしら? もうどこにもいないわ)
それからワイアット様は毎日のように午後から夕方まで入り浸って帰って行く。それなのに、夜中にお姉様の部屋を横切ると、ワイアット様のつけているオーディコロンの香りがした。
(また連れ込んでいるのね? 気持ち悪い。そんなふしだらなお姉様なんて要らない!)
聖女のイメージだったお姉様は、淫らな娼婦のイメージに書き換えられて私の幻想は打ち砕かれた。すごく悲しくて、私はお姉様をどうしても許せなくなっていた。
私はお姉様の部屋にあるお気に入りのワインボトルに毒を入れた。
(毎晩、婚約者にもなっていないワイアット様を部屋に連れ込む悪女なんて、私の大好きなお姉様じゃないもの!)
翌朝、お姉様は起きてこなかった。昼になっても部屋の扉は閉まったままだ。私はお姉様の部屋の扉をほんの少しだけ開けてみる。お姉様はウエディングベールの上に倒れ込んでいた。
そのウエディングベールは私へのプレゼントだと言って編んでいた物よ。お姉様はレース編みがとてもお上手だったから、私の晴れの日の衣装を自分が編むと張り切っていたの。それに、よく見ればお姉様が着ている寝間着は、3年前に私がプレゼントしたもので私とお揃いの物だ。ところどころ着古して色あせているのに、今でも着ていてくださっていたなんて。
「お姉様、死なないで。ごめんなさい! ごめんなさい! 私がお姉様を殺しちゃったんだ。どうしよう? 大好きなお姉様なのに・・・・・・そうだ。私も死んでお詫びをするわ。お姉様に天国で謝ってくる」
護身用のナイフを自分の喉元に突きつけると、目をつぶってそのナイフを引き寄せた。
「お止め! ばかなことをするんじゃないよ。人間のそなたがそのようなことをすれば、すぐに死んでしまうだろう?」
私の手を握ってナイフを取り上げた人物を私は凝視した。
「お、お姉様? なんでお姉様が二人いるのぉお?」
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