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7 知られたくない秘密
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「あのぉーー、カトレア嬢。さきほどの『おやつ』とはどのような意味でしょうか? 男性とおやつを食べる? ティベリア嬢の価値がわからない者と菓子を食べて美味しいですか?」
「ふっ。そのようなことはバーノン様にはきっと一生関係ないお話ですわ。ですから聞かなかったことにしてくださいませね。ほら、ティベリア。バーノン様をアトリエに案内してさしあげなさい」
私もこの話題は避けた方が良いと判断して、彼の手を素早く取ってアトリエに連れて行く。アトリエに着くとバーノン様の顔が赤いので、やっと自分のしでかしたことに気づいた。
「あっ、ごめんなさい。つい手を繋いでしまいました。はしたないことをして申し訳ありません」
「あっ、いいえ、わたしは全然気にしません。むしろ嬉しいぐらいです」
(嬉しい、という言葉を真に受けないようにしなければいけないわ。社交辞令かもしれないもの)
「でも、婚約者の方がいたら申し訳ないので、今後は気をつけますね。それと観劇も大好きなので行きたいとは思いますが、つきあっている方はいらっしゃらないのですか? 私はややこしい立場になるのは嫌ですし、私のせいで泣く女性がいたら困ります」
「あぁ、そのことならご心配なく。安心してください。付き合っている女性も婚約者もいません。大事な女性がいながら他の女性を誘うような人間ではないです」
「ご、ごめんなさい。気を悪くしないでください」
「いいえ、怒っていません。あの兄上の弟だと思ったらそう疑われても当然ですよ。少しづつでも信頼してもらえるように頑張ります」
交際を申し込まれたわけでもないのにドキドキして頬がほてるのを感じた。それとも、これは交際を申し込まれたことと同義なのかしら? だって信頼してもらえるように頑張る、とおっしゃったもの。
(バーノン様がお帰りになったらお姉様に相談してみよう!)
「すごい! このような可愛くて綺麗な絵がよく描けますね。このデイジーと薔薇の妖精はそれぞれ顔が違って花のイメージにぴったりです。着ている服も可愛いし、やはり本当は妖精が実際見えているのですか?」
私のアトリエを見たバーノン様は嬉しそうに目を輝かせた。真顔でそう尋ねてくる男性には初めて会ったし、真剣に私の絵を鑑賞してくださる男性も初めてだった。
大抵の男性は妖精を描く私に果物や風景を描くことを勧め、しまいには刺繍やレース編みに趣味をかえた方が良いと結論づけるのに。私の絵に興味を持ってくださるだけでも嬉しくて、ついニコニコと笑顔になった。
「実際に見えているわけではないのです。ただ頭の中でイメージがどんどん浮かんできて、描いていくうちにそのような妖精になりますわ」
「実際ティベリア嬢の視線の先には妖精がいそうですよね。実のところ、わたしは子供の頃から妖精の存在を信じています。人間だけがこの世で繁栄するなんて傲慢な考え方だと思うのですよ。この世には人でない者もいて、助け合って共存できたら素敵ですよね」
「まぁ、それよ、それですわ。私もすっごくそう思います。妖精はいるかどうかわかりませんが、ちょっとダークな生物ならいると思います。それでね、きっとその方達は実はとても優しくて、私をとても可愛がってくださるのよ」
もしかしてバーノン様ならお姉様が何者か知っても受け入れてくれるのではないかしら? 私は自分がとてもおかしなことを言っていることには気がつかなかった。
だって、バーノン様は優しくうなづいてくださったし、アトリエから戻るときはバーノン様の方から手を差し出してくださったから。
人生二度目の男性との手繋ぎは、ちょっと足下がふわふわして・・・・・・そうね、ちょうど雲の上を歩けたらあんな感じかもしれないわ!
「ふっ。そのようなことはバーノン様にはきっと一生関係ないお話ですわ。ですから聞かなかったことにしてくださいませね。ほら、ティベリア。バーノン様をアトリエに案内してさしあげなさい」
私もこの話題は避けた方が良いと判断して、彼の手を素早く取ってアトリエに連れて行く。アトリエに着くとバーノン様の顔が赤いので、やっと自分のしでかしたことに気づいた。
「あっ、ごめんなさい。つい手を繋いでしまいました。はしたないことをして申し訳ありません」
「あっ、いいえ、わたしは全然気にしません。むしろ嬉しいぐらいです」
(嬉しい、という言葉を真に受けないようにしなければいけないわ。社交辞令かもしれないもの)
「でも、婚約者の方がいたら申し訳ないので、今後は気をつけますね。それと観劇も大好きなので行きたいとは思いますが、つきあっている方はいらっしゃらないのですか? 私はややこしい立場になるのは嫌ですし、私のせいで泣く女性がいたら困ります」
「あぁ、そのことならご心配なく。安心してください。付き合っている女性も婚約者もいません。大事な女性がいながら他の女性を誘うような人間ではないです」
「ご、ごめんなさい。気を悪くしないでください」
「いいえ、怒っていません。あの兄上の弟だと思ったらそう疑われても当然ですよ。少しづつでも信頼してもらえるように頑張ります」
交際を申し込まれたわけでもないのにドキドキして頬がほてるのを感じた。それとも、これは交際を申し込まれたことと同義なのかしら? だって信頼してもらえるように頑張る、とおっしゃったもの。
(バーノン様がお帰りになったらお姉様に相談してみよう!)
「すごい! このような可愛くて綺麗な絵がよく描けますね。このデイジーと薔薇の妖精はそれぞれ顔が違って花のイメージにぴったりです。着ている服も可愛いし、やはり本当は妖精が実際見えているのですか?」
私のアトリエを見たバーノン様は嬉しそうに目を輝かせた。真顔でそう尋ねてくる男性には初めて会ったし、真剣に私の絵を鑑賞してくださる男性も初めてだった。
大抵の男性は妖精を描く私に果物や風景を描くことを勧め、しまいには刺繍やレース編みに趣味をかえた方が良いと結論づけるのに。私の絵に興味を持ってくださるだけでも嬉しくて、ついニコニコと笑顔になった。
「実際に見えているわけではないのです。ただ頭の中でイメージがどんどん浮かんできて、描いていくうちにそのような妖精になりますわ」
「実際ティベリア嬢の視線の先には妖精がいそうですよね。実のところ、わたしは子供の頃から妖精の存在を信じています。人間だけがこの世で繁栄するなんて傲慢な考え方だと思うのですよ。この世には人でない者もいて、助け合って共存できたら素敵ですよね」
「まぁ、それよ、それですわ。私もすっごくそう思います。妖精はいるかどうかわかりませんが、ちょっとダークな生物ならいると思います。それでね、きっとその方達は実はとても優しくて、私をとても可愛がってくださるのよ」
もしかしてバーノン様ならお姉様が何者か知っても受け入れてくれるのではないかしら? 私は自分がとてもおかしなことを言っていることには気がつかなかった。
だって、バーノン様は優しくうなづいてくださったし、アトリエから戻るときはバーノン様の方から手を差し出してくださったから。
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